『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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原作では岩・風・霞の3人と玄弥でほぼ相打ちに持ち込みましたが、この時点では柱たちに痣がありません。
透き通る世界に入ることもできておらず、柱稽古で連携の訓練もしていないため、柱たちは原作で相対した時よりもかなり弱い状態です。
そして炭治郎たちも柱に並んでいますが、それは原作最終決戦ではなく現時点の柱が比較対象となっています。
よって上弦の鬼とまともに打ち合えるのはカナエくらいです。


第12話 黒死牟

 

先陣を切るのは胡蝶カナエ。

他の柱たちは身構えるものの距離を取っている。

 

(天神武装……!)

 

まだ黒死牟の使う月の呼吸とやらががどのような剣技かがわからない。

他の柱たちが戦う前にそれを明らかにするのが最強の柱である彼女の役目。

身体能力と防御力、そして霊力を認識したことで生じた霊感を更に強化し、鬼に肉薄する。

 

「花の呼吸……!」

 

「月の呼吸 壱ノ型……」

 

「っ!」

 

「闇月・宵の宮」

 

切り掛かる寸前で技を止めて飛び上がり、カナエは神速の居合切りの回避を選択した。

 

「ほぅ……よく、察した」

 

(速過ぎる……それにあの三日月、実体がある!?)

 

「陸の型 渦桃!」

 

「弐ノ型 珠華ノ弄月」

 

カナエは空中で体を捻り斬りつけ、黒死牟は切り上げるような三連撃を放ち迎撃する。

その斬撃にもまた、不規則に変化する無数の三日月が付随していた。

 

「くっ……!」

 

「……浅い……?

 人間の体など、骨まで断つはずだが……?」

 

三連撃は弾いたが三日月までは打ち消しきれず、カナエの体が幾重にも切り裂かれる。

しかし強固な気の鎧に阻まれ着物や薄皮が斬られる程度で済んでいた。

そのわずかな傷からも炎が噴き出し再生が始まる。

 

「傷が……人間が、再生……?」

 

(刀本体だったら、多分鎧ごと斬られる……。

 でも三日月の方は鎧を全開にしてる今なら無視できる!)

 

「伍ノ型 月魄災渦」

 

(っ、これなら!)

 

「弐ノ型 御影梅!」

 

刀を振っていないというのに黒死牟の刀から斬撃が発生する。

軌道が読みづらいが威力は低い。

カナエは全周囲に連撃を放つ技を防御に使い、打ち消しきれない三日月も鎧で強引に受け止めて相手の懐に入る。

 

「フゥゥゥゥ……!」

 

「ぬぅ……っ!」

 

鬼との打ち合いが彼女の日輪刀に圧を加え、天神武装の炎が熱を与える。

桃色だった刀が燃えるような赫となった。

 

「はぁっ!!」

 

「っ……馬鹿な……日の呼吸の使い手でも、ない者が……!」

 

黒死牟は寸前で自分の刀を間に挟むが、『鬼である自らの血肉でできた刀』では『赫刀』を受け止めることはできず、刀身が斬り落とされ胸を袈裟切りにされる。

 

しかしカナエもまた短時間で力を消耗し過ぎた。

すぐに距離を取り、それを合図に柱たちが突撃し斬りかかる。

 

「かかれぇっ!」

 

「「「うぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!!」」」

 

悲鳴嶼の号令に従いそれぞれが最良の技を選び取って鬼に迫る。

 

(……刀身が……!)

 

ただ折られただけならすぐに再生できる。

しかし赫刀で両断されたため数秒は修復できない。

その数秒の間に柱たちの刃が黒死牟へと届くだろう。

 

「ぐぅぅ……!」

 

 

「っ!離れてください!!」

 

「「「!?」」」

 

「ぐぅぁぁぁあーーーーーー!!!」

 

着物を突き破って、鬼の体の至る所から刃が生えた。

そして刃から生じた斬撃が柱たちを迎撃した。

直前に炭治郎が叫んだことで即死は免れたが、柱たちは皆傷を負っている。

そして柱たちが離れた隙に、鬼はとっくに刀身を再生させていた。

 

「しのぶっ!」

 

「深手の者は下がって!」

 

しのぶが腕を斬り落とされた宇随や時透に近付き、部位を拾い上げて断面に押し当て白い炎で強引に接続する。

 

「形を取り繕っているだけです、過信しないでください!」

 

