『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第25話 第14回ガンダムファイト

 

第13回ガンダムファイト、デビルガンダムコロニー討伐からおよそ3年が経過した。

かつてネオジャパンコロニーがあった場所には巨大なガンダムの頭が……巨大アルティメットガンダムが変形した『アルティメットガンダムコロニー』が佇んでいた。

 

デビルガンダムコロニーの完全消滅により、ネオジャパンの国民たちは国土を失ってしまった。

国一つ分の民が全て難民となったのだ。他のコロニーで受け入れられる人数ではない。

地球に移り住むのも難しい。幾分進んだとは言え復興はまだまだ途中。

高い文明レベルに慣れ切ったコロニーの人間が暮らしていけるはずがない。

 

そこでウォンが、シェルターを取り込んでいる巨大アルティメットガンダムを新たな国土、ヒノカミを新たな首相に据え、ネオジャパンという国を再構成することを提案した。

だがそれは提案とは名ばかりの事実上の命令であり、ヒノカミはネオジャパンの監視者扱い。幾ら戦勝国とはいえあまりに横暴な内政干渉。

しかし今回の事態を引き起こした上に軍という国防の力を失ったネオジャパンに拒否権などあるはずもなく、各国も軒並み彼の提案に賛成したため要求を呑むしかなかった。

勝手に決められたヒノカミはもちろん反発したが、『ではネオジャパン国民を見捨てるのか』とウォンに言われると言葉を返せず、以前ライゾウ博士を救出するために潜入した負い目もある。

仕方なく新たなネオジャパンコロニーを再建するまでという期限付きで了承した。

他国がウォンに賛成したのはこれが理由だ。

こうしておけばコロニーが再建されるまでは、ヒノカミとアルティメットガンダムをガンダムファイトから遠ざけることができる。

 

そして故郷を失い、各国からの信用も失い、他国の人間に従わねばならない未来に表情を暗くするネオジャパン国民たちに訪れた日々は……意外と快適だった。

 

UG細胞は万能金属細胞。

ヒノカミしかアルティメットガンダムを制御できないが、制御さえできればどんな形にでも変形できる。

しかも新たな居住区は自分の体の中。ビルだろうが家だろうが道路だろうが、作ろうと思えばいくらでも作れる。

僅かな量のエネルギーさえ用意すれば予算も時間も必要ない。

 

しかし建物だけでなかった。

続いてコロニーの外だけでなく中にまで無数のガンダムヘッドが生えていた。

外側に生えたガンダムヘッドが外部からの侵入や攻撃を警戒し、内側に生えたガンダムヘッドが居住区の中を見守っていた。

デビルガンダムの操るそれの恐ろしさを知るコロニーの住人たちは当然最初は怯え震えたが、人員不足と混乱で軍どころか警察すらまともに機能していないネオジャパンは防衛と治安維持すらもアルティメットガンダムに頼らねばならない。

どれだけ嫌でも他に暮らす場所がないのだ。そもそも警戒しても敵対しても勝ち目なんて無いので受け入れるしかない。

 

ガンダムヘッドが24時間居住区で犯罪行為がないか睨みを利かせていれば、ただの人間が容易に犯罪などできるはずもなく。

監視されていると分かっていてもこれと言った実害がないと分かればやがて彼らの感覚も麻痺していく。

 

そして先日、子供たちがガンダムヘッドの胴体を滑り台にして遊んでいるところがテレビニュースで放送されてた。

1機のガンダムヘッドが背中を変形させなだらかな坂に変え、もう1機のガンダムヘッドが乞われるがままに子供たちを口で摘まみ上げて何度も何度も上へと運んでいく様子が映されていた。

その翌日、ニュースを見た子供たちに殺到されて各地のガンダムヘッドたちが困惑して慌てふためいていた。

 

 

 

 

 

「……いや慣れすぎじゃろぉ!!

 少しは警戒せんかぁ!貴様らは化け物の腹の中におるんじゃぞ!?」

 

「実際快適だからなぁ。

 虎の威を借る狐……いや、虎どころか鬼と悪魔だがね」

 

首相室という名のアルティメットガンダム格納庫で、無駄に豪華な机に座らされたヒノカミが、隣に立つ腹心にして副首相であるカラトを怒鳴りつける。

しかし彼も流石に慣れたもの。涼しげな顔で適当な相槌を打つ。

 

「というかもう3年じゃぞ!?

 コロニーの再建の進捗が遅れすぎではないか!?」

 

「ある意味でキミの自業自得だろう。

 アルティメットガンダムコロニーの方が快適だから作業員たちのモチベーションが上がらんのだ」

 

「誰か一人に依存する社会なぞ砂上の楼閣じゃろがい!

 儂が謀反でも起こしたらどうするつもりじゃ!今度こそ滅びるぞこの国!」

 

「謀反起こす側の本人が警告しても説得力がないぞ。

 何より、キミがそんなことをする輩ではないととっくに知れ渡っている」

 

「ぬぐぁぁぁぁぁ…………!」

 

ウォンの指示により交代できないので意味はないのだが、ネオジャパンにおける彼女の支持率は9割を超えている。

何しろ彼女はネオジャパンの首相に就任してから今日に至るまで、『不眠不休』で働いているのだ。

比喩表現でなく、本当に睡眠も食事も取らずコロニーの運営に奔走している。

たった一人で一国家の運営を一手に担っているのだ。

彼女の能力と献身ぶりを知ればこれを批判する住民など出るはずもなく、自分が取って代わろうと思う政治家も出るはずがない。

かつては首相を目指していたカラトも気楽なナンバー2に落ち着いたようだ。

 

