『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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原作リスペクトのつもりで、本文中では極力『ヒノカミ』ではなく『バーサーカー』と呼称します。

……そして感想にてうっかりこぼしてしまったので明記します。
この物語の『不動明王(ヒノカミ)』はオリジナルでもオリジナルが操る分身でもなく、かつての冬木での偉業による信仰と、ヒノカミがその名を借り受けるにふさわしい神格を得たことで、この世界の英霊の座に登録された『ヒノカミのコピー(分霊)』です。
自由に世界を行き来し世界の強度以外の制限がないはずの彼女が弱体化してまで『サーヴァント』なんて形で姿を取っているのはそのためで、オリジナルとの繋がりはあるものの同一人物と呼べる存在ではありません。


第5話

 

士郎とセイバーは、イリヤとバーサーカーとの同盟を受け入れた。

判明した彼女らの経歴を思えば敵対したいと思えず、またその言動が信用できると判断したからだ。

それにはっきり言って士郎はマスターとしてあまりに未熟であり、十分な魔力を得られないセイバーも弱体化が著しい。

だからこそ魔術師として先輩であるイリヤ、無限の魔力を用意できるバーサーカーと組むメリットが非常に大きかったのも理由である。

 

よって戦争終結までは寝食を共にしようと提案するのは不自然な流れではない。

夜こそが魔術師が活発に活動する時間。

分散しているところを襲撃され敗退するなどあまりに馬鹿らしい。

 

ではどちらの拠点に集まるかとなれば、拠点としての広さはどちらでも問題ない。

しかし郊外にあるアインツベルンの居城と冬木の中心に近い衛宮家であれば後者の方が事態に対応しやすいため、イリヤとバーサーカーが衛宮家に移り住むことになった。

アインツベルンのメイドであるセラと、リズことリーゼリットの2名も必要な荷物と共にバーサーカーが翌朝連れてきた。

厳格で仕事に誇りを持っているセラは、昨晩イリヤの食事を用意した士郎に、早速姑のような絡み方をしていた。

 

しかし問題が一つ。衛宮士郎との関わりが深い一般人の存在だ。

特に家族ぐるみの付き合いをしており、士郎の学校の教師でもある藤村大河。

同居人としてセイバーが増えるだけでも大ごとになりかねないのに、イリヤたちまで追加されてしまった。

頻繁に家に来る彼女とイリヤたちとの接触は避けられず、どう説明したものかと士郎は頭を抱えていたが。

 

「きゃーっ、切嗣さん若ーい!

 そんでこっちがイリヤちゃんのお母さん!?

 うわ美人!そっくり!こりゃ将来は安泰ねー!」

 

「じゃろー?」

 

バーサーカーが士郎と同じく、切嗣とアイリスフィールの写真を見せて説得していた。

切嗣を嫌った母方の家の当主に閉じ込められていたイリヤが家を飛び出し、自分の兄に会いに来たというカバーストーリーを用意して。

 

「で、そのイリヤちゃんちのじーさんってのはどこにいんのよ!

 切嗣さんとイリヤちゃんを引き裂いたクソジジイは!

 アタシがぶちのめしてやるんだから!」

 

「案ずるな。儂が徹底的にぶちのめしておいた。

 この来訪を邪魔できんようにな」

 

「グッジョブよヒノカミちゃん!」

 

(セラ……さん?『ヒノカミ』って?)

 

(バーサーカーが愛用している通り名だそうです。

 流石に『バーサーカー』を人名として押し通すのは無理があるだろうと)

 

(あー……確かに『セイバー』でもギリギリだよな)

 

バーサーカー……ヒノカミは、イリヤの友人であり彼女を家から連れ出し冬木まで連れてきた案内役。

セラとリズはそのままイリヤのメイド。

セイバーはかつてアイリの護衛をしていた者の関係者と説明した。

……嘘は、ついていない。間違ってもいない。

 

「して、伝えた通り儂らはしばし衛宮家に滞在したいのじゃが……」

 

「オッケーオッケー!

 切嗣さんの娘で士郎の妹だってんなら、アタシにとっても妹みたいなもんよ!

 いつまでだっていてちょーだい!もちろんヒノカミちゃんたちも!」

 

「かたじけない」

 

(……私の方がお姉ちゃんなのに……)

 

(我慢せい。お主の見た目で18歳と明かせば裏の事情の説明が避けられん)

 

ちなみに、士郎にもイリヤの実年齢は説明済み。

そして未だ受け入れることはできていない。

 

「あー……それでだな藤ねえ。

 イリヤにこの街を案内してやりたいんだ。

 だから悪いけど、しばらく学校休んでいいかな?」

 

「んー、まぁ仕方ないわね。

 アタシから他の先生たちに説明しておくわ!

