『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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本日2回目の投稿です。暫くは1日2回投稿します。


第5話

「個性のない人間でも、オールマイトみたいなヒーローになれますか!?」

 

ヒノカミは緑谷が無個性であることも、ヒーローに憧れていることも知っている。

だから驚くこともなく、無表情で彼を見つめ続けた。

ヒノカミから何の反応も得られないことに怖気づいた緑谷は次の言葉を発することができないでいる。

代わりに声を上げたのは爆豪だった。

 

「まだほざいてんのかテメェは!なれるわけがねぇだろうが!

 個性を使って悪事を働くのがヴィラン!

 個性を使ってヴィランを取り締まんのがヒーローだ!

 無個性にヒーローになる資格はねぇんだよ!」

 

「それを決めるのはお主ではない」

 

「アァ!?」

 

爆豪は緑谷に向けていた恐ろしい形相のままヒノカミの方を向いた。

彼女は一切動じることなく続ける。

 

「そして儂でもない。

 決めるのはお主自身じゃよ、少年」

 

「僕、自身……?」

 

「『なりたい』と思えばなれるものではなく、『なれる』と言われてなれるものでもない。

 それこそそういった個性でも持たぬ限りは、未来のことなど誰にもわからぬよ。

 お主がヒーローになれるのかは、お主自身が身をもって証明せねばならぬ」

 

「……アンタ、ヒーローなんだろ?

 無個性にできる仕事じゃねぇのは、アンタの方がわかってるはずだろうが!」

 

「そうさな、常に死と隣り合わせ。

 力無き者に務まる仕事ではない。

 じゃが不可能を可能にしてこそのヒーローじゃろう?

 力が無いならこれから培えば良い。

 『努力』もまた一つの力じゃ」

 

「……減らず口を……!」

 

睨みつける爆豪を余所目に、ヒノカミは一歩前に出て緑谷を見下ろす。

 

「なりたいものになれるのは、なろうと努力した者だけじゃ。

 お主に必要なのは覚悟。

 『なりたい』ではなく『なる』と誓い、そのために茨の道を歩む覚悟を持つことじゃ」

 

「茨の道を、歩む覚悟……!」

 

「何度も血反吐を吐くことになるじゃろう。

 周囲は愚かと蔑むじゃろう。

 本懐を遂げる可能性はあまりに低く、しくじればすべては徒労と消える。

 緑谷出久。貴様にその道を歩む覚悟はあるか?」

 

ヒノカミは緑谷の顔を覗き込み、言葉と同時に強烈な殺気を放った。

眼前の緑谷は顔を引きつらせ目尻に涙を浮かべる。

隣の爆豪も思わず後ずさった。

それでもヒノカミは威圧を緩めることなく、緑谷を睨み続ける。

緑谷の呼吸が荒くなる。

全身が震えだし、目尻の涙は零れ落ちた。

それでも彼は目を逸らさない。

 

「……なり……ます……!」

 

かすれた声を絞り出した緑谷は、袖で涙をぬぐってヒノカミの目を睨み返した。

 

「なります!どんなに苦しくても!無個性でも!

 僕は、オールマイトのようなヒーローになってみせます!!」

 

「……良い覚悟じゃ」

 

ヒノカミが威圧を止めると、緑谷は力が抜けてしまい尻もちをついた。

 

「これより緑谷出久は英雄に憧れるだけの子供ではない。

 英雄に至らんとする一人の戦士じゃ。

 もはや立ち止まることは許されん。励めよ」

 

「ありがとう……ございます……!」

 

息も絶え絶えの緑谷に手を差し伸べ、握り返してきた手を掴んで引き上げる。

 

「……ざけんな」

 

「かっちゃん……?」

 

「ざけんな!!オールマイトみてぇな……いや、オールマイトを超えるのは俺だ!」

 

爆豪が二人の間に割り込み、緑谷を振り払ってヒノカミの胸に掴みかかる。

 

「耳の穴かっぽじって良く聞けや!

 オールマイトを超えてトップヒーローになるのはデクじゃねぇ!

 この俺、爆豪勝己だ!」

 

ヒノカミはきょとんとした顔で爆豪の宣言を聞き、そしてにやりと笑う。

 

「……くっくっく、吠えたな小僧。いや爆豪よ。

 吐いた唾は吞めぬぞ?」

 

「上等ォ!」

 

背伸びしているがまだまだ子供。

緑谷とのやり取りに触発されてしまったらしい。

しかしこういう負けず嫌いなタイプは良く伸びる。

すでに随分と鍛え上げているようだし、個性も強い。

性格に少し難があるが、うまく導けば宣言した通りのトップヒーローになるだろう。

 

「……良し。緑谷、爆豪。

 貴様ら二人儂の弟子となれ」

 

「「はぁ!?」」

 

「オールマイトとエンデヴァー。

 最高のヒーローたちを誰よりも間近で見てきた儂が手ずから鍛えてやろうというのじゃ。

 数年のブランクがあろうと甘く見るなよ。

 貴様らが目指す高みを身をもって教えてくれる」

 

元とは言え、トップヒーローから直接指導を受けることができる。

ヒーローを目指す若者たちにはこれ以上とない好待遇だ。

呆けた顔で、思わず顔を見合わせた二人。

緑谷は破顔し、爆豪は不敵な笑みを浮かべてヒノカミに向き直った。

 

「はい!」

「オゥ!」

 

本来は緑谷だけを鍛える予定だったが、爆豪もまた苦労をしてでも鍛える価値があると認めた。

ひたすらに上を目指そうとする姿勢に、兄エンデヴァーが思い浮かんだこともある。

ヒノカミは全身全霊で二人を鍛え上げ、二人の弟子もそれに答えた。

 

そして2年の歳月が流れる。




ちゃんとした師匠の下で2年間修行したことで、緑谷は大きく成長します。
爆豪もまた伸びた鼻をへし折られ、肉体的にも精神的にも史実よりはるかに強くなります。
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