できる限りの構想も行いました。
ですがこれが作者の限界です。
「……違う、か」
故郷を目指して世界を渡り続けるヒノカミは、新たな世界に訪れた瞬間にここが無関係だと察した。
自然あふれる野原。平穏そのものの風景だ。
地球ではあるようだが彼女の知る世界とは雰囲気がまるで違う。
ならば自分が滞在することで余計な騒動を引き起こすのも、巻き込まれるのも望むところではない。
速やかに立ち去ろうとした。
「む?」
だがそこで人の気配を感じ取った。隠れて息をひそめているようだ。
もしもその人物が何者かに追われているとしたら、気付いてしまった以上見過ごすのも後味が悪い。
緑の茂みをかき分けて気配がする方に進む。
やがて黄色の小さい茂みを見つけた。ここから人の気配を感じる。
直径数十センチ……この中に人が隠れられるはずがない。
もしや小人か何かかと思い、茂みの周囲をぐるりと回ると。
茂みには人の顔がついてた。
「きゃーーーっ!エッチーーーーーーっ!!」
「ぬぉぁーーーーーーっ!?」
黄色い塊は茂みではなく、サングラスをつけた男のアフロヘアーだった。
生首だけ地面の上に出ている状態で悲鳴を上げたものだから、ヒノカミまで悲鳴を上げ飛び跳ね後ずさる。
「あー!」
「ボーボボみーーーっっけ!」
「え!?え!!?」
その場にまた別の人間が現れた。
……いや、人じゃなかった。
ヒノカミとて、様々な世界を渡り様々な生物を目の当たりにしてきた。人間でない者などいくらでも見て来た。
だから百歩譲って、オレンジ色のトゲが生えた球体に顔と手足が付いた方はそういう生命体だと受け入れてもよいだろう。
でももう片方は『者』ですらないもの。『物』だもの。
まだシルエットは人の形に近いがその体を構成する水色のゼリー状の物体……あれ『ところてん』なんだもの。
「次はボーボボが鬼なー!」
「んもぉう!アンタのせいで見つかっちゃったじゃないのよぉう!」
「え、あ、すまん……?」
地面がひび割れ、埋まっていた男の体が出てきた。
屈強な上半身と太い腕、すらりと伸びた脚。かなりの長身だ。2メートルくらいはある。
会話の内容から察するに、どうやらこの3人(?)はかくれんぼをしていたようだ。
(……かくれんぼ?
いい年した男とトゲボールとところてんが、こんな野原でかくれんぼ!?)
「じゃあ次はオレと天の助が隠れるからなー」
「しゃーねぇなぁ。いーち、にー、さーん……」
「「逃げろぉーーー!」」
「隙を見せたなマヌケがーーーーー!!!!」
ズガガガガガガガ!!!
「「ぎゃぁぁぁあああああ!!!!」」
「何しとんじゃ貴様ぁーーーー!!!」
樹の幹に顔を伏せていたアフロの男は、トゲボールとところてんが走り出した途端に隠し持っていたマシンガンを彼らの背に向けて乱射した。
「戦場で敵に背中を見せるなと、何度も教えたはずだ……!」
「鬼じゃ!貴様はたしかに鬼じゃ!!」
「ボーボボーーー!
首領パッチくーん!天の助くーん!」
そこにまた新たな人物が現れる。
「お昼ごはんの準備できたよー!
遊ぶのはその辺にして戻ってきてー!」
「「「はぁーーーーーい!」」」
「!?」
屍となっていたはずのトゲボールとところてんが、気付けば傷一つない姿となってアフロの男と共に少女がやってきた方へと軽快に歩いていく。
「あら?貴女は?」
「……あ、あぁ。通りすがりの旅人で……」
「ごめんなさい!どうせボーボボたちが迷惑かけちゃったんでしょ!?
あ、私ビュティ!」
「……ヒノカミじゃ」
どうやらこの少女はまだまともな感性を持っているようだ。
内心で『住人全部が先ほどの連中のようなノリの世界だったらどうしよう』と怯えていたので、ほんの少しだが安心した。
「よかったら、お詫びに貴女も一緒にお昼ご飯どうかな?
作りすぎちゃったし、是非!
