『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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今までの外伝は全て独立した話としていましたが、本章は外伝第3章の後とさせていただきます。


外伝6 コズミック・イラ
第1話 『たった一人の第三勢力』


 

コズミック・イラ(C.E.)70年。

 

自らを自然のままに生まれた人類とする『ナチュラル』が率いる地球国家連合軍『地球連合』と。

出生前に遺伝子操作が行われ優れた能力を持つ『コーディネイター』が住まうプラントの政党及び軍隊である『ザフト』。

両軍による世界中を巻き込む宇宙戦争が勃発した。

 

これは突発的に起こった戦争ではない。

あまりにも長い年月蓄積されてきた歪みが、ついに限界を超えたことで生じた争いだ。

 

始まりはC.E.15年。

驚異的な頭脳と身体能力を持ち数々の偉業を成し遂げた青年『ジョージ・グレン』。

彼が『自身が遺伝子操作を受けて誕生した人間、コーディネイターである』と告白し、その製法を公開したことが発端だ。

 

当初は『神の領域に足を踏み入れる行為』として禁忌とされた。

自然環境保護を訴える団体『ブルーコスモス』も真っ先に拒絶の意志を示した。

 

しかし優秀な跡継ぎを望む富裕層が大金を積んで極秘裏に己の子をコーディネイターとして生み出していた。

そしてC.E.30年頃にはコーディネイター寛容論が広まり、世界中で多くのコーディネイターが誕生した。

やがて隔絶した能力はナチュラルの憎悪と嫉妬、コーディネイターの増長を招いた。

 

C.E.53年。コーディネーターを妬んだ少年によりジョージ・グレンは暗殺された。

この事件を皮切りにナチュラルとコーディネーターの対立は激化していった。

 

C.E.55年。トリノ議定書が結ばれ地球上での遺伝子改変、つまりコーディネイターを生み出すことが禁止された。

 

C.E.57年。大西洋連邦、ユーラシア、アジア共和国航空の宇宙軍がプラント宙域に駐留を開始。

 

C.E.63年。ブルーコスモスのテロによりプラントのエネルギー生産部門が破壊される。

しかし地球の理事国はプラントを慮ることなく過剰な生産ノルマを課し続けた。

反抗のためのストライキに対し宇宙軍は威嚇を行い、プラント独立の機運が高まった。

 

C.E.65年。プラント内での自治権、貿易自主権の獲得を訴え、政治結社『黄道同盟』が勢力を拡大し『ザフト』と名を改める。

 

C.E.68年。ザフト所属議員がプラント評議会の過半数を占め、事実上の独立宣言を発表。

当然地球の理事国は猛反発。プラントで唯一自給自足できていなかった食料の輸出を絞ることで彼らを支配しようとした。

これに対しプラントはコロニーのいくつかを食料生産用に切り替えることで乗り切る。

理事国は武力行使に踏み切りプラント周辺の宇宙軍を動かすが、ザフトが開発した人型兵器、モビルスーツ『ジン』に大敗しプラント周辺から宇宙軍は排除された。

 

そしてC.E.70年。

プラントは自治権を連合国家に要求するが議論は平行線。

やがて地球への物資の輸出を停止し、プラントに依存していた地球の国家は一気に困窮した。

 

そして同年2月7日。地球の各国が『地球連合軍』を設立しプラントに宣戦を布告。

2月14日、プラントの食料生産コロニーの一つ『ユニウスセブン』に核攻撃が行われ24万人を超える犠牲者を出した。

4月。報復としてプラントは『オペレーション・ウロボロス』を発令。

地球全土に『ニュートロンジャマー(Nジャマー)』を散布し地球上での核分裂反応を抑制、核兵器が使用不可能にした。

原子力発電所も使用不可能となり、地球は深刻なエネルギー危機に陥った。

 

 

 

 

「いやアホか」

 

そして困窮する人々の祈りに反応してこの世界にやってきたヒノカミは、ここに至るまでの経緯を把握した直後思わずつぶやいた。

 

プラントは元は地球の理事国が出資して建設した文字通りの『工場(プラント)』であり、ザフトは施設の従業員が武装蜂起して会社を占拠したようなもので、簡単に言えばテロリストだ。

彼らがここまで反発を抱くに至る理由は理解できたが、そんな状況に陥るまで彼らに圧制を強い続けた理事国の運営は無能の一言。

『青き清浄なる世界のために』と叫びながらその青い宇宙に核弾頭ぶち込んだブルーコスモスとかいう連中は『この世界の言葉は自分が知るものとは単語の意味が違うんじゃないか?』と不安になったほど支離滅裂だし、プラントを支配しようとする理事国だけでなく地球全域にNジャマーを打ち込んでエネルギー危機を引き起こしたザフトもまた大馬鹿者だ。

