『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第6話 火影忍軍

 

時は戦国時代。

戦が絶えず行われていたこの時代、数々の忍びの一族があった。

伊賀。甲賀。風魔。そして『火影一族』。

『炎』を生む力を持つ当主を頂き、人知を超えた力を発揮する『魔道具』を操る彼らは一大勢力を誇っていたが、その力は欲深き者も引き寄せた。

 

天正四年。

尾張の織田信長が天下統一の足掛かりとすべく、魔道具を手に入れるため挙兵し火影に攻め入った。

これに対し当時の火影当主『桜火』は敢えて魔道具を使わず立ち向かうことを決めた。

魔道具を戦いに用いれば迎撃に成功したとしてもその一部は持ち帰られ、それを用いて再び、そして何度でも信長は攻めてくると予見したからだ。

そして最後に全ての道具を手に入れた信長は、その力を使いこの世を地獄に変える。

『織田のうつけには一つたりとも道具は渡さぬ』。

後の世を守るため、彼らは死を覚悟し抗うことを決めた。

 

遂に始まった織田軍と火影一族の戦。

しかしやはりそれは一方的なものであった。

次々と仲間は討ち取られ、ついに火影当主桜火も殉職。

だが彼は最期の力を振り絞り、己の妻と子を逃がしていた。

 

正室『陽炎』と生まれたばかりの息子『烈火』、そしてわずか四歳の側室の息子『紅麗』。

 

「……母上……!」

 

「おぎゃあ!おぎゃあ!」

 

「泣かないで、烈火……紅麗も……!」

 

側室の『麗奈』は息子を陽炎に託し、桜火と共に戦い、そして散った。

三人は山の中を走るが追手の気配はすぐそこにまで迫っている。

陽炎は何とかこの二人だけでも逃がさねばと、禁を破る覚悟を決めた。

 

「紅麗……今から貴方と烈火を未来へと送ります」

 

「未来へ……?」

 

『時空流離』。

時の流れを操る秘術。

炎を生み出す力と同じくかつて火影の始祖が持っていたとされる能力であり、それを再現したもの。

 

「今より時を超える扉を開きます。貴方は烈火を連れその中へ飛び込みなさい!」

 

「陽炎さまも共に!」

 

「なりません……扉が閉じる前に敵が追いかけてくるかもしれない。

 私は残り、足止めに徹します」

 

そしてこの術には呪いがかけられている。

使った者を『時の流れより切り離す呪い』が。

老いず、朽ちず、永遠に生き続ける。愛する者と同じ時間を生きられなく呪いだ。

故に禁術。かつて長老より学んだが決して使ってはならぬと厳命されていた。

だが呪いにより生き続けることができるのならば。

 

「いつか貴方たちを見つけてみせます。

 その時まで烈火を……貴方の弟を、守ってあげて……!」

 

「……はっ!火影一族の当主は、仲間と家族を見捨てません!

 始祖よりの教えです!!」

 

「ありがとう……元気でね、烈火……!」

 

「おぎゃあぁぁっ!おぎゃぁぁぁぁっ!!」

 

「……『時空流離』!」

 

そして空間の穴を通り、少年と赤子は四百年後の未来へと旅立った。

 

二人はどこか父に似た雰囲気を持つ男に拾われ、彼の息子となった。

紅麗は己の素性を決して明かさず、父となった男もそれを尋ねなかった。

弟である烈火は幼い頃のことなど覚えているはずもなく、この時代の人間として成長していった。

 

しかしそれから12年後、中学を卒業した紅麗は旅立った。

この時代にまで残っていた火影の魔道具を収集している存在がいると知ったからだ。

名を『森光蘭』。永遠の欲望を求め悪逆非道の限りを尽くす男。

紅麗は奴に対抗するため己も魔道具を集め、仲間を集め、組織を結成した。

義父と烈火には告げずにいた。彼らを巻き込むことを恐れたからだ。だが。

 

 

 

「紅麗」

 

「陽炎……」

 

四百年の時を超えて四年前に再会した、かつての姿のままの女。

彼女と出会ったことで紅麗は烈火の下を離れたのだ。彼女は烈火を見守っているはずだった。

 

「大変よ、紅麗。烈火が森光蘭の屋敷に向かったわ」

 

「なんだと……!?」

 

紅麗は何も知らぬ烈火をひたすらに争いから遠ざけようとした。

対して陽炎は敢えて悪役を演じてまで、烈火に戦う力をつけさせようとしていた。

その教育方針に思うところはあったが、だとしても森を相手にさせるなど危険極まりない。流石の陽炎もそこまではしない。

 

「まさか、私の血縁だと気づいたのか……?

 いや、烈火が『向かった』と言ったな?」

 

「あの子のクラスメイト……いえ、主君となった少女が『癒しの奇跡』の力を持っていたの。森は彼女に目を付けたわ。

 彼女を調べれば不老不死の願いが叶うかもしれないからと誘拐したのよ」

 

「愚かな……奴が真に求めるものはここにあるというのに」

 

「……えぇ、そうね」

 

長きにわたり陽炎を苦しめている不死の呪いこそが森にとっての祝福だ。渡すつもりなど毛頭ないが。

 

「あの子は友人たちと共に少女を助けに向かいました。

 けれど相手も道具使い……手を貸して、紅麗」

 

「わかっている……」

 

火影一族は、仲間と家族を見捨てない。

紅麗は穏やかな素顔を真っ白な仮面で隠す。

 

 

 

「雷覇」

 

「はっ!」

 

「音遠」

 

「はい」

 

「磁生」

 

「うむ」

 

「JOKER」

 

「はいな」

 

「……薫」

 

「うん!」

 

 

 

「道は私が作ります!影界玉で……!」

 

「行くぞ……奴は、私の弟に手を出した」

 

魔道具を持つ5人の忠臣を引き連れた紅麗は己の炎の型……始祖の再来とされる『八咫烏』を呼び出し、宣言する。

 

 

『カァァァァァァアアアアッ!!!!』

 

「『火影忍軍』。出陣する」

 




『烈火の炎』より。

リクエストに挙がり、炎という能力や設定から関連性も強いので、話を考えながら漫画を見返していました。
その結果……『これ紅麗の扱いが真っ当だったら大体の悲劇回避できるんじゃね?』という結論に達しました。

というか、逆にヒノカミを挟む余地がない。
400年前に参入してたら時空流離で未来に行く流れが消えるし。
原作開始直後の段階だと彼女が無敵すぎて速攻で森光蘭や麗が消滅するし。
未来に飛ばされた紅麗をヒノカミが拾うというパターンも考えましたがやはり悪即斬で話が始まった瞬間に終わる。

よってヒノカミはこの世界線の遥か過去、火影一族に力と知恵を授けた始祖という位置に差し込みました。
炎術士の力はヒノカミの与えた『天神武装』が血脈に取り込まれ変化したもので、魔道具の基礎や時空流離も彼女由来となります。
もしかしたら柳の癒しの力も、火影とは別の形で受け継がれた『不可死犠』かもしれません。

そして始祖の教えにより、火影一族は仲間と家族を見捨てません。『呪いの子』と紅麗が迫害される事態に陥らず、彼もまた桜火の息子として愛を受けて育っています。
よって未来の彼が結成するのは『麗』ではなく『火影』。
紅との出会いと死別もないため、炎の型も『不死鳥』ではなくヒノカミ由来の『八咫烏』としました。

『花菱紅麗』と『花菱烈火』の兄弟がどのように運命と戦っていくのかは……皆さんのご想像におまかせします。
まぁ勝ち確だけど。
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