『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第5話

 

作戦は単純明快。

まず東方不敗がクーロンガンダムに乗り込み、ヒノカミを掴んで風雲再起に乗って大気圏を突破。

ネオジャパンコロニーの索敵範囲外から鎧を纏ったヒノカミが単独で宇宙遊泳し接近。

そのままネオジャパンに潜入し博士が眠らされているカプセルを奪取して離脱、クーロンガンダムと合流し地球へと帰還する。以上だ。

 

予選参加中のガンダムが地球から離れると失格というルールはあるが、これはサバイバルイレブンを逃げ隠れしてやり過ごすことを防ぐためという側面が強い。

今回の目的は逃亡ではないのだから大目に見てもらおう。

そもそも他国への侵入が思いっきり違法行為だし。

 

ヒノカミは酸素も食事も睡眠も不要。

炎や帯を推進力にすれば宇宙空間を自由に移動できる。

熱源反応は熱を支配する異能で隠せる。

流石のコロニーも人間サイズの浮遊物にまで敏感に反応するような警戒網は敷いていないはずだ。

でなければ宇宙に漂う無数のデブリにまで反応してしまう。

 

潜入後は転移能力を駆使して見つからないように進むつもりだ。

仮に気付かれれば博士のカプセルを持ち帰ることは難しくなるだろうが、鎧を纏ったヒノカミは人間サイズでありながら並みのガンダムよりも強い。

失敗しても力づくで脱出できるので多少の手間を取らされるくらいで実質ノーリスクだ。

 

そして冷凍刑となったライゾウ博士の目を覚ますには本来相応の設備と時間が必要だろうが、ヒノカミは再生・治療と熱操作能力の達人。

作業は地球に降りてから行う予定だが確実に一瞬で解凍できるという自信がある。

 

……出来るならいっそウルベを処分してしまいたいが、腐りきっても奴はネオジャパンの重鎮。

警備は厳重であり、奴に何かがあれば間違いなく大騒動になる。

他国からの刺客という可能性に思い至り、戦争に踏み切る可能性もゼロではない。よって不可。眠らされている犯罪者一人なら、事実が露呈しても隠蔽に走るだろう。

何よりドモンに知られれば彼はガンダムファイトどころではなくなってしまうだろうから。

 

「ドモンとやらはあっさり騙されるほど単純な奴なんじゃろ?

 であればお主とライゾウ博士が揃って説得すれば必ず耳を傾けよう。

 そして人質がいなくなればネオジャパンから匿うこともできる」

 

「なるほど……」

 

「……本当はさせたくないんじゃがな。

 祖国を捨てさせるような真似は。

 国の威信を背負ったガンダムファイターをそう簡単に諦めると思えんし、ウルベ以外の者も追手を差し向けるじゃろう。

 ドモンとライゾウ博士にも辛い逃避行をさせることになる」

 

だが時間に余裕がない。

ライゾウ博士はドモンとキョウジに対する人質として機能する。

そこまで露骨に扱うと彼らの悪事もバレかねないので避けているのだろうが、このまま無為に時間が過ぎれば強硬手段に出る可能性も十分にあるのだから。

 

「ただ問題がある。

 お主とアルティメットガンダムは連れていけぬ」

 

まずアルティメットガンダムは言うまでもあるまい。

逃避行を続けるうちに飛行速度や移動速度は向上したがまだ鈍重で、大気圏突破はどう考えても無理。

宇宙へ運ぼうとすれば大型の輸送船を手配せねばならないが、そんなことをすれば間違いなくネオジャパン含む各国コロニーに察知される。

 

そしてキョウジはこの1年で東方不敗とヒノカミに随分鍛えられているが、流石にガンダムファイターたちほどの力はない。

なので彼を連れて行ってもはっきり言って足手まといだ。

東方不敗と一緒にクーロンガンダムの中で待機してもらうこともできるが二人分の酸素と食料を用意するのは手間。

というか、備えがあったとしても漆黒の宇宙空間に漂うガンダムの狭いコクピットの中で長期間を過ごすというのは並の人間には不可能だ。

肉体的にも精神的にも、特殊な訓練をした特殊な人間でなければ。

 

