『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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本作の無惨が炭治郎を警戒するのはこのタイミング。
既に柱並みの炭治郎とカナヲは強すぎて、普通の鬼相手では型を使う機会すらありませんでした。
しかし流石に下弦の鬼、累が相手ではヒノカミ神楽を使わざるを得ず。
いきなり見せたそれがしかもほぼ完成形なので、無惨の警戒心が一気に原作以上にまで引きあがります。


第8話

 

最終選別を終えたばかりの最下級の隊士が、下弦とはいえ十二鬼月を討ち取る。

これは長い鬼殺隊の歴史を紐解いても相当な快挙である。

そして二人の新人を推薦した者、すなわち師と見なされているのは女ながらに鬼殺隊最強の柱となった『花柱』胡蝶カナエと、奇跡の術を身に着け傷ついた隊士を癒す鬼殺隊一の名医胡蝶しのぶ。

特にしのぶは、呪いとも言える病状により死に瀕していた鬼殺隊当主の産屋敷を治療し延命させるという偉業も成し遂げている。

しかも二人の新人の内少年の方はしのぶと同じく癒しの奇跡と、失われたとされる『始まりの呼吸』を操るという。

鬼殺隊全体が称えるのも無理はない。

だがそれでも。

 

「説得は、できんかったか」

 

「ごめんなさい……」

 

「責めているわけではない。

 柱たちの怒りが想像以上だったということよ。

 ……これは何らか荒療治が必要そうじゃの」

 

産屋敷はカナエたち4人の成果がヒノカミの恩恵であると理解している。

彼も無惨に対しては底知れぬ怒りを秘めているが鬼という種族に対してではない。

故に彼は鬼殺隊とヒノカミで協力体制を築ければと考えていたそうだ。

そして今回の功績を持って柱たちを説得できないかと、先日行われた柱合会議に炭治郎とカナヲも招いてヒノカミの存在をほのめかしたらしい。

 

無惨打倒のため、カナエらに手を貸してくれている鬼神。

無惨とは無関係であることも、人喰いをしないこともしっかりと伝えた。

会議に参加していたカナエも懸命に言葉を尽くした。

だがそれでも、柱たちは鬼を受け入れられなかったのだ。

暴言を吐く者もいて、怒った炭治郎が頭突きをかまし大喧嘩になったらしい。

 

しかしまったく成果が無かったわけではない。

柱は自分たちや貴重な隊士が鬼に関わり危険に晒されることに反発したので、産屋敷はその言動を逆手に取って『少し前まで鬼殺隊にいなかった新人ならば隊に大きな影響はあるまい』と話をすり替え、ヒノカミに預けることを認めさせた。

 

「余計な先入観が少ない者の方が色々とやりやすいのも事実。

 そう思えばこれはこれで好都合ではあるの。

 して、その候補は?」

 

「カナヲたちの同期は、他に3人。

 内二人は那田蜘蛛山の任務でも一緒に行動していたそうよ」

 

そしてその任務で負傷し、今は蝶屋敷に入院しているらしい。

炭治郎とカナヲも今はそちらで待機しているとか。

 

「……ん?炭治郎らを含めてもたったの5人?

 もっといるのではないか?」

 

「……他の子たちは最終選別でカナヲたちを見て、自信喪失したらしいわ。

 ほとんど隠に転向しちゃってるのよ」

 

「それくらいで折れるようなら、参加させても無駄じゃろうな」

 

当主の許可を取ったも同然なのでヒノカミは迎えに来たカナエと共に堂々と蝶屋敷へと転移する。

そこでしのぶ、炭治郎、カナヲと合流。

噂の二人の新人の顔を見に行こうと廊下を歩く。

 

「して、その二人はどんな奴なんじゃ?

 見どころがない者や、悪意や敵意が強い者に力は渡せんぞ?」

 

「善逸は優しくて、伊之助は勇敢な奴なんです!

 二人ならきっと凄い剣士になると思います!」

 

「ふむ……カナヲ?」

 

「前者は『雷の呼吸』、後者は『獣の呼吸』という我流の呼吸を使います。

 二人とも実力と素質は高いと思いますが……性格は……」

 

善逸は小心者で、女好きで、ふとしたきっかけで喚き出し泣き叫ぶ。

道端で一般人の女の子に泣きすがって求婚するという無様な姿を晒していたところで炭治郎たちと出くわした。

彼は最終選別にて炭治郎を彼女連れと見なして敵視しており、再会した際にも二人で行動していたため嫉妬の炎を燃やして斬りかかって来た。

即座に二人に鎮圧されたが、その強さを頼りにして同行するようになった。

 

伊之助は乱暴者で、猪突猛進で、強者との戦いを好む。

そもそも鬼殺隊の関係者ではなく、偶然出会った隊士に力比べを挑んで情報と日輪刀を奪い、勝手に最終選別に参加し生き残ったという異色の経歴を持つ。

善逸と共に向かった任務先の館に先んじて突入しており、出会った炭治郎たちが強者と知って競い合い強くなるために強引についてきた。

 

