『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第15話

 

那田蜘蛛山にて十二鬼月の一体を倒してから、およそ半年。

産屋敷家にて再び鬼殺隊の柱が集う柱合会議が行われる。

ただし普段なら柱か特別に呼び出された隊士しか参加することが許されないその場には、数えきれないほど大勢の隊士たちが詰めかけていた。

現時点で鬼殺隊が動かせる戦力、そのほぼ全員である。

 

「みんな、良く集まってくれた」

 

しっかりと己の両足で立ち、穏やかに笑う青年こそ鬼殺隊の当主。

彼の姿を知らずにいた者も多いが、知っていた者は彼の変化を見て、会議に先立ち伝達された情報は事実であるのだとようやく受け入れた。

 

曰く、柱たちは若き隊士たちと協力し十二鬼月最強の鬼である『上弦の壱』を討ち取った。

曰く、無惨打倒のため鬼殺隊は無惨と敵対する鬼と手を組んだ。

曰く、その鬼は類まれなる医術の知識を持っている。

目ざとい者は産屋敷から少し離れた部屋の隅に座る美しい女性がその鬼なのだと気付いただろう。

 

ここまでは納得できるかは別として、理解はできる。

何より一番前で跪く柱たちが全く動かない。

特に『蛇柱』と『風柱』の鬼への殺意は有名なのだが、二人の様子から柱たちも鬼を認めているのは間違いない。

それによく見れば当主だけでなく、柱たちの傷も消え去っている。

であれば一隊士に過ぎぬ自分たちが異議を申し立てる資格もないと押し黙った。

 

しかし、最後の情報だけが納得も理解もできない。

曰く、鬼殺隊は『神の協力を得た』。

 

鬼の存在を知っている隊士たちは、一般人よりはよほど超常に対する理解はあるだろう。

だが、神とはなんだ。

お館様は心労がたたり、遂に先代さまのように心を病んでしまわれたのかと訝しむ者さえいた。

だが。

 

 

「みんなにもご紹介させていただこう。

 ……彼女が、『ヒノカミ』さまだ」

 

「「「…………!?」」」

 

 

産屋敷の声に続いて頭上から照らされる暖かい光。

そこには炎の光輪を背負い、八咫烏と白い大蛇を連れた、人間とは思えぬ絶世の美女が浮かんでいた。

そして天女が腕を振るうと、白い炎が隊士たちを呑み込んだ。

彼らは激しい戦闘を繰り返し生き延びてきた歴戦の勇士たち。

未だ現役の隊士ではあるが無傷とは言えず、腕や眼を失っている者もいる。

しかし暖かく優しい炎に包まれたかと思えば、彼らの傷跡が全て消え去っていた。

失った手が傷一つない姿でそこにあった。失った光や音が戻って来た。

そして彼らは理解し一斉にひれ伏した。

目の前の天女こそが、我らを救い導いてくださる真の神であると。

 

一言も話さず宙に佇む天女を背負うように前に出た産屋敷は、一大作戦の決行を宣言する。

産屋敷に続くように外に、『日の光の下に』歩み出た珠世という鬼と、鬼殺隊の癒し手である胡蝶しのぶにより開発された切り札が、隊士たちへと配られていく。

 

これが上弦の壱に切ろうとしていた一つ目の切り札。

『日光と同じ光を放つ閃光弾』である。

光は一瞬。鬼を殺すには至らないが血鬼術を打ち消し眼や肌を焼き動きを封じることが可能だ。

隠たちに製法を広め協力してもらい、この会議までになんとか隊士たち全員に配るほどの数を揃えることができた。

この会議の裏で今も量産を続けている。

特別な素材を使っているわけでもないので、時間さえあれば幾らでも用意することができる。

 

