『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第12話 侍の国

 

辺境惑星『烙陽』。

太陽の光が差すことはなく、常に雨が降り続き、行く当てのないならず者共がたむろする宇宙の掃きだめ。

まさしくスラム街のような陰鬱な場所の、とある寂れたアパートの一室にて。

 

 

「あ”あ”あ”あ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁぁぁぁっ!?!?」

 

 

野太い悲鳴が大気を揺らした。

 

「うるさいねぇ神晃、朝から何騒いでんだい?」

 

「こっ、こっ、江華ぁぁぁぁぁぁっ!

 神楽ちゃんが!神楽ちゃんがぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

女は、男が震える腕で差し出した紙切れを受け取る。

 

 

『パピーとマミーへ。

 

 ちょっと地球へ行ってくるアル。

 ついでに家出した馬鹿兄貴も見つけてぶん殴って連れてくるヨ。

 お土産楽しみにしててネ♪』

 

 

「……ったく、あのお転婆は誰に似たんだか」

 

「どっ、どどどど、どうしようっ!

 神楽ちゃんが、俺たちの天使に何かあったらぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「騒ぐんじゃないよ。みっともないのはそのバーコードハゲだけにしな」

 

「みっともなくない!みっともなくないぞ!

 髪には神が宿るんだ!

 祈りを捧げ大切にすれば荒れ果てた大地にも命が芽吹くんだ!」

 

「やかましい」

 

江華は騒ぐ夫を無視して手紙を眺めしばらく考えると。

 

 

「……よし、行くか」

 

「行くって……まさか、地球にか!?」

 

「あぁ、ずっと昔に『行ってみよう』って話してただろ?いい機会じゃないか」

 

「だがお前、その体じゃ……!」

 

「少しくらいなら大丈夫だろ。

 ……でもそうだね。先生たちには話を通しておかなきゃか」

 

どうせ烙陽から出る宇宙船の便は当分先で、時間はある。

そして地球に辿り着くまでにも時間がかかり、往復するだけで1か月近くは浪費してしまう。

ならば不治の病を抱えた自分の面倒を見てくれている主治医にもしっかりと相談しておくべきだろう。

 

夫婦二人は揃って彼女の家を尋ねるが生憎と不在だった。

彼女は短期的に、そして頻繁に外出するので特に落胆もない。

同居している男性が代わりに応対し事情を聴いてくれたのだが。

 

「なるほど。では私も同行するとしましょう。

 そうすれば彼女もついてきてくれるはずです」

 

「いいのかい?アンタ、地球じゃお尋ね者なんだろ?」

 

「もう十年以上経っていますしね、多少はほとぼりも冷めたことでしょう。

 彼女が戻り次第私から説得しておきます」

 

「ありがとよぉ!松陽先生ぇぇ!!」

 

「いえいえ、乞われるがままに神楽ちゃんに地球の話をしてしまった負い目もありますので。

 それに、私も会いたくなりまして。……私の教え子たちにね」

 

松陽は数日後帰宅した同居人に相談し、彼女の同行を取り付けた。

4人が地球へ出発する頃には、神楽が家出してから1か月以上が経過していた。

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

地球。江戸は歌舞伎町。

立ち並ぶ家々の一つの二階には大きな看板が掲げられていた。

 

『万事屋 銀ちゃん』

 

金さえもらえば何でもやると言うがその評判は芳しくなく、今日も閑古鳥が鳴いている有様だ。

だがその日は客ではなく、主人の知人が訪ねて来ていた。

 

「お、お茶です……」

 

「「「「…………」」」」

 

テーブルを囲み真剣な顔で向き合う4人の男。

普段は死んだ目をしているふざけた雇い主と、慣れ合うことを嫌う彼の悪友たちが一堂に集う状況に、雇われ従業員として働く志村新八も『これはただ事ではない』と息を呑む。

 

彼等はただの一般人ではない。攘夷戦争に深く関わった英傑たちだ。

『白夜叉』坂田銀時。

『狂乱の貴公子』桂小太郎。

『鬼兵隊総督』高杉晋助。

『八咫烏』朧。

特に朧は幕府の闇を司る『天照院奈落』の首領だ。おいそれと動ける立場ではない。

 

 

「……こうしてテメェらが集まってくるってこたぁ、俺の気のせいじゃあねぇみてぇだな」

 

「「「あぁ」」」

 

銀時が口火を切り、男たちが応じる。

彼等はそれぞれ尋常でない悪寒を感じ取り、まさかと思った。

そして居場所がはっきりしている銀時の下に揃って訪れ偶然にも顔を合わせ、予感は確信へと変わった。

 

 

「……先生が、戻ってくる」

 

