『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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BLEACHやドラゴンボールは『アフターストーリー』だったと言うことにして、これを外伝一作目とします。


外伝1 鬼狩りの世界
第1話 ヒノカミさま


 

「お願いします、お願いします……!」

 

時は大正、文明開化の足音も未だに遠いとある山。

その中腹に住む炭焼きの一家の幼い長男坊が、夜の雪山の山頂にて一心不乱に祈りを捧げていた。

 

「どうか、父さんを助けてください……!」

 

彼が祈りを捧げる相手は仏ではなく神。

しかし近年異国より伝わる基督教の全能神ではなく、神道の神でもなく、土地神ですらない。

彼の生まれた一族が代々祈りを捧げる、彼ら一族以外には名前すら知られていない神。

祈りを捧げている当の少年ですらも、どのような神なのかまったく知らない。

姿も、神格も、権能も、一切不明。

だが唯一知るその神の名を口にして、ひたすらに祈り続けた。

 

 

 

「助けてください……ヒノカミさま!!」

 

 

「呼んだ?」

 

 

 

「…………へ?」

 

この場には、他に誰もいなかったはず。

しかし自分の物ではない声が聞こえて、竈門炭治郎という少年が頭を上げる。

自分を見下ろしていたのは小柄な女性だった。

男物の紅い着物を纏い、左腕に何重にも帯を巻き、鬼のお面を頭に付けた、黒髪の不思議な女性。

 

「……ヒノカミ、さま……?」

 

「そうじゃけど?」

 

はたから見れば、自分を『神さま』などと名乗る頭のおかしい女にしか見えないだろう。

しかし彼女は予兆すらなく突然この場所に現れた。

代々ヒノカミさまへと神楽を捧げる舞台である人里離れた雪山の山頂に。

そして人並み外れた彼の嗅覚は、女から漂う人間らしからぬ匂いを正確に察知した。

 

(暖かい……お日様の匂いだ……!)

 

「儂を呼んだのはお主ではないのか?というかここは?

 少年は誰から儂の名を……ん?んん~~~?」

 

周囲の様子と見知らぬ少年を見て、ようやくヒノカミも状況を察知する。

かつて巡った世界の知人かその関係者に呼ばれたかと思っていたが、おそらくこれは。

 

「ヒノカミさまぁっ!!」

 

「うわっと、すまん少年!多分儂は、『ヒノカミ』違いで!」

 

 

 

「父さんを、助けてください!」

 

「詳しく話せ」

 

「っ!?重い病気で、お医者様は『今夜が峠だ』と!」

 

「場所……いや方角は?」

 

「あっちです!」

 

炭治郎が指さした先に視界を飛ばす。

古びた小屋の中に、少年と似たような魂が複数。

その内一つが急激に弱まっている。まさに風前の灯。

 

「跳ぶぞ」

 

「へっ?」

 

ヒノカミは炭治郎の腕を掴み、その場から姿を消す。

何故だか知らないが、この世界の強度は妙に高い。

これなら強めの力が使える。

 

 

「……うわっ!?」

 

「炭治郎!?」

「「「お兄ちゃん!?」」」

 

大人の女性と小さな子供たちが声に反応して振り向く。

突然家の中に現れた一家の長男と、見知らぬ女性。

 

「ここは、家の中……!?」

 

ヒノカミは周囲を無視して布団に横たわる男性を直視する。

肉体はたった今活動を停止した。だが魂はまだそこにある。

彼女はこの世界が耐えられる限界の強さで白い炎を引き出した。

 

「……これなら、間に合うか!?」

 

「「「!?」」」

 

家族らを押しのけて駆け寄り、右腕に凝縮した白い炎を遺体に叩きこむ。

 

「「「お父さん!?」」」

 

突然父親に火を放たれ思わず縋りつこうとした子供たちは、白い炎が全く熱くないことに気付く。

そして父も燃えていない。

しかし冷たくなりかけていたその体には、確かに熱が注がれていた。

 

 

 

「…………ヒノカミ、さま?」

 

「「「お父さん!」」」

 

「……なんとか、なったか」

 

