……ただちょっと調べてみたんですが、詰んでたのは間違いないっぽいんですよね……。
「……なぁ……魔術ってさ……魔術ってさぁ……!」
「言うな、慎二。……これは流石に俺でも間違ってるってわかる」
突然別の世界を観測しようなんて言い出したバーサーカー。
近しい世界の同時期や未来を映すとこの世界でまだ未知の情報を知ることになったりして、それだけで平行世界が生じる可能性が高いらしいが、平行世界の遥か昔なら問題も起きないだろうとのこと。
そしてセイバーは是非見るべきだろうし、ついでにこの場にいる皆にもと言い出し、しかしバーサーカーの彼女では映像を投映し続けるのも結構辛いらしい。
彼女がキャスターであればまるでその場にいるかのような立体映像を作り出せただろうにということだが。
そこで、バーサーカーが要求したのが。
「コンセント繋いだよー」
大きなテレビモニターである。
「端子接続、と。んじゃリズ、入力切替してくれ」
「おっけー」
映像ケーブルのもう一端はバーサーカーが握っている。
彼女は自分の観測した映像を電気信号に変換して、モニターに流すつもりだそうだ。
「……第二魔法って、たしかリンが必死こいて習得しようとしてるのよね?」
「ひとっ走りして連れてきましょうか?」
「お願いライダー、やめてあげて」
「んじゃ、始めるぞー」
モニターに奇妙なノイズが走る。
よく見ればいろんな世界の光景が、幾つもに分割され超高速で流れていた。
「うぉ、ホントに映ってる」
「セイバー……『アルトリア』で検索かけとるんじゃが、結構あってな。
ここからは総当たりで確認していくぞ」
「検索って……インターネットじゃないんだから」
「こ、こんなに私がいる世界が……?」
「くけけ、言うたじゃろ?ちょっとしたことですぐに平行世界は分岐すると。
そうじゃな、わかりやすい実例は……コレじゃ!」
バーサーカーが映像の一つにフォーカスし、拡大しつつ映像からノイズを消していく。
そこには馬にまたがり槍を構えたアルトリアがいた。しかしその姿は。
「「「でっか!!」」」
「見ないでくださいシロウ!!」
「うぶっ!俺だけ!?なんでさ!?」
この世界では15歳ほどで成長が止まったアルトリアの肉体が、大人に成長していたのだ。
特にどこがと言えば、彼らの反応で察していただきたい。
「これはアルトリアが『エクスカリバー』ではなく『ロンゴミニアド』を主武装とした世界線じゃな。
聖剣による不老の加護がないから肉体が成長したようじゃの」
「うわぁ~~……セイバーって大人になったらこんなだったんだ……」
「これで男の振りは、ちょっと無理ですよね……」
「……イヤァァァッ!こんなの、こんなの私のセイバーじゃないわ!!」
「誰が貴様のセイバーだキャスター!!」
「じゃが王になっとるのは違いないんで目的からすればハズレじゃがな。
んじゃ次々探していくぞ」
その後も一つ一つ世界の観測を続けていく。
そう、続ける必要があった。
アルトリアが王となった世界線が非常に多すぎるのだ。
「ん-、これは予想外じゃな……まるで世界意志に『王』となることを求められているような……」
「それはそれで凄いんだけど……」
セイバーの顔は曇り、俯いている。
どの世界線でも規模は違えど円卓が崩壊しブリテンが滅びていたので猶更だ。
「あ、あった」
「「「!?」」」
バーサーカーが一つの世界を拡大して表示する。
そこに映っていたのは『剣』ではなく『杖』を握っている、年相応の笑顔を見せる幼いアルトリアだった。
「これが……セイバー?」
「あらぁ、可愛らしいわねぇ〜」
「騎士ではなく魔術師。種族も人間でなく妖精じゃな。
しかしこれは間違いなく『平行世界のアルトリア』じゃ」
「私が、妖精……っ、ブリテンは、国はどうなりましたか!?」
「滅んどるぞ」
「……そう、ですか……」
「ん-……残酷じゃが、知っておいた方がよかろうな」
