『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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原作ではこのイベントはロウが対処していたそうです。
本作では彼がヘリオポリスにかかりきりなのでヒノカミが対処します。


第7話

 

ヘリオポリスの修繕に目途が付き、シェルターに避難していた住民たちがコロニーに戻ったのを確認して。

ヒノカミはコロニーをロウたちジャンク屋とサーペントテールに託し、高速艇にてコロニーを飛び出した。

 

その船はガンダムがコロニー周辺に漂っていた連合の戦艦やモビルアーマーの残骸をかき集めて作り出した急造品のハリボテだった。

ガンダムの姿を隠しつつアストレイを運ぶだけでいいのだから問題はない。

ヒノカミには居住空間も必要ない。動力はガンダムが補えばいい。

 

そして彼女らの行先は地球。

アークエンジェルの航路などわからないが、目的地ははっきりしている。

だったら彼らが無事に辿り着くことを信じて向かうしかない。

途中で探知に引っかかれば御の字と、船は休むことなく全速力で突っ走る。

 

 

4日後、ヒノカミはユニウスセブンの残骸付近を航行していた。

ガンダムの操縦するこの船なら無数のデブリが浮かぶこの中を突っ切ることなど容易。

しかし20万を超える死者が眠るこの地を無意味に荒らすことはしたくない。

少しだけ進路を変えて通り過ぎようとしたところで、ガンダムが何かを見つける。

 

「なんじゃ?船?アークエンジェル……ではないが」

 

気になってそちらに進路を向けると、船が2隻。

一つは連合軍の戦艦だがもう一方は非武装船。しかもプラントのものだ。

こんな場所で何をしているのかとしばらくデブリの影から注視していると、前者が後者を攻撃した。

 

「っ!?ガンダム、船を頼む!」

 

(ーー!)

 

動力炉として高速艇に組み込まれたガンダムはすぐには発進できないし、知名度が邪魔をして気軽に使えない。

なのでヒノカミは迷わずもう一方のモビルスーツのコクピットに飛び込んだ。

 

「コイツが儂らの初陣じゃ!戦国アストレイ、出るぞ!!」

 

鎧武者を模した機体が船のハッチから飛び出し、デブリを避けるどころか足場にして2隻に急接近。

腰のビームライフルを構えて連合の艦の武装を次々と撃ちぬいた。

即座にオープンチャンネルを開いて叫ぶ。

 

「民間船を攻撃するとは、そこまで堕ちたか連合よ!

 その悪行見過ごせぬ!義によって助太刀する!」

 

『何者だっ!?』

 

「……何者か、だと?」

 

連合からの問いかけに、ヒノカミは一度言葉を途切る。

 

「オレは、通りすがりのヒーロー……!」

 

ちなみに今のヒノカミは鬼の鎧姿ではない。

そんなものを着ていたら折角モビルスーツを変えてまで立場と正体を隠している意味がなくなる。

かといって素顔を晒すなど論外。

よって彼女は今、別世界の友人の名と姿を借りている。

彼に恥じることがないよう、声色と口調どころか人格までも完全にトレースして。

 

 

 

「『キャプテン・ブラボー』だっ!!」

 

 

 

そして2隻のモニターに映し出された白銀のコートを纏った怪しい人物。

両陣営揃って大口を開けて硬直してしまった。

誰よりも早く動き出し言葉を紡いだのは、この場に不釣り合いな可愛らしい少女の声。

 

『キャプテン・ブラボーさん、ですか?

 わたくし共にご助力いただけるのでしょうか?』

 

「っ、『ラクス・クライン』……!?」

 

現時点でのプラント最高評議会のトップ『シーゲル・クライン』の娘にして、プラントで絶大な人気を誇る歌姫。

 

「……状況の説明をお願いしよう」

 

『プラントはまもなくユニウスセブンの追悼式典を開く予定でして、わたくしたちはその視察として訪れた慰霊団です。

 そこでこちらの連合の方々と出会い『臨検を行う』とおっしゃるので応じたのですが、諍いとなってしまいまして』

 

「把握した。ならばオレは諸君らの味方となろう!」

 

『ブラボーさん、できるならば彼らも殺さないでいただけますか?

