『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第18話 ガンダムファイト終結

 

何とか体勢を整え協力してデビルガンダムに挑んだ新生シャッフル同盟のガンダムたちだったが、残念ながらあと一歩及ばなかった。

 

理由は大きく三つ。

 

一つ目は言うまでもない。シャッフルたちの心が平静でなかったこと。

辛うじて全力を発揮できたのは明鏡止水の心を開眼したドモンくらいで、他の4人はまだその領域に届いていなかった。

相手の姿がモニターに映る度に呼吸と感情が乱れてしまう。

そして何より彼らは高潔な武人であり、一人の相手を大勢で嬲るような真似はやはり気乗りしないようだった。

これが命や世界がかかっているならともかく、彼らの個人の欲は武闘家としての信念を上回るほどではなかった。

 

二つ目はヒノカミの精神状態。

彼女は感情が戦闘力に直結するタイプの戦士であり、恥ずかしい恰好をさせられた羞恥心とやり場のない憤りが攻撃に上乗せされていた。

感情丸出しで戦うなど本来なら悪手。隙が出来たり攻撃が単調になったりペース配分を間違えたりするものだが、生憎彼女にはその法則は当てはまらない。

異常極まる危機察知能力と無意識レベルで染みついた数万年を越える戦闘経験はいかなる精神状態でも彼女の動きを最適化し、多彩な能力は相手に攻撃パターンを予測させず、疲労の無い肉体は永遠に全力で戦い続けることができる。

 

三つ目はシャッフル同盟が切り札として選んだ『シャッフル同盟拳』を、すでにデビルガンダムが体験済みだったこと。

先代シャッフル同盟との戦いでその技に押し負けたという事実は苦い記憶として彼の人工知能に焼き付いていた。

なので彼は次の機会に備え、何度も記憶を反芻し少しずつ自己進化を続けていた。

新生シャッフル同盟の技が先代レベルに届いていたものの超えてはいなかったこともあり、デビルガンダムに真正面から受け止められてしまったのだ。

 

その一撃で力を使い果たした彼らは潔く降参。

第13回ガンダムファイトのガンダム・ザ・ガンダムは、ネオホンコン代表のデビルガンダムとヒノカミに決定した。

そして直後彼女らはその場を逃げ出した。転移で。

ドモンらは『隠していた手札の一つを切ってまで……』と呆れはしたが、そこで彼らの緊張の糸も切れてしまい、5人は先ほどの彼女の醜態を思い出し腹を抱えて大笑いを始めた。

 

優勝はデビルガンダムに決まったが、激闘を繰り広げた5機のガンダムは世界中で称賛された。

次いで同じく女性なので動揺が少なかったネオスウェーデンのノーベルガンダムと、パイロットが盲目で視覚の暴力の影響を受けなかったネオネパールのマンダラガンダムも大きく評価されることとなった。

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

「申し訳なかった!」

 

「……顔を上げてください」

 

ガンダムファイト決勝の翌日。

新生シャッフル同盟とその関係者が集う屋外の広場にて、ネオジャパンのカラト委員長はライゾウ博士に深々と頭を下げた。

大会終了後にレインからデビルガンダムにまつわる全てを聞いた彼は、ウルベらの悪行とそれを見逃した自分の失態、そのせいで引き起こされた悲劇を知った。

ネオジャパンスタッフとして活躍したブラボーことキョウジへの信頼もあり、カラトは疑うことなく彼らの言葉を信じた。

 

「地球に降りたネオジャパンスタッフには君たちに手出ししないよう厳命した。

 本国に戻り次第、諸君らの冤罪も必ず晴らしてみせる」

 

「ありがとうございます」

 

「礼など言わないでくれ。これは我らの過ちだ。……それにしても」

 

カラトはゴッドガンダムの隣にMA形態で座るデビルガンダムを見上げる。

 

「おのれウルベめ……!

 奴が愚かな行為に走らなければ、デビルガンダムがネオジャパン代表として戦ってくれる未来もあったかもしれないのに……!」

 

「ははは……いえ、あの強さはパイロットが彼女だからこそですよ」

 

「……そうか……あの可愛らしい少女がなぁ」

 

(((とっくに成人してるとは言えない……)))

 

(東方不敗より年上ということだから……低めに見積もっても、50歳以上……)

 

ちなみに話題のヒノカミは今もデビルガンダムのコクピットに引きこもり、ずっと膝を抱えて泣いている。

ウォンが大々的に後押しをしたせいで、あの格好のブロマイドとか、コクピットの中で動き回る映像とかが世界中に出回ってしまった。

なんか妙なファンも大勢できてた。ファンクラブもできてた。

正体不明の美少女ファイターとか持てはやされてた。

それを知った直後、彼女は顔から火を噴いた。比喩ではなく文字通りに。

 

以後はずっと、もはや安息の地はここしかないとデビルガンダムの中に閉じこもっているのだが、彼女もやがて気付くだろう。

戦闘中のコクピットの中の映像なんてものを正確に撮影できるのは、デビルガンダム本人しかいないということを。

 

なんだかんだ彼はヒノカミを慕っており、ウォンからの『彼女の雄姿を是非世界中にも見せてあげたい』という甘言を額面通りに受け取り賛同した。

ガンダムファイト決勝の戦闘中の彼女の姿を中継していたのは彼だった。

今こうして静かに泣きはらしている姿ももちろん彼の頭脳に録画中。

このままではウォンに新たな餌を与えることになるだろう。

早く気付け。悪意無き真の敵は、君のすぐ傍にいる。

 

 

 

(ーーーー?)

 

「な、なんだ?」

 

突如、デビルガンダムが上空を見上げた。

 

『どうした?……モビルファイターが1機降りてくる?』

 

「何?大会が終わった今更か?」

 

『……シャイニングガンダムじゃと?微妙に形が違うらしいが……』

 

「何だと!?」

 

『デビルガンダム、映像を儂と彼らに』

 

(ーー)

 

カラトの持つ端末にデビルガンダムの見ている機体の姿が映し出される。

 

「ライジングガンダム!?」

 

「ではこれもネオジャパンのガンダムなのですか?」

 

「……なぁ、コイツ墜落してねぇか?」

 

『仕方ない、行くぞ』

 

(ーー!)

 

飛翔したデビルガンダムはこのままでは海に落下するだろうライジングガンダムへと急接近し、両肩の巨大なサブアームで機体を受け止める。

それでも機体に反応はない。生体反応はあるのでパイロットは気絶しているか、あるいは身動きが取れぬほど負傷しているか。

あまり振動や衝撃を与えぬように気を使いつつ急いで元居た場所へと運び、ゆっくりとみんなの前の地面に下ろす。

 

「ハッチ、開きます」

 

ライジングガンダムに近付いたレインが慣れた手つきで外からロックを解除した。

 

 

 

「……お父さま!?」

 

「「「!?」」」

 

 

コクピットの中には意識を失ったミカムラ博士が横たわっていた。

 




モビルファイターはファイティングスーツ着なくても動かせるそうです。
追従性とかが落ちるので、試合では着ない選択肢はありませんが。
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