デビルガンダムが以前クーロンガンダムと戦った時には様々な制限を己に課していたが、勢揃いしたシャッフル相手では転移を除くすべての能力を解禁していた。
ビームや炎が一切通用しないと言うのは中々に厄介で、特にシャッフル・ダイヤの火炎攻撃とシャッフル・エースの連続ビーム弾が使えない。
シャッフル・ジョーカーのビームチェーンはクーロンガンダムのビームクロスより強固な構造なので即座に吸収はできないが干渉されて軌道が逸れてしまい、本来の戦い方が出来るのは実体剣を扱うシャッフル・スペードだけ。
しかし刀身が短いナイフであるため与える傷は小さく、再生能力ですぐに塞がってしまう。
必然的にシャッフルたちは己の拳で戦っている。
『なるほどな……まさに悪魔のガンダムだ!』
「鬼ってことにしてくれんかのぅ」
巨体に似合わず素早いがシャッフルたちほどではない。
しかし兎に角頑丈でパワーがとんでもない。何より自己再生が強力すぎる。
胴体や肩のサブアーム、体から生えてくるガンダムヘッドも伸縮自在で厄介極まりない。
おまけに相手だけが一方的にビーム兵器を使用可能でエネルギー切れもない。
「Shit!冗談キツイぜ!」
「あわわわ……あんなのどうやって倒せってんだよぉ!」
「攻撃の頻度と範囲が桁違いです!
本戦会場にこれほどの広さはない……。
狭いリングで相対したとすれば……!」
「ボルトガンダムよりも速く、パワーも遥かに上……ぬぅぅ……!」
高台から見下ろすファイターたちも、実際に目の当たりにしてようやくデビルガンダムの恐ろしさを思い知ったようだ。
自分たちより遥かに格上なシャッフル同盟が5人掛かりで連携して、ようやく互角。
だがガンダムファイトは基本1対1。
彼らはアレに一人で挑まねばならないのだ。
「今の俺たちでは勝負にならない……本戦までの期間で、どれだけ強くなれるか……!」
「……こいつぁ、マジで鍛え直さねぇといけねぇらしいな」
「「「…………」」」
若き後継者たちが決意を新たにした頃、シャッフル同盟もまたデビルガンダムとヒノカミへの認識を改めていた。
『……理解しました。貴女の心に偽りは見えない』
ヒノカミは真っ当な武闘家とは言い難いがそれでも端くれ。
シャッフル同盟ほどの実力者ならば、拳を交えれば心を通じ合わせることができる。
『熱く、強く、優しい、まるで母なる大地のような力強さを感じる。
そして傷だらけだが痛々しいとは思えない。
歴戦の戦士の肉体のように美しいとさえ思う』
『見た目通りの年齢ではないのだな。
20年そこらの若造がこれほどの重みを出せるものか』
『そして乗り越えてきた苦難もまた、我々よりも遥かに……』
「……やはり本物の武闘家とは凄まじいのぅ。
たったこれだけの戦いで、そこまで見抜くか」
『えぇ、東方不敗が貴女に敬意を払う理由がよくわかりました。
そしてその経験に裏打ちされた強さもまた、我ら如きが推し量れるものではありませんでした』
ヒノカミだけでなく、デビルガンダムの強さも十分に理解した。
まだ彼らは力を隠しており、すでに世界を支配できるだけの力を持っていることも理解した。
だから未だにこの世界が無事であることが、彼らが悪しき心を持っていないことの何よりの証明となる。
『貴女はその力で、これから何を成すおつもりですか?』
「お主らが考えているような長期的な目標などないよ。
今は目先のことで精一杯じゃ。
まずウォンへの借りを返すためガンダムファイトで優勝して。
その後は第14回大会までの間に地球再生活動完遂を目指そうかの。
デビルガンダムの力を借りれば4年でなんとかなるじゃろ」
荒廃した地球には住めぬからと、人々はコロニーを作り宇宙に移り住んだのだ。
その地球が蘇ればまた地上に戻ってくる者も出てくるだろう。
『……そして人間は再び地球の自然を破壊する。
思えば尋ねていなかったな。
ヒノカミよ、お主は地球が再び破壊される事態を防ぐため、どのような対策を取るつもりでいる?』
「対策?……いや、別に何も」
『何も……!?』
「明らかな外道悪党がのさばるようなら別じゃが、そうでない限りは手を出すつもりはない。
後のことは後の者に任せて、また旅に出るとしようかの」
『馬鹿な!それでは繰り返すだけではないか!
貴様ほどの力があれば未然に防ぐこともできよう!
再び地球が破壊されると分かって放置するのは無責任ではないのか!?』
「無責任も何も……東方不敗、お主は肝心なことを忘れておるぞ?」
『何だと?』
「地球はみんなのものじゃろ?」
『な……!?』
『『『『……くっくっく』』』』
『はははは!これは一本取られたな東方不敗!』
『なるほど確かに、地球は誰のものでもない。
であれば誰か一人に責任を押し付けるなどおかしな話だ』
『耳が痛い話ではないか。
そうだ……世界はみんなのものだ。みんなで創り上げていくものなんだ……』
『我らシャッフル同盟もまた、ただの有志の集いでしかない。
世界の管理者を気取り、今も貴女を上から目線で見極めようなど……我々も傲慢になっていたのかもしれません』
「遠い未来のことは、遠い未来に生きる者が考えるべきよ。
儂はただ今ある大切なものが今失われぬよう、明日に繋げようとしておるだけじゃ。
……お主らの紋章と名も、そうしてここまで紡がれて来たのではないか?」
『……そうであったな……明日に繋ぐ、か。
儂も老いたものよ。未来に生きる若者たちが、こんなにも眩しく羨ましい』
『だが我らの想いを託せる若者たちがいるのだ。
何とも幸福なことではないか』
『うむ……では次代の者たちに見せてやろうぞ!
我ら先達の、シャッフル同盟の力を!!』
『『『『おう!!!』』』』
デビルガンダムを包囲していた5機が距離を取り、正面で並び右腕を突き出す。
『我らの魂の炎を、極限まで、燃やすのです!!』
『『『『ぬぅぉぉぉぉおおおーーーーっ!!!!』』』』
(ーーーー!?)
「な、なんちゅうエネルギー量じゃ!
これを、この世界の人間が出せるというのか!?」
まばゆく金色に輝く5機が、光の中でまるで重なっているかのように見える。
『『『『『ひぃぃっさぁつ!!!!』』』』』
「っ!?デビルガンダム!」
(ーー!!!)
デビルガンダムが左腕から放出したビームクロスが何重にも巻き付き巨大な腕となる。
「帛手割砕!赫灼熱拳……バニシングフィストぉ!!」
『『『『『シャッフル!同・盟・拳!!!!!』』』』』
巨大な拳と光の奔流が正面から激突し、大地を揺るがす巨大な爆発が生じる。
遠方で観戦していたドモンたちにもその衝撃は届き、彼らは吹き飛ばされないようになんとか踏みとどまった。
やがて光と土煙が晴れると、大地には巨大なエネルギーが突き抜けて行った痕が残されていた。
デビルガンダムがいた場所の後ろに。
そしてデビルガンダムはシャッフル同盟たちの正面から少し離れた場所でうずくまっていた。
「……転移、使っちまったのぅ」
(ーー……)
押し負けた直後、デビルガンダムは射線上から退避していた。
これを受ければ破壊されるかもしれないと、彼らは自らの禁を破った。
「……天晴れ見事!儂らの負けじゃ!」