更に加えて二つ目の切り札、『鬼を人間に戻す薬』も同時に配る。

しのぶが完成させたものに珠世が手を加えたものだ。

無惨や十二鬼月のような強い鬼が相手の場合、抵抗されれば人間に戻すほどの効果はないだろうが、打ち込めば鬼としての力を著しく減衰させるだろう。

仮に仲間が鬼にされた場合でも即座に人間に戻すことができる。

こちらは珠世たちでなければ製造できないため数は少なく、柱を筆頭とした上位の階級の者に預ける。

 

そして三つ目の切り札が、神の指導を受けた5人の若き隊士たち。

彼らはそれぞれ優れた感覚器官を持ち、霊感を併用して鬼の存在を敏感に察知できる。

よって彼らと柱たちを中心にして隊を大きく5つに分け各地に向かわせ、この日本に潜む悪鬼を一掃する。

これこそが、鬼殺隊始まって以来の大規模作戦の詳細だった。

 

「時が来た。私たちの時代でこの呪われた因果を断つ!

 みんなの力を、もう一度貸してほしい!!」

 

「「「「「はっ!!!!」」」」」

 

会議の終了を宣言すると同時に、隊士たちが準備のため散っていく。

その場には産屋敷と珠世としのぶ、9人の柱、件の5人の若者、そして神だけが残っていた。

 

 

「……もう結構ですよ、ヒノカミさま」

 

 

「……ぷひゅ~~~~~~~」

 

「「「プッ」」」

 

文字通り気の抜けた声を上げる神に、不敬にも人間たちが堪えきれず吹き出す。

 

「……だっはっは!もうガマンできねぇ!

 ド派手な演技だったぜぇ?なぁヒノカミさま!」

 

「やかましいわコラ!」

 

「……口を開かなきゃ完璧だね」

 

「しっかし、随分と見栄張ったじゃねぇか。

 頼んだのはお館さまだがよぉ」

 

作戦の決行に当たり、隊士たちにも珠世とヒノカミの存在を周知させる必要があった。

しかし流石に神の存在を何も知らぬ隊士たちに受け入れてもらうのは容易ではない。

よってヒノカミに『いかにもな女神』の姿と振る舞いをお願いしたというのが先ほどの真相だった。

あと、『とりあえず黙ってろ』って言われた。解せぬ。

 

「……言っとくがなぁ、コッチが神としての儂本来の姿じゃからな!!」

 

「「「はぁぁっ!?!?!?」」」

 

「マジで!?そのデカイおっぱい本物なの!?

 なんであんなチンチクリンになってたの!?」

 

「チンチクリンは失礼だろ善逸!」

 

「こんな格好で下界に降りたら騒動にしかならんじゃろがい。

 ……それに知人たちからの受けが悪いんじゃよ。

 酷い奴だと『詐欺神』とか『残念美神』とか言うんじゃぞ?」

 

「「「あぁ~~~~……」」」

 

「納得せんでもらえんかの!?」

 

纏っていた神霊としての幻影を解除し、見慣れた姿に戻ったヒノカミが吠える。

善逸は姿が変わった後もずっと残念そうな顔をしていた。

 

「……ともかく!これで無惨も本気で動き出すはずじゃ。

 万が一の場合は通信機で呼べば向かうつもりじゃが、こちらでも何が起きるかわからん。

 確実に蘇生できる保証もない。死ぬなよ」

 

「わかっている!貴君も、我らに代わりお館様を必ず守ってくれ!」

 

「言われるまでもない」

 

「では最後に、みんなに改めてお願いしよう。

 この作戦で全てが終わる。

 ……生きて帰って来てくれ。

 そして、みんなで夜明けを迎えよう」

 

「「「「「はいっ!!!」」」」」

 




前回のイベントで、柱たちも『無惨とは無縁で無害な鬼もいる』と理解しました。
フィルターを取り払うと、むしろ彼らとヒノカミはかなり相性がいいです。
特に宇随と不死川。
後、伊黒も頭が上がらなくなりました。むしろ怯えてます。


伊黒「まず一度死んでから、汚い血が流れる肉体ごと取り替えなければ」
ヒノカミ「んじゃいっぺん殺そう。んで体を一から作り替えて蘇生させるから」
伊黒「 」
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