『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第3話

 

「此度の一件、発端はオーブの軍事を司るサハク家の傲慢から始まった。

 自国でもモビルスーツを生産するための情報とノウハウを連合から盗み取るために。

 そちらもそのくらいは見抜いていたかもしれんが、これが裏切りであることに違いはない。

 ゆえに連合に謝罪する」

 

「えっ、あっ、はい……」

 

「そしてウズミはそれに気づいておきながら国家のためと黙認した。

 中立を掲げる国のトップが誓いを破り、一方に利する行動をした。

 その愚行をザフトに謝罪する」

 

「……おぅ」

 

「この騒乱はオーブに責がある。

 連合でも、ザフトでもなく、全てオーブが悪い。

 守るべき民を危険に晒したこと、住民である少年たちに謝罪する。

 ……誠に申し訳なかった」

 

「「「…………」」」

 

 

「帰国次第、ウズミの奴は思いっきりぶん殴っておく。

 気休めにもならぬじゃろうが、それでこの場は留飲を下げてほしい」

 

「ヒノカミ、私もその場に参加させてもらうぞ!」

 

「無論じゃ……殴られる側でな」

 

「何故だ!?」

 

「ウズミとキサカと3人がかりで行くからの」

 

「いやだぁぁぁーーーーっ!ぐえっ!」

 

逃げ出したカガリの胴体に鬼の左手から伸びた帯が巻き付き引っ張られた。

ほどこうとしたができず、やがて彼女はおとなしくなった。観念したようだ。

一同は未だに困惑し沈黙しているが、彼らが気持ちを整理するまで待ってやる余裕はない。時は一刻を争う。

 

「そして身勝手で悪いが、これ以上コロニーに被害を出すわけにはいかん。

 連合には可及的速やかにここから退去してもらいたい。

 今が脱出の好機でもあろうからな」

 

「好機、とは?」

 

「コロニーの外にいたジンは全て儂が駆逐した。

 戦艦はおるがモビルスーツはおらぬ。

 ザフトの増援が到着する前に出航せよ」

 

「っ!テメェ、アイツらを殺したのか!」

 

捕虜同然のミゲルが食い掛る。

ガンダムと鬼の脅威を理解していても、それ以上に戦友を失った怒りが勝っているらしい。

仲間想いの良い青年だ。だからこそ彼のような者がこんな戦争に参加していることを悲しく思う。

 

「殺しておらん。一機残らず頭と手足を潰しただけじゃ。

 ザフトに対する先ほどの謝罪は嘘ではないぞ」

 

「……はぁ!?10機以上いたんだぞ!

 それを一人も殺さず全滅させたってのか!?」

 

「殺さず倒すならモビルスーツの方が楽じゃろ。

 胴体以外ならどこ潰してもいいんじゃし。

 人間は脆いから、失血死やらなにやら面倒じゃからなぁ……」

 

「「「……!」」」

 

この鬼は本気で言っているのだと察し、モビルスーツの戦闘経験などない少年少女もその難易度を想像して絶句する。

 

「殺さず、倒す……胴体以外なら……確かに……!」

 

しかし彼らの中で唯一モビルスーツの操縦を経験した少年が、特に大きく目を見開き鬼の言葉を反芻していた。

 

「話を戻そう。連合は5機のモビルスーツと専用運用艦を製造していると聞いた。

 4機が奪取されたことはこちらも把握しておるが、船の方はどうなっておる?」

 

「えっ……と、残念ながらそちらの状況は把握しておりません」

 

「ミゲル。ザフトは連合の船に対して何かしたか?」

 

「……作戦目標は連合の新型モビルスーツの奪取だ。

 船の方は優先度が低かった。どうなってるかはオレも知らねぇ」

 

「……残っておらずとも、他の船もあるじゃろう。

 運び出さねばならぬ荷物はあるか?

 運搬に協力しよう。手早く済ませるぞ」

 

「あ、はい!ご協力感謝します!」

 

「そちらに目途がついたところで、ミゲルを外のザフトのもとへ送り届ける。

 済まぬがしばし待ってもらいたい」

 

「……わかった。だがオレはそっちは手伝わねぇぞ」

 

「道理じゃな」

 

 

マリューは連合の技術士官らしいが負傷しており、モビルスーツの操縦ができる状態ではなかった。

引き続きキラという少年が連合のモビルスーツ、『ストライク』とやらを動かして大荷物を運んでいく。

カガリとキラの友人たちは運搬車の準備と運転。

剛腕を誇るヒノカミのガンダムが4本の腕で次々と荷物を積み上げていく。

その間にヒノカミはミゲルのジンを修理していた。

連合にこれだけ手厚く対応しているのだから、ザフト側にも手を貸さねば不公平だろうという理由で。

 

(ーー)

 

そんな中、ガンダムが何かを察知し上空を見上げる。

やがてコロニーの内壁が爆発し、2つの機影が飛び込んできた。

 

ザフトのモビルスーツ『シグー』と、連合のモビルアーマー『メビウスゼロ』。

シグーがガンダムと連合のモビルスーツに気付き、銃口を向けて突撃してくる。

 

「食い止めよ!みなを傷つけさせるな!」

 

(ーー!)

 

抱えていた荷物をその場に置いたガンダムが脚部を変形させ、4本の腕を広げて急上昇。

銃弾の雨を広げた腕で弾きながら突き進む。

形勢不利と気づいてシグーが撤退を選ぶが時すでに遅し。

接近したガンダムがミゲルのジンと同様にシグーを取り押さえようと巨大な腕を広げて襲い掛かる。

 

 

 

しかし捕縛する直前、爆発音と衝撃がコロニー内部を襲った。

 

 

 

コロニーの内壁を突き破り、白く美しい宇宙戦艦が姿を現した。

 

「アークエンジェル!」

 

「またコロニーがぁーーーっ!!!」

 

予期せぬ乱入者によりガンダムすらも動きを止めてしまい、その隙にシグーが身をひるがえして撤退する。

シグーを追いかけてきたメビウスゼロはどうやら満身創痍らしく、ガンダムに手を出すこともなく降下していく。

アークエンジェルという船に着艦するつもりのようだ。

 

「でっかい大穴が……修理費と期間がぁ……!」

 

「その……申し訳ありません……」

 

「オレらが暴れた以上の被害が出てるな、こりゃ」

 

頭を抱える鬼にマリューが頭を下げ、ミゲルは他人事のようにつぶやく。

まぁ実際彼にとっては他人事だろう。

 

「……はぁ。あれが件の船で間違いないんじゃよな?」

 

「えぇ、そうです」

 

「離脱手段が無事だったことを喜ぶか。

 だったらさっさとあそこに荷物を運びこむぞ。

 そんであの船の連中に言い含めてくれ。

 『もうこれ以上コロニーを傷つけるな』と」

 

「ハッ!」

 

マリューは鬼から恨みがこもった視線を向けられ思わず敬礼をした。

ミゲルのジンはまだ修理が終わっておらず動かせない。連合の船に持っていくのもまずいだろうと、しばらくその場に放置しておく。

上空から降りてきたガンダムが巨大なコンテナを抱え、同じく荷物を持ったストライクと、カガリたちが運転するトラックが船へと向かう。

トラックの内の一つの荷台にはマリューとミゲル、そして巨漢の鬼が乗り込んでいた。

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