『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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轟舞火最期の戦いを始めます。
決着がつくまでシリアス一辺倒になります。
くどかったり不快な表現もあるかと思いますが、お付き合いください。


第52話 神野市決戦

林間合宿中に敵連合の襲撃を受けた件について、雄英の謝罪会見が始まった。

被害は全くなく敵の大半を捕らえたとはいえ、二度も襲撃を受けるという状況そのものに対して謝罪を行っている。

当然批判の声は出たが、民衆の大半は同情的だ。

二度の襲撃の両方にオールマイトが参戦しており、その上で襲撃を防げず、主犯に逃げられている。

なので雄英の不手際を責める声よりも、オールマイトを相手に逃げ切った敵連合を脅威とする声の方が大きい。

そんな世間の風潮を理解しているから、マスコミも過剰に雄英を責めるような質疑は行わなかった。

 

同時刻、せめてマスコミに責められる雄英の会見を見て留飲を下げようとしていた弔だったが望む展開にはならず、苛立ちを隠せずにいた。

すると彼らが潜むバーの扉の向こうから、ピザ屋の宅配を名乗る男の声が響く。

弔たちが訝しむ間もなく扉を壊してオールマイトが殴りこんできた。

続けて現れたヒーローに一瞬で拘束され、身動きが取れなくなった弔と黒霧。

彼らの眼の前にいるのはナンバー1ヒーローオールマイトと憎きサイドキックのヒノカミ。

ナンバー2のエンデヴァーにベストジーニスト、エッジショット、ギャングオルカと錚々たる顔ぶれ。

壊された建物の壁の向こう側には大勢のヒーローと警察機動隊、その中にラグドールを見つけ、弔たちは彼女に見られていたのだと気づいた。

『先生』から『余裕があれば拉致してくれ』と要望されたヒーロー。

その個性が何かは彼らも当然把握している。

 

個性を警戒されてか、弔は手首が拘束され動かせない。

黒霧は瞬時に意識を刈り取られた。

与えられていた脳無はすべて失っている。

それでも弔は足掻こうとするが、掌を小刀で貫かれ思わず絶叫を上げる。

 

「ぎぃっ……!!」

 

「しゃべるな。動くな。わずかでも妙な動きをすれば手首ではなく首を斬り落とす」

 

さらに口を押さえつけられ声すら出せなくなる。

間近で見たヒノカミの眼に、弔は覚えがあった。

あれは自分を人ではなく、路傍のゴミとして見ている目だった。

弔は殺意を滾らせるが周囲のヒーローたちも弔の一挙手一投足を警戒している。逆転の眼はもはやない。

 

「拘束具をありったけもってこい。指一つすら自由を許すな」

 

機動隊により移動式牢が運ばれてくる。弔たちが押し込まれようとする直前、声が響いた。

 

「……来た!向こう!!」

 

「DETROIT SMASH!!」

 

多数の個性を内包した人間の出現を感知したラグドールが叫び、オールマイトが彼女の指さした方へ全力で攻撃を放つ。

そして向こうからもオールマイトに匹敵するパワーの攻撃が放たれ、相殺した衝撃でビルが粉々に吹き飛んだ。

 

「……随分な挨拶じゃないか、折角の感動の再会だと言うのに……」

 

「望まぬ邂逅だ……今度こそ終わりにするぞ!オール・フォー・ワン!!」

 

「また僕を殺すか、オールマイト」

 

首から上を鉄仮面で覆った大柄なスーツの男。

その姿を視認した直後、オールマイトの関係者とトップヒーローを除いた全員が弔たちを連れて一斉に撤退する。

 

「……こいつか、ヒノカミ」

 

「仮面で顔は見えんが……このセンスの悪さは間違いなくな」

 

「オール・フォー・ワン……超常黎明期から生きる怪人……!」

 

「この威圧感……その名に恥じぬか」

 

「全員、奴の手に触れられるなよ!」

 

AFOの詳細は伏せたが、オールマイトと同等以上のヴィランが敵連合のバックについていることは作戦前に周知徹底した。

よってそれらしき人物が出現した場合、警察や実力不足のヒーローたちは撤退し、弔たちの拘束に専念するよう指示を受けている。

しかしあらかじめ伝えられていたとはいえ、AFOというヴィランの放つ圧は常人に耐えられるものではない。

ヒーローも警察もどこか浮足立っている。

脱走するなら今だと弔は身構えた。

 

「がぁっ!」

 

「動くなっつっただろうがぁ!!」

 

それを見逃さず、蹴りつけて抑え込んだのはフレイムヒーロー『ブレイザー』。

彼は煮えたぎるような激しい怒りでAFOの恐怖を跳ねのけていた。

 

教師不在の穴埋めのために雄英に派遣され、教師たちが戻って来た後、彼はようやくヒノカミの死の運命を知った。

隠していた父に掴みかかったが、『そのように反応するとわかっていたから話せなかった』と言われ、二の句が継げなかった。

ヒノカミは予知により敵連合の出現を知り、わずかな命を備えに費やし、度重なる戦いで命を削った。

そして今真の黒幕との戦いで命を散らそうとしている。

病気はどうにもならなかったかもしれないが、こいつらがいなければもっと平穏な最期を共に迎えられるはずだった。

せめて隣で共に戦えればと願ったが、今の彼ではまだ力不足だと受け入れられなかった。

恩師を苦しめたヴィラン共と弱い自分自身への怒りは、敵意を超えて殺意へと至っていた。

 

(こいつの眼、ヒーローとも、あのババアとも違う!

 この眼は、まるで俺たちと……!)

 

「余計な真似すりゃマジで斬る。

 叶うなら今すぐそうしてやりたいくらいだ!

 俺を『ヴィラン』にさせないでくれよ……頼むから……!」




たった二人しかいない敵拠点に全員で殴り込みました。
脳無工場への襲撃はありません。
ラグドールのお陰でバーは見つけましたが、脳無を逃がしたり発信機を仕込んだりはしてないので工場の存在を把握できてないです。
ただそこに保管されていた脳無は合宿襲撃ですべて捕らえているので問題はありません。

・脳無を従え街を襲った
 →街を襲う脳無を排除した
・ステインに感化された
 →ステインを捕らえた
・敵連合として悪意をバラまいた
 →敵連合の主犯に殺意をぶつけた

原作を皮肉るような改変を多数行いましたが、特にそれらが多いのが轟燈矢です。
しかし立場とやってることは全く逆でも、どこか原作の荼毘らしい雰囲気が出るような表現を目指していました。
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