『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第4話 サバイバルイレブン開始

 

コロニーから各国のガンダムとファイターたちが、地球へと降りてきた。

これより『サバイバルイレブン』と呼ばれる予選が始まる。

前回優勝国であるネオホンコンにて行われる11ヵ月後の本戦まで、ファイターたちは他国のガンダムと戦いながら己のガンダムと共に生き延びなければならない。

 

強国であれば国の威信をかけて戦うファイターとガンダムを大々的に宣伝し、弱小国や慎重な国は敢えて情報を秘匿し予選で脱落する可能性を下げようとする傾向がある。

そしてキョウジたちが気にかけている『ネオジャパン』のガンダムファイターはそのどちらとも言えなかった。

国としては全く宣伝していないが、ファイター当人が自分を隠す様子がない。

なので彼と出会った者や戦った者がその名を口にし、やがて人伝てでキョウジらも把握することができた。

 

「やはり、ドモンか」

 

東方不敗の弟子にしてシャッフル同盟の長、キング・オブ・ハートの後継者。

まともに考えれば彼を選ばない理由がない。

 

「尋ね人をしているらしい。

 おそらくお主であろうが……会いたいか?」

 

「……会いたいさ。だが今は駄目だ。

 アイツは隠し事が下手だからな」

 

この1年でキョウジとも随分付き合いが深くなり、彼の言葉からは敬語が取り除かれていた。

 

「私と接触し事実を知ればドモンはウルベへの怒りを抱く。

 そして間違いなくウルベの手勢に感付かれる。

 そうなれば奴はドモンも手にかけるだろう」

 

「そうじゃな。では予定通り東方不敗だけで向かってくれ。

 くれぐれもキョウジや儂らのことは口走るなよ」

 

「わかっておる。さて、あ奴はどれほど成長したかな?」

 

師が弟子に会いに行くのは何もおかしなことではない。

東方不敗がアルティメットガンダムと行動を共にしていることはネオジャパンも把握できていないはずだ。

ネオジャパンのファイターがドモンだった場合、ネオジャパンにてキョウジとライゾウ博士がどのような扱いとなっているのか、彼に探りを入れてもらう手筈になっていた。

 

そして東方不敗は彼の愛馬、風雲再起に跨る。

風雲再起はただの馬ではなく、高い戦闘力と知能を持つ名馬の中の名馬。

専用の『モビルホース』などと言うものまで存在しており、東方不敗は彼の愛機であるクーロンガンダムでこれに騎乗することで長距離高速移動が可能になるのだ。

ガンダム1機であれば背に乗せて大気圏すら突破できる。

多分、弱小国のガンダムより風雲再起の方が強い。

仕方ないとはいえそれでいいのかガンダムファイターたちよ。

 

「お主が戻るまで我らは引き続き潜伏する。

 この地にとどまっておれるとは限らんので、通信機を辿ってくれ」

 

「仕方あるまい。ガンダムファイターたちに見つかるわけにもいかぬからな」

 

「彼らは勘が鋭いからな……」

 

キョウジたちはガンダムファイト開催前まではネオジャパン軍が相手だったが、今はガンダムファイターたちから逃げ隠れする日々を送っていた。

何しろファイターたちは世界中に散らばっており、ガンダムを見かければまず戦闘を仕掛けてくる。

そしてアルティメットガンダムはかなり大型な機体。

人型の上半身ですら並みのガンダムより一回り大きいのに、昆虫のような下半身を加えれば戦艦クラスだ。

以前まではいざとなれば海中に逃げて逃亡することが多かったのだが、先日魚みたいなガンダムと遭遇した。

なんとか寸前で隠れて気付かれないようやり過ごせたのだが、あんなのと海中で戦闘になったら逃亡は不可能。そしてかなりの苦戦を強いられるだろう。

以降は山や深い森、廃墟の中などを転々としている。

……そもそも水中戦特化型のガンダムがいるなんて予想していなかった。

海にいれば予選は勝ち残れそうだが、本戦はほぼ陸上だ。本当に優勝する気があるのか?

 

 

 

そして東方不敗の帰還を待つことおよそ1カ月。

 

「……は?ドモンと戦った!?

 喧嘩売ったんか貴様!?」

 

「……うむ。無論、脱落させてはおらぬが」

 

強敵と戦うことを望む者や強敵を予選の内に有利な状況で撃破したいと考えるファイターも確かにいる。

そういう意味では前回優勝者である東方不敗は勝負を挑まれてもおかしくはない立場だ。

しかし彼はドモンの師。東方不敗から挑まぬ限り戦いに発展することはあり得ないはず。

 

「……ドモンとやらは一体何を言ってきたんじゃ?」

 

しかし割と勢いで行動することが多いが、東方不敗は考えなしではない。

であれば彼がドモンと戦うと決めた理由があったはずだ。

そして彼の語る話を聞いて、ヒノカミもキョウジも彼の行動に納得してしまった。

 

どうやらキョウジは母ミキノを殺害しアルティメットガンダム……奴らがデビルガンダムと呼称を改めた機体を奪って逃亡したということになっているらしい。

目的は強大な力を持つデビルガンダムを悪用しての世界征服。

そしてキョウジの罪の責任を取らされ父ライゾウは冷凍刑とされ、ドモンは父の恩赦を得るためと、キョウジの野望を打ち砕き、母の仇を取るためにガンダムファイトに参加したそうだ。

 

「……いや、ウルベが捏造した証拠でも突き付けて思考誘導したんじゃろうが……」

 

「儂にもキョウジの行方を尋ねてきおったわ。

 あまりにあっさり騙されておるので、流石に堪忍袋の緒が切れてな。

 喝を入れるため勝負を挑んでしまったのだ。

 ……それでも目を覚まさせるには至らなんだが」

 

「弟がご迷惑をおかけして……」

 

「それを言うなら儂の弟子でもある。身内を恥と思う心は同じよ」

 

「しかし、ライゾウ博士が無期冷凍刑か……」

 

アルティメットガンダムはとんでもない機体だ。これを開発した彼の頭脳は惜しいはず。

キョウジに対する人質にもなり得るのだから殺されてはいないと確信していた。

しかし牢獄に放り込むくらいだと予想していたが、連中はよほど彼の口を封じておきたいらしい。

何しろ彼はウルベらの悪事の全てを知っているのだから。

仮にドモンがデビルガンダムを撃破しガンダムファイトで優勝したとしても、適当な言葉で煙に巻いて解放を許可しないか、ドモンを用済みと処分しようとする可能性が高い。

彼がデビルガンダムを撃破できず、ガンダムファイトで敗退しても同様。

東方不敗の弟子なら予選で敗退するようなことはないだろうが万が一もある。

どうやら速やかに事態を打開せねばならないようだと悟った。

 

「なぁキョウジ。こういう言い方は気分が悪いと思うが……今のネオジャパンに家族以外の親しい人間はおるか?」

 

「……いや、それこそミカムラ博士くらいだったが彼に裏切られた今となっては……」

 

「であればドモンが地球に降りている今が好機じゃな。

 ここでライゾウ博士を救出できれば、連中はお主とドモンに対する切り札を失うことになる」

 

「救出!?できるのか!?」

 

「それを今から議論したい。

 ネオジャパンの施設や構造……覚えている限りの情報を吐き出してくれ。

 ライゾウ博士が捕らえられている場所の目星さえつけば、可能性はある」

 

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