地球にだって少数だろうがコーディネイターはいる。理事国に虐げられていた頃のプラントに手を差し伸べた国家もあった。

なのに攻撃対象を地球全域に広げ、味方だった国や恩があった国までも敵に回すのは明らかに愚策。

事実この一件で地球連合に参加を表明する国が増え、ブルーコスモスは勢力を拡大し続けている。

 

始まりは一部の『ナチュラル』と一部の『コーディネイター』の衝突だったはずだ。

しかし愚かな連中の愚かな行いがこれを全ての『ナチュラル』と全ての『コーディネイター』に、そして『地球』と『プラント』の戦いにまで広げてしまっていた。

巻き込まれる側たちからすればたまったものではあるまいし、巻き込んだ連中には殺意すら覚える。

 

『争いは同じレベルの者の間でしか発生しない』

多少の能力差はあるようだが、争いが成立している時点でヒノカミに言わせれば同レベルなのだ。

ナチュラルは言うほど弱くなく、コーディネイターは言うほど強くない。

遺伝子操作の有無なんて、『個性』持ちと『無個性』の差に比べたら目糞鼻糞だ。

 

 

そしてこの世界でどう動くべきかを考え吟味したヒノカミは結論を出した。

『連合』と『ザフト』、この2つの陣営を見限った。

この混迷した状況において、互いを憎み争い続ける両者に歩み寄る時間と労力は無駄だと判断したのだ。

 

 

彼女は両者の争いを止めるのではなく、両者の争いに巻き込まれた者の救済を選択した。

鬼の鎧を纏い『ナチュラルでもコーディネイターでもない者』を自称し、連合にもザフトにも属していない国家・組織・団体に金銭的・技術的支援を始めた。

特に、彼女が中立国に設置して回ったエネルギープラントは多くの住民の命を救った。

 

未知の技術を持つヒノカミは地球連合にとって是非とも取り込みたい人材であり、ザフトにとって敵に奪われるくらいなら始末したい存在。

両者はヒノカミを力で脅迫し従えようとした。そして両軍は鬼人が操る未知のモビルスーツ1機に壊滅させられた。

その後も彼女から手を出すことはしなかったが、襲ってきた敵は全て返り討ちにした。

 

『たった一人の第三勢力』

それがこの世界でのヒノカミの立ち位置となった。

 

やがて彼女はこの世界で特に国力が強く、強固に中立を宣言する『オーブ連合首長国』に食客として招かれた。

どれほど強大な力を持っていようと一人でできることには限界がある。

ヒノカミは彼らと協力し、連合とザフトの下らぬ諍いで生じる被害を少しでも減らすために活動を続けていた。

 

 

しかしある時、オーブの五大氏族の一つがその理念を破った。

オーブの軍事を担当する『サハク家』が、自身の管理するコロニー『ヘリオポリス』にて地球連合と結託しモビルスーツを開発していると判明。

しかも連中が連合に提供した情報には、ヒノカミの愛機であるモビルスーツから得られたものがわずかながら含まれていると知る。

 

即座にヒノカミはサハク家に殴り込みをかけた。

止めようとするオーブの軍人やサハク家の私兵をなぎ倒して首謀者である双子の元に辿り着き糾弾するが、彼らはどこ吹く風。

それどころか弟の方は『貴様が貴様のモビルスーツをこちらに渡していればこんな面倒なことをせずに済んだ』などとのたまう始末。

 

この日、サハク家は鬼により物理的にお家取り潰しとなった。

当主となる予定だった双子の弟はその場で焼却された。

姉は一命をとりとめたが、家と財産と自らを支える基盤を失った。

 

そしてヒノカミはそのままオーブの代表であるウズミ・ナラ・アスハのもとに攻め入った。

ヒノカミがサハクの動きを知るのが遅れたのは、先んじてそれを把握していたウズミが隠蔽していたからだ。

 

邪魔をするなら軍も警察も全てなぎ倒す……つもりだったが、その前にウズミが護衛も連れずに一人で彼女の前に姿を現した。

 

「よく儂の前に顔を出せたものじゃな」

 

「責を負う覚悟はできておる」

 

「……貴様があえてサハクを見逃した理由、理解はしておるつもりじゃ」

 

オーブは一国家としては強大な軍事力を持つが、連合やザフトと比較すればあまりに弱く勝ち目などない。

中立を維持するには自衛のための戦力が必要だ。

特にこれからはモビルアーマーではなくモビルスーツが主流になる。

一刻も早く自国でモビルスーツを生産し配備せねばならず、しかし一から独力で作り上げるのは時間がかかりすぎる。

だからサハクは連合と水面下で協力することでモビルスーツ製造の技術とノウハウを吸い取るつもりだった。

そしてオーブという国を守ることにつながると、ウズミはあえてそれを黙認していた。

 

「じゃがな!ヘリオポリスには山ほど民間人が住んでおるじゃろうが!

