『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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エドが同僚ではなく一般人の協力者であり、勧誘を続ける立場なのでマスタング大佐の態度を柔らかめにしています。
なのでエドの方も多少対応が丸くなっています。


第7話 賢者の石

 

リオールの街を脱出した3人は、ヒノカミの提案で東方司令部のマスタングのもとへ向かうことにした。

道すがら、炭鉱の町で汚職に手を染めていた軍人を成敗したり。

移動中の列車を襲ったテロ組織を鎮圧したりと静かな旅ではなかったが。

ちなみにテロリストの行動理由は列車に同乗していた軍の重役を狙ってのことだった。

一般人である彼らをも巻き込むものでなければ、成功していたかもしれないだろうに。

 

「やぁ、エルリック兄弟。

 協力感謝する。お陰で私の面子を潰されずにすんだ」

 

「あ、お久しぶりです。ここ大佐の管轄だったんですね」

 

駅で列車を降りた一行を、テロ事件に対処するため出張っていたマスタングと彼の部下たちが迎え入れる。

会うのは時々でも、情報を求めて定期的に連絡は取っている。

それを2年間も続ければお互いの気心は知れるというもの。

 

「丁度良かった。今日は僕たち、大佐に会いに来たんです」

 

「探し人の件かね?すまないが、そちらは相変わらずだ。

 ……こうまでいいようにあしらわれ続けると、私としても鬱憤が溜まる思いだよ」

 

探し物の件はさっぱりだったが探し人……ヴァン・ホーエンハイムは、ここ東部でもマスタングの部下が何度か目にしていた。

しかし何度接触しようとしても、それこそこちらが把握した時点で気付いて逃げ出してしまうのだ。

目をかけている一般人の要望という個人的な理由で軍を大きく動かすわけにはいかないので上に気付かれない範囲でだが、本格的な捕縛作戦を組んだこともあった。

しかしそれでも煙のように掴めない。

兄弟の言う通り、彼らの父親が凄腕の錬金術師であることは間違いないだろう。

 

「はは、そんじゃとっ捕まえたら大佐にも一発ぶん殴らせてやるよ。

 ……でも今日の要件はそっちじゃねぇ。時間、作れるか?」

 

「いいだろう。このテロリスト共をブタ箱にぶち込んだ後ですぐ向かおう」

 

3人がマスタングの友人であることは東方司令部の軍人たちにとって周知の事実であり、今回はテロ事件解決の立役者ということで彼の執務室に案内された。

 

部屋の椅子に座って待つこと暫く、主であるマスタングがホークアイを連れて帰還した。

 

「待たせたな。……それで、話とは?」

 

「あぁ……ヒノカミ?」

 

「周囲に気配はない。盗聴器の類もな」

 

ついでに、待っている間に二人に秘密でこの部屋に結界を張らせてもらった。

これで外部からの盗聴は絶対にできない。

 

「よし……今からヤベェ話をする。

 知れば命を狙われかねないほどヤベェ話だ」

 

「……ほぅ」

 

「大佐、アンタにゃ色々借りがある。

 うさんくせぇけど悪い奴じゃねぇって信用もしてる。

 だから真っ先にアンタに話を持ってくのが筋だと思った。

 ……聞く気がねぇなら今言ってくれ。オレたちはこのまま立ち去る」

 

「私がそんな臆病者に見えるかね?中尉、君は……」

 

「無論、同席させていただきます」

 

二人の覚悟を確認したところで、エドワードはヒノカミから預かった『赤い石』を机の上に転がす。

 

「これは……!見つけたのか!?賢者の石を!」

 

「あぁ、リオールって街のエセ教主が持ってたのをかっぱらった」

 

「なるほど、あの街の件は君たちが関わっていたのか」

 

リオールで突如発生した暴動を鎮圧するために動いた軍に対し、コーネロという男が自首してきた。

あのままでは元信者たちに殺されると保護を求めたのだ。

そして取り調べをしてみれば出てきたのは余罪の山。

死刑にまではなるまいが、二度と日の下を歩くことはできないだろう。

なのでそんな相手からであれば堂々と『盗んだ』と宣言されても大きな問題にするつもりはない。

これが暴動の最中で紛失したり強奪されたりしていた可能性を考えれば、信頼できる彼らが確保してくれて助かったくらいだ。

 

 

「触ってみてくれ……何か感じるか?」

 

「?……いや、特に。中尉は?」

 

「……私も同じです」

 

「だよなぁ……そっちに詳しくなったオレらだって、ヒノカミからそうだと聞かされて初めて気づいたくらいだしなぁ」

 

「「?」」

 

賢者の石を返してもらったエドワードは石をそのまま隣のヒノカミの掌に載せる。

すると彼女はもう一方の手で石を摘まみ上げ、マスタングたちの前に掲げる。

 

「わかりやすく見せてやる……気をしっかり持てよ」

 

「何を……っ!?」

 

彼女が賢者の石に、炎を送りこむ。

すると真っ赤な石から何かが……禍々しい死者の怨念が溢れ出した。

幻ではない。この魂の底まで響くような悲鳴が、幻聴であるはずがない。

 

「なん、だ、これは……っ!?」

 

「残滓じゃよ。賢者の石の材料にされた『者』たちのな」

 

「材料……『者』!?まさか……!?」

 

 

「あぁそうだ。賢者の石の材料は、『生きた人間』だ。

 しかもこれ一つに、何人もの人間が使われてる……!」

 

「「!?」」

 

「だが問題はそれだけじゃねぇ。

 以前ヒノカミがこれの残骸を見たって言ったよな?

 ……どこでだと思う?」

 

「どこで、だと……?」

 

探し物に協力するにあたり、かつてマスタングは彼女にその質問をしたことがある。

しかしそこだけは明かせぬと彼女は頑なに口を閉じていた。

それは、ヒノカミが断言してしまうとロックベル夫妻に迷惑がかかると考えていたからだ。

だがこの話を進めるためにはもはや秘密にしてはいられない。

 

「……イシュヴァールの内乱で、じゃよ。

 その戦いに参加していた国家錬金術師が、これと同じものを使っていた」

 

「「な……!?」」

 

個人的に所有していたという可能性はゼロではない。

しかし国家錬金術師が、軍人が戦うための武器として使用していたというのなら、その供与元は。

 

 

「そういうこった……人間を材料とするような物を作る非道な実験が、軍の主導で行われていた可能性がある!」

 

それは人民を守るためにと軍服に袖を通し、同じく内乱鎮圧に参加していた二人の軍人には、あまりに残酷な推測だった。

 




ヒノカミが戦場で見た軍人とはキンブリーです。
ヒノカミは内乱にてイシュヴァール全域を駆け巡っており多数の国家錬金術師と対面しています。
そして信念はあっても外道な彼を見逃す理由などなく……。

ということで申し訳ありませんが、キンブリーはイシュヴァール内乱にて物語から脱落しています。
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