急いでるなら無理にとは言わないけど」
「……いや、時間はある」
「よかった!」
純粋な善意を向けられ、これを断るのも悪いとヒノカミはビュティの誘いを受けることにした。
……あの3人(?)と関りを持つのは、少し怖くはあったが。
――――……
川沿いに広げられたピクニックシートには、一人の少年が座っていた。
見慣れぬ人間の姿を見て一瞬警戒したが、少女から客人と聞いて態度を改めた。
「ささ、座って座って!」
「……失礼する」
一行の目の前にはたくさんの料理が並んでいた。
ボーボボとやらは体格が良いのでそれなりに食うかもしれないが、なるほどこの量を5人でと言うのは多すぎる。
ほとんどはいかにもなピクニックでの定番料理。
サンドイッチ、唐揚げ、フライドポテト、大きな皿の上で丸くなる天の助。
ゲシッ
「ぎゃぁぁぁーーーー!」
慣れた手つきで少女と少年に川に突き落とされた天の助は下流へと流されていった。
桃ならともかくところてんでは、お爺さんとお婆さんも拾ってはくれないだろう。
「ふむ、お主らはその『毛狩り隊』とやらを打倒するため旅をしていると」
「アンタ、毛狩り隊を知らないのか?」
「遠い所から来たのでな」
ヘッポコ丸の口ぶりでは、誰もが知っていて当たり前のようだった。それほどの勢力を誇るのだろう。
何故毛を狩ることが世界征服に繋がるかは理解不能だが、苦しめられている人々がいるなら彼らに手を貸すべきか……そう思案する。
ポイッ
「ん?」
「あ!首領パッチくん!ゴミを捨てないの!」
「あ~~ん?い~~じゃねぇかこんくらぁ~い」
「ダメ!ちゃんと拾って!ちゃんと燃えるゴミと燃えないゴミに分けてよね!」
(この世界ゴミの分別回収あるんか……?)
「チッ、めんどくせぇなぁ。どれもこれも燃やそうと思えば全部燃えるんじゃねぇの?」
「燃えろこのゴミがぁ!!!」
ボォォォオオオオオオオ!!!
「ぎゃぁぁぁーーーー!」
「首領パッチくーーーーん!!!」
「どこから出した火炎放射器ぃ!!」
「あちっ!あちちちちち!!」
ボーボボに火だるまにされた首領パッチが、ヒノカミが個性で消火する前に川へと飛び込んでしまう。
『川にゴミを捨てたのは誰じゃぁーーーーー』
「「「なんか出たぁーーーーー!?!?!?!」」」
「貴様、何者だ?毛狩り隊か?」
『私は毛狩り隊『川』ブロック隊長にして川の守護者、『オオグチボヤ』だ』
「オイコラ深海生物!」
『川を汚す者は私が許さん!私に食われて悔い改めるがよいわ!!』
通常10センチほどのはずがその数十倍に至る、どう考えても川に収まる大きさではない巨大なホヤが、勢いよく空気を吸い込みボーボボたちを呑みこもうとする。
「ふん!この程度で呑まれたりはせん!」
周囲の大木に『鼻毛』を伸ばして巻き付け体を固定するボーボボ。
ヒノカミは川から距離があり、ビュティとヘッポコ丸を背に庇いながら少しずつ距離を取る。
「「「…………ん?」」」
3人は未だ勢いよく空気を吸い込み続けるホヤの口の中に何かを見た。
(((首領パッチと天の助おるーーーーーー!?)))
