『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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初めての、ジャンプ以外の作品を扱います。

そして言い訳になりますが、ただでさえ複雑な作品なのに曖昧な記憶で書いています。
ある程度設定の確認はしていますが間違いがあるかもしれません。
ご容赦ください。


外伝2 第5次聖杯戦争
第1話 運命の夜


 

「こんばんは、お兄ちゃん」

 

運命の夜、聖杯戦争への参加を決意した衛宮士郎。

彼とセイバー、遠坂凛の前に姿を現したのは、昼間に出会った異国の少女だった。

 

『イリヤスフィール・フォン・アインツベルン』。

白銀の長い髪を持ち白銀のコートを身に着けた彼女はそう名乗った。

そして凛により、彼女もまた聖杯戦争に参加するマスターであると知る。

すなわち己が戦い、殺し合わねばならない相手だと。

 

セイバーが一歩前に立ち、凛もまた隠れて潜んでいるアーチャーに念話を飛ばすが、現実を受け止めきれずにいた士郎は未だ硬直している。

だが敵として現れた者が、わざわざ彼が動き出すまで待ってくれるはずもない。

 

「やっちゃえ、バーサーカー!」

 

イリヤが腕を振るい高らかに宣言すると、彼女の背後から。

 

 

 

「……うぇ~~~~ぃ」

 

 

 

けだるげな様子の何かが、気の抜けた声とともに現れた。

 

「「「「…………は?」」」」

 

鬼のお面をつけた赤い和装の、少年のようにも見える小柄な女だった。

拍子抜けして思わず声を漏らしてしまったのは士郎たちだけでなく、マスターであるイリヤもだった。

 

 

「……こらぁ~~~っ!

 なんでそんなダラっとしてるのよ!

 ちゃんと鎧着て出てきなさいっていったでしょぉ~~~!」

 

「決意はしたようじゃが、巻き込まれて戦うことになった子供を相手しろと言われてもなぁ。

 それにこれ半ば八つ当たりじゃろ?どうにもやる気が……」

 

「いいからやるのっ!

 せっかく私がビシっと決めたのに、これじゃバカみたいじゃない!」

 

「あ~~……『やっちゃえ、バーサーカー!』」

 

「もぉっ!もぉ~~~~~~っ!」

 

突如目の前で始まった幼女と小娘の、無駄に上手い声真似まで使ったコントに、セイバーと凛は先程までとの温度差で崩れ落ちそうになる。

 

「……なぁ、アイツもサーヴァントなのか?」

 

セイバー、アーチャー、ランサーと顔を合わせた彼だが、目の前の相手は明らかに毛色が違う。

真剣さが足りないというか、恐ろしさを感じないというか。

士郎の質問に咳払いをして、二人は必死にシリアスを維持しようとした。

 

「理性があるということは、狂化の度合いは低いようだが……」

 

「あの恰好、アインツベルンが日本のサーヴァント?

 一体何の英霊なのよ……!?」

 

間もなく、イリヤから尻を叩かれ嫌々ながら前に出たバーサーカーが、乱暴に頭を掻きながらセイバーに声をかける。

 

「あ~~……始める前に言うておくことがある。

 儂は外道でもなければ殺生は好まんでの。

 イリヤに手を出さん限りはお主のマスターにも手を出さん。

 イリヤからお主のマスターらに手を出すこともさせぬ」

 

「……それを信じろと?」

 

「儂は冗談やごまかしは言うが、嘘は言わん。

 ……のじゃが、いきなり会った相手を信用しろというのもな。

 ただの宣誓とでも思ってくれればよい」

 

「……いいだろう」

 

そしてセイバーはバーサーカーだけに狙いを定め不可視の両手剣を正面に構える。

対してバーサーカーは小さな赤い石剣を取り出し、炎の刀身を生み出した。

 

「炎の、剣?日本の偉人でそんなヤツいたかしら……」

 

「くけけけ、お嬢ちゃん。あまり深く考えない方がよいぞ。

 儂は少々特殊なサーヴァントなんでな」

 

「アンタが『少々特殊』程度で収まるはずないでしょ!」

 

「げらげらげら」

 

戦いの直前になってまでイリヤとのおふざけを止めないバーサーカーに、セイバーはわずかながらいら立ちを感じていた。

それでも『自分の平静を失わせるための策だ』と言い聞かせて踏みとどまる。もちろん、当人たちにそんなつもりは全くない。

 