「十分だ!」

 

「このくらいで……!」

 

炎を浴びた者はすぐに戦線へ復帰した。

 

 

「……俺たちも行こう。

 カナエさんが証明してくれた。

 天神武装が使える俺たちなら、刀本体さえ避ければ戦える!」

 

「うん!終の型……彼岸朱眼!」

 

「俺が壁役になる!天神武装『獅子王牙』!」

 

玄弥の頭部と胸部を覆うような、厳つい獅子舞の頭が実体化した。

 

「玄弥!こいつを!!」

 

「おう!」

 

善逸が拾ってきた、先ほどカナエが斬り落とした鬼の刀の残骸を受け取り、獅子舞がそれを噛み砕く。

 

『……グォォォォォオオオオ!!』

 

玄弥は鬼を食って自分を強化できる特異体質であり、それを更に強化・発展させたものが至ったばかりの第三段階の特性。

鬼を食う程に強く頑強になっていく獅子の面。

鬼を食うことによる肉体への負担はなく、強化の限界も存在しない。

僅かとは言え上弦の壱の体を喰らった獅子の面は雄たけびを上げ、頭部の剣山のような毛髪をより大きく鋭く変化させる。

 

「ぐるぁぁぁぁぁああああっ!!」

 

「なんだ……それは……!?」

 

「っ、玄弥!?」

 

「兄ちゃんは、俺が守る!!」

 

突進してきた巨大な獅子舞に驚き黒死牟は斬撃を飛ばすが、面に傷をつけただけで勢いは止まらず、咄嗟に回避を選択。

勢いよく閉じられた大きな口は、鬼がいた地面を大きく抉り取っていた。

 

「さぁぁああ!祭りじゃあ!

 血祭りじゃぁああああああ!!!」

 

「シィィィイイイイ……!」

 

伊之助が二刀を打ち鳴らし、善逸が刀に力を込め、炭治郎たち全員が天神武装を発動。

4人の刀がカナエの物と同じように、赫く染まる。

 

「な、に……!?」

 

「行くぞっ!!」

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

「……まずいな」

 

転移門の前に座り、目の前の窓を通じて戦いを観察していたヒノカミが呟く。

 

敵は全集中の呼吸を扱う鬼。

ただでさえ高い鬼の身体能力が呼吸によりさらに強化されている。

そして何らかの力で相手の行動を予測し、先読みして対応しているらしい。

その圧倒的な速さに追随できるのは、全集中の呼吸と天神武装を併用しているカナエ、炭治郎、カナヲだけ。

善逸や柱たちはわずかについていけず、しのぶは治療を優先し鬼から距離を取っている。

それでもこれだけの人数差があれば対応できそうなものだが。

 

(縁壱の兄……それはつまり400年前から鬼として、鬼殺隊と戦っていたわけじゃからな)

 

黒死牟の扱う『月の呼吸』は血鬼術により歪な進化を遂げた、『鬼狩り』の剣術にあらず『鬼狩り狩り』の剣術。

斬撃が多く攻撃範囲が広いのは己一人で多数の鬼狩りを仕留めるため。

奴が相手では数の有利が有利に働かない。

剣術の型が多すぎて攻撃を予測することも難しい。

 

そしてヒノカミの予想通り、黒死牟が炭治郎に狙いを定め始めた。

柱や他の剣士たちを脅威と認め『鬼狩りを全滅させる』という欲張りをやめたのだ。

鬼の体力に物を言わせて周囲にやたらめったらに攻撃を繰り出しながら、炭治郎へとひたすらに突っ込んで行く。

炭治郎がどれほど距離を取ろうとしても接近してくるので二人が常に近い距離にいる。

炭治郎がやられれば鬼は逃げ出す可能性が高いので殺されるわけにはいかず、しかし彼との連携の訓練などしていない柱たちは炭治郎を巻き込みかねないので大技が使えない。

炭治郎と連携できるカナエや善逸たちが頑張っているが彼らだけでは鬼の決死の猛攻を凌ぐだけで精一杯。

そして彼らの超人的な身体能力を支える天神武装は時間制限付き。

 

(これを倒すには、何人かが捨て身にならねばならぬ)

 

