『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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最後の方を少し書き換えました。
展開上強引に決めた流れだったんですが、指摘が多かったので。


第10話 この国の闇

 

第五研究所に関わりのある軍人に接触してカマを掛けたり、部下に命じて動向を見守ったりと手を尽くした。

そしてもう少しで、正式に立ち入り許可を得られそうだという段階まで来ていたのだ。

その直前に届いた研究所崩壊の報は、彼らの推測を後押しする結果となった。

 

「……ワリィ、下手こいた。

 回りくどい手なんか使わず、とっとと押し入っとくべきだったぜ」

 

「いや、危ないところじゃったぞ。

 そこで余計なものを見ていたら、間違いなく主らは消されていた」

 

何しろ見られたくないものを隠すために研究所ごと吹っ飛ばすような輩がバックにいると判明したのだ。

相応の地位と権威……少なくとも施設の責任者である准将以上であることは確実だろう。

 

「だがこれではっきりしたな。

 賢者の石かどうかは知らないが、軍が後ろ暗いことをしているのは間違いなさそうだ」

 

「覚悟はしていたのだ……だが、信じたくはなかった……!」

 

「アームストロング少佐……」

 

「……ひとまず、ここまでの調査で研究所の関係者リストは手に入った。

 そっちに一人ずつ当たって……」

 

「危険すぎる。おそらく研究所を破壊したのはお主らへ警告の意味もあったはずじゃ」

 

「そうですよ。違うアプローチを考えなきゃ」

 

「確かにこれ以上軍内部に切り込んでいくのはリスクが高すぎるな……退役軍人を当たってみるか?」

 

「……おぉ、そういえばリストの中に内乱で行方不明になった錬金術師が……」

 

部下に出入口を封鎖してもらい、軍の施設の一室で密談を続ける5人。

 

しかし俄かに、外が騒がしくなってきた。

 

「……っ!?」

 

「……ヒノカミさん?」

 

「む?どうしたのだヒノカミ少女よ?」

 

コンコン

 

「なんだ、来客か?誰も通すなっつっといたはずだが……」

 

確かにヒューズは中佐としての権限で部下たちにそのように伝えたが、それで追い返せるのは彼よりも地位の低い相手に限られる。

 

 

「失礼するよ」

 

「「キング・ブラッドレイ大総統!?」」

 

相手がこの国のトップとあれば、同じく軍人である部下たちはそちらに従うしかないのだ。

 

「な、何故このような場所に!?」

 

「突然の研究所の崩壊、直前までそこに探りを入れていた人物がいれば、何か関わりがあるのではと考えるのは不思議ではあるまい?」

 

「お気づきでしたか……ですがなにも、大総統自ら……」

 

「それほど事態を重く見ているということだ……ほぅ、よく調べたものだな」

 

大総統は机の上に広げられた名簿をペラペラとめくりながら呟く。

 

「……君たちはあそこで何が行われていたか把握しているのかね?」

 

「え、あっ、それは」

「軍が非道な人体実験を行っているらしいと。

 確信できるような情報は、未だ」

 

慌てるヒューズ中佐の前に出たヒノカミが、冷静に大総統の疑問に答える。

 

「君は?」

 

「ヒノカミ。異国からの流れ者です。

 錬金術の知識には自信がありまして、ヒューズ中佐のお力になれればと行動を共にしております」

 

「ふむ……中佐、守るべき一般市民に機密を話し事件に巻き込んだのかね?」

 

「違います。元々この件は我らが彼らのもとへ持ち込んだのです。

 お二人はそれを戯言と切り捨てず、危険を犯して尽力してくださった。

 であれば我らも信頼に応え、この命を預けるは道理かと」

 

「我ら……おぉ、もしやそこの少年たちがマスタング大佐が勧誘を続けているという若き錬金術師かね?」

 

「「は、はいっ……!」」

 

大総統がヒノカミの後ろ、未だに椅子に座り半ば硬直している少年たちを見つけた。

 

「なるほど、それで君が話に聞く彼らの師と。

 君たちのことは軍でも噂になっておるよ。あの焔の錬金術師がご執心だとな。

 まさか外部の人間が軍の闇を見つけ出すとは、実力は本物のようだ。

 どうかね、国家錬金術師になるつもりはないかな?

