『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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展開上、外伝キャラとガッツリ関わっています。
詳しくは『ガンダムSEED ASTRY』をご参照ください……と言いたいところですが、作者もときた先生の漫画しか知らないんですよね。
随分前に手放したこともあって記憶もあいまい。ご了承ください。


第6話 王道ではない者

 

ヒノカミはこの世界で中立の国、組織、団体に積極的に支援を行っている。

中でも特に密接な繋がりがあるのが『ジャンク屋組合』だ。

 

元々ジャンク屋は軍用品や民需品を問わず宇宙のデブリを回収する業者であり、そのほとんどは個人事業主だった。

しかし連合とプラントの衝突による戦争勃発に伴い彼らにも自衛の手段が必要となった。

そこで数名の有識者たちがジャンク屋たちをまとめ上げて結成された互助団体がジャンク屋組合である。

ヒノカミはこの組織に対し技術面や金銭面で多大な支援を行っている。

なので彼女はジャンク屋たちに顔が利く。正体は隠したままなので鬼の仮面の顔であるのだが。

 

彼女は連合がヘリオポリスを去るや否や、個人的に特に親しくしている腕利きのジャンク屋を呼び寄せた。

すでにUG細胞を侵食させて深刻な被害を受けていた個所の修復は済ませているが、UG細胞は未だこの世界の誰にも明かしていない超極秘事項。

大っぴらに使って存在を察知されるわけにはいかず、しかし一般的な方法でこの巨大なコロニーを修繕するには彼女一人ではどう考えても人手が足りないからだ。

 

「すまんな、突然呼び出して。

 しかしお主らが近くにいたのは幸運であったよ」

 

「いえいえ、毎度御贔屓いただきまして」

 

鬼は呼び寄せたジャンク屋一団を代表して自身と対面する『リーアム・ガーフィールド』に深々と頭を下げる。

 

「ロウからは、見た目ほど大きな損傷ではないと連絡を受けています。

 明後日までには住民をコロニー内に戻せるくらいには応急処置が終わるだろうと。

 シェルターにいる方々への連絡と支援には樹里が当たっています」

 

「流石の手際じゃな。……あー、でも、ホントにすまんな?」

 

「いえいえ、一刻を争う事態ですし、仕方がないでしょう」

 

カガリを追いかけて身一つで地球を飛び出してきたヒノカミは完全な一文無しだ。

このコロニーの機能がまだ生きていれば本国にアクセスして報酬を振り込めるのだが今の状況ではそれもできない。

よってコロニー修繕という大仕事を頼んでおきながら、持ち合わせがないからと後払いを認めてもらっているのだ。

 

「アナタが多額の資金を所有していることも、踏み倒すような真似はしないことも理解しています。

 しかし、我々はジャンク屋ではありませんので。

 支払いを待つ分は、しっかりと上乗せさせていただきます」

 

「……お手柔らかに頼むぞ、風花」

 

「えぇ、勉強させていただきます」

 

鎧姿の巨漢と長身の男性の間に挟まれた、わずか6歳の少女『風花・アジャー』が堂々と胸を張る。

彼女はジャンク屋組合ではなく、傭兵部隊『サーペントテール』の一員だ。

連合が立ち去ったとはいえもう一度ザフトが侵攻してくる可能性は高く、しかしアークエンジェルを追いかける予定のヒノカミは応急処置が終わり次第コロニーを離れなければならない。

よって防衛戦力として、こちらも馴染の傭兵に応援を要請していた。

 

この世界の傭兵と言えば金さえもらえば破壊や殺害も請け負う戦争屋だが、サーペントテールは道徳に従い必要以上の破壊や殺戮が伴うような依頼は請け負わず、裏切りを決して許さないからこそ彼らから裏切ることも決してしない。

その在り方からヒノカミとしては非常に好感が持てる相手であるので、すでに彼らに何度も依頼を出している。

サーペントテールとしても金払いが良く、自分たちに誠意をもって対応するヒノカミは上客だった。

 

 

ピピッ

 

 

「……?ロウ、どうしました?……はい……はい?」

 

「どうした?」

 

「ロウが『とんでもないものを見つけた』と。

 ヒノカミさんにすぐに確認に来てほしいそうです」

 

「ふむ、わかった。風花も来るか?」

 

「よろしいのですか?機密に関わるものでは……」

 

「かもしれんが、護衛のお主らに下手な隠し事はせん方がよかろう」

 

「……わかりました。同行させていただきます」

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

そして『ロウ・ギュール』の連絡を受けて向かった先、オーブの施設の工房に隠されていた『とんでもないもの』とは。

 

「モビルスーツ……!」

 

「ガンダムタイプか……」

 

全く同じ形の3機のモビルスーツが横たわっていた。

頭部の形はツインアイとV字ブレードアンテナ。連合のモビルスーツと同じくガンダムの特徴がある。

装甲は最低限でフレームがむき出しの個所が多く、そのフレームの色がそれぞれ違う。

赤、青、そして金の3種類。

ヒノカミが生きていた端末にハッキングを仕掛けて情報を抜き取る。

 

「……やはりこれはオーブ……いや、サハクが連合に隠して作らせていたモビルスーツのようじゃ。

 『アストレイ』シリーズというらしい」

 