バーサーカーは映像を縮小し、最初と同じ多数の光景が分割された状態にまで戻す。
しかしそこから更に視点を引き、一つ一つの世界が無数のマス目に見えるほど沢山の世界を同時に表示する。
「『アルトリア』の存在の有無を考慮せず、ただ『選定の剣を抜いた王が存在した世界』にまで条件を緩めるとこれだけ見つけた。
もっと探せばもっとあるとは思うがの」
「こんなに……」
「んで、この全てでブリテンは滅んでおる」
「「「全てで!?」」」
「終わる時期や終わり方にはいくらか差があるがな」
「そんな……どうやってもブリテンの滅びは避けられないと、そう言いたいのですか!?」
「半分正解じゃの」
そしてページをめくるかのように画面を横にスライドさせた。
先ほどとほぼ同じくらいの数の別世界が表示される。
「こっちはブリテンがもうちょっと長生きした世界。
まぁ精々数十年から百年くらいじゃがな」
「「「!?」」」
「こっちも滅茶苦茶あるじゃないか!」
「先ほど表示した世界と今表示している世界の差。
それは『選定の剣を抜いて誰かが王となったか否か』。
そして前者は『是』であり後者は『否』じゃ」
「どういう、ことですか……?」
「つまりな、選定の剣で王を選ばねばならぬほど国が乱れている時点で『手遅れ』なんじゃよ。
もはやターミナルケアの段階で、あとはどれだけ余命を伸ばせるか。
『誰が選定の剣を抜いたとしても』ブリテンの滅びは避けられん。
ブリテンを生かすならもっと早くに、それこそ『アルトリアが生まれるより前に』対処せねばならんのじゃ」
「んなっ……!それじゃあセイバーにはどうしようもないじゃないか!」
「そう、セイバーは無能な祖先の後始末を押し付けられただけ。
なんで、もしブリテンの崩壊を止めたいと望むなら『アホな祖先どもを何とかしてくれ』と願うのが正しいの。
まぁ、それを願ったらどうなるかは先ほど話したとおりじゃし、そうなった世界はこうしてすでに存在しておるわけじゃが」
「……ふ、ふふふ……本当に残酷ですね。
知らなければ、私は……希望を持っていられたのに!」
「希望を持ったまま無為に足掻き続けた果てに行きつくよりは、今答えを知れた方が衝撃は少なかろう。
……慰めにしかならぬが伝えておこう。
この世界線では他と比較してブリテンの余命が僅かじゃが長く、崩壊も穏やかであった。
それは間違いなくお主の成果。
……誰にでもできることではなかったぞ」
「……お気遣い、感謝します」
ゆっくりと立ち上がったセイバーは力なく部屋から立ち去っていく。
バーサーカーは追いかけようとした士郎を睨み、静止させた。
「しばらく放っておいてやれ。
こればっかりは、自分で立ち上がるしかない」
「ショックでしょうね……ずっと頑張ってらしたそうですし」
「これからセイバーはどうするのかしら……聖杯を手に入れて願いを叶えるために世界と契約したんでしょ?
なのに願いそのものが叶えてはいけないものだと知ってしまったのなら……」
「……おそらく聖杯を求める旅は終わり、死ぬ間際の瞬間に戻るのでしょう。
そこで死を迎えて、世界の守護者となる……守るべき故郷の滅んだ世界の守護者に」
「私たち反英霊には、間違っても『気持ちが分かる』なんて言えないわね」
「そんなのって……なんとかならないのかバーサーカー!」
「なったとしてもセイバーがそれを望んでおらぬなら彼女の救いにはならぬ」
「くっ……」
「……ま、幸いと言うかなんと言うか、儂らが終わらせようとせぬ限り聖杯戦争が終わることはなかろう。
アーチャーとランサーと戦おうと、我らが全滅するとは思えんからな。
時間の許す限りじゃが、彼女が答えを見つけるまで見守ろうではないか。
しかし思考の誘導や無理強いはするなよ?
儂やお主らの自己満足で彼女の行く末を勝手に決めるのならば、それはもはや『悪』の所業じゃ」
「……わかった」
言うまでもないでしょうが、別世界線として取り上げたのは『ランサー』と『キャスター』のアルトリアです。