『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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後半会話だらけです。
問答シーンはどうしてもキャラの動きがないし、下手な地の文を入れるとノイズになってしまう……。


第14話 『どちらかが滅びるまで』

 

「後学のために聞いておきたいんだが……どうしてボクだとすぐにわかったのかな?」

 

「ずっと私たちを見ていただろう?

 あれだけ視線を向けられ続ければ嫌でも気づく」

 

「視線?」

 

「儂らはそういった類に敏感での。

 お主一人ならばまだしも、こうも大勢の護衛が張り付いていれば消去法でな」

 

目の前の男が現れてから、ザフト兵と思わしき周囲からの視線がそちらにも割かれ始めた。

彼がただの一兵士ならばこちらへの警戒をおろそかにしてまで注視する必要はない。

であれば重要な人物に違いなく、そしてヒノカミはバルトフェルドの顔を知っている。

サングラスと帽子くらいでは変装とは言えない。

鼻にティッシュを詰め込んだ今ならもう少しわかりにくいと思う。

 

「……いやぁ、参った参った。

 お嬢さんたち、もしかしてコーディネイターかい?」

 

「違う」

 

「同じく。むしろこう言った超自然的な力はナチュラルの方にこそ宿りやすい。

 コーディネイターは良くも悪くも規格通りじゃからな。

 ……なぁ、この状態で周りの護衛に指示は出せるか?」

 

「できないことはないが……?」

 

ヒノカミはテーブルの上に白紙を広げて絵を描き始める。

今彼らがいる広場の俯瞰図のようなものだ。

そしていくつかの場所にバッテンを追加し、その隣に人物の特徴を書いていく。

 

「こいつらテロリストじゃ。おそらくブルーコスモス」

 

「!?」

 

「私たちは視線に敏感だと言ったはずだ。

 こいつらの敵意と殺気がお前に向いている。

 すぐにでも仕掛けてくるぞ」

 

「……聞こえていたね、ダコスタくん?」

 

『信用するんですか!?ナチュラルなんでしょう!?』

 

ヒノカミたちの予想通り、バルトフェルドは服の中に通信機を隠していたらしい。

ここまで黙っていた彼の腹心の声がスピーカー越しに聞こえてくる。

 

「彼女たちは中立国であるオーブの人間だ。

 我々の監視に気付いていたならば、連中に気付いていてもおかしくはない」

 

「なんじゃい、カガリに気付いとったんかい」

 

「だから君たちを監視させてもらっていたのさ。

 『コーディネイターを超えたナチュラル』と言われる女傑だもの。嫌でも顔を覚えるよ。

 祖国から遠く離れたこんなところにいるとは思わなかったし、気付いたのはキミの目を惹く格好でだがね」

 

「……オイ、ヒノカミ。目を逸らすな」

 

「その服、オーブの古い民族衣装だろ?

 たしか男物だったから、てっきり君は男なんだと思ったんだけど……」

 

「殴ってスンマセンっしたぁ!!」

 

「ははは。さぁダコスタくん。大事になる前に動いた動いた」

 

『……わかりました』

 

 

通信機越しに指示を受けたバルトフェルドの部下たちはテロリストに気付かれぬように接近して包囲し、行動を起こす前に一網打尽にした。

連中は多数の重火器や爆発物を所有しており、往来でこんなものを使われていたらナチュラルである町の住人達にも被害が出ただろう。

 

「協力、感謝するよ」

 

「ナチュラルの国を占拠しているザフトに思うところはあるが、だからと言ってこんな非道は認められんからな」

 

「つーか本当にブルーコスモスの連中の頭の中はどうなっとるんじゃ。

 人の心まで捨ててしもうた化け物が、よくも人を『化け物』などと呼べたものよ」

 

「まったくだ。人を人たらしめるのは心さ。実はボク、本職は心理学者でね。

 どうだい?ストーキング紛いのことをしたお詫びとこの件のお礼を兼ねて、是非屋敷に招待したいんだけど?」

 

「儂一人だけでよければ応じよう。

 仮にもオーブの姫君をザフトの拠点に連れ込むのはまずい」

 

「……ま、そりゃそうだ。部下に送らせようか?」

 

「必要ない。自分たちの車がある。

 こっちも事情があるんだ。尾行なんてするなよ?」

 

「しないよ。そいつは無理そうだと痛感したばかりさ」

 

「んじゃ、行ってくる。あ奴らには『心配するな』と伝えておいてくれ」

 

「言わなくても心配しないだろ」

 

「んじゃとコラ」

 

「ははは、では行こうか」

 

 

 

そしてヒノカミだけが車に乗せられて、バルトフェルドの屋敷へと案内される。

おそらく地元の名士のものを接収したのだろうが、立派な家だ。

部下たちと別れ中に入った二人を迎え入れたのはバルトフェルドの恋人だという『アイシャ』という美女だった。

 

「フフフ、可愛らしいお嬢さんね」

 

「……言っとくが、儂の方が年上じゃぞ」

 

「いぃっ!?」「アラァ……」

 

バルトフェルドは30歳。アイシャはまだ20代だ。

この世界のヒノカミの戸籍はもう少し上の年齢で登録している。

実年齢に関しては言うまでもなく、彼女より年上の人間は存在しない。

 

「そ、それは失礼をした……キミやっぱりコーディネイターじゃないの?」

 

「コーディネイターだったら……こんなチンチクリンなはずがなかろう……!」

 

「「……ごめんなさい」」

 

ナチュラルに比べて若く美しいのもコーディネイターの特徴であるが、それにしたって幼すぎる。

そして彼女の言う通り、あえてこんな姿に育つように遺伝子操作をするとも思えない。

もしそうだとしたら彼女の親はとんでもないペドフィリアだ。

 

