『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第54話

『オール・フォー・ワン周辺半径5km、避難完了!』

 

「……うぉおおおお!!」

 

マンダレイからのテレパスが届き、エンデヴァーが雄たけびを上げた。

もはや加減をする必要はない。

 

「TEXAS SMASH!!」

 

オールマイトも同様に鬱憤を晴らす勢いで、AFOを天高く打ち上げた。

今までは自分をその場に留めようとしていたオールマイトの動きが変わったことで、AFOも状況を察する。

エンデヴァーとヒノカミが揃って両腕を上げAFOに向けて広げる。

この技は威力が大きすぎて、ヒノカミでも周囲への余波まで抑え込むことができない。

 

「『乾坤一擲』!」「『ブレイジングバーン』!!」

 

エンデヴァーが制御することを考えずに全身から放った炎を、ヒノカミが束ねる。

炎は直径十数メートルに迫る熱光線となり、AFOへと迫った。

躱しきれないと察したAFOは腕から衝撃波を放って相殺しようとするが、わずかにすら衰えなかった。

夜空を貫く光の線がAFOを飲み込むが、すぐに熱線の外へと脱出した。

しかし流石に無傷とはいかず、高価なスーツはいたるところが焼け焦げ、防御に使ったであろう両腕が炭化している。

なんらかの個性を使って腕を再生していたAFOの上空から、更にオールマイトが迫る。

 

「CALIFORNIA SMASH!!!」

 

空中で何度も回転して威力を増したオールマイトの拳がAFOの顔面を捕らえ、揃ってエンデヴァーたちの前に落下する。

出来上がったクレーターの大きさと巻き上がった土埃の量がその威力を物語っているが、それでもAFOを倒すには至らない。

先ほどまでAFOが多用していた黒い爪の槍が全身から伸び、オールマイトがエンデヴァーたちのすぐ後ろまで距離を取る。

土埃が晴れ、立ち上がったAFOの姿が見えてくる。

先ほどの一撃で仮面が壊れていた。

 

「……なんというか……随分男前になったではないか。ぷぷぷ」

 

鉄仮面と一体となったマスクに覆われているので口元は見えないが、仮面の下の顔は目も耳もつぶれ、毛髪もなかった。

6年前の戦いでオールマイトたちはAFOの頭を潰した。それを無理やり再生すればこういう風にもなるのだろう。

エンデヴァーはヒノカミを隠すように一歩前に出る。

口元は拭ったが、全身から溢れ出した血が彼女のコスチュームにしみ込んでいる。

濃い藍色の道着なので遠目にはわかりにくいが、少し注意すれば彼女の状態を察するのは容易いだろう。

 

「死柄木弔、黒霧は捕らえた。間もなく他のヒーローたちも応援に戻ってくる。

 ……終わりだ。オール・フォー・ワン!」

 

AFOは確かに強い。しかしオールマイト達だけでなく、AFOもかつてより遥かに弱体化していた。

以前のAFOを想定して戦力を用意していたヒーローたちが優勢なのは当然だった。

 

「確かに……これでは弔を取り返すのは難しいだろうね。

 駄目な生徒ほどかわいいというが……まったくもって残念だよ」

 

AFOがUSJから弔を救出した時の個性は、AFOの元に連れてくるか、AFOから送り出すかしかできない。

この場に引き寄せても戦いに巻き込まれてやられるだけ。

何より奴の隣には怒りに燃えるブレイザーがいる。転送される素振りが見られればためらうことなく止めを刺すだろう。

しかしAFOを誰よりも知るヒノカミは彼の言動に違和感を覚えた。

 

「……随分とアレを気に掛けるではないか……唯我独尊を地で行く貴様が……」

 

「当然さ。だって

 

 

 死柄木弔は志村菜奈の孫だよ」

 

 

エンデヴァーには通じなかったが、オールマイトとヒノカミの動きが止まる。

7代目OFA継承者、志村菜奈。

敬愛する恩師の姿が、未来を託した後輩の姿が、二人の脳裏に浮かぶ。

 

覚悟の差か、動き出すのはヒノカミの方が一瞬早かった。

彼女はオールマイトの前へと移動し、両手を広げる。

直後、AFOの体から伸びた無数の黒い爪の槍が二人を貫いた。

 

「がはっ!?」

 

「守るべき者の未来を自らの手で閉ざした気分はどうだい?」

 

槍は二人を貫いたまま伸び続け、遠くにあったビルの壁へと貼り付けにする。

普段の二人なら絶対に晒さない隙だからこそ、エンデヴァーは動くのが遅れた。

 

「舞火ぁ!」

 

「ここで君も終わるといい」

 

続けてAFOの左腕が膨れ上がり、貫かれた二人へと向け極大の衝撃波が放たれる。

迫る直前、ヒノカミが直撃を免れていた両手を、目の前で強く叩きつける。

衝撃波は彼らを飲み込み、背後にあったビルが倒壊する。

ビルは無数の瓦礫となって降り注ぎ山となった。

オールマイトならば容易く吹き飛ばせるはず。

しかし山は静かに佇むだけだった。

 

「……舞火ぁあああ!!」

 

中継を見ていた日本中の人間が、モニターの前で悲鳴を上げた。

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