「お嬢さん♪おはいんなさい♪」
「さぁどうぞ♪」
「はぁ~~~い♡」
ヒョイ
「引っかかったなアホがーーーー!!!」
「貴様も道連れじゃーーーーーー!!!」
「しまったぁーーーーっ!!」
「「「なにやっとんじゃーーーーーーー!!!!」」」
自らホヤの口の中に飛び込んでしまったボーボボ。
そこでホヤが一度口を閉じようとしていることに気付き、ヒノカミは慌てて白星を具現化する。
「引きずり出せ!!」
『シャァーーーーッ!!』
体を自在に伸ばせる白蛇はボーボボの体に巻き付きその身を縮める。
こちらに飛び出してくるボーボボの脚には首領パッチがしがみついていた。
首領パッチの脚には天の助がしがみついていた。
天の助の脚にはボーボボがしがみついていた。
そしてボーボボを掴んだ首領パッチを掴んだ天の助を掴んだボーボボを掴んだ首領パッチを掴んだ天の助を掴んだボーボボを掴んだ首領パッチを掴んだ天の助を掴んだボーボボを掴んだ首領パッチを掴んだ天の助を掴んだボーボボを掴んだ首領パッチを掴んだ天の助を掴んだボーボボを掴んだ首領パッチを掴んだ天の助を掴んだボーボボを掴んだ首領パッチを掴んだ天の助を掴んだ……
「「「増えたぁーーーーーーーーー!?!?!?!?!?」」」
『シャァァァァァァッ!?!?!?!?』
怯えた白星が思わず彼らを離しヒノカミの服の中に逃げ込む。
「感謝するぜヒノカミ……次はこちらが見せてやる!オレたちと、鼻毛真拳の力を!!
いくぞお前たち!!」
「「「「「「「「おう!!!」」」」」」」」
「鼻毛真拳奥義……!」
数珠つなぎに伸びた一団の先頭にいるボーボボが太い鼻毛を2本を長く伸ばしうねらせる。
そして彼らの全身を燃え盛る炎が包んだ。
「「「「「「「「バーニング・ドラゴン・ストライクーーーーーーーー!!!」」」」」」」」
(((あの状況からありえないほどカッコイイ技出てきたーーーー!?!?!?)))
うねる鼻毛を髭に見立て、炎の龍と化したボーボボたちがもう一度ホヤの口へと突っ込んで行く。
『ぐっ……うぉぉぉ!!』
しかしホヤは今度は受け止めきれず、龍に押し込まれ共に天へと昇っていく。
「これがホントの龍の滝登りだ!このまま花火にしてやるぜ!」
『ぐぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!』
しゅぽっ
(((ショボッ!!!!)))
「「「た~~~~まや~~~~~!!」」」
「「「!?!?!?」」」
ビュティたち3人は、いつの間にか浴衣姿で歓声を上げるボーボボと首領パッチと天の助を二度見した。
――――……
その後、ヒノカミは協力を申し出ることなくこの世界から立ち去ることにした。
彼らの様子を見れば深刻な様子もなく、助けは不要だと判断したからだ。
というか、ボーボボたち3人が負けるビジョンが見えない。
しかし自分が胃痛に喘ぐ未来だけはありありと見えた。
ビュティとヘッポコ丸は最後まで引き留めたそうにしていたが見ないふりをした。
「……はぁ、色んな世界があるもんじゃなぁ」
枠を飛び出し、世界の狭間に移動したヒノカミはようやく一息ついた。
記憶力に自信はあるが、そうでなくとも忘れることはないだろう。あんな濃い連中のことは。
「あ、これお土産ザマス」
「?あぁ、ご丁寧にどうも”っ!?」
ここから移動しようとしたところで聞こえた声に無意識に反応した後で、異常事態に気付いて思わずそちらを見る。
誰も、いない。次元の狭間に存在できる存在など、ヒノカミは自分以外に出会ったことはない。
だが彼女の手には見覚えのない箱が握られていた。ホールケーキ用のボックスによく似ている。
「………………」
ヒノカミは恐る恐る、箱を開く。
「やぁお嬢さん。一口いかが?」
「赫烏封月ぅ!!!スピリット・オブ・ファイアぁ!!!!」
『カァァァァァーー!!!』
『…………ーーーー!!!』
「ぎゃぁぁぁあああああ!!!!」
ケーキサイズの天の助を己の持ちうる限りの最大火力で焼却した後、ヒノカミは急いで別の世界へと逃げ込んだ。
無理だ……作者にこれ以上のハジケは出せねぇんだ……!
ということで、『ボボボーボ・ボーボボ』です。
頭の片隅でずっと考えてましたが短編に収めるのも苦しくて、でもやっぱりリクエストは応えたいよなと絞りに絞ってこの程度です。
どうか嗤ってやってください。
そしてできれば笑ってやってください。