『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

411 / 789
まだまだ次の外伝が出来上がらない。鋭意停滞中です。
単発で間をつながせていただきます。


第9話 円環の理

 

『全ての魔女を生まれる前に消し去りたい』

 

願いを叶える代償として魔法少女となり、魔女と戦う。

魔法少女が絶望に染まった時、魔女となる。

遥か昔より繰り返されてきた悲劇の連鎖。

 

その流れを断ち切るために、一人の少女は魔法少女となる代償と引き換えに願いを叫んだ。

それは時間や平行世界への干渉どころか因果律そのものへの反逆とも言える願い。ただの少女が叶えられる規模を超えている。

だがとある魔法少女の働きにより数多の世界の運命を束ね因果律の特異点となっていた少女は、その願いを叶えるだけの力も持ってしまっていた。

 

少女の願いにより全宇宙、全ての時間軸、数多の平行世界が書き換えられた。

『魔女』という存在が『神』となった少女によって浄化されていく。

 

少女は未来永劫に魔女を消滅させる『概念』となった。

もう始まりも終わりもない。

ありとあらゆる世界のどこにも少女がいたと言う記憶は残らない。

もう誰も少女を認識できず、干渉できない。

少女はこれより『死』すら生易しい永遠の孤独を過ごすことになる。

 

 

 

「よぅ」

 

「えっ!?」

 

はずだった。

だが虚無の空間に漂う少女の前に、一人の女性が現れた。

右肩に三つ脚の烏を乗せ左腕に白蛇を巻き付け、炎の光輪を背負った女性だ。

 

「貴女は……誰ですか?」

 

「ん~~、まぁ……『先輩』、かな」

 

「『先輩』?」

 

女性は少女の頭の上に優しく掌を乗せる。少女の記憶を読み取っていたのだ。

 

「……そう、か。

 近しい『(同類)』が生まれた気配を感じて来たんじゃが……もっと早くに気付いていれば、お主にまで辛い思いをさせずに済んだじゃろうな」

 

続いて女性は身をかがめ、少女の額に己の額を押し当てる。

 

「あ……!」

 

今度は女性が自分の記憶を少女に送ったのだ。

目の前の女性も少女と同じく、分不相応な願いを叶えようとして人間でなくなってしまった存在だった。

 

互いを理解し終えた二人は何もない空間に並んで座る。

 

「なぁ、お主ならまだ戻れるぞ?儂が力を尽くせば……」

 

「でもそうすると、私の願いもなかったことになりますよね?

 ……だったらいいんです。皆の祈りを絶望で終わらせたりなんかしない。

 最期まで笑顔でいてほしい。だから、私が皆の希望になるんです。

 貴女も、皆の希望を守るために今の姿を受け入れたんでしょう?」

 

「……あぁ。その通りじゃよ」

 

目の前の女性……『女神』は少女よりもはるかに長く生き、巨大な力を持っている。

過去や平行世界や因果を改変することもできる。

だがそのしわ寄せは生じてしまう。取りこぼされる者や世界が必ず出てくる。

女神は少女を救えても、少女が『救いたい』と願った者を代わりに救う力はなかった。

 

「それに、少しうれしいんです。

 さっきは強がっちゃったけど……やっぱり一人は寂しいから。

 貴女がいるなら私は一人にならないし、私がいるなら貴女も一人にならないから」

 

「一人でよかったんじゃよ。

 こんなものを背負うのは一人だけでいい。

 全て儂に押し付けてしまえばよかろう」

 

少女が元に戻らないにしても、女神ならその使命を肩代わりすることができる。

 

「いいえ。私が、救いたいんです。

 私も皆の夢と希望を叶える……貴女みたいな『ヒーロー』になってみたいです」

 

「げらげらげら。ならば『先輩』として、『後輩』に色々と教えてやらねばならぬな」

 

説得を諦めた女神はゆっくりと立ち上がり、つられて立ち上がる少女と正面から向き合う。

 

「……そうじゃな、どうせならもっと完璧に魔法少女たちを救えるようになってみるか?」

 

「本当ですか!?」

 

「じゃが儂のしごきは厳しいぞ?覚悟はいいか?」

 

「はい、先輩!!」

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

「おい、さやか!さやか!!」

 

「……無駄よ、彼女はもう『円環の理』に導かれてしまった。

 『魔法少女としての力と資格と記憶』は全て消えて……目を覚ましても、もう私たちのことは覚えていない」

 

「……チクショウッ!」

 

意識を失っているショートカットの少女と、その少女を抱え悔し涙を流すポニーテールの魔法少女。

二人の少女を悲し気に見つめる縦ロールの魔法少女。

 

「……まどか……っ」

 

だが少し離れたところで涙を流すロングヘアの魔法少女だけは、意識のない盟友ではない何者かの名前を呼んだ。

 

「……暁美さん?

 『まどか』って……誰?」

 

時間に関わる力を持つ魔法少女……神となった少女の『最高の友達』だけは、少女のことを覚えていた。

だが少女の痕跡は他のどこにも残っていなかった。

記録はもちろん、盟友である魔法少女たちの記憶にも。

少女の母親すらも少女のことを覚えていなかった。

 

少女の祈りにより世界から魔女は消えた。

だが人の世の呪いが全て消え失せたわけではない。別の形で人に仇なす化け物が生じる世界になっていた。

相変わらず、悲しみと憎しみを繰り返すばかりの救いようのない世界。

だが『最高の友達』が守ろうとしていた世界を守るため、今日もただ一人少女を覚えている魔法少女は戦い続ける。

かつてのような血なまぐさい重火器ではなく、憧れを真似た弓を持って。

矢をつがえ、弦を引く。

 

 

 

「……え?」

 

 

だが魔法少女が手を放す前に彼女の背後から無数の矢が降り注ぎ、魔獣を一掃した。

 

 

「久しぶり。……って、ほむらちゃんの時間だとまだ少ししか経ってないんだよね」

 

「!?」

 

もう聞こえないはずの聞きなれた声が聞こえて、魔法少女は思わず振り返る。

 

「私の中だと、もう何百年も経ってるの。

 『先輩』ってとっても厳しくて。

 でも『端末の作り方』とか『次元を超えての干渉の仕方』とか、色々教えてもらって」

 

「あ……!」

 

「なんとか結界の中で、少しの間だけなら、こうして動けるようになったの」

 

「ぅあ……あ、あぁ……っ!」

 

 

 

 

「また一緒に戦えるよ、ほむらちゃん」

 

「まどか……っ!」

 




『魔法少女まどかマギカ』より。

全12話、漫画にしても3巻でしかない本作は外伝とするには短くなりすぎます。
ラピュタは作者が無茶苦茶読み込んで考察しまくってたこともあって20話以上になりましたが、こちらは読み込みが甘い上に外伝やゲームまでカバーしきれないため、単発にせざるを得ませんでした。

序盤に乱入させてキュゥべぇを滅却して終わらせることもできるんですが、それでは『全ての魔女を救う』という原作の救済に及ばないため、最終回の後に介入することにしました。

『人から神になった存在』としてはるかに先輩であり、端末として引き続き世界に介入を続けていたヒノカミなら、まどかに『現世に介入する方法』を教えることが可能です。
ついでに不可死犠の力も受け取り使いこなせるようにすれば、多分『魔法少女としての力と引き換えに人間として再構成する』くらいもいけるはず。

ですが『過去や未来や別の世界』まで含めた改変はヒノカミではできません。やろうとしたら絶対どこかで問題が起きます。
その点ではヒノカミもまどかには及びません。
神となることと引き換えの一度限りの願いですから、及ばないのも当然かと。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。