『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第28話 約束の日

 

『もっとじゃ!もっともっと熱くなれぇ!

 PLUS ULTRAじゃあ!!』

 

「ちぃっ、本当に熱は効かないのか!

 全く持って忌々しいな!」

 

マスタングの操る武装錬金『ブレイズ・オブ・グローリー』により生じた炎は周囲一帯の建物や地面をドロドロに融解させている。

武装錬金の特性により炎と同化していなければ、マスタング自身も骨すら残さず焼け死ぬほどの高温だ。

しかし炎の中心にいる鬼神……いやヒノカミは更なる熱を要求してくる。

最初から加減などしておらず、戦友たちの仇を取るつもりで炎を浴びせているというのにだ。

確かに絞り出せばもう少し火力を上げることもできそうだが。

 

「……さすがにこれ以上は無理だ!

 街への被害が大きくなりすぎる!」

 

『ぬぅ……仕方がないか』

 

彼らがいるのはセントラルの外周部なのだが、すでに街の中心部にまで熱が及び始めている。

軍司令部にはグリードやキメラたち、この計画に賛同してくれた仲間もいるのだ。

これ以上は彼らも巻き込みかねない。

余計な人死には出さないという彼女の誓いにも背くことになる。

 

『そいじゃあ、やるか!終わるまで炎を弱めるなよ!』

 

「さっさと済ませろ!」

 

マスタングの武装錬金の炎を吸収した鬼の鎧は、熱を力へと代えて勢いよく両手の掌を叩きつける。

 

 

パァン!!

 

 

『……よし、届いた!さぁ各々方、覚悟はよろしいか!?』

 

強化された力でアメストリス全土を覆う巨大な領域を発動させたヒノカミは、その内側にいる各地の協力者に呼びかける。

 

『あぁ』

『もちろんだとも』

『共に行こう』

『今こそ我らの魂を使う時だ』

『あのクソ野郎に目にもの見せてやろうぜ!』

『お願いします神さま。私たちの命を』

 

領域の円の外周部、ホーエンハイムが各地に配置した賢者の石の中にいるクセルクセスの民の魂が、ヒノカミの呼びかけに応えて活性化する。

 

『汝らの想い、確かに受け取った!……お主らも良いな!?』

 

 

『『『『『はい!』』』』』

 

 

そしてヒノカミが自分の中に取り込んだ、これまでの旅で集め癒し続けてきた賢者の石が共鳴を始めた。

鬼の鎧の隙間から真っ白な炎と真っ赤な光が溢れ出す。

炎と光は鬼の足元を通じて凄まじい速さで大地を走り、国の外周にまで伸びて領域の壁面に衝突。

そして各地に配置された賢者の石をなぞるように領域の内側に沿って尚も進み、ついに巨大な円環を作り上げる。

 

『準備は、整った』

 

今こそ、神は奇跡を起こす。

 

『……刻思夢想……不可死犠……書国漫遊……!』

 

 

 

『……時よぉっ!!!!』

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

荒野で相対するエドワードたちとホムンクルスたちが。

軍司令部で切り結ぶグリードとラースが。

キメラたちとそれに取り押さえられる軍司令部の人間たちが。

そしてこの国にいた全ての人々が。

 

一様に、空を見上げた。

 

 

「あれ?太陽が……沈んだ!?まだ真昼間だよな!?」

 

「星と月が流れて……また朝日!?」

 

「なんだ!?一体何が起きている!?」

 

「おぉ、神よ……!」

 

 

日が沈み、月が昇る。

月が沈み、日が昇る。

太陽と月と星が目まぐるしい速さで東から西へと流れていき、朝と夜を繰り返していく。

 

時の流れが加速している。

正しくは神の領域となった『アメストリス国の時間の流れだけが著しく減速している』。

外の世界の1日がわずか数秒という速さで経過していき、そして1分も過ぎた頃には。

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

「へっ!やってくれたぜ」

 

「流石は太陽神、だね!」

 

「ンな……馬鹿な!?」

 

「……これが私たちが、お父様が敵に回してしまった化け物の力よ」

 

「失敗、した?我々の計画が?

 300年以上を掛けた計画が、こんな形で!?」

 

 

 

 

「あぁぁ……嘘だ、嘘だ、嘘だ!!」

 

「我々の、悲願が!不老不死が!!」

 

「ゲハハハハハ!ざぁんねぇん!

 これが現実なんだよなぁ、将校さん方よぉ!」

 

 

 

 

「何が、起きた……どういうことだグリード!」

 

「おいおいラース、お前俺より年下の癖に耄碌してんのかぁ?

 見ての通りのことが起きたに決まってんだろ?」

 

「これを貴様たちが成したというのか!?……あり得ぬ!」

 

「滑稽ダナ、王を騙る道化ヨ。いいことを教えてやろウ」

 

「「『ありえない』なんて事はありえない」」

 

 

 

 

「…………!」

 

「先に言っとくが、この映像は偽物じゃない。

 間違いなく地上で起きていることを映したものだ。

 ……さて、もう一度尋ねるぞ?『フラスコの中の小人』」

 

ホーエンハイムと『フラスコの中の小人』が見上げる映像には。

 

 

 

「約束の日ってのは……一体『何百年後』のことだ?」

 

 

『皆既日食が終わった後』の太陽が映し出されていた。

 

 

 

「ホーエン、ハイム……!?」

 

「くくく……ようやくいいツラになったなぁ兄弟」

 

空間制御能力と、時間制御能力。

特に後者の行使は太陽神を名乗るヒノカミですら容易なことではないらしく、彼女は仲間たちに助力を求めた。

 

国全域を覆う領域を発動させるための腕力が必要だった。

だから熱を吸収して自らの力とする鬼の鎧を纏い、マスタングに炎の力を劇的に高める武装錬金を与えた。

 

領域内の時間を操作できるだけのエネルギーが必要だった。

だからホーエンハイムが各地に配置した賢者の石と、己が集め癒してきた賢者の石の中にいる魂と交渉し協力を要請した。

 

そしてホムンクルスたちが『まだ時間に猶予がある』と考え警戒が薄くなっている隙を突いて一気に畳みかけ、『時間の猶予そのもの』を消し飛ばした。

 

更に領域を発動させると同時に国中に癒しの炎を走らせ、各地の血の紋を浄化した。

国中の人間を賢者の石に代える国土錬成もまた、完全に破綻した。

 

 

「コレをやらかした神さまと、俺の仲間や息子たちから、言葉を預かってるんだ。

 是非お前に伝えてくれってさ」

 

 

「ホーエンハイム!!」

 

 

 

 

 

「『『『『『ざまぁみろ』』』』』」

 




この世界の強度では、ヒノカミ単体では国全域を覆う領域を発動させながら領域内の時間を制御するのは出力が足りませんでした。
なので不足している力をマスタングの炎と賢者の石で補うことで実現させました。
ついでに『不可死犠』を血の紋が刻まれた場所に走らせた副次効果として、戦地となった場所にいた怪我人とかが軒並み治ってたりします。


『約束の日に敵が計画を実行に移す』なら。
『約束の日そのものをスキップしちゃえばいいじゃない』。
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