『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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外伝4の完結まで書き終えました。
1日2回投稿に切り替えます。


第26話

 

ヒノカミがセントラル襲撃作戦を決行する、さらに1か月前。

最後の打ち合わせは直接顔を合わせて行うべきだろうとマスタングやヒューズらも転移で連れてきて、この日まで隠していたホムンクルス撃破計画の全容を明かした会合の後。

 

「……アナタは私の要望に応えてくれるんだったわね?」

 

マスタングらを送り返し、エルリック兄弟とホーエンハイムのところに戻ってきたヒノカミにラストが声をかけた。

ホーエンハイムと出会ったときの諍いを止めてくれたことと、情報を提供してくれたことに対する礼の件だ。

 

「願いが決まったのか?」

 

「えぇ」

 

「言っとくけど、『逃がしてくれ』とかは無しだからな!」

 

「今更言わんでもわかっとるじゃろ。……して?」

 

 

 

「私の願いは、『私の兄弟たちを殺さないでほしい』ということよ」

 

 

 

「……え?それって……」

 

「……降伏宣言。そして命乞いよ。

 あんな馬鹿げた作戦を実行できるという相手じゃ、ここで私が情報を持ち帰っても勝ち目はないわ」

 

いや、本当はもっと前からわかっていた。

化け物を自認していた自分たち以上の化け物が率いる陣営に、ホムンクルスたちの実情に詳しいホーエンハイムまで加わってしまった時点で、『フラスコの中の小人』の敗北は確定していた。

ラストはできるなら『お父様』も見逃してほしいと思っていたが……彼女の性格を知った今ではそれは不可能だろうとハードルを下げた。

 

「その願いは無理じゃな」

 

「……そう」

 

しかしハードルを下げても聞き届けてはもらえなかった。

ならば今度は自分の命も天秤に載せようかとラストが考えたところで、ヒノカミは言葉の続きを話す。

 

「最初から『フラスコの中の小人』以外は全員殺さぬつもりじゃからの。

 それではお主の願いを叶えたことになるまい?」

 

「……なんですって?」

 

「儂は『人殺しはしない』と宣言したじゃろ。

 『フラスコの中の小人』はやりすぎた故、見過ごせぬがな。

 この誓いを破っては弟子に顔向けができん。

 まして相手が弟子の身内とあっては猶更じゃ」

 

「「「身内?」」」

 

「ホーエンハイムから生まれたのが『フラスコの中の小人』なんじゃろ?

 親子というよりクローン寄りじゃから二人は実質双子に等しい。

 であればエドとアルとお主らは従弟になるではないか」

 

「……はぁ!?」

 

「え!?ラストさんやグリードさんが、従弟!?」

 

「俺がアイツと双子……!?

 いや、生物学的にはそうかもしれんが……」

 

「ただし、確実に生き残らせるという保証はできぬ。

 儂は絶対にあ奴らを殺さぬが、儂以外の者の手にかかる可能性は高い。よって……」

 

そしてヒノカミは掌を叩き、六角形の金属プレートを作り出してラストに投げ渡した。

 

「願いの代わりに、それをやる。

 お主の願いを、お主自身で叶えるための『力』をな」

 

「……確かに受け取ったわ。等価交換、成立ね」

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

「サンライトフラッシャーーーーッ!」

 

「ぐぅぅっ!」

 

「へっ!コイツはホムンクルスを焼き切る光だ!

 ご自慢の影で耐えられるかよ!?」

 

 

 

「めんどく……せぇっ!……あ?」

 

「予備動作とタイミングが丸わかりならカウンターなんて簡単さ!

 それに僕らはもっと速くてとんでもないのを相手にしてきたんだ!」

 

 

 

「ラスト……ラスト……!?」

 

「……下がっていなさい、グラトニー。

 アナタとは戦いたくないわ」

 

「だったらなんで下等な人間なんざについた!

