『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第17話

 

本日より士郎、桜、慎二は復学、教師である葛木と共に登校する。

士郎もそれなりに戦えるようになっており、桜もわずかだが魔術は使える。

葛木は武術の達人で、慎二は一般人であり襲撃される可能性は低い。

そこに霊体化したライダーとアサシンが同行している。

万全とは言わないが、アーチャーやランサーが奇襲を仕掛けてきたとしても即座にやられることはあるまい。バーサーカーが駆けつけるまでの数秒は確実に稼げるだろう。

 

ちなみに凛は彼らより少し前から登校を再開したらしい。

ようやくアーチャーが再び戦えるようになったのだろう。

士郎と慎二は同学年なので何度か顔を合わせることもあったが、お互い軽く頭を下げる程度で接触は控えた。

しばらくは戦いを避けるべきと厳命されているし、士郎としても学校を戦場にするような真似は絶対に避けたい。

慎二は面白くない様子だが、敵とわかっている凛に怯える様子もない。

それ以上に頼もしくて恐ろしい連中と散々顔を突き合わせてきたのだから慣れもするだろう。

 

そして学校の生徒たちは暴君ワガママ坊主の慎二が大人しくしていることに大変驚いていた。

しかし家が全焼し祖父を亡くしたとあらば無理もないと納得していた。

柳洞寺の次男である柳洞一成に至っては『不謹慎にもアイツが大人しくてありがたいと思ってしまった自分が恥ずかしい』と自責の念に駆られていた。

そして柳洞寺に住んでいた葛木たちが衛宮家に移ったことに対し『衛宮ならば信頼できる、宗一郎兄をよろしく頼む』とも。

キャスターが言った通り、彼女らは柳洞寺の者たちは巻き込まぬようにしていたらしい。

 

彼らが学校に通っている間、衛宮家に残る者たちもそれぞれ活動を続ける。

 

バーサーカーは結界の強化。しかしこれ以上大幅に強化するのは難しい段階らしく、結界を維持するための補強を兼ねてランサー陣営がどこにいるのかを探すため街を駆けまわっていた。

 

キャスターは衛宮家を拠点として更に強化。イリヤは主にその助手をしている。

イリヤと桜はキャスターに弟子入りした。

神代の魔術師から学べることは多く、彼女もまた優秀な弟子が出来たことを喜んでいた。

 

セイバーは衛宮家の護衛……という名目だが襲撃がない限り出番はなく、未だ失意から立ち直れていない。

今は凝り固まった思考を緩めておけと、バーサーカーから様々な書物を押し付けられていた。

最初は拒絶していたが、彼女が用意したのがブリテンやイギリスに関連するものばかりだと気付いてからは少しずつ目を通すようになった。

 

セラはアインツベルンの居城よりも遥かに小さいが、遥かに多くの住人が住まう家の家事を一手に担っている。

まったく働かないリズを叱るのも、お役目の一つであったりする。

 

 

 

しばらくは彼らも、周囲を警戒しながら万全の体制を整えていた。

しかしアーチャーが仕掛けてくることもなく、ランサーが見つかることもない。

何の音沙汰もなく一週間も過ぎた頃には。

 

 

 

「みなさーーん、晩御飯ができましたよーーーー」

 

「「「はーーーーい」」」

 

桜とキャスター、セラの呼びかけに応えて各々が自室から出てきた。

広い部屋に集まり、大きな台の上に所狭しと並べた料理にそれぞれ箸を伸ばす。

 

「あの、お口に合いますでしょうか……?」

 

「……うまい」

 

「っ!はいっ!」

 

(良かったですね、メディアさん)

 

(ありがと、サクラ。アナタたちが教えてくれたおかげよ)

 

「う~~ん……このままじゃ俺も完全に桜に置いていかれちまうな。

 最近修行優先で料理もしてないし……」

 

「私はシロウの作る食事が一番好きですよ」

 

「そ、そうか……?」

 

(無自覚なアピール……やはりセイバーは強力なライバルですよ、サクラ!)

