『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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小聖杯と『大願成珠』という共通点。
子供好き。
サーヴァントとして比較的早めに召喚されているので色々と話の下地を作れる。
そして確実にバーサーカーの適性がある。
以上より、ヘラクレスの代わりにイリヤのサーヴァントとして参戦しました。


第2話

 

セイバーたちとの戦いの翌日、イリヤはバーサーカーを連れて真昼の街中を歩いていた。

散歩や遊び歩き……という側面がないわけでもないが、一番の目的はこの冬木の街全域に結界を設置しバーサーカーの領域とすること。

ドイツに居を構えるアインツベルンにとってここは異国の地なのだから、昨日戦った遠坂のように現地の魔術師との戦いに備える必要がある。

イリヤはもはや聖杯戦争の勝利にさほどこだわりはないが、負けて殺されてやるつもりはない。

 

本来『陣地作成』はキャスターのクラススキルだが、この英霊はバーサーカーのクラスに押し込められているにもかかわらずそのスキルを高レベルで所持していた。

『道具作成』のスキルも同様であり、『最も適性が高いのはキャスターだ』という彼女の発言は嘘ではないのだろう。

 

だがバーサーカーだから弱いと言うことはない。

彼女とバーサーカーのクラスはむしろ親和性が高すぎる。

マスターであるイリヤが言うのもなんだが、この英霊は本当に規格外なのだ。

 

バーサーカーの特徴と言えば、狂化によるステータスの大幅な増強。

そしてデメリットは理性を失うことと、維持するための魔力の消耗が激しいこと。

だがこの英霊はそれらのデメリットを完全に打ち消すスキルを所持していた。

 

まずは概念的な干渉を無効化するスキルにより、彼女は純粋な物理現象以外の攻撃を受け付けない。

只でさえ高いステータスが『狂化』によりさらに引き出されていると言うのに、呪いなどの特殊攻撃を無効化するというのだからあまりに凶悪。

そして『狂化』による精神の変調すらも無効化対象であり、ステータス強化だけが適用されている。

 

更に英霊が力を引き出すにはマスターに膨大な魔力を要求するものだが、こちらも魔力が枯渇しないというスキルを所有しており自力で活動に必要な魔力を生成できる。

よってマスターは魔力を一切負担することなく、常時全力戦闘と宝具の展開が可能となっている。

ちなみに彼女の宝具とは先日着てくるように命じた『鎧』のことだ。

 

トドメがバーサーカーでありながらセイバーやアーチャー、キャスターらと比較しても遜色ないほどに、あまりに多彩過ぎる能力と高い技量。

イリヤが彼女を『最強』ではなく『無敵』と呼んだのは誇張ではない。

他の6騎が束になってかかってきても、この1騎だけで正面から返り討ちにできる可能性は十分にある。

 

勿論、いいことばかりではない。

この英霊を使役するには相応のリスクを背負わねばならない。

 

『呪い』が効かないのだから……『令呪』も効かない。

マスターからサーヴァントへのたった3度の絶対命令権すら、彼女は拒絶できてしまう。

そして自力で魔力を生成できるのだからマスターが居なくとも行動できる。

つまりこの英霊は『マスターを必要としない』。

故に彼女からマスターと認められなければ容赦なく見限られ、切り捨てられてしまう。

 

本質的には彼女は善性の存在であり、彼女の主義主張に反しない限りは『命令』は聞いてくれなくとも『お願い』なら聞いてくれる。

しかし『人間』にとって善性の存在だからこそ、『魔術師』の感性とは致命的にそりが合わない。

 

事実、イリヤが彼女を召喚したその日にアインツベルンの当主であったユーブスタクハイトは彼女の逆鱗に触れ、魂の欠片すら残さず消滅させられている。

アインツベルンは失われた『第三魔法』……『魂の物質化』の再現を長年追い求めており、聖杯戦争に参戦していたのもそのため。

そして本来戦争で戦うための道具であるはずの彼女こそが『第三魔法』を体現した存在。

しかも彼女は力の一端を容易に他者に譲渡できるのだとか。

ユーブスタクハイトはそれを知るや否や彼女を支配しようとして、あっさりと返り討ちにあった。

心の底から欲し続けていた存在に拒絶されその力で殺されるとは、中々に皮肉な結末だ。

 

