『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第12話 VSラスト

 

武装錬金を発動したエルリック兄弟が女の姿をした化け物を攻撃して吹き飛ばし、後を追うように飛び出していく。

町のはずれとは言え、ここで大規模な戦闘を開始しては町民たちを巻き込んでしまう。

そう判断した二人はまずは戦場を郊外に移すことにしたようだ。

 

しかし彼らが飛び出した際の衝撃で家が完全に瓦礫の山となってしまった。

ヒノカミは肩を貸した男性の傷が致命傷ではないと判断すると、呆然と空を見上げる彼を治療せずに離れる。

 

「な、なにを……?」

 

男性は傷口から流れ出した自分の血を利用して錬成陣を描き、錬金術を使って自力で怪我の治療を始めた。

彼がやり手の錬金術師だと知っているヒノカミは驚くどころか見向きもせず、瓦礫をひっくり返して目当ての物を探し出す。

 

やがて彼女が掴み上げたのは、赤い液体が入った小さな瓶。

 

「それは!?」

 

彼女は懐から赤い石……賢者の石を取り出し掌の上に乗せると、瓶のふたを取って中の液体を石へと垂らす。

そして『二つの』賢者の石は混ざり合い、一回り大きな石となった。

 

(……こりゃ、年単位じゃなぁ)

 

手に入れた時よりも大きくなってしまった賢者の石を見て、ヒノカミは盛大にため息をついた。

 

こんなもの存在するべきではない。悪用される危険性を考えれば即座に破壊するべきだ。

しかしそれでは犠牲となった人間たちが余れに哀れではないか。

彼らを苦痛から解放するために殺すしかないなど。

だからヒノカミは賢者の石に少しずつ癒しの炎を送り、中にいる人間たちの魂の浄化を試みていた。

過剰に力を注いでは破壊してしまうので、ゆっくりとだ。おかげで最近はようやく目に見えて小さくなってきた。

なのにまた振り出し、いや例えるなら退院して入院患者が減って来たと思ったらそれ以上の急患が一気に運び込まれてきたような感覚。

そんな可愛らしい表現で表していいことではないのだが、頭を抱えるくらいは許してもらいたい。

 

「……『賢者の石の材料は人間』。

 『石を作り出しているのは軍』」

 

「!?」

 

自分の治療を終えた男に聞こえるようにつぶやく。すると男は露骨に反応してみせた。

アームストロングから似顔絵を見せてもらった。名前も聞いている。

賢者の石を持っていたことから、アームストロングの推測が正しいとも証明された。

 

「それを知った我らは、軍の悪行を阻止するために動いておる。

 ……貴様にも協力してもらうぞ。ティム・マルコー」

 

「……あ、あぁ……」

 

かつて中央の錬金術研究機関にいた錬金術師。

軍の命令で賢者の石の研究を行い、イシュヴァールの内乱後に罪悪感から失踪した彼は、ヒノカミに睨みつけられその場に力なく崩れ落ち、辛うじて頷きを返した。

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

人造人間(ホムンクルス)の一体、『色欲(ラスト)』の名を冠した女は人並外れた身体能力と再生能力、そして特殊能力を持つ。

己の指を硬質化して伸ばし、全てを貫き切り裂く『最強の矛』とする能力。石だろうと鉄だろうと容易く切断できる。

 

しかし圧倒的強者であるはずのホムンクルスが、異質な武器を振り回す人間の少年たちに押し負けていた。

 

「うぉぉぉっ!サンライトスラッシャーーーッ!!」

 

「くぅっ!?」

 

エドワードが構える白銀の短槍、その石突が展開して山吹色のエネルギーを放出し、ホムンクルスの反応速度をも超える速さで突撃してくる。

動きが直線的なので辛うじて躱せるが、躱すだけで精いっぱい。反撃を加える余裕はない。

そして速さだけではなく間合いでも遥か上を行かれている。

石突だけではなく槍の刀身も展開可能であり、先端を射出する速度と射程も桁違い。

彼から意識を逸らせば、数多の人間を射殺してきた己が貫かれることになるだろう。

 

「っ!?ちぃぃっ!」

 