「……せぁぁああっ!!」

 

もはや問答は無用とセイバーが全力で斬りかかる。

 

「……んん?」

 

それをバーサーカーは片手で握った炎剣で、平然と受け止めた。

セイバーの剣に付与された風の魔力とバーサーカーの炎がぶつかり合う。

 

「ちっ、はぁぁっ!!」

 

「ん?んん?」

 

臆することなくセイバーは何度も攻撃を繰り返すが、バーサーカーは訝しむ表情のまま苦も無く捌いていく。

 

「……いや弱すぎじゃろ」

 

「ぐぁっ!?」

 

何度目かの迎撃にて少し力を強め、セイバーをはじき飛ばした。

 

「魔力が足りておらんのか?

 それと、どこか負傷しておるようじゃな。

 ……手負いの相手にやられるほど儂は弱くはないぞ?」

 

「くっ……!」

 

「セイバー!?」

 

指摘の通り、彼女のマスターである衛宮士郎は魔術師として非常に未熟であり、供給される魔力の量が乏しく満足に力を発揮できない。

加えて召喚された直後のランサーとの戦闘で負った傷が今も彼女を苦しめている。

それでも最優と呼ばれたセイバーのクラスを名乗る者。

多少の不利など己の技で覆す自信はあったが。

 

「セイバーと剣の技量で渡り合うなんて!?

 ホントにバーサーカーなの!?」

 

「ふふん!私のバーサーカーは無敵なのよ!!」

 

本来は高いステータスと引き換えに理性を、技を失うのがバーサーカーのはず。

しかし彼らの目の前にいるサーヴァントは、高いステータスと技量を両立させていた。

 

(反則じゃない……でもっ)

 

セイバーとの闘いでバーサーカーとイリヤの距離が離れた。

その隙に凛はバーサーカーのマスターであるイリヤに狙いを定める。

 

しかしイリヤもまた名家の魔術師。

凛の咄嗟の魔術など容易く打ち消した。

 

(勝った!)

 

凛の攻撃は囮。本命は遠方のビルの屋上に待機していたアーチャー。

凛の攻撃が着弾した直後、イリヤを狙った狙撃が放たれる。

いくら魔術師と言えど人間がサーヴァントに敵う道理はない。

 

 

「あーあ、やっちゃったわね」

 

「……え?」

 

しかしこの場から生じた光がアーチャーの狙撃を飲み込み、流星のようにそのまま真っすぐ伸びていく。

 

「っ!?アーチャー!?」

 

「ふぅん、どうやら消滅は免れたみたいね」

 

パスを通じてアーチャーの負傷が凛に伝わった。

一命はとりとめたものの、この戦いの前にセイバーから受けたダメージもあり当分はまともに実体化することさえできまい。

 

「一体、何が……っ!?」

 

セイバーの攻撃を右手の炎剣で受け止めていたバーサーカーの左手には巨大な霊体の弓があり、左腕に巻き付けられた白い帯がほどけて弓の弦を掴んでいた。

 

「うそ……バーサーカーが弓まで使うの!?

 しかも本職のアーチャーより上だなんて……!?」

 

「威力だけじゃよ。技量では敵うはずもない。

 儂は『コレ』はあまり得意ではなくての」

 

弓を解除したバーサーカーの左手には十字架のような何かがあったが、間もなく消滅した。

バーサーカーはもう一度セイバーを士郎たちの傍に弾き飛ばし、少し視線を鋭くする。

 

「さて、イリヤに手を出さん限りはと宣言したはずじゃがな……そんなに殺されたいのか?小娘」

 

「「「っ!?」」」

 

豹変したバーサーカーの放つ殺意に、それを向けられたわけでもないセイバーすらも息を呑む。

確かに凛はまだ子供だが、ここ冬木の街に居を構える魔術師。

聖杯戦争にも望んで参加したのだ。バーサーカーが情け容赦をかける理由はない。

 

「イリヤに大事なかったことじゃし殺すまではせんが……四肢の一つか二つはもいでおこうか」

 

「……!」

 

「遠坂っ!」

 

