『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第3話 VSライダー

 

「イリヤ!?バーサーカー!?」

 

二人が転移した先、士郎がいたのは彼が通っていた学校の敷地の屋外。

士郎に鎖付きの杭のような短剣を打ち付けていたサーヴァントが、突如現れたバーサーカーの攻撃を、身を翻してしなやかに躱す。

 

バーサーカーは自分自身。

セイバー、アーチャー、ランサーとは接触済。

見るからにキャスターではなく、アサシンというには装いが派手すぎる。

 

「消去法で……ライダーかの?」

 

「ふふふ、ご明察ですね」

 

目元をバイザーで隠し、露出の多い服を着た長身の美女。

スラリとした長い手足、出るとこ出たスタイル抜群な……。

大丈夫だ。神霊の姿なら負けてない。だから、大丈夫だ。

 

「バーサーカー相手では分が悪い。

 ここは引かせていただきましょう」

 

「!?待て!」

 

「怪我人が動くな。大人しくしておれ」

 

バーサーカーは即座に撤退を選んだライダーを追わず、追いかけようとした士郎を押しとどめた。

負傷した士郎の治療を優先したこともだが、ライダーの妙な態度が気になったからだ。

自分の奇襲に迅速に反応したことと言い、まるで『撤退する理由を探していた』かのような。

 

「まったく!人間が英霊を相手にしようなんてバカじゃないの!?

 セイバーはどうしたのよ!?」

 

「学校には連れて来られないから家に……って、イリヤたちこそどうしてここに?」

 

「っ!?そ、そんなことはどうでもいいでしょ!?」

 

「ツンデレ」

 

「うるさい!」

 

「?」

 

バーサーカーは相変わらずの軽快なやり取りをしながら、士郎の傷を白い炎で消していく。

妙に治りが早いのが、少し気にはなった。

 

「アンタ、怪我の治療もできるのか」

 

「まぁな。ヒーローを目指すのなら治療の魔術は覚えておけ。

 適性がないなら医術だけでも学んでおくことじゃ。

 取れる選択肢が増え、より多くの命を救うことに直結する。

 ……さて、昨晩の続きといきたいところじゃがそれどころでは無さそうじゃな。

 ここで一体何があった?」

 

士郎にこの状況に至った経緯を尋ねると、彼は隠すことなく答えた。

 

始まりは、今朝学校の校門を通り抜けた時に感じた違和感。

胸騒ぎがして放課後校内を調べてみると、何らかの魔術の痕跡を発見した。

そこにライダーが現れ戦闘になったとか。

その魔術の痕跡とやらを見せてもらうと、それは人間の魂を食う結界を発動するための仕掛けだった。

 

「おそらく校内全てを覆うものじゃろうな。

 発動すれば生徒と教師は全員奴の餌か」

 

「そんな!?」

 

「悪趣味ね。リンはどうしたの?

 こういうのを止めるのは冬木のセカンドオーナーである遠坂の役目でしょ?」

 

「学校には来てないみたいなんだ。

 昨日のイリヤたちの件も含めて、話がしたかったんだけど……」

 

「儂がアーチャーを痛めつけたからのぅ。

 奴が回復するまで籠城するしかなかろうて」

 

「それじゃあ気づいてたとしてもどうしようもないわね。

 一人で動いてシロウみたいにサーヴァントに襲われたらひとたまりもないもの」

 

むしろ、これが凛をおびき出すための罠である可能性すらある。

この学校に通う遠坂が魔術師であり聖杯戦争に参加しているであろうことは、同じく聖杯戦争に望んで参加した魔術師ならば間違いなく把握しているはず。

 

「くそっ、じゃあ一体どうすれば……!」

 

「「……」」

 

本来この事態に対処するべき凛が動けない。

しかし魔術師として素人な士郎には対処法がわからない。

頭を抱える士郎の背後にバーサーカーが近付き、拳骨を落とした。

 

「んがっ!?」

 

「昨日話したことをまだ理解しておらなんだか?

 何故儂らに交渉を持ちかけようとせぬ?」

 

「……えっ?」

 

「ライダーは儂らにとっても敵なんじゃから、奴が力を得ようとするのは止めたいに決まっておるじゃろ?

 貴様が学園の案内、儂らが結界の破壊。

 役割分担すれば確実に事態を収められよう」

 

「い、いいのか?」

 

「こういう下品なやり方、気に入らないのよね。

 魔術師として同類だと思われたくないわ。

 それに余所者に助けてもらったなんて知ったら、リンはどんな顔をするかしら?