「「「…………」」」

 

 

彼等4人は『松下村塾』にて吉田松陽を師と仰いだ、彼の弟子だ。

だが当時の幕府が引き起こした『寛政の大獄』により彼は追われる身となり、彼の主治医でありもう一人の師とも呼べる女性と共に異星へと落ち延びることとなった。

自分たちを含めた教え子たちに、『正しき道を進め』と言葉を残して。

 

だが彼らはそれを師が望まぬと理解していて激動に身を投じた。

銀時、桂、高杉は攘夷戦争に参加し、討幕により師の安全を守り抜こうとした。

朧は古巣である奈落へと戻り、実績を積み地位を上げ、師への追手を食い止めようとした。

しかし攘夷志士は敗れ多くの仲間を失うことになり、朧は腐った幕府の手先となって数え切れないほどの非道に手を染めることになった。

 

そして今の彼等は。

プータロー、テロリスト、テロリスト、悪の手先である。

 

師が帰ってきたら、殺される。

 

 

ガタッ

 

「お、おおお、落ち着け!落ち着いてドラえもんを探せ!」

 

「ちょっ、いきなり何してんすか銀さん!

 アンタの子孫がドラえもんを送り出すはずないでしょ!?

 子孫が生まれるかもわかんねーくせに!」

 

「何をしている銀時!『タイムマシン』など探してどうする!?

 この状況、必要なのは『どこでもドア』に決まっておるだろうが!

 江戸中の扉を調べるぞ!どこかに紛れ込んでいるやもしれぬ!!」

 

「チッ、馬鹿共が。調べるべきは公衆電話に決まってんだろ。

 『もしもボックス』だ。『もしもボックス』さえあればなんだってできんだよ」

 

「馬鹿はテメーらもだろうがァ!」

 

ガラッ

 

「寝てるところにやかましーアル!

 睡眠不足はレディーの天敵ネ!」

 

「あっ、ごめんね、神楽ちゃ……」

 

「おぉ!来てくれたのかドラえもん!」

 

「目ぇ腐ってんですかァ!?これのどこがドラえもんだァ!」

 

「何を言う!押し入れで眠ると言えばドラえもんだろう!?」

 

「腐ってんのは頭かァ!!」

 

「ドラえもぉ~~ん!何か道具出してよぉ~~!」(高い声)

 

 

 

「『通り抜けフープ』ぅぅぅぅ!!!」

 

「ぐぼぁぁぁぁっ!!」

 

ドゴォッ!

 

「物理的に壁貫いただけじゃねーーーかァァァ!

 野郎の壁尻なんざどこに需要があんだよ!!」

 

 

「……往生際が悪いぞ。お前たち」

 

「朧さん!やっぱり貴方だけはまとも……何すかその白装束は」

 

「武士道とは、死ぬことと見つけたりィ!!」

 

ブシャァァァッ!

 

「アンタは往生際良すぎんだろォ!

 つーかアンタ多少の傷はすぐ治んでしょ!?

 無駄に床汚しただけじゃねーーーかァァ!!!」

 

 

「やかましィィィィ!

 騒ぐ元気があンならせっせと働いて家賃払いなごく潰しがァァァァ!」

 

「すんまっせぇーーーん!

 あーもう収拾つかねぇよ!ツッコミきれるかァ!!

 誰かぁぁぁ!助けてくださぁぁぁぁぁぁい!!」

 

 

少年の叫びが天へと届き、ぼんくら4人衆の頭に死神の拳骨が振り下ろされたのは、およそ半刻後のことだった。

 




『銀魂』より。

本文中では名前を出していませんが、ヒノカミはしっかり来訪しています。
幕府の追手から逃げる途中の吉田松陽と朧の前に現れ彼等の逃避行を手助けし、その後も松下村塾で松陽と共に教鞭を取っていました。
朧が敵側にいないこともあって幕府の手先などに後れを取るはずもなく、しかしお尋ね者となってしまったため松陽は生徒らを巻き込まぬよう地球を離れることとなります。
アルタナで生きる松陽が地球を長く離れることなどできませんが無限にエネルギーを供給できるヒノカミがいれば問題はなく、同じ理由で落ち延びた先にいた江華も延命することができます。

作中最強の人間は松陽こと虚でしょうが、主にギャグ寄りな話でめちゃくちゃな宇宙生物が闊歩する銀魂の世界だとヒノカミの出力上限はとんでもなく高いです。なので大体の悲劇は力技で解決できてしまう。
そして何より『ここが創作の世界』だと認識している銀時達のメタ的な振る舞いはヒノカミにとってのタブー。
よってこの作品を物語にはできず、短編に抑え込む形となりました。
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