『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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とんでもなく評判が悪かったので少しだけ内容を変え再投稿しました。
ヒノカミの言動が幾分マイルドになっていますが大筋は同じままです。


第13話 竜の騎士 ※再投稿

 

「ソアラーーーーーーっ!」

 

処刑台に縛り付けられていた男は容易に縄を引きちぎり、自らの身を挺して魔法を受けた女性を抱きかかえる。

『魔物に通じていた』という汚名を着せられても、ここアルキード王国の王女。

そんな相手に致命の魔法を放ってしまった国仕えの魔導士たちは怯え後ずさる。

 

「人間を恨まないで……みんな臆病なだけなのよ……!」

 

「よせっ!もうしゃべるな!」

 

「お願い……ディーノを探して……。

 二人で……平和に……」

 

ソアラは最期まで夫バランと、奪われた我が子ディーノの身を案じ、そのまま息絶えた。

 

 

「ソアラぁーーーーーーっ!!!」

 

 

美しく、優しく、気高い女性だった。だと言うのに。

 

「愚か者め……魔物を庇って死ぬとは……!恥をさらしおって!!」

 

アルキード国王は実の娘の死を悼むどころか彼女を侮蔑した。

 

「……愚か者、だと……!?」

 

亡骸を抱えたバランは怒りに震える。

愚かなのは誰か。こいつら人間か、いや使命だからと盲目的に人間なんぞを守ろうとしていた己自身か。

怒りで失われそうになる理性を必死に押しとどめ、バランは渾身の想いを込めて天へと叫ぶ。

 

 

 

 

「『ヒノカミ』ぃーーーーーーーーっ!!!!!」

 

 

 

 

「なんじゃい騒々しい」

 

突如としてその場に現れた少女が気の抜けた声を出す。

 

「……って、旅立ってからまだ数年しか経っておらんではないか!

 あんまり気軽に儂に頼るなと忠告……」

 

少女は憤怒の表情で涙を流すバランと、彼が優しく抱きかかえる女性の亡骸と、この場を取り囲む兵士たちを見渡した。

 

「頼む!」

 

「承った」

 

即座に状況を把握したヒノカミは白い炎を生み出しバランへと浴びせる。

必然的に彼が抱える亡骸も炎に包まれることになり、そして炎が消えた後には。

 

 

「……?あ、あなた……?」

 

「ソアラっ!!」

 

 

確かに息絶えていたはずの人間が、息を吹き返した。

魔法の直撃を受け焼けただれていた背中にはシミの一つもない。

 

パンッ

 

続けて少女が柏手を打つと彼女の目の前に大きな布が現れ、それをソアラの背中を隠すように被せる。

 

 

「お、おぉぉ……!なんと凄まじき癒しの力!

 衛兵!その小娘を捕らえるのだっ!」

 

 

「「「は、ははぁっ!!」」」

 

目の前の現実離れした状況に困惑していた兵士たちが、国王の命令を受けて一斉に武器を構える。

 

「……ヒノカミ。ソアラを頼む」

 

「手早く済ませぃ」

 

「え、えっ?」

 

「少し目をつぶって耳を塞いでおれ。すぐに終わる」

 

バランは抱えていたソアラを少女に預け、遠ざかる彼女らを背に前へと進む。

 

バランの額に竜の紋章が宿った。

数年前、魔界にて異界の鬼神と共に冥竜王ヴェルザーを打倒した竜の騎士が、地上界にて再びその力を解放する。

 

 

 

 

「潰す」

 

 

 

 

この日、アルキード王国は消滅した。そこに住まう人間たちは皆殺しとなった。

心優しいソアラを慮って、鬼神は人間たちを全て蘇生してやった。しかしそれ以上の手は貸さなかった。

だが城は跡形もなく崩れ去り街は焦土と化し、人以外のすべてが灰塵となり、国としての体裁を保つことはできなくなった。

王族も貴族も平民も区別なく、国民全てが難民となり方々へと散っていった。

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

バランたちはアルキード国を滅ぼした後、国王により異国へと送り飛ばされた我が子ディーノを追いかけたが、運悪く船が難破していたらしい。

一度会ったことがある人物なら世界の果てにいてもヒノカミが感知できるが彼女はディーノと面識がなく、おまけに相手はまだ赤ん坊なので気配が弱すぎる。よって生死は不明。

だが例え死んでいたとしても遺体が見つかればヒノカミなら蘇生が叶うかもしれない。

両親の情報はすでに十分であり、この世界の強度ならば遺骨ですら可能性がある。

船の残骸を調べたが見つからなかったので、一行は一縷の望みをかけて周辺海域だけでなく国々や島々を探し回る。

 

