『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第56話

オールマイトが敗れた。

その事実を突きつけられた人々は恐慌し、届かぬとわかってもモニターの向こうで戦うヒーローたちに祈るように声援を送り続ける。

エンデヴァーだけではなく、救助に割かれていたトップヒーローや近くにいた他のヒーローたちも戦場に戻ってきていた。

しかし彼らが団結してもAFOに決定打を与えることができない。

特に厄介なのは、AFOが自在に空を歩いていること。

この場には空中戦ができるヒーローがほとんどいない。

ホークス、せめてミルコがいてくれればもう少し食らいつくことができただろうが。

 

そして攻めあぐねているのはAFOも同じだった。

彼も先ほどまでの戦いで疲弊し、弱体化している。怪我と体力の回復に手間取り全力を振るえない。

だがオールマイト以外のヒーローはすべて取るに足らない雑魚。

それでも問題はないと決めつけていた。

しかし彼の前にはまだ例外が立ちはだかっていた。

 

(……エンデヴァー……厄介な)

 

圧倒的熱量でAFOを攻撃しつつ、周囲のヒーローたちにAFOが攻撃できないように牽制し続けるナンバー2ヒーロー。

奴が一時期ナンバー1となったのはオールマイトが自分との闘いの負傷で休養したからで、ただタイミングが良かっただけだと判断していた。

しかし評価を改める必要があるだろう。

AFOはオールマイトを警戒し、オールマイトに有効な個性を厳選して勝負に挑んでいた。

熱や炎に有効な個性はあまり持ち合わせがない。近づけば触れる前に焼き焦がされる。

エンデヴァーから個性を奪うのは不可能だろう。

 

(ヒノカミとかいう小娘と言い、どこまでも不快にさせてくれる兄妹だ)

 

思い浮かぶのは先ほどまで目障りに動き回っていた、オールマイトと共に自分を一度倒したサイドキック。

発表された当時はなぜこんな小娘を迎え入れたのかと疑問に思ったものだが、自分の神経を逆なですることにかけてはこの上ない人材ではあった。

AFOが名前を覚える価値があると認めた、数少ない敵。

奴を見ていると、とうの昔に忘れた誰かを思い出しそうになる。

だが、それも終わったことだ。小娘はオールマイトと共に瓦礫の下。

もう少し時間が経てば目障りなヒーローどもを一掃できる程度には回復する。

連中の持つ有用そうな個性のいくつかを対オールマイト用の個性と取り換えてから皆殺しにすればいい。

オールマイトを倒した以上、焦る必要はない。

AFOの意図が分かっているエンデヴァーは必死に攻撃を強めるのだが、完全に防御に徹するAFOを押し切ることができない。

 

「……!?」

 

戦いの最中、炎を操るエンデヴァーだからこそ真っ先に気づいた。自分の炎が、何かに引き寄せられている。

見渡せば自分の炎だけではない。AFOとの戦いで生じた火災や爆発、それらの炎が一斉に一点へと吸い寄せられている。

やがてAFOや他のヒーローたちも異変に気付いた。

炎が集まるのは、オールマイトたちが沈んだ瓦礫の山。

そして突然瓦礫が爆発し、何かが底から這い出してきた。

 

「!?舞……!!?」

 

この場でこんなことができるのは彼の妹だけだ。

安堵の表情で彼女の名前を呼ぼうとしたが、エンデヴァーは現れたものを目にして言葉を失った。

 

『……GIIIiiGAAAAAAAAA!!!!!』

 

それはまともな人の姿をしていなかった。

身に着けていたコスチュームは装甲も道着もすべて焼失し、全身に炎を纏っている。

皮膚は黒く焦げてただれ、ひび割れや傷口から血煙と炎を噴き出し、唇は焼け落ち歯がむき出し。

そしてもはや、人の言葉すら失っていた。

 

『……aaAAAAAAA!!』

 

爆発と共にヒノカミだったものは音の壁を突き破って飛び、滞空していたAFOを殴り飛ばす。

 

「ぐぅぅううっ!!?」

 

拳を受けた腹が、一瞬触れただけだというのに焼け焦げ崩れた。しかしそれ以上の驚愕が彼を襲っていた。

 

「この力、まさか……『ワン・フォー・オール』!!?」

 

年齢以上にオールマイトが弱体化していたことから、すでに後継者を見つけていると思っていた。

譲渡先はおそらく、緑谷出久という少年。だからこの場にOFAは存在しないはずだ。

しかしこの急激な身体能力の向上はそれ以外に説明がつかない。

 

「まだ譲渡していなかったのか……!?それを今わの際に渡したと!?

 ……こんな『死にぞこない』に!!?」

 

『GRRrr……raaAAAA!!!』

 

「……くくく、くはははは!はははははは!!!」

 

AFOは目の前の敵を脅威と認め身構えるが、その口元は自然と吊り上がり、抑えきれない笑いがこみあげてくる。

 

「これが笑わずにいられるか!?

 その命の火がつきるまでのわずかな時間で僕を倒すとでも!?

 ……できるはずがないだろう!!!」

 

『Giッ……GAaaaaAAA!!』

 

ようやく再び使える程度に回復した腕で衝撃波を放ち、けだものを吹き飛ばして躾ける。

その力と炎は厄介だが時間制限付きだ。AFOは逃げに徹するだけでいい。

大きく実ったOFAを収穫できなくなってしまったことは残念だが……。

 

「……目の上のコブが消えると妥協してやろう。

 さらばだ『ワン・フォー・オール』。

 愚かで愛しい弟よ」




・個性『ワン・フォー・オール(残り火)』

オールマイトからヒノカミに譲渡された。
六道リンネがOFAを所有していた頃、
オールマイトの60%ほどの身体能力を取り戻している。

・『怒髪焦天』

暴走した、ヒノカミだったものの姿。
自分の制御能力を超える量の炎を取り込み、
自身の血肉すらも燃料に変えて火炎を生み出している。

イメージは最終決戦時の荼毘の姿です。
炎と熱を自分に引き寄せているので周囲への熱の余波は少ないですが、内包している熱量はそれこそ暴走した荼毘クラス。
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