覚悟はあったつもりなのだろうが、凛は憤怒の化身の本気の怒気を受けて腰を抜かしへたり込んでしまった。

士郎が彼女の肩を掴んで立ち上がらせようとして、セイバーは己のマスターを守るべく彼らを背にして立ちはだかる。

 

「逃げてください、シロウ!」

 

「主君への忠義、見事。

 お主のマスターである少年には手を出さぬと改めて約束しよう。

 ……残念じゃよ。せめて万全のお主と戦いたかった」

 

距離を詰め、炎剣を振りかざす。

込められた力は先ほどの比ではない。たとえセイバーが剣で受け止めようとしても諸共両断するだろう。

彼女もそれを察しただろうが最後まで諦めるつもりはなく剣を構える。

 

 

 

「セイバーーーーー!!!」

 

「「「!?」」」

 

だが背後にいた士郎が飛び出し、セイバーを突き飛ばした。

予想外の事態に誰もが反応できず、炎剣が少年へと吸い込まれていく。

 

……直前で、止まった。

 

「……え?」

 

目の前にある致命の一撃が未だ自分に届かないことに、死を覚悟していた士郎は疑問の声を上げる。

 

「…………こンの」

 

「……え?」

 

 

「馬鹿もんがぁぁぁぁーーーっ!!!!」

 

 

「「「!?」」」

 

バーサーカーの咆哮が世界を揺らし、それを正面から受けた士郎は尻餅をついた。

 

「正座」

 

「へ?」

 

「正座ぁ!」

 

「は、はい!」

 

士郎は気圧され、言われるがままにアスファルトの上で姿勢を正す。

 

「貴様、何故セイバーを突き飛ばした?」

 

「え?えっと、助けなきゃって思って……」

 

「阿呆かぁ!一撃凌いだところでもう一度攻撃されれば終わりじゃろうが!

 助けが不要になって初めて『助けた』になるんじゃ!

 それでは助けたことにはならん!

 どうせ命を使うなら儂に飛びかからんかい!」

 

「え?……え?」

 

「貴様がその身で儂を押さえ込み『自分ごと斬れ』と命じればよかろう!?

 その方がまだセイバーの勝機があったはずじゃ!」

 

「はぁ!?いやでも、そしたらアンタが死ぬだろ!?

 オレは誰にも死んでほしくなかったんだ!

 もちろん、アンタやイリヤにも死んでほしいわけじゃない!」

 

「だったら何故儂らに交渉を持ちかけなんだ!?

 セイバーが戦っとる間、いくらでも時間はあったじゃろ!?」

 

「……へ?」

 

「貴様その様子では発想すらなかったな!?

 たった今振るった儂が言うのもなんじゃが、暴力は問題解決の最終手段!安易に頼るものではない!

 まずは言葉を尽くせ!殺生が嫌なら争いそのものを避けるための交渉能力を身につけんかい!」

 

「そ、そうなのか……?」

 

「目的と行動がまるで一致しておらんではないか!

 貴様は一体何がしたいんじゃ!

 何のために聖杯戦争に参加した!?」

 

「オレは、その、正義の味方になりたくて……だから、こんな戦いで誰かが死なないように……」

 

「正義の味方ぁ!?

 そんな中途半端な覚悟と振る舞いで成れるほど甘くはないわぁ!

 貴様には説教が必要じゃ!

 儂が『ヒーロー』のなんたるかを一から叩き込んでくれる!!」

 

「説教が必要なのはアンタよバカぁ!!」

 

そこで、イリヤが背後からバーサーカーに飛び蹴りをくらわせた。

 

「アンタが吠えたせいで、人払いの結界まで消し飛んじゃったじゃない!

 すぐに人が集まってくるわよ!今日はもう撤収!」

 

「なぬ!?じゃがこのうつけには一刻も早い躾がじゃな!」

 

「ダメ!いくの!」

 

「……えぇい!覚えておれよ小僧ーーっ!!」

 

小柄なサーヴァントは、更に小柄なマスターに襟首を掴まれ引きずられていった。捨て台詞を残して。

 

 

「……なんだったんだ、アイツ」

 

「…‥知らないわよ、もう」

 




外伝2作目は『Fate/stay night』となります。
今回も巻いていくのでご容赦ください。

ちなみにヒノカミはサーヴァントのクラスに押し込められているため大幅に弱体化しています。
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