しかしそれはできない。死を恐れているわけではない。

今、柱たちは産屋敷より気安く命を捨ててはならないと厳命されているからだ。

その理由はしのぶの、『再生術』の使い手の存在。

時間はかかるが彼女さえいれば腕を失おうが目を失おうが、生き残りさえすれば必ず復帰できるのだから。

敵が無惨なら命令に背く者も出ただろうが、相手は上弦の鬼とは言え十二鬼月のたった一体。

そして距離を取らせているとはいえ、回復役であるしのぶの身も気にかけねばならない。

故に彼らはあと一歩を踏み出せず、どうしても動きが鈍くなっている。

 

(儂の存在を無惨に知らせるのも不味いし、柱たちが納得すまい。

 ……一つ目の切り札、この場で切らせるべきか)

 

できれば無惨に切り札を把握されるのはもう少し先にしたかったが、ここで上弦の壱の討伐に失敗したり死人を蘇生できることが伝わるよりは遥かにマシ。

そう考えてしのぶに念話で指示を出そうとしたところで。

 

「……お主……!?」

 

ヒノカミの後ろの扉が開き、一人の人間が出てきた。

その装いを見て問いかける。

 

「戦うつもりか?」

 

相手は肯定の意を示した。決意は固いようだ。

 

「……持っていけ」

 

説得は不可能と判断したヒノカミは、日輪刀を具現化し投げ渡した。

目の前の人物はそれを受け取り、抜いた。

 

その刀身は一瞬で『黒』に染まった。

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

ついに連携が崩れ始めた。

善逸と伊之助の天神武装は既に時間切れで、赫く染まっていた刀も元の色に戻ってしまった。

玄弥は鬼の体を喰らいながら皆の盾となっていたが、覚えたばかりの武装を長時間維持するのは難しく輪郭がぼやけ始めている。

カナヲはまだ天神武装を維持できているが、解除されれば自己治癒力を頼りに発動し続けている彼岸朱眼の負担が無視できなくなる。

 

「くっそぉ!こっちを見やがれぇ!!」

 

その結末が予測できた柱たちが必死に妨害しようとするが、黒死牟は余計な敵を近づかせまいと、全身の刀から四方八方に斬撃を飛ばし続けている。

この嵐を掻い潜るのは柱でも難しく、まともに攻撃を届けられるのはカナエの他には鎖鉄球を使う悲鳴嶼ぐらい。

そして攻撃を届かせても、鬼は致命傷以外は無視して炭治郎に攻撃を続ける。

大きな傷はしのぶが塞いでくれているが、柱たちも出血と疲労で勢いが落ちてきた。

 

(こんなところで……死人を出すわけには!)

 

しのぶもまた不可死犠を使う力は枯渇寸前。

ヒノカミに指示されるまでもなく、ここで切り札を切ろうと懐に腕を突っ込むが。

 

「……え!?」

 

鬼から距離があり意識に余裕があった彼女が真っ先に気付いた。

屋敷の奥から何かが来る。

力強い息吹を感じるがヒノカミではない。人間だ。

 

「……まさかっ!?」

 

蹴り破られた扉が、炭治郎に迫る鬼へと飛ぶ。

鬼は柱たちの攻撃同様、自分を傷付けるに至らぬただの木の板を無視した。

 

そして、扉の陰に隠れて迫る何者かを見逃してしまった。

 

 

 

「……円舞!」

 

「ぐぁっ!!」

 

「「「!?」」」

 

何者かが鬼の体を深々と切り裂く。

鬼はたまらず距離を取り、誰かが炭治郎を庇うように前に立つ。

 

「よく頑張ったな、炭治郎」

 

「父さん!?」

 

頭部の装具こそつけていないが、敢えてヒノカミ神楽の装束を纏った竈門炭十郎が刀を構えていた。

 

 

 

「……あ?」

 

炭十郎の姿を見た黒死牟……継国巌勝が動きを止める。

 

植物のような穏やかな気配。

乱雑にまとめられた長い黒髪。

左目の上の痣。

黒い刀。

花札の耳飾り。

 

「あ……あ、あぁぁぁあああっ!!!」

 

彼の姿はまるで、まるで。

 

 

 

 

「縁壱ぃぃぃいいいいいいいい!!!!」

 




ヒノカミの治療開始からすでに4年半。
とっくに人並以上の健康体になっています。

炭治郎以上の才能を持ち日の呼吸に習熟し、一説では縁壱に並ぶともされる天才。
竈門炭十郎、参戦となります。
ただし天神武装は使えないので日輪刀は黒のままで、赫刀にはならないとしておきます。
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