だがディーノの手がかりすら見つからず、一年が経過してしまった。

 

「デルムリン島?」

 

「あぁ。魔王の支配から逃れた魔物たちが穏やかに暮らしている島らしい。

 一先ずそこに居を構えるのはどうか?」

 

情報を仕入れて来たヒノカミがバラン夫妻に提案する。

バランはかろうじて自制できているが人間という種族に対する嫌悪感が拭いきれず、ソアラは息子が見つからぬ心労と慣れない旅の日々で憔悴してしまっている。

それに旅の過程で知り合い同行者となった青年『ラーハルト』は魔族と人間のハーフ。

人前では常に姿と正体を隠さねばならず、一時も落ち着く暇がない。

 

「本当にそのような島があるのでしょうか?」

 

「所詮は噂、実情は不明じゃが、島があるのは間違いないらしい。

 まず儂が一人で向かい調べてくる。

 問題なさそうならお主らを呼び寄せよう」

 

「だが、一刻も早くディーノを……!」

 

「その前にお主らが倒れてどうする。

 諦めるわけではない。長期戦を覚悟するということじゃ」

 

「……わかった。だが私も同行させてもらう。

 本当にソアラの安住の地となるのか、この目で確かめねば」

 

「よかろう。ラーハルト、ソアラを頼む。数時間で戻るでの」

 

「お任せください。バラン様、ヒノカミ様」

 

二人を宿に残し、バランとヒノカミはデルムリン島へと飛翔する。

 

 

 

「「………………」」

 

「ど、どちら様かの?……これ、ダイ!引っ張るな!

 今お客人が来とるから!」

 

「キャッキャッ!」

 

 

 

「おったぁーーーーーーーーっ!!!!」

「ディーーーーーノぉーーーーーーー!!!!」

 

 

 

二人はデルムリン島のモンスターたちのまとめ役である鬼面道士のブラスへと事情を説明し、島へと移り住む許可を得た。

そしてバラン夫婦はダイと名を変えた息子と仲睦まじく暮らし始めた。ラーハルトも一緒だ。

 

だがヒノカミは島に定住しなかった。別の世界へと旅立ったのではない。

数年前に『魔王ハドラー』とかいう小物が地上界で暴れまわったせいで余計な迫害が起きていることを、バランやラーハルトを見て把握したからだ。

人間たちが怯えるのは分かる。

だが種族ではなく魂で判断するヒノカミは、ただ操られていた魔物や本当に何も関わっていない魔族まで追い立てるのは見過ごせなかった。

彼女は世界中を飛び回り、生来の気性は大人しいモンスターや魔族、人間だが人間嫌いになってしまった者たちに声をかけ、デルムリン島への移住を提案。

更に住人の増加に合わせて島の環境を整え、強固な結界を設置し、思いつく限りの安全対策を実施。

 

そして時は流れ、およそ10年後。

デルムリン島は邪な者が近づくことのできない聖域へと変貌していた。

するとまるで示し合わせたかのように様々な事件がデルムリン島に襲い掛かった。

 

大人しく希少なモンスターを捕らえ売りさばこうと考えた不届きものがやってきた。結界に阻まれて上陸できず海の上で立ち往生してたけど。

神官の家系でもあるパプニカ王国の王女レオナとやらが儀式のために聖なる船とやらで押しかけて来た。その船の所有者である賢者と付き添いの司教が結界から邪悪認定されて船から放り出されてたけど。

魔王ハドラーが復活し世界中のモンスターが邪悪な気を受けて暴れまわり始めた。結界の中にいたせいで外が騒動になっていることすら気付かなかったけど。

ダイという素質ある子供の噂を聞きつけた勇者家庭教師を自称するアバンという男が教え子であるポップという少年と共にやってきた。ダイの教師役の面子が濃すぎて教えることがほとんどなさそうだったけど。

何しろそのラインナップは父であり竜の騎士であるバランと、異界より来訪した鬼神ヒノカミと。

 

「ま、まさか貴方がここに移住していたとは……!」

 

「くっくっく、元気そうじゃねぇか。勇者アバンよぉ」

 