 でも休んでる間もちゃんと勉強すること。いいわね?」

 

「わかってる。ありがとう藤ねえ」

 

聖杯戦争が数日で終わるとは思えないが、準備をする時間は取れた。

この期間中にイリヤとバーサーカーで士郎を鍛え上げ、彼を戦えるようにする。

魔術師としても切嗣の子としても先輩であるアインツベルンの新当主と、世界意志に認められた『正義の味方』である不動明王に弟子入りしたのだ。

『男子三日会わざれば』と言うが、彼女らにかかれば本当に三日で激変してもおかしくはない。

そして彼が成長すればそのサーヴァントであるセイバーも、その真名に違わぬ実力が発揮できるようになるだろう。

 

「並行して、街の結界を強固にしたい。

 『士郎がイリヤを案内している』という体裁も必要じゃしな」

 

「わかってるわ。私たちの不在の間、この家をよろしくね」

 

「お任せください」

「いってらー」

 

セラとリズはアインツベルンが製造し、バーサーカーが調整を加えたホムンクルス。

二人がかりならサーヴァント相手でも善戦するだろう。

 

彼女らに衛宮家の留守を任せた4人は早速街へと繰り出す。

バーサーカーから第三魔法の欠片とも言える種火を受け取り、霊力の枷で雁字搦めにされた士郎は息を切らせながらイリヤたちの後ろを歩き続けた。

 

「お主らもランサーとは会ったな?

 これで残る不明なサーヴァントはキャスターとアサシン。

 そしてキャスターの方は正体はわからんが所在だけなら掴んでおる」

 

「そうなのですか?奴はどこに?」

 

「柳洞寺よ。地脈を通じて街の一般人から魔力を集めてたの。

 少し前までガス漏れ事故で住民が昏倒する事件が多発してたでしょ?

 アレはキャスターの仕業よ」

 

「なんだって!?じゃあ早く止めさせないと!」

 

「もう止めさせておる。今こうして設置しておる結界で地脈の流れに干渉することによってな。

 しかし完全に栓を閉めると追い詰められ何をしでかすかわからんので、儂の魔力を少量流し込み続けておる。生かさず殺さず程度にな」

 

「お二人なら討滅も容易いと思いますが、何故そのような迂遠な真似を?

 少しずつでも拠点を強化されていけば厄介なことになる」

 

「こいつは無尽蔵の魔力とAランクの『陣地作成』スキル持ちよ?

 シロウとセイバーも強くなるし、時間が経つほど有利になるのはこっちの方」

 

「倒すだけなら簡単じゃが、敵はキャスターだけでもない。

 その後の戦い全体において一般人への被害を抑えることを考えれば、入念な下準備は必要じゃろう。

 戦いそのものも有利になるしな。『石橋を叩いて渡る』と聞いたことはないか?」

 

「あー、この国のことわざだっけ?

 でもアンタのやってることって、石橋を叩き壊して戦車の大軍でも渡れる橋頭堡を確保しようとしてるようなもんじゃない」

 

「げらげらげら」

 

「……すごいな、イリヤもバーサーカーも。

 的確に対処して、先のことまで考えてて。

 俺には、そんな鮮やかに解決できる力も知恵もない……」

 

「お主はそれらを手に入れようとしている途中なんじゃよ。

 誰もが通ってきた道じゃ。焦らず確実に歩むことが後に繋がると思え」

 

「今は素直に、お姉ちゃんに甘えておきなさい?」

 

「……ありがとな」

 

「となると、今優先して対処すべきはやはりライダーでしょうか?」

 

「そうね。ただ正直に言うと……ライダーのマスターは目星がついてるのよね」

 

「そうなのか!?」

 

「『遠坂』と『アインツベルン』が参戦してるんだから、最後の御三家も参加してると思うのは当然でしょ?

 だから少し前から警戒してたんだけど、どうやら当たりみたいなのよね。

 ライダーが術を設置した場所といい、露骨過ぎてミスリードを狙ってるのかと思ってたけど、ただの考えなしみたいだし」

 

「……確かに前回のバーサーカーを使役していたのもあの家の者だったようですからね。

 今回のアサシンかランサーのマスターである可能性もあるのでしょうが」

 

「『御三家』……?」

 

「冬木の聖杯戦争を運営する、魔術師の名家じゃよ。

 遠坂凛と同じく、その家の子供がお主らの学園に通っておるんじゃ」

 

「遠坂以外にも魔術師が……一体誰なんだ?」

 

 

「『間桐(マキリ)』よ。その兄妹がいるんでしょ?

 少なくともどっちかはほぼ間違いなく、聖杯戦争に参加してるマスターでしょうね」




Fate/Zeroにてアイリとセイバーの相性は悪くなく、であれば落ち着いているイリヤとならセイバーは特に問題はないと判断しました。
バーサーカーとは一度殺し合いましたが彼女は最後まで武人として振舞っていたため、セイバーからの好感度はむしろ高い方です。
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