『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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一応この世界の話の完結まで書けたので、2回投稿にします。


第10話 産屋敷耀哉

 

鬼殺隊の新人3人が雲取山で修業を始めておよそ一カ月。

善逸と伊之助も天神武装を発動できるようになり、合わせて習得した全集中の呼吸・常中との併用により目に見えて成長している。

玄弥は全集中の呼吸を習得できずにいるが天神武装の出力と持続時間が大きく伸びており、時間制限付きなら善逸たちよりも強い。

炭治郎の教え方は激烈に下手だが、カナヲやしのぶの指導は的確。

彼らの疲労や怪我は禰豆子とアオイが付きっ切りで対応してくれている。

これならば残る5ヵ月、自分が付き添わずとも問題ないと判断した。

 

 

「お初にお目にかかります、ヒノカミさま。

 ……ようやくお会いできました」

 

「顔見せが遅れたこと、申し訳ない。

 色々と便宜を図ってもらっているというのにな」

 

「謝罪せねばならぬのは私どもの方です。

 私の子供たちが、度重なるご無礼を」

 

「くけけけけ。まぁ目の敵にされたところで儂の敵ではないからな」

 

鬼殺隊当主『産屋敷耀哉』。

互いに存在を知って4年以上経つと言うのに、顔を合わせたのはこれが初めてだった。

何しろ彼は鬼殺隊隊士たちの敬愛する『お館様』でありヒノカミは隊士たちが憎む『鬼』。

隠れて鬼と手を組んでいるなどと噂が立てばどれほどの騒動になることか。

この会合も、結局受け入れられなかったとは言えヒノカミの存在を柱たちに明かしたからこそようやく叶ったこと。

それでも念入りに人払いを済ませているが。

 

「……しかし、それが呪いとやらか?随分と酷いな」

 

「ははは、これでも随分と楽になった方です。

 しのぶの術と、彼女にそれを伝えてくださった貴女には脚を向けて眠れない」

 

「……『不可死犠』が、効いたんじゃよな?」

 

そう尋ねて、ヒノカミは産屋敷の爛れた顔の皮膚にそっと触れる。

 

「……やはりこれは『神罰』などではないな」

 

「なんですって……!?」

 

『不可死犠』はどちらかと言えば聖なる属性を含んだ『魔を滅する』力だ。

もしこれが神による呪いなら、しのぶの術では力が及ばず弾かれるはず。

最上位の神であるヒノカミの術なら話は別だが。

 

ヒノカミは産屋敷の体や魂を念入りに観察していく。

 

「なるほど、これは神からではなく無惨からの呪いじゃな」

 

「!?」

 

「奴は己の配下……血を分けた鬼が反抗心を抱くことすら許さぬと聞く。

 遠縁であるお主らには奴の『血の支配』とも呼べる力がわずかながら及んでおるのじゃろう。

 向けられた強い殺意に対する無意識的なもので、無惨自身はあずかり知らぬであろうが」

 

「……そう、ですか」

 

産屋敷は弱った体で強く拳を握りしめ、俯いて震えていた。

 

平安時代の貴族であった無惨は産屋敷家とは親戚であり、産屋敷家は無惨のような怪物を産み出してしまったせいで神々から呪いを受けたと聞いている。

よって無惨を倒さねばならないと、遠い昔に神職の者からお告げを受け、一族はそれに従ってきたそうだ。

『無惨を倒せば解決する』という点では間違いではない。

だが自分や先祖が苦しんできたのもすべては無惨の仕業だったと知り、穏やかな産屋敷でも激しい怒りを抑えられずにいる。

 

「ま、原因が分かれば対処は容易いがな」

 

「は?」

 

ヒノカミは両手の指から霊力の糸を伸ばして産屋敷に繋げる。

 

「『天卍改紅』」

 

そして産屋敷の体と血を、全く別の性質に作り替える。

続けて不可死犠を発動。

白い炎が消えた後には、わずかなシミすらない美しい肌を持つ男性が佇んでいた。

 

「これは……!」

 

「無惨と無縁の体質になれば血の支配は届かんじゃろ。

 悪そうなところも全部作り替えておいた。

 健康に気を付ければ百まででも生きられるわい」

 

「……ありがとう、ございます……!」

 

産屋敷と、彼の妻であるあまねが揃って頭を下げる。

炭十郎も同様に作り替えれば快復は早かっただろうが、彼には時間と余裕があった。

対して産屋敷にはそれがない。

鬼殺隊を支えるための激務に耐えねばならないのだから、多少の贔屓は当然と言えた。

 

「くけけ、ここからの交渉を有利にしようという打算を含んだものじゃ。

 恩を感じてくれたのなら好都合よ」

 

「……わかりました。

 では、早速要件をお伺いいたしましょう」

 

今までのやり取りは全て前置き。

ヒノカミが産屋敷に会いに来たのは、とある頼み事をするためだった。

 

 

 

「柱連中の情報を譲ってくれ。

 出自、性格、関係者、とにかくあるだけ全部じゃ」

 

「……それを、何に使うおつもりで?」

 

「儂とて無惨のような輩は可及的速やかに排除したい。

 そのためには鬼殺隊の助力、特に頭数と情報網はどうしても欲しい。

 そして儂との協力を進めるにあたっての最大の障害はあ奴らじゃろ?

 であればなんとかして丸め込まねばならん」

 

「脅迫に……ではないのでしょうね」

 

「げらげら。だとしたらもっと手軽な方法を選ぶさ。

 しかし儂の考えが上手くいく保証はないので、計画の詳細は秘密とさせていただこう」

 

「……わかりました、信じましょう。

 資料を準備いたしますのでしばしお待ちください」

 

「ではその間にお主の子供らも施術しておこう。

 ここに呼び寄せるが良い。それともこちらから出向こうか?」

 

「……重ね重ね、ありがとうございます。

 すぐに呼んでまいります」

 

産屋敷の子供たちにも無惨の影響が及ばないよう手を加え、用意された写しの紙束を産屋敷の前で目を通し、即座に燃やす。

そして来た時と同じように転移で去った。

 

これ以降、ヒノカミは時折進捗を尋ねに来るくらいでほとんど雲取山を離れていた。

しかし修行完了の半年を目前に控えた頃、通信機を通じて炭治郎に呼び出される。

雲取山に戻るとカナエだけでなく、他の柱たちも屋敷の前に全員集合していた。

 

「仰々しいのぅ……何があった?」

 

「……おそらく今晩にでも、ここに鬼の襲撃があります。

 最強の十二鬼月……『上弦の壱』が」

 

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