白い炎を消したヒノカミが数歩後退る。

咄嗟の事態とは言え、土足のまま畳の上に上がってしまった。

 

上半身を起こした男性、炭十郎は胸を押さえ自分の体を確かめる。

 

「私は、確かに、息が……痛みが……?」

 

「あなた……!」

 

「父ちゃん!!」

 

 

「蘇生ついでに病は消したが、虚弱体質はそのままじゃ。

 時間をかけて食事や運動で改善していけ」

 

「「「!?」」」

 

「……というかなんじゃその体は。

 なんで病弱なのに体力や筋力が図抜けておるんじゃ」

 

骨と筋肉はもちろん、特に肺と血管の強度が異常だ。

それ以外の内臓はボロボロで、死にかけの病人が持つにはあまりに不釣り合いだった。

 

 

「……ありがとうございますヒノカミさまぁ!!」

 

「どわぁっ!?」

 

「……ヒノカミさま!」

「ヒノカミさまだ!!」

 

目の前の女性が一族の崇めるヒノカミだと確信し、子供らが父を救ってくれた神様に抱き着いて感謝を叫ぶ。

炭治郎を筆頭に5人もの子供たちに取り付かれれば、小柄なヒノカミは飲み込まれて団子状態だ。

ちなみに母親の傍にはまだ幼い6人目がいる。

 

「こら、ヒノカミさまが困っていらっしゃるでしょう?」

 

「「「はぁ~~~い」」」

 

「ゲホッ……あ~、確かに儂は『ヒノカミ』ではあるんじゃが、偶然名前が同じだけの……ん?」

 

解放されたヒノカミは、そこで炭十郎が付けている耳飾りに気付く。

花札を模した、太陽が描かれた耳飾り。

 

 

 

「…………縁壱?」

 

「その名は!?……やはり貴方が、ヒノカミさま!!」

 

そういえばほんの少しだが、雰囲気とか髪型とか顔の痣とか、似ているような似ていないような。

 

「……ちょいと失礼」

 

ヒノカミが炭十郎の耳飾りに触れ、そこに宿る魂を完現術で引き出し、刻まれた記憶を探っていく。

ボロボロのフィルムを強引に再生するような、荒い映像が彼女の頭を駆け巡る。

遡る時が長くなるほど更に画像は荒くなっていく。

そして、およそ400年前。

 

 

 

「あ」

 

 

 

いた。見覚えのある人物が。

 

かつて自分が平行世界を超える能力を手に入れ、故郷を目指し旅を続けていた時。

戦国時代の日本に似た世界に辿り着き、故郷とは無関係と察して離れようとしたところで、凄まじい魂の叫びを感じ取った。

向かった先にあった小さな小屋の中にいたのは、血まみれの女の亡骸を抱える青年『継国縁壱』。

彼は無言で佇み、しかし彼の魂は張り裂けそうなほど痛々しい悲鳴を上げていた。

その青年の魂の力があまりに強かったためか、死後しばらく経っていたのに女の魂の残滓がまだ亡骸に残っていたので。

 

「蘇生……しちゃったんじゃよなぁ……!」

 

「?」

 

蘇った女が出産間近だったのでそのまま産婆代わりに彼らの子を取り上げ。

『この恩は忘れぬ』と何度も頭を下げる夫婦に、もうこの世界から去るのだから忘れてよいと告げて立ち去った。ただ別れ際に。

 

「しつこく尋ねられたんで、名乗ったなぁ……!」

 

「??」

 

その後彼は激動の日々を生き、とある夫婦と交流を持つことになり、彼らに自らの思い出を語り耳飾りを託したようだ。

 

「で、その一族の子孫が……!」

 

「???」

 

「つまり『ヒノカミさま』って……」

 

 

 

 

「……儂じゃん!!」

 

「ヒノカミさまはヒノカミさまですよね?」

 




外伝1作目は『鬼滅の刃』です。
当初は本編にて向かう予定の世界だったので、ここは欠かせないと。
ただしとんでもなく短縮します。
というか、ヒノカミにより短縮されます。
不幸も苦労も大体彼女が消し飛ばすので。
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