『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第15話

 

「選定の、やり直しだって……!?」

 

「ブリテンの崩壊……!?

 おい、まさかコイツ『アーサー王』か!?」

 

「あ、シンジはまだ知らなかったのね」

 

そういえば色々と蚊帳の外な慎二にはサーヴァントたちの真名すら知らせていなかった。

ライダーとの戦いで彼女が宝具を完全に発動していれば気付いたかもしれないが。

彼が把握しているのは仮初の主従関係を結んでいたライダーと、見た目でわかりやすいアサシンだけ。

 

セイバー、『アーサー王』。本名はアルトリア・ペンドラゴン。

ライダー、ゴルゴン三姉妹の末妹『メドゥーサ』。

キャスター、コルキスの王女『メディア』。

アサシン、『佐々木小次郎』……と名乗っているが実は違うらしく、その逸話に最も近しい誰かだとのこと。

ランサー、ケルトの戦士『クー・フーリン』。

そしてバーサーカー、冬木の民衆に『不動明王』と誤解された異界よりの来訪者。

あと真名が不明なのは遠坂凛の元にいるアーチャーだけだ。

 

「私は失敗した。王として不適格だった。

 騎士たちの離反を招き、国を割り、ついに滅ぼした。

 死の間際で私はずっと考えていたのです。

 『私のような愚者が選定の剣を抜かなければ』。

 『もっと優れた者が王となっていれば』。

 ……だから私は世界と契約し、『聖杯を手に入れ望みを叶える』ことと引き換えに『死後に世界の守護者となる』ことを受け入れたのです」

 

「……死んだ後で英霊になったんじゃなくて、生きている内に英霊になってたのね。

 アナタが霊体になれないのはそういうこと」

 

「しかし、過去の改変とは……」

 

「……ダメだ、セイバー!

 たとえどんなに受け入れられないことだとしても……起きてしまった結末を変えるなんて!」

 

「っ!?いくらシロウと言えど聞き捨てなりません!」

 

「あー、双方落ち着け。

 ……ちぃと儂の話を聞いてくれ。大事な話じゃ」

 

「「…………」」

 

バーサーカーが一触即発な二人の間に入り強引に鎮める。

全員が落ち着いたところで、バーサーカーはセイバーを見つめる。

 

 

「……まずセイバー、その願いを聖杯で叶えるのはやめておいた方がよい」

 

「貴女も、私を否定するのですか……!?」

 

「そうではない。おそらくお主の考えているような結末にはならんからじゃ」

 

「……どういうことです?」

 

「これは全員に関係のある話じゃから、心して聞いてほしい。

 儂のオリジナル……本体は平行世界からの来訪者。

 この世界で言うところの『第二魔法』を納めた者だとはすでに話したな?」

 

キャスターたちにも、彼女を受肉させる際に空いた時間で説明している。全員が頷いた。

 

「そして儂の平行世界移動能力は『時間移動能力』を兼ねておる。

 サーヴァントの儂では不可能じゃが、儂の本体は過去でも未来でも自在に行き来できる。

 それこそ宇宙創世より前でも、宇宙崩壊の後でもな」

 

「「「「「!?」」」」」

 

「……なぁ葛木。宇宙誕生って、どのくらい前だっけ……?」

 

「最新の研究結果では、137億年前だ」

 

「そ、それはもはや神の領域よ……!?

 アナタは『不動明王と誤解された人間』ではなかったの……!?」

 

「ん~~……まぁその辺話すと長くなりそうじゃから後で。

 今は『儂ならできる』『すればどうなるか知っている』ということだけ理解してくれ。

 その上で言うが、儂は決して過去には移動しないと決めておる。

 正確には過去に移動し干渉することで『新たな平行世界』が生じる事態は避けるとな」

 

「新たな、平行世界?」

 

「歴史において別の選択を取ったことによって生じる分岐じゃ。

 未来を知っている者が過去に干渉すると、ほぼ間違いなく生じる。

 今回のセイバーの願いもこれに当てはまる。

 ……例えば『アルトリアが選定の剣を抜かなかった世界が欲しい』と聖杯に祈った場合、この世界のこの時代はどうなると思う?」

 

「え?……歴史書とかみんなの記憶が入れ変わったりするんじゃないのか?

 ブリテンの歩みとか、いつ滅んだかとか、王の名前がアーサーじゃなくなってたり……」

 

「恐ろしく低いであろうが、この時代までブリテンという国が残っている可能性も否定できぬのでは?」

 

「結論、『何も変わらん』。

 この世界において『アルトリアが王となり治めたブリテンは滅びた』という事実は一切変えられんのじゃ」

 

「なっ……何故ですか!?」

 

「『この世界』と言うたじゃろう?

 ……つまり、こういうことじゃ。

 『アルトリアがブリテンの王となった世界』とは別に、『アルトリアが王とならなかった世界』が分岐して生まれるだけなんじゃ」

 

「「「…………!」」」

 

「そ、それでは願いが叶ったとはいえない!」

 

「その通り。お主の願いはどちらかと言えば『アルトリアが王となった事実を無かったことにしてほしい』じゃろ?

 ……むしろ聖杯がそっちの意味で受け取ると、最悪の事態になる」

 

「……どうなるのですか?」

 

 

「『アルトリアが王となった世界線を消滅させる』。

 そこに住まう人も、物も、何もかもを跡形もなく消す。

 願ったセイバー自身を含め、この場にいる皆も一人残らず皆殺しじゃ」

 

「「「「「「!?!?!?!?!?!?!?」」」」」」

 

「な…………!!」

 

「この世界の存在は、第二魔法を習得しておる儂の記憶の中にしか残らんじゃろうな……。

 どうじゃ?それでもまだお主は、お主の望みを聖杯に叶えてもらいたいか?」

 

「う……あ……あぁ……っ!

 でき、ません……できるわけがないっ!!」

 

「セイバー……」

 

崩れ落ち、外見相応の少女のようにボロボロと涙を流すセイバーに、士郎が寄り添う。

 

「……っぶなかった……もう少しで世界が滅びる所だったのか……!

 聖杯ってなんなんだよ、怖すぎるだろ!」

 

「心の無い願望機なぞそんなもんじゃよ。

 今回はファインプレーじゃったぞ慎二」

 

「えぇ、シンジの『空気の読めなさ』が世界を救ったのですね」

 

「おいライダー言い方ぁ!!」

 

緊張していた空気が緩やかに解けていく。

バーサーカーは胸をなでおろしつつ、震えて泣き続けるセイバーを見つめる。

 

 

「……というか、すでにあるかもしれんな」

 

「「「え?」」」

 

今のバーサーカーでは移動はできないが、窓を開いての観測くらいなら、多分できる。

 

「どれ、探してみるか」

 

無数の平行世界の中から。

 

『アルトリアがブリテンの王とならなかった世界』を。

 

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