そして兄のエドワードにばかり気を取られていると、弟のアルフォンスが錬金術でこちらの足場を崩しにかかる。

錬成を中断させるため、離れたところで両手を地面に叩きつけているアルフォンスに向けて爪を伸ばすが、彼の両足に取り付けられている4枚のブレードが稼働し『最強の矛』を斬り払う。

 

「もらったぁ!」

 

「ぐっ……」

 

その隙に逆側から突撃してきたエドワードに片腕を斬り飛ばされた。

しかし躱せぬと分かった瞬間攻撃に切り替え、交錯する瞬間にもう一方の腕の爪でエドワードのわき腹を切り裂いた。

エドワードはそのままの速度でラストから離れ、アルフォンスのすぐ隣に着地する。

 

「……っつぅ~~!」

 

「無茶し過ぎだよ、兄さん」

 

「へっ、ほのふらい(このくらい)ろおっへほろへぇ(どうってことねぇ)!」

 

エドワードが槍を咥えて、掌を合わせてから傷口に手を添える。

すると光が走り、巻き戻すかのように傷が塞がっていきやがて跡すら残さず消え去る。

千切れた衣服も修復しそこにしみ込んだ血も霧散させれば完全に元通りだ。

そして兄が己を治療する間、その隙を狙われぬように4枚のブレードを広げた弟が両手の掌を合わせた姿勢でラストを警戒していた。

 

(弟の方が錬金術の出力は高いけれど、兄の方は身体能力だけでなく修復速度までホムンクルス(私たち)に迫るほどの生体錬成……。

 そして二人とも錬成陣無し……『真理』を見ている……!)

 

優秀な錬金術師……『人柱』を捜し求めているホムンクルスたち。

目の前の兄弟はようやく見つけた有力候補だが、彼らの予想を超えて優秀過ぎた。

そして二人が振るう特殊過ぎる謎の武器。

エネルギー放出と超精密動作というその特性ももちろんだが、特に厄介なのが鋼鉄でも切り裂くラストの爪が逆に容易く斬り落とされるという異常な硬度と、攻撃を受けた部位の再生を阻害する効果。

斬り落とされた腕の修復が遅く、しかも過剰にエネルギーを消耗している。

 

(冗談じゃないわ……この子たちはホムンクルス(私たち)を……お父さまを殺しうる!)

 

エルリック兄弟は相手がホムンクルスと知らず、ラストは彼らが使う武器の正体を知らないが、それは異界にてとある戦士が『ホムンクルスを殺すために振るっていた』武器。

神の力を持って再現されたそれらは『ホムンクルスを滅ぼす』という概念を付与された、ホムンクルスという存在に対する特効兵器だ。

どれほどの強度を持っていようとそれがホムンクルスの肉体の一部であるならば切り裂けぬ道理はない。

 

 

 

「……気付いてるよね?」

 

「あぁ。再生する度にアイツから感じる魂の力が弱まってる。

 賢者の石っつってもエネルギーは有限ってことか」

 

「そっちもだけど、ヒノカミさんだよ。

 動き出したみたいだしすぐにこっちにくるよ?」

 

「わぁってるよ……いつまでもおんぶにだっこじゃいられねぇ!

 その前にもうひと踏ん張りだ!行くぞアル!」

 

「うん!」

 




関係性は違うけど主人公二人組ってことで、主人公組の武装錬金を託しました。
直情的で一直線なエドにはサンライトハート+。
そして相方のアルにはバルキリースカート。

体全部を対価にして真理を見てるアルの錬金術は、片足だけのエドよりも遥かに上になるはず。
であれば戦闘は錬金術主体になるだろうから両手をフリーにできる武装錬金の方が良いと判断しました。
対してエドは人体錬成の理論を構築したり、原作キンブリー戦で自分の命を使って致命傷を治療したことなどから生体関連に適性が高いと判断し、自他の治療に特化した医療系錬金術師としています。
肉体について造詣が深い分エドの方が『天神武装』の肉体強化の倍率が高く、身体能力はアルより高いです。
身長は横ばいだけど。1歳差があるのに。
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