かつてアバンと共に魔王ハドラーと戦ったパーティーメンバーの一人『大賢者』マトリフである。

その功績と実力を買われてすり寄ってくる権力者たちに愛想を尽かして隠居していたところをヒノカミが見つけて勧誘したら二つ返事だった。

さらにダイの持ってる武器は、バランの持つ神剣に惹かれ移住を決めた魔族の鍛冶師『伝説の名工』ロン・ベルクの傑作だったりする。

もう一分の隙もない完璧な布陣である。

 

そしてアバンを通じてようやく魔王ハドラーの復活を把握したデルムリン島の強者たち。

アバンは人類の支配を企むハドラー討伐の為の助力を求めたが。

 

「私はもう人間を守るつもりはない」

「魔族やモンスターを無差別に迫害しとった連中に手ぇ貸すのもなぁ」

「いつまでもジジィを当てにすんじゃねぇよ」

「オレは魔族だからな。守ってやった連中に後ろから刺されでもしたらかなわん」

 

彼等は人間を嫌っているから魔物たちの島に住んでいるのだ。人間たちの国家の危機は他人事である。

人間のソアラは悲しそうに瞼を伏せるがバランの受けた仕打ちを思えば口を挟めず、心優しいダイは胸を痛めたが頑なな父に反抗してまで人間を守ろうとするほど人間というものを知らない。

 

「ん-、どうしてもと言うのなら、儂らでハドラーとやらを討ち取ってやっても構わぬぞ?」

 

「本当ですか!?」

 

「……確かに。大恩あるブラス老やこの島の住民たちを操り非道を行わせていたなら私にとっても許せぬ敵。

 この剣を振るう理由には十分か」

 

「ありがたい!ご協力感謝いたします!」

 

「ふざけるな!誰が人間に手を貸すなどと言った!?

 あの程度の小物、私だけで十分だ!!」

 

「な……!」

 

「バランの言う通りじゃな。それに儂らが討つのはハドラーのみ。

 残る敵の討伐と復興くらいは自力でやれ。

 ま、圧倒的強者に守ってもらわねば種の存続ができぬようなら滅びるのが遅いか早いかだけじゃろうがな」

 

アバンは困惑する。既に被害が出ている以上、魔王が倒されるのは一刻も早い方がいい。

だが人類ではないと公言する者たちの手によって魔王が討ち取られたと知れば、各国の王族はどう動くだろうか。

事実をもみ消し自らの手柄とするか、賞賛と歓待で迎え自国に取り込もうとするか。

人間嫌いが激しいバランとやらが見過ごすとも受け入れるとも思えない。

最悪の場合は亀裂が決定的になり、今度は彼が魔王以上の脅威として人類の前に立ちはだかる可能性がある。

そうなれば今度こそ人類は終わりだ。

 

「わかりました……まずは、我等人間だけで立ち向かおうと思います。

 ですが、一つお願いしてもよろしいでしょうか?」

 

「「?」」

 

 

「ダイくんをここまで鍛え上げたというお二人の実力……是非私にも披露していただきたく」

 

 

「……フン、人間たちの伝承にある『伝説の勇者』とは我ら竜の騎士のこと。

 その私相手によくぞ吠えた!貴様が勇者を名乗るに相応しい男か確かめてやろう!」

 

「げっげっげっげ……やる気と向上心がある奴は大好物じゃぞ?」

 

アバンは急いで見込み有る次代を育てるのではなく、この島で圧倒的強者を相手に自らを高めることを選択した。

バランもヒノカミも、信念と覚悟を持つ人間は嫌いではない。三日もあればアバンはまさに刮目して見ねばならぬほどの高みへと至るだろう。

置いてけぼりになったアバンの弟子である魔法使いポップは、マトリフに目を付けられ鬼のシゴキを受けることになった。

 

そう、三日。アバンがデルムリン島で修行を始めて三日後。

 

 

復活した魔王ハドラーが己を倒したアバンに復讐するため、デルムリン島を襲撃してきたのだ。

 

 

 

 

 

 

島の結界を無理やり突き破ろうとした反動で致命傷を受け意識を失ったけど。

 

 

 

 

 

「ハ、ハドラー……魔王ハドラーが、こんなあっさり……!?」

 

「こいつらと暮らしてっと色々バカんなるんだよなぁ」

 

「……ヒノカミ。島の結界は誰を想定して構築した?」

 