 これ以上この地で命が失われることはあってはなりません』

 

「フッ、自らの危機にあっても信念を貫くか……ブラボーだ!」

 

ようやく再起動した連合は目の前の乱入者を完全に敵とみなし、モビルアーマーも出撃させて攻撃を開始する。

メビウスの武装はリニアガン。ビーム兵器ではないので鬼の仮面で無効化はできない。

そして戦国アストレイは装甲が薄く、フレームがむき出しな部分が多い。当たり所が悪ければ損傷は避けられない。

だからヒノカミ……いやブラボーは、この機体のコンセプト通りに攻撃を回避する。

モビルアーマーは加速力と最高速度に優れているが急な軌道変更はできない。

両手に刀を握った戦国アストレイは1機のモビルアーマーの進路上に割り込む。

 

「必殺!ブラボースラッシュ!!」

 

そしてすれ違いざま、リニアガンと両脇のスラスターを切り離す。

分離したスラスターがメインブロックを置き去りにして進み、やがて爆散した。

 

「……む、しまった!殺していないのについ勢いで『必殺』と叫んでしまった!」

 

『あらまぁ』

 

ふざけているようだが実力は本物と見なしたモビルアーマー部隊は距離を取っての包囲攻撃を選択した。

全包囲から打ち出される銃弾の雨。しかし戦国アストレイはその場を動かず。

 

「甘いぞ!ブラボースラッシュ・タイフーン!!」

 

迫る銃弾のすべてを両手の二刀で全て切り払った。

機体はもちろん、後ろにいるプラントの船にも一切損傷はない。

 

「その程度か?……ならば今度はこちらの番だ!」

 

戦国アストレイはモビルアーマー以上の出力を誇るスラスターを噴かせて急接近。

周囲のデブリを高速で回避しながらモビルアーマーへと接近し、1機ずつ同じように無力化していく。

 

船の武装はアストレイの乱入時に破壊されており、モビルアーマー隊も全滅間近。

追いつめられた連合はようやく撤退を選択した。

戦艦が回頭し、メインブロックだけになったメビウスもノロノロとそちらを追いかけこの場を離れていく。

 

 

「……引いたようだな」

 

『ありがとうございました、ブラボーさん。

 ……つかぬことをお伺いしますが、貴方様はどこに所属していらっしゃるのでしょうか?

 連合でもザフトでもないようですが』

 

「それは秘密だ。なぜなら……『その方がカッコイイ』から!」

 

『カッコイイのですか?』

 

「少なくとも、オレはカッコイイと思っている!」

 

『まぁ、そうでございますか。

 ですが困りましたわ……それではどちらにお礼をしたらよいかわかりません』

 

「必要ない。君の感謝は、オレに届いた。それで十分だ。

 ……しかし君たちはこれからどうする?

 見る限り、艦の損傷は深刻なようだが……」

 

『艦長?』

 

『……推進機関が完全に破壊されています。

 即座に誘爆はしないでしょうが、航行は不可能かと』

 

「脱出ポッドは?」

 

『あるにはありますが、乗員すべてを乗せてとなると酸素は数時間が限界でしょう』

 

周辺宙域には先ほどの連合艦以外の船は見当たらない。

ガンダムに連絡して探知範囲を広げてもらっているが今のところ反応はないとのことだ。

 

「オレの船は小さい。ポッドの牽引はできるが収容は不可能だ」

 

『……ミスター・ブラボー。彼女一人だけなら、そちらで引き受けていただくことは……』

 

『なりません、艦長。

 先ほど申し上げた通り、これ以上この地で命が失われてはなりません。

 全員で生き延びなくては』

 

「…………」

 

人命には代えられないと、UG細胞による修理を提案しようとしたところでそのガンダムから連絡が入る。

かなり遠いが探知に反応があったとのこと。しかもその船は。

 

「アークエンジェルか!?」

 

『『?』』

 

「あぁ、すまない。戦艦がこの宙域に近づいているようだ。連合のものだが」

 

『っ、また戦闘に……!』

 

「いや、その船のクルーとは顔見知りだ。

 民間人に手を上げるような外道ではない」

 

ヒノカミは顔を隠し続けているので正確には顔見知りではなく、一方的に知っているだけだが。

 

「元々オレはその船に用があったのだ。

 諸君らを乗せたポッドをオレの船で牽引すれば酸素が無くなる前に合流できるだろう。

 顔繋ぎもしてやれるが、どうする?」

 

『むぅ……』

 

『お願いしましょう。プラントからの救援が間に合うかわからない以上、全員が生き残る可能性が高い方に賭けるべきです』

 

『……わかりました。ミスター・ブラボーを信じましょう』

 

「了解した。先んじてこちらから相手に連絡しておこう」

 

 

乗員すべてを乗せたポッドが船を離れてまもなく、推進機関が爆発して船は新たなデブリとなった。

高速艇とポッドをワイヤーで接続し、ポッドが自壊しないギリギリの速度でアークエンジェルへと向かった。




原作ではラクスの船が襲われたのが2/2。
アークエンジェルに救助されたのが2/3だそうです。
ポッドのサイズを見る限り、ラクス一人ならともかく乗員全員を詰め込んだら1日も耐えるのは不可能と推測しました。

そしてまたもや登場。
困ったときのキャプテン・ブラボーです。
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