連合の5機のモビルスーツの中で最もバランスが良いと判断した『ストライク』を参考にした技術試験機。

ただしフェイズシフト装甲の技術は盗み取れなかったので、オーブ製の軽量な金属装甲に変更して運動性を高め、攻撃を『受け止める』のではなく『避ける』ことを主眼としている。

 

「色以外の見た目は同じじゃが、特徴は異なるようじゃな」

 

赤はナチュラル用の試作型OSの搭載機。

青は各種オプション装備のテスト予定機。

金は掌に連合のモビルスーツと同じ武器を使用できるプラグが増設された特別仕様機。

……更にもう2機製造予定だったそうだが、そちらはまだパーツ製造の途中で組み上げられてはいないようだ。

 

「……どうしましょう。見つけたからには放置はできませんよ?」

 

「コイツを作らせたってお偉いさんに連絡は取れねぇのかい?」

 

「無理じゃよ。一人は半死人、もう一人は死人じゃ。儂が処断したのでな」

 

「……そうかよ」

 

ジャンク屋であることを誇りとし、人殺しを嫌うロウは明らかに顔をしかめる。

しかし今回の事態、あと一歩でコロニーが崩壊し民間人に多数の死傷者を出すところだったのだ。

それを思えばヒノカミの判断を責めることはできない。

 

 

「……よし。リーアム、風花。それぞれ1機ずつ持っていけ」

 

「「なっ!?」」

 

「オーブの新型モビルスーツ。今回の依頼の代金としてはおつりがくるじゃろ?」

 

「マジかよ!太っ腹だな!」

 

「本国に判断を仰がなくてよろしいのですか!?」

 

「儂では全部持ち帰るのは無理じゃし、こんなものの存在がバレれば再びザフトがここに攻めてくるかもしれん。

 かといって破壊するのも勿体なかろう。

 そもそもコロニー諸共消し飛ぶところだったんじゃ。

 お主らへの支払いも最終的にオーブに請求するつもりだったんじゃからオーブとしても儲けもんじゃろ」

 

ヒノカミは今回の件、オーブは少し痛い目を見た方がいいと考えていた。

量産機の方は同時進行で本国で生産を開始しているという情報もあった。

であれば先行試作機であるこの機体に過剰に固執もしないだろう。

何よりサハク家はすでに滅びている。文句を言う奴はいないし、いたとしてもヒノカミが力尽くで黙らせる。

 

 

議論の結果、両名共に提案を承諾。

ナチュラルであるロウには赤……レッドフレームを。

傭兵として様々な戦局に対応せねばならないサーペントテールには青……ブルーフレームを。

そしてヒノカミが金……ゴールドフレームを使用することとなった。

 

「つっても、アンタにはガンダムがいるだろ?

 使う機会なんざあるのか?」

 

「……実は、ここから脱出した連合の船にはここの住人が数名乗っとるんじゃ。

 機密を見てしまったからとな。ここの修理の目途がついたら追いかける予定だったんじゃ。

 しかし連合と行動するならガンダムは使えんじゃろ?」

 

連合の戦艦からガンダムが出てきたら、誰がどう見てもオーブが連合に協力していると思うだろう。

モビルアーマーかジンでも調達してから向かうつもりだったので、労せずモビルスーツを手に入れられたのは僥倖だ。

しかし流石にガンダムと比較するとこのアストレイでは明らかに力不足。

連合のGAT-Xシリーズ……通称『Xナンバー』に匹敵する能力があり、ヒノカミの操縦技術があったとしても、単騎で戦況を覆すほどの強さは発揮できない。

 

なので彼女はコロニーの修理と防衛をロウたちに全て任せ、この工房を利用してアストレイを改修することにした。

 

 

「やはりバッテリーの消耗と継戦能力の低さが問題じゃな。

 バッテリーの増設と補給手段の確保か。

 ……ガンダム、『鬼相纏鎧』のレプリカを頼む。

 バレぬよう外観にアレンジを加えてな」

 

「消耗を避けるなら近接武装は実体剣に変更じゃな。使い慣れた刀にするか」

 

「サブアームは便利じゃし、肩に仕込むとしよう」

 

「というか、流石に装甲薄すぎるじゃろ。局部にスラスター含めて増設するか」

 

「後は、意匠を統一させて……」

 

(ーー)

 

ガンダムのUG細胞で作り出した外装を取り付けていき、丸一日かけて完成したその機体は。

 

 

 

「かぁ~~~っけぇ~~~~~っ!!

 なぁ、オレのレッドフレームにも同じの作ってくれよ!」

 

「仮にもジャンク屋じゃろ。こんな明らかな戦闘用の装備つけられるかい」

 

「しかし、随分と凝った外見で……レッドフレームと並べるともはや別物ですね」

 

「そうじゃな、では名前も新しく考えるか。

 ……よし!この機体の名前は……」

 

 

 

 

「戦国アストレイ」

 




・戦国アストレイ ゴールドフレーム

ビルドファイターズの同名機体と見た目はほぼ同じです。
ただしフレームの色は赤ではなく金。
背中の鬼の盾が『鬼相纏鎧』の仮面に変更されており、ビーム攻撃吸収フィールドの展開と大出力ブースターになっています。
射撃武装のライフルも腰につけています。
Xナンバー相手を想定しており、ビーム無効はかなりのアドバンテージ。
武器は刀ですが、彼女ならフェイズシフト装甲の隙間を縫ってフレームを両断するくらい朝飯前です。
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