そしてやはり世界は違えど、ジャパンの『OTAKUスピリット』は健在だったらしい。

国民に愛される彼女の前回大会決勝での姿……ブロマイドや戦闘映像は普通にネオジャパンの中でも出回っている。

それどころか最近はマイクや魔法のステッキを持ってノリノリでポーズを決めるヒノカミのフィギュアが高額で取引されてた。

本人はこんなポーズや笑顔を見せた記憶は一度もないのに。

販売元を突き止めると、ファンクラブのネオジャパン支部の会員の仕業と分かった。

支部設立の出資者はウォンだった。そもそもファンクラブを設立したのも奴だとわかった。おのれウォン。

 

(ーー……)

 

しかしアルティメットガンダムが彼の協力者であり、ファンクラブの会員ナンバー1番であることに彼女はまだ気付いていない。

 

 

 

 

「ヒノカミ」

 

「待たせたな」

 

「おぉ、来たか。ドモン、キョウジ」

 

間もなく第14回ガンダムファイト、サバイバルイレブンが始まる。

その激励のためにヒノカミは二人を呼びつけた。

今回のネオジャパン代表は、言うまでもなく引き続きドモンだ。

ただしサポーターはレインでなくキョウジ。

流石に幼い子供を国元に残して両親揃って1年も不在というのは良くないだろう。

 

「いいか、絶対に優勝しろよ!というかネオホンコンに優勝させるなよ!

 儂はこれ以上ウォンに振り回されるのは御免じゃからな!」

 

「だったら師匠に塩なぞ送らなきゃよかっただろうが」

 

「……しょうがないじゃろ!不公平じゃし!」

 

「フン、難儀な奴だな」

 

「まったく何なんじゃよあの天才どもはぁ……っ!」

 

(ーー)

 

ライゾウ博士とミカムラ博士が協力して開発したネオジャパンの新型ガンダムの性能は、はっきり言って反則だった。

アルティメットガンダムの進化から得た情報がフィードバックされた、陸海空に宇宙まで含めたあらゆる状況下で全力を発揮できる超高性能機。

これでは機体性能の差が大きすぎて東方不敗との決着が満足のいくものにはなるまいと、ヒノカミはUG細胞から東方不敗専用機『マスターガンダム』を作り上げネオホンコンへと提供していた。

これでも博士たちのガンダムにはわずかに及ばないが……そこは師として東方不敗に頑張ってもらおう。

 

「あと前回からルールが大幅に変更されておるからな?

 ちゃんと読み直したか?」

 

「当たり前だ」

 

一度地球を失う寸前にまで陥って、ようやくコロニーの人々も地球の大切さと脆さに気付いた。

よって今回大会からは、地球を過剰に破壊する行為を禁止するルールが多数盛り込まれている。

大会中であれば地球でのあらゆる罪が許されるという、今までこそが異常だったのだが。

 

「話は終わりか?では行ってくる」

 

「愛想ないところは変わらんなぁ、貴様は」

 

「ははは……それもドモンらしささ。

 我々も全力を尽くす。吉報を待っていてくれ」

 

「おう、アレンビーにもよろしくの」

 

「……何度も言うが、私と彼女は一回りも年が離れているんだぞ?」

 

「12歳差なんぞ誤差じゃろそんなもん。

 失恋で傷心していた乙女をうっかり堕としたお主が悪い。

 憎からず思ってるんならいい加減応えてやれ」

 

「はぁ……では行って参ります。カラト副首相」

 

「うむ、頑張ってくれ。ドモン、キョウジくん」

 

「11カ月後、ネオホンコンで会おう」

 

「「あぁ!」」

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

さて、いよいよ第14回ガンダムファイトが開催されます。

 

……ですが、残念ながら皆さんとはここでお別れです。

 

ドモン・カッシュが師である東方不敗を降し、真のキング・オブ・ハートとなるのか。

 

あるいは東方不敗がドモンや若者たちを蹴散らし、ネオホンコン3連覇を成し遂げるのか。

 

それとも彼らの戦友たちが栄光を掴み取るのか。未知の強豪が現れるのか。

 

全ては神のみぞ……いえ、神ですら与り知らぬこと。

 

ですがどのような結末であれ、彼らの未来はきっと輝いていることでしょう。

 

愛する者と、競い合える仲間と、大切な家族と、共に創り上げていく明日なのですから。

 

 

 

……それでは!

 

ガンダムファイト!『みんなの未来』にぃっ!

 

レディィィ……ゴォーーーーッ!!!

 




『第13回ガンダムファイト』、これにて完結となります。

ヒノカミや本編との関連性がどうとかではなく、ただキョウジと師匠とデビルガンダムが救われた世界を見たい、それだけのために勢いで書き始めた外伝作品でした。
なので物語の大筋を決めぬままに書き進め、展開に頭を抱え、いっそ途中で『俺たちの明日はこれからだ!』エンドにしてしまおうかと思いましたが……一応原作最後までなんとかこじつけることにしました。
色々と詰めが甘い作品なので、どうか大目に見てやってください。

作者がガンダムに触れたのはこの作品が初であり、以降のガンダム作品も一通り見ているため、書いてみたいガンダム作品はまだまだあったりします。
特にSEEDと鉄血は序盤の構想まで頭の中にあったりします。
ただGガンダム以外だとヒノカミの能力が一般人に毛が生えた程度まで落ちてしまうので、本編の彼女との差が大きすぎるんですよね。
『なんかキャラ違くない?』って言われそうなのが怖くて二の足を踏んでいます。

まぁ外伝書いてたらいずれ触れるとは思います。特にSEEDは今が旬だと言ってもいいし、早めに書きたい。
ただ年末年始は多忙になるので、短めで書けそうな作品を探してきました。
原作はとんでもなく長いんですがヒノカミが暴れると一瞬で終わるため短くします。
開始は12月を予定しています。期待せずにお待ちください。
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