「ヴェルザーじゃけど?」

 

「…………」

 

島の砂浜の上で転がっているハドラーは黒焦げになってはいるが原型をとどめかろうじてまだ息をしている。

バランは小物と判断していたハドラーへの評価を高く改めた。

冥竜王ヴェルザーとはそれほどの強敵なのだ。バラン一人ならば勝利できたか怪しいほどに。

 

「で?わざわざ出向いてくれたことじゃし、首刎ねて終わりにするか?」

 

「え?……いや、まぁ……そうなんですが……」

 

かつて死闘を演じた仇敵との再戦に備えていたというのに、こんな形で終わりを迎えていいものかと、流石の勇者アバンも躊躇してしまう。

 

 

 

「ぐ……くくく……オレを倒した程度でいい気になるなよ……!」

 

 

「「「!?」」」

 

「お、もう目を覚ましおった。頑丈じゃの」

 

「教えてやろう……オレは魔王ではない……!

 今のオレは『大魔王』様の率いる魔王軍を束ねる、魔軍司令……!」

 

「なっ!?『大魔王』だと!?」

 

「いかにも!」

 

ボロボロの体で勇ましく立ち上がったハドラーは高らかに宣言する。

 

 

 

「そうだ、貴様に敗れ死の世界を彷徨っていたオレを蘇生してくださり、どころかより強靭な肉体を与えてくださった魔界の神!

 それが『大魔王バーン』様だ!!」

 

 

 

「『大魔王』……『バーン』…………!?」

 

仲間たちと力を合わせようやく倒した魔王ハドラーをも従える強者の存在を明かされ、流石の勇者アバンも目を見開き息を呑む。

 

 

 

 

「バーン?確かヴェルザーと小競り合いしとった奴がそんな名前ではなかったか?」

 

「あぁ、そうだな。大人しかったので見逃すことにした奴だ」

 

 

 

 

「「「「「………………へ?」」」」」

 

 

 

 

「儂らが邪魔な政敵を排除するのを待っていたか。

 で、そろそろ大丈夫かと重い腰を上げたと」

 

「通例なら既に竜の騎士はマザードラゴンの下へ帰っている頃だからな。

 実際にお前も一度は別の世界に旅立っていたし、アルキードを離れた後は大規模な活動は避けていた。

 我々が不在と誤認してもおかしくはあるまい」

 

バランとヒノカミは全く怯えることなく、のんきな会話を続けている。

というか二人の会話を聞いてアバンやハドラーが怯える始末だ。

 

「ふむ……魔界から地上界への侵攻となればちと話が変わるの」

 

「うむ。人間には荷が重かろう。地上界の魔王程度とはわけが違う」

 

「っ!?魔王『程度』だとっ!?貴様らぁ!!………っ!?」

 

コケにされたと理解し激昂した『元魔王』ハドラーが雄叫びを上げるが二人は耳すら貸しておらず、そして即座に二人が放つ力の奔流に呑まれ二の句が繋げなくなる。

 

 

「どうやら、人間に任せて待つ理由はなさそうじゃの。

 ヴェルザーに並ぶ強者となれば、時間を与えれば何をしでかすかわからんし」

 

「魔界の者が地上界を荒らすとなれば、竜の騎士としても見過ごせぬな」

 

 

バランは背中の神剣に手を伸ばし、ヒノカミは鬼の仮面を取り出す。

 

 

 

 

「「潰すか」」

 




『ダイの大冒険』より。

ヒノカミは神繋がりでマザードラゴンから要請を受け、バランに協力し共にヴェルザーと戦いました。
彼女は世界の強度でしか縛られておらず、下界でもマザードラゴン以上の力を問題なく振るうことができますので、バーンであろうと敵ではありません。
と言うか、赫烏封月があるのでミストバーンごとバーンの体を切り裂いて終わりにしちゃうんだよなぁ。ヴェルザーが死んでるからキルバーンも存在しないし。

ちなみに、この話のヒノカミは行動指針が他と決定的に違います。
それはこの世界が『神が干渉することが許された世界』であり『ヒノカミを縛る枷が外れている』ということです。
この世界への人間たちへの好感度が低いこともあって『この世界の人に任せる』という選択も取りません。
制限も何もないヒノカミは、これくらいに危険で傲慢な存在になります。

本作の再投稿に伴い、別ルート案の説明も加筆修正しています。
詳細が気になる方はそちらを参照ください。
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