 ……ふふっ、見ものじゃない?」

 

「自分の非力を理解しておるなら力あるものを頼れ。

 ヒーローが優先すべきは『助けること』。

 そのためにあらゆる手段を模索せよ。

 助けることさえ出来るなら誰が助けるかすらどうでもいい。

 個人的な感傷や恥など二の次どころか三の次じゃ」

 

「……わかった、頼む!」

 

「貴様と儂らに把握された以上、明日にでも発動させてもおかしくない。今晩中に片付けるぞ。

 結界の基本は円陣、または方陣。特に効果が高いのはその中央。

 大勢を効率的に吸収するため人の多い校舎を中心付近に据えつつ、囲むように人気の少ない場所に魔法陣を設置しておるはずじゃ。

 結界の起点も、自ずとその近くであろう」

 

「だとしたら……こっちだ!」

 

「ちゃっちゃと済ませましょ。ディナーが遅れちゃうわ」

 

 

 

 

――――

 

 

 

 

「ただいま、セイバー」

 

「おかえりなさい、シロウ。随分遅く……!?」

 

「お邪魔するわね」

「日本家屋か。実家を思い出すのー」

 

すっかり日も暮れた夜に帰ってきたマスターを出迎えたセイバーだったが、彼の後ろにいた二人に気づいて即座に鎧を纏い不可視の剣を構える。

無理もない。彼女らはたった一日前に己を殺そうとした相手なのだから。

 

「バーサーカー、貴様何故!?」

 

「わぁぁっ、待ってくれセイバー!」

 

「あら、主人が招いた客に刃を向けるの?

 躾のなっていないサーヴァントね」

 

「これイリヤ、あまり揶揄うでない。

 それにサーヴァントの礼儀がどうこう言うなら、お主だってブーメランじゃろ」

 

「わかってるなら改めなさいよ!

 ……ごめんなさいセイバー。今のは言い過ぎたわ」

 

「招いた……!?どういうことですかシロウ!」

 

「わかってる。ちゃんと説明するから、ひとまず剣を下ろしてくれ」

 

士郎らと共に居間に戻ったセイバーは、イリヤたちを警戒しつつ学校で何があったのかを聞かされる。

ライダーの襲撃を受けたがイリヤたちに助けられたこと。

ライダーが仕掛けたらしい人喰いの結界を破壊するため彼女らに協力してもらったこと。

こんな時間になってしまったが、結界は完全に破壊し二度と使えなくしたこと。

二人はその後帰ろうとしたが彼女らの拠点は学校から遠いらしいので、礼がしたいからと家に招いたこと。

 

「シロウ、何故令呪で私を呼ばなかったのですか!?」

 

「セイバーの言う通りじゃ。

 マスターとなった貴様は敵に狙われておるのじゃぞ?

 貴様がいる場所が戦場となる。

 無関係な者を巻き込みたくないなら策を講じるか距離を取れ。

 ……尤も、此度はお主が学園に向かったことで事態を未然に防げたがな」

 

「わかってる……考えが甘かった」

 

「ねー、ご飯まだー?」

 

「悪い、すぐ用意するよ!」

 

そそくさと士郎は立ち上がり台所に向かう。そしてセイバーはイリヤたちに向き直り深々と頭を下げた。

 

「未だ敵同士ではありますが、感謝と謝罪を。

 シロウを救っていただき、ありがとうございました」

 

「確かに受け取った。折角じゃからライダーを倒すまでは休戦といかんか?

 このような行いを命じる外道が勝者となる事態はお主も避けたいじゃろ」

 

「……わかりました。信じましょう」

 

「マスターを置いてサーヴァントだけで話進めないでよ……別にいいけど」

 

時間が無かったのでどうしても簡素になったが、振舞われた夕食はなかなかの腕前だった。

士郎はこの広い家に一人暮らし。

今はセイバーがいるが、それでも二人。

スペースはいくらでもあるので、泊っていけと誘われる。

 

「……ん、世話になろうかの」

 

バーサーカーはイリヤに視線を向けると、彼女が頷いたので了承した。

アインツベルンの居城で待っていたメイドの一人に連絡を入れたら、ものすごく反発したが。

もう一人のメイドに取り押さえておくようお願いしたので一晩くらいなら大丈夫だろう。

 

 

 

 

――――

 

 

 

 

「……イリヤ?」

 

客人の分の布団を運んでいた士郎は、和室の仏前に座る小さな影を見つけた。

彼女はこの家の本来の持ち主、彼の養父の遺影を、泣きそうな顔でじっと見つめている。

 

「待て」

 

「?」

 

声をかけようとしたところで、いつの間にか傍にいたバーサーカーに止められ、その場から離される。

 

「頭では理解していたつもりだったんじゃろうが、まだ気持ちの整理もついておるまい。

 そっとしておいてやれ」

 

「どういう意味だ?

 もしかして、イリヤはじいさんの知り合いなのか?」

 

「知り合いどころか……何も知らぬのはお主の方じゃよ。

 振る舞いから予想はしていたが、やはり切嗣から何も聞いておらなんだか」

 

イリヤどころかバーサーカーすら自分の養父を知っている様子なので、士郎の疑問は大きくなる。

どうやら意図的に隠されていたようなのでバーサーカーは自分が明かしても良いものかと悩んだが、すでに彼も戦争に参加し関わってしまった。

であれば知っておくべきだろうと口を開く。

 

 

 

「衛宮切嗣はイリヤスフィールの父親じゃよ。

 彼とアイリスフィール・フォン・アインツベルンの間に生まれた、血のつながった実の娘がイリヤじゃ。

 ……つまり、お主とイリヤは義理の姉弟ということになる」

 

そしてバーサーカーは1枚の写真……若かりし頃の切嗣とイリヤによく似た女性が仲睦まじく寄り添う姿を映したそれを実体化し、士郎へと差し出した。




本作は原作にて存在しなかった、『士郎とイリヤが初期から協力するルート』となります。
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