 ザフトが事態を察知すればためらいなく攻撃するぞ!

 どれほどの犠牲が出ると思っておる!民を守らずして何が国家か!」

 

「その通りだ。民を守る力を得るために私はこの決断をした」

 

「……平行線か」

 

「我々は強くならねばならぬ。……だが貴公ほど強くはあれぬのだ。

 どうかその怒り、この身一つで鎮めていただきたい」

 

「よくぞ吠えた。……歯ぁ喰いしばれ……!」

 

静かに目を閉じ裁きを待つ男に、巨漢の鬼が拳を振りかざす。

 

 

 

「ウズミ様!ヒノカミ様!」

 

 

しかし割り込んだ声に拳を止める。

 

「キサカ……何用か?」

 

「この状況は一体……!?」

 

「構わん。用向きを話せ」

 

「ハッ……『ヘリオポリスにて連合がモビルスーツを開発している』という噂の件ですが……」

 

「たった今事実と本人が認めたところよ」

 

「その噂を聞いたカガリ様が、単身ヘリオポリスへ向かってしまっていたようで……」

 

 

「「…………は?」」

 

 

ここでようやく、男と鬼が乱入者の方へと向いた。

彼は眉根を寄せ、眉間には皺が刻まれていた。

 

 

 

「「……あの馬鹿『娘/弟子』がぁ!」」

 

 

 

「ウズミ、続きは後回しじゃ!儂はすぐにヘリオポリスに向かう!」

 

「すまん、頼む!どんな手を使ってでも連れ戻してくれ!

 殴り飛ばしても縛り上げてでも構わん!」

 

「言われんでもそのつもりじゃあ!」

 

揃って絶叫した二人は即座に行動を開始する。

 

既にカガリが隠れて出発してから数日が経過しているらしく、普通の手段で追いかけては時間がかかりすぎる。

だからヒノカミは躊躇いなく己の愛機を呼び出すことにした。

 

正式名称は『長すぎる』と当人には不評だった。

仮称は禍々しすぎて気軽に人前で呼びづらい。

 

だから彼女は、彼をただこう呼んでいる。

 

 

 

 

「ガンダァーーーーーーーーム!!!」

 

 

 

 

(ーー!)

 

鬼の叫び声に応え、空から一機のモビルスーツ……いや、モビルファイターが飛翔する。

鬼が数十メートルの高さまで跳んで開かれた胸部ハッチに飛び込むと、下半身が頭部を模した推進ユニットへと変形する。

 

「ヘリオポリスへ飛んでくれ!大至急じゃ!」

 

(ーー!!)

 

指示を受けたガンダムの人工知能は頭上を見上げ、恐ろしいスピードで上昇を開始。

単独で大気圏を突破し宇宙へと飛び出した。

 




外伝6『機動戦士ガンダムSEED』。
ちょっと旬を過ぎてしまいましたが、関係なく暴れさせていきます。
ただ大筋を決めた後で詳細を考えるためにアニメを見返そうと思ったんですができてなくて。
ニコニコのdアニメに加入してるんですが、『SEED FREEDOM』があるのに『SEED』も『DESTINY』もなくて目論見外れて困ってます。
以前持ってた漫画、手放さなきゃよかったなぁ。
わずかな記憶と資料集をひっくり返して書いていきます。色々と雑になるのはご了承ください。

そしてヒノカミの愛機はご存じ『アルティメットガンダム』となります。
この世界に来た時にすでに『モビルスーツ』が存在していたため、問題ないと判断して呼び出しました。
ガンダムは無機物なので他の道具と同様に別の世界に持ち込むことが可能としています。
ちなみに、今後別のロボットものの世界をめぐる場合も彼を乗機とする予定です。
もちろんある程度自重はさせるし、そもそもヒノカミ本体がGガンダムの世界ほど強くないので戦闘力が落ちてますが。

本作『ワン・モア・タイム』本編は色んな世界をめぐって少しずつ強くなるという話だったわけですが、以前ガンダムを題材にして似たような話考えたことがあるんですよね。
別のガンダム世界に流れ着いたデビルガンダムのかけらが、いろいろなガンダム世界を旅して独自の進化していく物語。
色々土台も変わってしまいましたが、折角なので本作外伝にて似たようなことやってみようかなと。

本章の最後はSEEDの最終話までの予定です。
根底がことごとく崩れるのでDESTINYとFREEDOMには派生しません。ご了承ください。
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