 ホムンクルスとしての矜持はどうした!」

 

「……捨てさせられたわ。賢者の石ごとね。

 今の私の肉体は、完全に人間になってしまっている」

 

「人間、に!?」

 

「えぇ。うらやましい?」

 

「っ……」

 

「……あの子たちはヴァン・ホーエンハイムの子よ。

 そしてホーエンハイム自身と、それ以上の化け物が動いているわ。

 ……お父様にはもう、勝ち目がないのよ」

 

「なん、だとぉっ!?」

 

「すぐにわかるわ。私たちが何を相手にしてしまったのか。

 だからそれまでの間、アナタたちは私とあの子たちで止めさせてもらう」

 

「ふっ……ざけんなぁぁぁぁああああっ!!!」

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

中央軍司令部、正確にはそこに集まる軍上層部たちは慌てふためいていた。

虎の子のホムンクルス4体を送り出したにも関わらず、鬼神は止まることなく中央へと突き進んできているとの報告が届いたからだ。

この速さのままならあと数時間もすればセントラルに到達する。

もはや鬼神をどうにかできるとしたら『フラスコの中の小人』しかいない。

無様に父に縋りつこうとする軍のトップたちを呆れた目で見ながら、しかし確かに報告は必要かとラース……ブラッドレイは父の下へ向かうため席を立つ。

 

 

ドカァァァン

 

 

直後、軍司令部で爆発が生じた。

 

(……音の方角と距離から、通信施設が破壊されたか?)

 

「閣下!緊急事態です!」

 

ブラッドレイやホムンクルスのことなど何も知らない兵の一人が、許可を取る暇すらないと会議室に駆け込んでくる。

 

「襲撃です!地下から!……化け物のような連中が!」

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

「いいかテメェら!殺すんじゃねぇぞ!

 連中には生きて思い知らせてやらなきゃならねぇからな!」

 

「「「へい!グリードさん!!」」」

 

地面に空いた六角形の隔壁の中から、全身硬化状態のグリードを筆頭に彼の配下のキメラたちが飛び出してくる。

 

「命だけは守ってくれ。

 死なない限りは私たちが治してみせる!」

 

「お任せくださイ!」

 

「聞いたかオメェら!先生と嬢ちゃんが治してくれるってよ!

 命さえ奪わなきゃクソ野郎共にゃあ何したっていいぞ!

 積年の恨みを晴らしてこいやぁ!!」

 

「「「っしゃあーっ!」」」

 

「そういう意味で言ったんじゃないんだが!?」

 

防空壕(シェルター)の武装錬金『アンダーグラウンドサーチライト』を操るマルコーが、同じく治療担当としてシェルター内にとどまるメイと共に叫ぶ。

エルリック家の地下でこの武装錬金の習熟に専念していた彼は計画の詳細を知らされてからの1ヵ月の間に少しずつ、バレないように着実に軍司令部地下を侵食していた。

アメストリス地下に円環のトンネルを作っていたホムンクルスたちへの痛烈な意趣返しだ。

彼らにもヒノカミが自分のエネルギーだけで作り出した疑似『賢者の石』が預けられており、いくらでも奇跡を引き起こすことができる。

 

「グリードさん!ビドーが一つ目の人形共を見つけたそうです!

 ラストの姐さんが言ってたヤツらに違いねぇ!」

 

「そいつらは一つ残らず潰せ!絶対に起動させんな!

 ロア!手勢を連れて加勢に行け!」

 

『了解しました』

 

『ドルチェットです!やっぱり敵ん中に俺らと同じキメラがいました!』

 

「空手形でもなんでも切って懐柔しろ!

 お代は全部ヒノカミにツケとけ!」

 

「会議室に動き有り!ブラッドレイが動き出したみたいです!」

 

「全員下がらせろ!そいつはオレが仕留める!

 マーテル、テメェが指揮を執れ!」

 

「あいよっ!」

 

スカウターを放り投げて走り出すグリードに、リンとフーとランファンが追走した。

 

「オレ一人で十分だっつぅの!テメェらは適当に暴れてろよ!」

 

「そう言うなグリード!仮にもこの国の王を名乗る男ヲ、一目見ておきたくてナ!」

 

「もうすぐ引きずり降ろされる神輿にンな価値ねぇだろ!」

 

「だからこそダ!王が革命により倒れる瞬間など中々見る機会もナイ!

 次のシンの王として精々反面教師にさせてもらおうと思ってナ!」

 

「……ギャハハハハハハ!いい強欲だ!ついてきなぁ!」

 

「フー、ランファン!遅れるなヨ!」

 

「「御意!!」」

 




エルリック家の地下シェルターは、最初からヴィクトリアの武装錬金です。
マルコーを匿う際に彼を一人にしてしまうので、彼に所有権を預けていました。
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