そもそも彼女は『第三魔法』だけでなく『第一魔法(無の否定)』、『第二魔法(並行世界の運営)』さえも習得している『根源への到達者』。

魔術協会に認定されてはいないが『魔法』に分類されるであろう技能を他にも多数有している。

魔術師からすれば遥か高みにいる存在であり、それを意のままに従えようと考えること自体に無理があった。

 

……ぶすくれた表情でイリヤの荷物持ちをしている姿からは、到底想像できないが。

 

「いい加減、機嫌直しなさいよ」

 

「…………」

 

休憩のために入ったカフェでジュースを頼み、ストローで延々とぶくぶくさせている姿からは、やはり想像できないが。

 

「はぁ……『ヒーロー』としては、そんなにシロウのことが気に入らない?」

 

マスターはパスを通じて、サーヴァントの記憶の一部を閲覧することができる。

故にイリヤは彼女がどのような生涯を歩んだか、そして『ヒーロー』という存在をどれだけ大切にしているのかもおおよそ理解していた。

 

「気に入らんというか……見ておれん。

 理想だけが先走って完全に空回りしておる。

 あのままではいずれ取り返しのつかぬ失敗をするか、どこぞで無駄死にか野垂れ死にじゃ。

 導く者がいないのだからあんだけひねくれた育ち方をしたのも無理はないとは思うがな」

 

「……そーね」

 

尤もバーサーカーに言わせれば彼の養父もとんでもなく歪んでいるので、仮に養父が生きて導いていたとしても士郎が真っ当に育ったかは怪しいところだ。

 

 

「……ぬ?」

 

「どうしたの?」

 

「……その士郎に異変じゃ。

 おそらく、サーヴァントと交戦しておる」

 

「!?」

 

完全には程遠いが、既に結界はこの町全体を薄く覆っている。

これは彼女がバーサーカーになったことで失われた感知能力を補う役割も果たしている。

一度顔を合わせ監視対象にした相手の居場所と気の乱れくらいなら、街のどこにいても感知可能だ。

 

「セイバーは傍におらんようじゃな……どうする?」

 

「行きましょ。シロウとセイバーを倒すのは私たちなんだから!」

 

「……これがツンデレ……いやヤンデレ?」

 

「うるさい!」

 

荷物をアインツベルンの城へ転送したバーサーカーは、イリヤを連れて士郎のもとへ転移した。

勿論、支払いはちゃんと済ませて。




ヒノカミのクラス適性

◎キャスター(宝具:炎縁烏蛇・王番振舞)
巨大な鎧人形を従えつつ、無尽蔵の魔力で炎を産み出し支配する。
魔力以外のステータスが低いがそもそも活かす機会すらこないので問題なし。

◯セイバー(宝具:赫烏封月)
耐久と魔力が高めな剣士。炎と治癒術を使う聖騎士タイプ。
絶対切断剣で月牙天衝や牙霊天晴を乱れ撃ちする。

〇バーサーカー(宝具:鬼相纏鎧)
セイバーと比較して筋力と耐久が高い。鎧で更に強化される。
対して魔力が低く術は苦手だがそれでもキャスターに迫る。

△ライダー(宝具:白鎖彗星)
騎乗ではなく使役だが曖昧な判定によりギリギリ適性あり。
全身に無数の砲塔を持つ巨大な白蛇に乗って暴れまわる。本体の強さは低め。

×ランサー・アーチャー・アサシン
能力的には十分だが逸話が足りず適性なし



☆セイヴァー・フォーリナー
クラスによるステータスの減衰や宝具の使用制限がなく、分霊や端末とほぼ同じ状態。
ただし世界の強度という縛りは依然存在する。
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