 

(……うん、頑張る)

 

「はっはっは、若いとは良いものよなバーサーカー」

 

「まったくじゃ、ご飯が進むのぅアサシン」

 

「アンタたちの見た目で若いとか言ってると違和感しか感じないのよ!この若作り!」

 

「「イリヤ(お主)にだけは言われたくない」」

 

「セラー、醤油とってー」

 

「すぐそこにあるではないですか!自分で取りなさい!!」

 

 

 

 

「……ちっがーーーーーーーーーーーう!!!!!」

 

 

耐え切れず絶叫を上げ立ち上がった慎二を、全員が訝し気に見つめる。

 

「食事中に何を騒いでいるのです、行儀が悪いですよ」

 

「あの、義兄さん、何かお嫌いなものをよそってしまったでしょうか……?」

 

「……いい加減にしろよお前らぁ!

 いつまで呑気にダラダラ過ごしてるんだよオイ!!」

 

「「「「「?」」」」」

 

 

 

「『聖杯戦争』は、どうしたんだぁーーーーっ!!!」

 

 

 

「「「「「……あ!」」」」」

 

士郎は己の夢を肯定し導いてくれる先達が現れ、多くの英霊たちに鍛えられ日々成長を実感していた。

セイバーは望まぬ形だが重荷を下ろし、自分を見つめ直すため戦場から距離を置こうとしていた。

イリヤは義理とは言え家族と呼べるものを得て、自分を慕ってくれる二人のメイドと共に暮らす日常を満喫していた。

バーサーカーは元々のんきもの。目の前で問題が起きなければちょっとめんどくさいだけで基本無害だ。

桜は間桐の家から解放され、義理の兄との関係も幾分良好なものとなれた。

ライダーはそんな桜を隣で見ることができるだけで幸せだった。

キャスターは一足先に願いを叶えサーヴァントの立場から離脱、夢の新婚生活を送っていた。

葛木は変わらず妻の望むままにある。後日柳洞寺の者やこの場の皆を招いて挙式予定。

アサシンはライダーやバーサーカーと気軽に腕試しができる環境を気に入っていた。時々士郎の相手もするが彼も中々見どころがある。敢えて望むならセイバーとも戦いたいが、今の彼女と刃を交えても満足するものにはならないだろうと察していた。

 

全員、現状に満足していた。

加えてもはや誰も聖杯への願いがなく、焦って戦争も終わらせる理由もないとあれば。

 

 

「「「「「完全に忘れてた……!」」」」」

 

「馬鹿だろ!お前ら全員馬鹿だろ!

 魔術師ってのはどいつもこいつも馬鹿ばっかりか!!」

 

唯一の一般人の叫びが突き刺さる。

これで否定できないのが、魔術師という種族の辛いところだ。

一般人から見ればバッチリ変人なので。

 

「いやでも、ここまで動きがないとは儂も予想外じゃったぞ!?

 少なくともランサーは何らかの行動を起こして結界に反応すると思っていた!」

 

「おそらく使い魔か何かでこちらの状況を把握することに努めているのでしょう。

 ……7騎の内、実質5騎の陣営が結託してるのよ?

 単騎ではどう足掻いても勝てるはずがないわ」

 

「あー……ランサーはアーチャーと私たちの戦いの漁夫の利を狙っていて。

 アーチャーは多分その逆、もしかしたらランサーと共闘したいのかもしれないけど居場所がわからないから無理で。

 そして私たちが積極的に戦うつもりがないから……」

 

「完全に膠着状態に陥っちゃってるんですね……」

 

「はっはっは、愉快愉快」

 

アサシンの他人事な笑い声が軽快に響き、キャスターがデコピンの要領で魔術弾を額に撃ち込み昏倒させていた。

 

「……仕方ない、流石に次の段階に進めねば。そろそろ動くぞ」

 

「所在が分かってるのはアーチャーだけ……まさか、こっちから仕掛けるつもりなのか?」

 

「言うたじゃろうが士郎。まずは言葉を尽くせと。

 ……まずは少数で交渉に向かおう。こちらの状況と意志を説明する。

 刃を交えるのは彼らの真意と願いを聞き、それが相容れぬものと判明したならばじゃ」

 

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