『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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『曇らせ』タグ追加しようか悩んでいます。


第44話

「……は?」

 

その言葉を呟いたのは誰だろうか。

教師たちかもしれない。生徒たちかもしれない。モニターの向こうの緑谷か、爆豪なのかもしれない。

皆一様に口を開き、虚を突かれたような表情をしているものだから、誰の声なのかわからなかった。

 

「え……?病気……?」

 

「ヒノカミ先生が……?」

 

「……舞姉?」

 

オールマイトの言葉に反応し全員が一度モニターに目をやったが、すぐに振り返ってヒノカミを見つめる。

ヒノカミは目と口を閉じ、周囲を無視して椅子に座る。

自分は何も言うつもりはないと態度で示した。

 

「みんな、今は静かに、オールマイトの言葉を聞いてあげてくれ」

 

根津が促すが、皆戸惑ったまま立ち尽くしている。

彼らの意識を引き戻したのは爆豪の叫びだった。

 

『……ふざけんな!!

 あの殺しても死なねぇようなババアが不治の病だぁ!?』

 

『試験だとしても、流石に悪質すぎますよ!オールマイト!!』

 

オールマイトを敬愛する緑谷ですら怒りをあらわにして反発する。

しかしオールマイトは一切表情を変えず、言葉を続ける。

 

『……およそ6年前。我々はとある凶悪なヴィランと戦った。勝利したが彼女は深手を負い、入院することになった』

 

相手は当然、AFO。

しかしこれを聞いているのはOFAを知る者たちだけではないため、オールマイトはヴィランの説明はぼかして続けた。

 

『諸事情から、彼女の負傷は大ごとにできなくてね。

 可能な限り早く復帰してもらうために、リカバリーガールにも足を運んでもらった。

 そして戦いで負った傷はすぐに治った。

 ……しかし治療の過程で行った精密検査にて、彼女の病が発覚した』

 

同じくモニター室にいるリカバリーガールに視線が集まる。

彼女は目を伏せて頷き、無言で肯定の意思を示した。

 

『私はすぐにエンデヴァーに連絡し、彼と協力して彼女を入院させた。

 サイドキックを解消し、勝手に活動休止を発表し、極秘裏に病院に押し込め治療を受けさせた。

 ……これが、6年前に彼女が表舞台を去った理由の真相だ』

 

『『……!!』』

 

「親父が……!?」

 

『表ざたにはできなかったので大々的には動けなかったが、我々はできる限りの手段を講じて彼女を救う方法を模索した。

 その甲斐あって、原因を突き止めることはできた。……だが治療法は見つからなかった。

 どれだけ手を尽くしても寿命が減るのを遅れさせるのが精いっぱいで、彼女の命は少しずつ、確実に削れていく。

 そしておよそ3年前。彼女は自分の意思で、治療を打ち切った』

 

『そんな、なぜ!?』

 

『もう助からないと悟っていたからさ。

 だから彼女は自分が生きる時間を延ばすより、後を託せる者を育てるために残る命を捧げることにしたんだ。

 そして彼女が選んだのが君たちであり、雄英ヒーロー科のみんなだ』

 

『僕たちを、選んだ……?

 僕たちのために、命を……!?』

 

もはや緑谷も爆豪も、モニター室の皆もオールマイトの言葉が嘘だとは思っていなかった。

 

「……でたらめ言うんじゃねぇ!!」

 

それでも轟は否定し、叫んだ。

彼は周囲の静止も聞かず、ヒノカミへと詰め寄り胸倉を掴む。

 

「んなはずねぇんだ!

 だって舞姉は、この6年間もなんだかんだ言いながらウチに遊びに来てた!

 正月んときも、盆休みも、俺や兄貴たちの誕生日にだって!

 そんな重てぇ病気の人間が何度も病院から抜け出すなんて、できるわけねぇだろ!!」

 

「落ち着け!轟!」

 

「放せっ!」

 

相澤の手を振り払った拍子に、轟はヒノカミの上着を引きちぎってしまった。

先ほどの戦いで、彼女のコスチュームの一部が劣化していたせいだ。

 

「……あ?」

 

破れた隙間から覗く彼女の上半身は包帯だらけで、肌にはいたるところに深い亀裂が入っていた。

 

「なに……それ……?」

 

どんな病気を患ったらこんな姿になるかはわからない。

だが明らかに異常、命に関わる事態だと一目で理解した。理解できてしまった。

呆然とする一同を、再び爆豪の言葉が引き戻す。

 

『……いつだ?』

 

『かっちゃん……?』

 

『あのババアの寿命は、あとどんだけあるのかって聞いてんだ!!』

 

「!!!」

 

全員が息を呑み、静かにオールマイトの言葉を待つ。

 

『……USJの襲撃にて、彼女は脳無を倒すために無茶をしてまた命を削った。

 それ以降、急激に病状が悪化した。

 君たちの職場体験期間中にもう一度極秘で入院させたが、体調は回復しても減った寿命は戻らなかった……』

 

オールマイトは俯き、弱弱しい姿で、絞り出すようにつぶやく。

 

『……彼女の余命は……あと『3カ月』だ……!』

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