よって二人は揃って地球でお留守番となり、これに伴って生じる問題が二つ。

他のガンダムと遭遇した場合の対処と、アルティメットガンダムの暴走の可能性だ。

 

出来る限り早めに戻るつもりではあるが、数日は必要。

よって二人に地中や海中に潜んでいてくれとも言えない。

重ねて言うが、キョウジはただの人間なのだ。

そしてキョウジとアルティメットガンダムで別々に隠れてくれとも言えない。

生体ユニットがいなければアルティメットガンダムは満足に動けないので、万が一戦闘になった場合はキョウジが乗り込むしかない。

そして戦闘になればアルティメットガンダムが暴走する可能性も高まる。

キョウジを取り込み破壊活動を始める可能性も否定できない。

 

(ーー)

 

「いや、もはやお主がキョウジに手を出すとは思っておらん。平静ならばな。

 しかし怒りで我を忘れる可能性はお主自身も否定できんじゃろ?」

 

(ーー……)

 

ヒノカミと協力して自然を再生している時などはかなり穏やかだ。

自分のボディに鳥が止まったり足元に動物が寄ってきたりしたら、驚かせないように動きを止めて彼らが立ち去るまでじっと待っていることもある。

しかし戦いにおいては苛烈の一言。

ネオジャパン軍相手は言うまでもなく、遭遇したガンダムと戦いになった時も、逃走を提案しても破壊する方が早いと非常に好戦的。かつ攻撃も過剰気味だ。

何とかコクピットを攻撃しないようにだけは忠告し誘導しているが、彼に頭部を破壊され失格になったガンダムも何機かいる。

そして結果として、所属不明の怪物のようなガンダムの存在は一部で噂になってしまっている。

自信過剰なファイターの中には『自分が見つけ出して退治してやる』と息巻く者もいるとか。

しかし東方不敗らには他のガンダムの情報を集める伝手も無ければ、彼らを匿う場所を用意することもできない。

 

「こういう時に、協力者が不足していると実感するの」

 

「仕方あるまい。安易にウォンを頼る訳にもいかぬ。

 あ奴のような俗物にアルティメットガンダムを預けるなどもっての外よ。

 ……して、キョウジ。どうする?」

 

「……父をお願いします。

 元々最初は、私とアルティメットガンダムの二人だけで生きていくつもりだったのだ。

 たった数日が何だと言うのか」

 

(ーーーー)

 

「あぁ、そうだな。よろしく頼むぞ」

 

視線を向けてきたアルティメットガンダムにキョウジが手を上げて応える。

このガンダムを作り出したのは彼と父のライゾウ博士なのだから、兄弟のような関係と言ってもいい。

当初は暴れん坊な末っ子に手を焼いていたが、今は彼らの間にも確かな絆が結ばれている。

……彼らを信じるしかないだろう。

 

「作戦成功を第一とするが、それでも可能な限り早く戻る。

 東方不敗、準備を頼む」

 

「心得た」

 

二人と一頭は即座に準備を終え、鬼を掌に載せたガンダムが白馬にまたがり天へと昇って行った。

それを見届けたキョウジとアルティメットガンダムは、彼らが帰還するまで荒廃した街の廃墟の一つへと身を潜めることにした。

 

 

しかしここで誤算が生じた。

 

アルティメットガンダム……いや、デビルガンダムの噂がすでにかなりの範囲に広まっていたこと。

それを聞きつけたとあるファイターが彼らの潜伏地点の付近に迫っており、天へと昇る一筋の光を見てしまったこと。

そしてファイターのサポーターが光が飛び立った地点を算出し、ついに彼らのところまで辿り着いてしまった。

 

 

 

「……ついに見つけたぞ、キョウジ!

 そして……デビルガンダム!!」

 

「……ドモン……!」

 

アルティメットガンダムの肩に佇んでいた青年を指さして、ネオジャパンのガンダムファイターが力強く宣言した。

 




ここに至るまでのドモンの道のりはほぼ原作沿いです。
ただし、DG細胞に侵されたデビルガンダムの尖兵との戦いは全てカットされています。
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