『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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章タイトル回収。


第18話 『最強で無敵のアイドル』

 

「ミヤえも~~~ん!早く私をアイドルにしてよぉ~~~~っ!!」

 

「無茶言わないでちょうだい……こっちだって手は尽くしているのよ?」

 

星野ルビー、14歳。中学三年生。

彼女は未だにアイドルになれていない。

実力が足りないわけではない。むしろ同居しているアイや、たまに事務所に顔を出す元B小町の面々に鍛え上げられたルビーはすでに当時の彼女たちと比較しても遜色ない実力を持っている。

元々ダンスは得意、致命的だった音痴も克服した。

 

しかしだからこそルビーはB小町を襲名することができずにいる。

彼女の実力が高くなりすぎて、メンバーが見つからないのだ。

アイドル『グループ』を名乗るならば最低でも3人、ルビーの他に2人は必要になる。

 

ルビーはアクアに協力してもらい、押しに弱く頼られたら断れない有馬かなから『3人目が見つかったら協力してやる』と言質を取った。

有馬は小柄で可愛らしく、そして美しい少女へと成長している。

すっかり苺プロに染まり超人枠に組み込まれた彼女なら女優業の傍らでアイドルとして活動することも難しくないだろう。

 

だからこそ、超人美少女コンビの隣に中途半端な人間を立たせることはできない。

巻き込まれた当人がつらい目に合うだけでなく、B小町というブランド名を著しく傷つけてしまう。

 

「もういい加減諦めてソロでデビューしなさいよ。

 アンタならわざわざグループ組む必要なんてないでしょ?」

 

「ヤダヤダヤダヤダ!B小町!B小町になりたいの!!」

 

「ガキか!アンタそういうところはぜんっぜん成長してないわね!」

 

ルビーも来年には中学を卒業する。

その後彼女とアクアは『芸能科』のある高校へと入学し、有馬の後輩となる予定だ。

しかし今のところ彼女はちょっとした役者やモデル業しか経験しておらず、このままでは周囲に『アイドルの星野ルビー』と認識してもらえなくなるのではと危惧している。

だから中学生のうちにアイドルデビューしたいと駄々をこねているのだ。

 

「……だけど、実際厳しいんじゃないか?

 ルビーと有馬に並べるくらい可愛い奴なんてそうそういないだろ?」

 

「っ!?ふ、フン!まぁ当然よね!」

 

「に”ゃぁぁぁぁああ!」

 

ルビーは兄の発言にメスの顔を見せた先輩を標的と見なして襲い掛かる。

キャットファイトも随分と進化した。世代を超えて受け継がれるメスライオンの獲物の奪い合いが今日も勃発している。

ただアイの時と違うのは、獲物である少年もそれにあらがうだけの力を持つ超人であることか。

特に逃げ足は鍛えている。草食系男子というか草食動物系男子だった。

 

 

まもなく二人のいつもの騒動を聞きつけたとある苺プロ社員がやってきて、その場にいたアクアと協力して暴れる二人を取り押さえる。

その人物を目にして、ルビーが妙案とばかりに声を上げた。

 

「そうだ、MEMちょ!一緒にB小町やろうよ!!」

 

「へぁっ!?」

 

「アホかぁっ!!MEMはとっくにトップアイドルでしょ!?

 仮にも大先輩を新人アイドルグループに加えようなんざ寝ぼけとんのかぁっ!」

 

「でもでもMEMちょならいけるでしょ!?

 可愛くて、踊りもできて、苺プロなんだから秘密も気にしなくていいし!

 いける!B小町いけるよ!!」

 

「見た目が若くてもMEMは23歳なの!

 そろそろアイドル名乗るのも苦しくなってきてるんだからね!」

 

「ぐぼぁっ!!……か、かなたん、もうちょっと大先輩を労わってくれないかな……?」

 

ちなみに24へのカウントダウンが始まっている。

時代が変わり、アイドルになる年齢自体が引き上げられたことに伴ってアイドル現役が許容される年齢も随分と引き上げられてきた。

しかし流石に20代を超えると難しいだろう。MEMもあと5年そこらが限界だ。

MEMが年齢不詳ならごまかすこともできるが、今日までの活動で彼女の実年齢は広く知れ渡っている。

流石に10代半ばの二人組に混ぜたら批判や同情のコメントが雪崩れ込んでくる。

 

「でも確かにルビーの言う通り、年齢にこだわってる余裕はないわね」

 

「多少年上でもいいってことですか?

 見た目が幼くて年齢が知れ渡ってないならアリかもしれないけど、それはそれで厳しくないです?」

 

当人の年齢を隠す手間が生じるというだけではない。

ルビーたちに並べる容姿や能力を持ち合わせながら年上でフリーということは、当人にその気がないか他に欠点を抱えているか。

 

「じゃあ年下なら!?今の子って発育いいよね!」

 

「そっちはむしろまずい。仮にお前ら並のルックスと能力を持っていたとしてもだ」

 

先ほど挙げた通り、今の時代は若すぎるアイドルは問題視されることももちろんだが。

 

「今一番ネックになっているのは、苺プロの秘密を守れるかどうかだ。

 ガキすぎるとその辺のモラルに期待できない」

 

「……はぁ~~、そこなんだよねぇ~~」

 

苺プロは超少数精鋭かつ秘密主義で有名な会社である。

それはそうしようとしてなったのではなく、そうしなければならない理由があったから。

恩恵を受けているのだから納得はしているが、こうして新たな活動を始める際には無視できない枷となる。

外部との接触に細心の注意を払わねばならない現状では気軽に面接すら行えない。

今はこちらから候補となりそうな子に確認して回っているが、都合よくMEMのような逸材が見つかる様子は今のところない。

 

 

 

「その条件なら、とっておきのメンバー候補がいるでしょ?」

 

「「「!?」」」

 

 

そこで、デスクワークをするミヤコの膝の上に座り、黙って難しい本を読んでいた子供が口を開く。

 

「ホント!?月読ちゃん!」

 

「月読、どこで候補を見つけたの?子役の仕事中?」

 

斎藤壱護と斎藤ミヤコの実の娘、斎藤月読。

天才子役『ツクヨミ』として活動する4歳児。

そしてアクアとルビーと同じく、前世の記憶を持っているらしい人物だ。

 

「見つけたも何も、皆も知っている人だよ。

 どこで会ったかと言えばこの事務所になるかなぁ」

 

「ここに来たことがある人?」

 

「ううん、苺プロに所属している人。

 だから守秘義務契約も問題ないよね」

 

「「えぇ!?」」

 

「…………まさか」

 

アクアは気付いたが、口にすることを恐れた。

年齢という縛りを外せば確かに条件に当てはまるが、『アレ』は反則だろう。

 

 

 

「ずっと苺プロを支えて来た人で」

 

「見た目が中学生くらいの可愛い女の子で」

 

「歌や踊りの腕前はお姉ちゃんたちよりも上で」

 

「やる気はないだろうけど真面目で律儀だから、押し切ればきっと頷いてくれる」

 

そんな都合のいい存在が。

 

 

 

「「「いたわね」」」

 

 

 

 

 

 

 

「いやじゃぁぁぁぁぁああああ”あ”あ”!!!!!」

 

 

苺プロはアイドルユニット『B小町』の再結成を発表した。

 




『最強で無敵(物理)のアイドル』
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