こう羅列すると揃って問題児だが、確かに那田蜘蛛山での彼らの活躍は新人隊士としては破格だった。

炭治郎が負傷した隊士の命を救うために治療術を多用し疲弊していたこともあり、カナヲだけでは十二鬼月が率いる鬼の集団に対処できなかった。

善逸と伊之助がいなければ、犠牲者はもっともっと多かったはずだ。

 

「着きましたよ、ここです」

 

そしてしのぶが二人のいる病室の扉を開き、5人が部屋の中を覗き込む。

 

 

 

「はい、あーーーん」

 

「あ~~~~~ん♡。

 ……う~~~ん!禰豆子ちゃんが飲ませてくれたら、苦いお薬もお砂糖みたいにおいしいよぉ~~~♡」

 

「早く元気になってくださいねー?」

 

「うん!でも残念だなぁ~~~。

 元気になったら禰豆子ちゃんに会えなくなっちゃうからなぁ~~~」

 

「……あ、善逸さんまた!

 禰豆子さんは休憩中なんです!

 お手を煩わせないでください!」

 

「あはは、大丈夫ですよ。

 体が疲れてるわけじゃないですし。

 ちょっと炎が使えなくなってるだけですから」

 

「そうやって甘やかすから……!

 善逸さんも伊之助さんを見習って、大人しくしててください!」

 

「……ゴメンネ……弱クッテ」

 

「……いえ、流石にここまでとは言いませんが!

 しっかりして伊之助さん!」

 

 

 

顔を見に来たつもりが、片方は顔が見えなかった。

善逸は禰豆子にデレデレしており、伊之助はイノシシの被り物をしているせいで表情は読めないがとんでもなく落ち込んでいた。

 

「……二人とも私や禰豆子ちゃんの炎ならそう時間もかからず治せるんですが、二人以上の重傷者が多くて。

 特に体を蜘蛛に変えられてしまった隊士なんかもいて、術での治療はそちらを優先しています。

 ……ですが彼らは御覧の通り、中々の問題児で。

 先に治療して退院させた方が良いかと検討していたところです」

 

禰豆子は治癒術者としての適性が非常に高かった。

蝶屋敷で看護師として働き傷ついた隊士たちと接する内に『自分にも癒しの力があれば』とこぼすようになったので、試しに『不可死犠』の種火を与えたところ、あっさりと習得してしまったのだ。

流石にヒノカミには遠く及ばないが、応急処置しかできない炭治郎と違い彼女はしのぶと同じく再生治療まで行うことができる。

以降、彼女は蝶屋敷に欠かせない戦力となった。

彼女に救われた隊士は多く、彼女の美しさと愛らしさもあって一部では神の使いだとか巫女様だとか崇拝されてたりする。

確かに神から学んだ力ではあるのだが、それは彼らが嫌う鬼神のものである。

 

「面白い子たちねぇ~~」

 

「あれが、例の二人で間違いないか?」

 

「は、はい……」

「やっぱり、性格が……」

 

「……ふむ」

 

善逸たちは未だ室内を覗くヒノカミたちに気付いていないらしい。

そこで彼女は仮面を被り、鬼の姿となって禰豆子たちの後ろ、二人の正面に転移する。

 

 

「…………ピギャーーーーーーーーーッ!!!」

「…………オニ?」

 

「げっげっげっげ……!」

 

「ね、禰豆子ちゃん逃げるんだーーっ!

 俺のことはいいから早くーーーーっ!!」

 

「オニ、オニ……ウガァァァァァア!

 勝負!勝負ゥ!!!……ゲホッ、ウェホッ!!」

 

恐慌状態に陥る善逸と暴走しかける伊之助に対し。

 

「あ、ヒノカミさま」

 

「……驚かさないでください!

 彼らはけが人なんですよ!?まったくもう!」

 

振り向いた禰豆子とアオイの反応は呑気なものだった。

 

「……げらげらげら、すまんすまん!」

 

鎧を解除したヒノカミは、続けて白い炎を善逸と伊之助に浴びせる。

 

「……へ?これって、禰豆子ちゃんと同じ?」

 

「ゲホッ、エホッ……あ?あぁ!?」

 

善逸は怯えながらも禰豆子を守ろうとした。

伊之助は戦おうとしたが、満ちていたのは敵意ではなく闘志だった。

 

「気に入った。お主ら儂の弟子となる気はないか?

 愛する者を守る力を、最強へと至る力を、手に入れたくはないか?」

 

「「へ?」」

 

「……悪党の誘い文句みたいねぇ」

 

「そういうところは鬼らしいですよね、あなたは」

 

「げらげらげら」

 

鬼の仮面を顔から外し、ヒノカミは不敵に笑った。

 

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