 私は才ある者ならば生まれも人種も問わんぞ?」

 

「申し訳ありませんが、儂はいずれ故郷に戻るつもりでいる。

 そしてこの子らも実力はあれど未だ幼く、見聞を広げている最中です。

 この国の長に高く評価していただき光栄ではあるのですが……」

 

「ふぅむ、その気になったらいつでも言ってくれたまえ。好待遇を約束しよう。

 ……軍内部で不穏な動きがあることは私も把握しておる。

 そして君たちは信用に足る人物だと判断した。

 だからこそ君たちの身の安全のためにも、これ以上この件に首を突っ込んではならぬ」

 

そこで施設の外からまた別の誰かの大声が聞こえて来た。

 

「む、イカン!うるさい部下が追って来た!

 仕事をこっそり抜け出して来たのでな!ではさらば」

 

そう言って大総統は部屋の窓から外へと出て行った。

 

 

 

「「「……はぁ~~……」」」

 

突然訪れた嵐が立ち去ってヒューズたちとエルリック兄弟は大きく息を吐き脱力した。

 

「…………」

 

しかしヒノカミは一人、未だに神妙な顔で沈黙している。

 

「つぅか嬢ちゃん、よく堂々と話せたもんだな。

 この国のトップに……どうした?」

 

「……疾っ!」

 

ヒノカミはヒューズの問いかけを無視して勢いよく掌を叩き、領域を展開する。

そして外からは中が見えず、音も漏れないように設定した。

 

「な、なんだこりゃ!?」

 

「お主の錬金術なのか……!?」

 

「オイ、本当にどうしたんだよ!?

 コイツはアンタの切り札の一つだろ!?

 ヒューズ中佐たちでも簡単に見せていいものじゃ……」

 

「それほどの事態が発覚したということじゃよ」

 

「な、なにがあったんです!?」

 

 

 

「キング・ブラッドレイから、賢者の石の気配を感じた。

 ……アレは人間ではない」

 

 

「「「な……!?」」」

 

「そして『この国のトップ』が黒ということは……賢者の石の製造は国家ぐるみの一大事業と言うことになる」

 

「そんな!?」

 

「オイオイ、冗談だろ!?」

 

「冗談……だったら良かったんじゃがなぁ……」

 

「……マジかよ」

 

ヒノカミは冗談は言うが、嘘は言わない。

そして彼女を知るエルリック兄弟は、彼女の探知能力を疑うこともない。

 

「オマエら……本当なのか……!?」

 

「ヒノカミさんが言うなら……間違いないと思います……」

 

「馬鹿な……国そのものが……!?」

 

「おそらく、中佐らに釘を刺すついでに見知らぬ邪魔者の顔を見に来たのじゃろう。

 そしてどうやら、我らは奴のお眼鏡にかなったらしいな」

 

「どういう、ことです?」

 

顔は笑っていたが、内心ではさながら獲物を前にした猛獣のように舌なめずりをしていた。

『何としても手に入れてやる』という意志を感じた。

 

「儂とエルリック兄弟は、目を付けられたということじゃ。

 ……この国の闇そのものからな……」

 

「「「…………!」」」

 




エルリック兄弟は原作におけるリンやランファンたち以上の感知能力を習得しています。
ヒノカミの方が更に上なんですが、上過ぎる彼女にはホムンクルスと人間なんて団栗の背比べなので近づかないと分かりません。近づけばはっきりわかりますが。

『ブラッドレイは魂が一つしかないのでは?』という指摘を受けましたが、賢者の石を埋め込まれているのは間違いないのでヒノカミなら察知できることにしました。

また、最初はエドワードたちもブラッドレイの気配に気づいたことにしていましたが矛盾と違和感が強いようなので改変しました。
ヒノカミだけが気付く形だと彼女一人が延々と話すだけになってしまうので避けようとしたからでしたが、原作齟齬が大きい方が確かに問題なので。
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