『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第22話

 

「知らぬ者もおるじゃろうし、根本から語っておこう。

 ……何故聖杯を手に入れるために『聖杯戦争』を行わねばならないのか」

 

聖杯戦争とはたった一つしかない願望機を手に入れるための奪い合い、ではない。

だとしたら殺し合う必要はなく、探し求めて早い者勝ちでいいはずだ。

 

「それは『サーヴァントによる殺し合い』が『聖杯を降臨させる儀式』であるからじゃ」

 

英霊の座から呼び出され、そして敗れたサーヴァントは座に帰るのではない。

聖杯へと取り込まれ、その器を満たすエネルギー源となる。

そして聖杯を完全に実体化させ、願いを叶えるほどの力を発揮させるには、『6騎分』のサーヴァント(いけにえ)が必要なのだ。

よって願いを叶えることができる1騎を含めて、7騎が召喚されるのである。

 

「そしてここからが皆の知らぬ情報。

 儂が召喚されたアインツベルンの歴史を調べて発覚したのじゃが、奴らは第3次聖杯戦争でとあるルール違反を行ってな」

 

アインツベルンは優れた魔術師ではあるが、ホムンクルスの集まりであるが故か人間同士の争いにおける駆け引きなどが理解できず、感情渦巻く戦争で勝ち残ることは難しいと理解していた。

第4次聖杯戦争で衛宮切嗣を雇ったのもそのためだ。

 

そして第3次聖杯戦争では、彼らは確実に勝てる強力なサーヴァントを呼び出すことで対処しようとした。

セイバー・アーチャー・ランサー・ライダー・キャスター・アサシン・バーサーカー。

本来はその7つのクラスのいずれかからサーヴァントを選択するべきなのだが、彼らは『この世全ての悪(アンリマユ)』というサーヴァントを『復讐者(アヴェンジャー)』というクラスで召喚した。

それはゾロアスター教における悪神。神を使役できれば確かに勝利は間違いあるまい。

しかし実際に召喚されたのは、とある集落で世界中の人間の善意を証明するためにその名を押し付けられ『この世全ての悪』として扱われた、ただの少年であった。

戦う力なぞ持たず、当然真っ先に敗退した。

そして、聖杯へと取り込まれた。

 

「が、そこで問題が発生した。

 そのサーヴァントは『人々』に『悪』であることを望まれた存在。

 それゆえに『人々の望みを叶える』聖杯と高度に癒着してしまい、聖杯そのものが汚染されたらしい」

 

「聖杯が、汚染されている!?

 それは一体、どのような……」

 

「ろくでもない状態じゃろうが、現物を見ないことには、なんともな。

 ……そして第4次聖杯戦争において、敗退したサーヴァントを取り込み実体化した現物を見た者がおるじゃろ?」

 

「じいさん……!」

 

「おそらく彼は汚染された聖杯を目の当たりにし、『これは使ってはいけないものだ』と理解した。

 実際、冬木の大火災を引き起こしたのもその聖杯なわけじゃしな。

 故に彼は令呪を持って、セイバーに聖杯の破壊を命じたのであろう。

 しかし10年という短いインターバルで第5次聖杯戦争が始まったことから、完全には破壊できなかったようじゃな」

 

「そういう……ことだったのですか……」

 

「そして大火災を起こしたのは誰か。

 セイバーが最期に戦った相手がギルガメッシュというのなら、切嗣が相対していたのはそのマスターであるはず。

 そ奴が下手人の最有力候補であろう」

 

「それが、言峰綺礼という訳ね」

 

「当初のマスターは遠坂らしいが、あの傲慢不遜なサーヴァントが嫌々誰かに従うとも思えぬ。

 おそらく言峰とギルガメッシュが結託し遠坂を殺害、そして二人は契約を結んだ」

 

「……あのクソ神父!!」

 

「奴らの狙いは『8騎目』というイレギュラーな立場を利用して潜伏し、最後に聖杯を掠め取ることであったのじゃろう。

 しかしここで誤算が生じた。

 殺し合うはずのサーヴァントたちが争いを放棄し、それどころか共に日常を謳歌し始めた」

 

「「「……」」」

 

「そして遂に奴が使役するランサーを除く6騎全てが一丸となってしまった。

 これでは聖杯が出現せぬまま時間切れとなる。

 痺れを切らした奴らの取った選択が……」

 

「自分たちの手で我らを始末し、聖杯を呼び出そうということですか……!」

 

「言峰がランサーのマスターも兼ねているというなら、これより我ら全員とあ奴らの戦いとなる。

 そしてこれが、第5次聖杯戦争の最終決戦じゃ」

 

ギルガメッシュの傲慢な振る舞いには全員頭に来ていた。

そして監督役の振りをして虎視眈々と自分たちの命を狙っていた言峰綺礼も同様。

倒さねばならぬ敵であり、敵として倒すことにためらいもない。

戦意を滾らせる面々の中で、唯一の一般人が声を上げた。

 

「……ちょっと待て!

 あの災害を引き起こしたのがソイツってことは、ソイツも汚染された聖杯ってのを見たんだろ!?

 なんでそんなものまだ欲しがってるんだよ!

 それに資料があったってことは、アインツベルンも聖杯の汚染を把握してたんだろ!?」

 

「アインツベルンに関しては、聖杯が穢れていようと『第三魔法さえ手に入れば良い』と考えていたようじゃ。

 どんな形で在ろうと、自分たち以外の人間がどれほど犠牲になろうともな。

 言峰に関しては不明じゃが……あの大火災を引き起こし、こんな陰謀を巡らせる輩の願いが真っ当なものだと思うか?

 むしろ汚染された聖杯をこそ欲しているやもしれん」

 

「これだから魔術師って奴らは!

 ……で?お前は聖杯をどうするつもりだったんだ?」

 

「……どう、とは?」

 

「とぼけんなよ、最初は聖杯をセイバーに譲るつもりだったんだろ?

 お前が不良品だと知っていてそのまま渡すような真似するもんか。

 だったら聖杯が汚染されていたとしてもどうにかできる算段が付いてるってことだろうが」

 

「「「「「!?」」」」」

 

「……驚いた、本当に賢いなお主は。

 その通りじゃよ。儂には聖杯を浄化する手段がある。

 ……あるには、あるのじゃが……」

 

そこでバーサーカーは言葉を詰まらせる。

その手段とは彼女の扱う浄化の炎、ではない。

仮にも『この世全ての悪』、その程度では燃やし尽くすには火力が足りなすぎる。

だが『間違いなく成功する』と確信している別の方法がある。

なのにそれを伝えずにいたのは、実行するにあたりとある問題が生じたからだ。

原因はやはりギルガメッシュ。

全ての英雄の王を名乗るだけの力を持ち、おそらく『聖杯の泥』とやらで受肉した、汚染されたサーヴァントの存在。

 

 

「……いや、しかしこれ以外に確実な方法はないじゃろう。

 聞いてくれるか、儂の策を。そして皆の力を貸してほしい。

 この戦いに勝利し、笑顔で夜明けを迎えるために」

 

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