『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第53話

AFOとの決戦。

オールマイトたちはできうる限りの備えをしてきた。

ナイトアイとグラントリノはこれで本当に終わりにするつもりで、水面下でエンデヴァー以外のトップヒーローたちに接触しAFOの情報を明かして応援を要請。

彼らも『予知を覆してやる』と抗っていた。当然自分たちも戦いの場に参加した。

しかし今AFOと戦っているのはオールマイト、エンデヴァー、ヒノカミの3人だけ。結局予知通りの光景になっている。

他のヒーローたちが脱落したわけではない。

自分が不利だと理解しているAFOが、市民に被害が出るように積極的に街を攻撃しているからだ。

 

「ハハハ、避けていいのか?」

 

「おのれぇ!オール・フォー・ワン!!」

 

オールマイトたちが神野市に突入すると同時に警察は迅速な避難誘導を行っているが、AFOは市民の多い場所へと移動しては無差別攻撃を行う事を繰り返している。

避難と救助に人員を割かねばならず、機動力に優れるグラントリノ、人命救助を得意とするベストジーニストとエッジショットが離脱。

それを補おうとエンデヴァーとヒノカミが更に炎を滾らせれば、乾燥を苦手とするギャングオルカが力を発揮できなくなった。

彼も戦線を離れて救助の応援に向かい、逃げ回るAFOについていけないナイトアイはせめてもと避難誘導の指揮を執っている。

このままでは徒に被害が広がるばかり。

ヒノカミは空中で飛び回るAFOとオールマイトを見上げ、地上から炎で援護するエンデヴァーに近づく。

 

「兄上、合わせる(・・・・)ぞ」

 

「なんだと!?だが貴様が……!?」

 

一切攻撃を受けていないはずのヒノカミの口から血が流れていた。コスチュームの隙間から覗く包帯もところどころ赤く染まっている。

 

「……もはや遅いか早いかでしかない」

 

「……わかった」

 

エンデヴァーが全身から炎を噴き出し、ヒノカミが彼の目の前に立って両手を掲げる。

 

「ゆくぞ!『天網恢々』!!」「『ヘルストリングス』!!」

 

エンデヴァーが両手の指から10本の熱線を放ち、ヒノカミがそれを操作して編み上げる。

鋼鉄すらも溶断する炎の網が、またも戦場を移そうとしていたAFOを阻む。

 

「『百鬼夜行』!」「『ファントムネスト』!!」

 

続けてエンデヴァーが周囲に無数の炎の塊を飛ばす。

それは空中で滞空し、ヒノカミの指の動きに合わせてAFOの周りを飛び回る。

接近すれば爆発し、遠ざかれば熱線に変化して襲い掛かり、AFOをその場に押しとどめた。

次々と消費される炎を補充しながらエンデヴァーが叫ぶ。

 

「今だ!避難を急がせろ!!それまでこいつはここで食い止める!!」

 

「すまない!エンデヴァー!!」

 

「……モブ共が……」

 

「させるかぁ!!」

 

エンデヴァーたちを先に始末しようと狙いを定めたAFOにオールマイトが殴りかかる。

ヒノカミはオールマイトの動きを一切阻害しないように無数の火球を操っていた。

伊達にオールマイトのサイドキックは務めていない。

 

そしてオールマイトたちが戦う光景は、報道のヘリを通じて全国に中継されている。

生徒たちが未だ避難している雄英にも。

 

「おい!どこいくんだよ轟!」

 

「行かなきゃ……合体技(あれ)は負担がでけぇんだ!

 止めねぇと舞姉が死んじまう!!」

 

生徒たちは大広間で待機していたが、周囲の制止を振り切って轟が飛び出そうとしていた。

オールマイトならまだわかる。しかしヒノカミがなぜ戦場にいるのか。

確かに強敵のようだが父親だっている。他にもトップヒーローがたくさんいる。

重病人の叔母まで戦わせずともよいではないか。

残り僅かな時間を、平穏に過ごさせてくれてもよいではないか。

部屋の扉に手をかけようとした轟の前に、横から棒状の何かが突き出される。

 

「……爆豪?」

 

「受け取れや」

 

轟は掌の上に置かれた棒を覆う布を取り払う。

 

「……刀?」

 

「あいつの『形見』だ」

 

それが誰のものだったかに気づいて轟は思わず後ろを振り向きモニターを凝視する。

ヒノカミの腰には小刀しかなかった。

そして爆豪の言葉の意味を理解し、胸倉に掴みかかる。

 

「テメェ知ってたのか!!なんで止めなかった!!」

 

「それをあいつが望んだからだ」

 

期末試験でオールマイトが口にした言葉。

だがそれだけでは轟の動きを止めることはできないとわかっている。

 

「6年前にオールマイトたちが戦いヒノカミに重傷を負わせた『凶悪なヴィラン』、それがあの仮面野郎だ。

 ヒノカミは俺らを鍛えるためだけじゃねぇ。

 あの野郎とケリをつけるために今日まで生きてきたんだ。

 ……自分の最期くらい、自分で決めさせてやれ」

 

「……!だからって……!」

 

「座って、轟くん。みんなも」

 

モニターの前から動かない緑谷が声を出す。

爆豪と同じく、彼もヒノカミの決意を知っていたのだと気づいた。

 

「一瞬だって目を逸らしちゃだめだ。

 だってこれが……ヒノカミ先生の最期の授業なんだから……!」

 

溢れ出る涙を拭うこともせず、緑谷はモニターを見つめ続けていた。

爆豪が轟の手を振りほどき、緑谷の隣の椅子に移動してどかりと座る。

冷静に見えた彼は、血が滲みそうなほど強く掌を握りしめていた。

 

「……見届けんぞ」

 

「うん……!」




・合体技

ヒノカミが使う技を決めて叫び、それに合わせてエンデヴァーが最適な形で炎を放出。
ヒノカミが炎の操作を奪って技を作り上げる。
『天網恢々ヘルストリングス』
 エンデヴァーのヘルスパイダーをヒノカミが編み上げて動かす面制圧攻撃。
『百鬼夜行ファントムネスト』
 視界内の多数の炎の塊を同時に操作する対集団及び包囲攻撃
『乾坤一擲ブレイジングバーン』
 エンデヴァーの最大火力をヒノカミが圧縮し放つ極大熱光線。(次回登場予定)

主人公が刀を置いていったのは焦凍にちゃんとしたものを遺してやりたかったという理由もありますが、一番は使う機会がないと察していたからです。
エンデヴァークラスの炎を操るとなると念じるだけでは難しく、イメージしやすくするために両手を使う必要があります。
そしてとある理由のために両手を開けておきたかったからです。
散々伏線バラまいてきたので、能力はともかく発動条件は気付かれてるよな……?
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