応接室に案内されたヒノカミは、壁に飾られた巨大な化石の複製品を見上げる。

 

「『エヴィデンス01』か……」

 

ファーストコーディネイターであるジョージ・グレンが木星圏から持ち帰った地球外生命体の化石。

羽が生えたクジラのような骨格をしており、『宇宙クジラ』とも呼ばれている。

 

「いやはや……厄介なものを見つけてくれたものだと思うよ」

 

「おや、お主は否定派なんかの?」

 

彼自慢のコーヒーとやらを受け取り、バルトフェルドと並んで口をつける。

……なるほど、これを『旨い』という彼の味覚はかなり特殊であるようだ。

そりゃ通好みの味を好むだろう。

 

地球外生命体が実在する証拠ともいえるこの化石は、地球を特別視する既存の宗教の権威失墜につながった。

よって少数ながら、これを蛇蝎のごとく嫌っている者もいる。

 

「まぁね。こんなものが見つかってしまったから、人はもっと先に行けると夢見てしまった」

 

「…………」

 

「ジョージ・グレンへの憧れから多くのコーディネイターが生まれた。

 そしてもっと先へ、先へと進み、辿り着いた結果が『どちらかが滅びるまで終わらぬ戦い』だ。

 ……否定的にもなるさ」

 

 

 

「訂正しておこうかの」

 

悲しそうにエヴィデンス01を見上げていたバルトフェルドに、ヒノカミが声をかける。

 

「何をかな?」

 

「『どちらかが滅びるまで戦いは終わらぬ』と言ったな。

 それは違う。『どちらかが滅ぼうとも戦いは終わらぬ』。

 敵がいなくなっても人はまた新たな敵を見つけて戦いを始めるじゃろう。

 民族や宗教の隔たりが根深いこの地を治めるお主には思い当たる節があるのではないか?」

 

「……続けてくれ」

 

「『戦い』とは『己の譲れぬ主張を力づくで押し通す』こと。

 子供の喧嘩すら戦いの一種。親友や恋人、夫婦ですら喧嘩はする。

 『組織』が『二つ』ではない。『人』が『二人』いれば絶対に争いが生じるんじゃよ。

 一度や二度ではなく、何度もな。これは人間だからではなく生物として避けられん。

 だから戦いを『止める』ことはできても『終わらせる』ことはできぬ」

 

「……すぐに再発するんだから戦いを止めても無駄だと?」

 

「違う。敵を滅ぼしても戦いが『止まる』だけで『終わり』ではない。

 己の存亡をかけて敵を全て滅ぼしたとして得られるのは束の間の平和だけ。

 リスクとリターンが見合っておらん。非効率極まりないじゃろ?」

 

「ひ、非効率……!?」

 

「お主も親しい者と喧嘩したことくらいあるはず。

 その時相手を排除するまで戦い続けたか?

 否。何らかの理由で途中で拳を納めたはずじゃ」

 

「戦争と喧嘩は違……いや、なるほど。

 君はこの戦争も『子供の喧嘩の延長上に過ぎない』と言いたいのか」

 

「それ以外のなんだという。

 些細な優越感と惨めな嫉妬。いじめっ子といじめられっ子。

 完全にガキの喧嘩ではないか。なのに銃や兵器まで持ち出しおってアホか。

 でかいのは規模だけで、これほど器の小さい戦争は類を見んぞ。

 それこそ民族や宗教を発端とする戦争の方がまだ理解と納得ができるわい」

 

「……ボクもかなりの変わり者だという自覚はあるがキミは飛び切りのようだ。

 そして、この戦いを止めたいのならば妥協点を探せと言うことかい?」

 

「そういうことじゃ。

 敵であるもの全てを滅ぼす以外に、お主はどんな方法があると思う?」

 

「本来それを考えるのは組織のトップなんだが……そうだなぁ、財源や資材の枯渇かな。

 戦争は巨大な浪費、軍は金食い虫だ。武器がなければ嫌でも争いの規模は小さくなるだろう。そっちは?」

 

「戦争賛成派の排除。

 怒りや憎しみを捨てられず武器を取る者に説得の余地はなく、利益を求めて戦争を促す者には同情の余地はない。

 片端から取り除けば争いを望む声は小さくなる」

 

「これはまた過激なことだが、全面戦争よりはマシだね。

 ……他には第三勢力の擁立かな。こちらは即効性もある。

 互いに他の敵がいないから全力でぶつかり合ってるんだ。

 漁夫の利を狙う奴がいるとなれば下手な動きは取れなくなるだろう。

 ……そういや、オーブにいる『ヒノカミ』ってのとガンダムはどうなんだい?

 実はボク、アレが出てきた時に結構期待してたんだけど」

 

「……あー、やっぱそれしかないんかなぁ。

 儂がおらんくなったら再発するし、あんまり力をひけらかしたくもないんじゃけど。

 予想以上に争いが止まらんから一時的にでも抑えた方がいいんかなぁ」

 

「……そういや、キミも『ヒノカミ』って呼ばれてたような……いや、まさか……ホントに?」

 

「そういうことじゃな。ザフトとして捕えるか?」

 

「……やめとくよ。キミ自身が並じゃないと聞いてるし、ガンダムも傍にいるんだろう?

 ヘリオポリスでのクルーゼ隊相手の大立ち回りはザフトじゃ周知の事実だ。

 ここの戦力じゃどうやっても……ヘリオポリス……『足つき』……そういうことかっ!」

 

「くけけけけけ。流石にそこは明言は避けさせてもらおうかの」

 

「肯定しているようなものだろう……そりゃ見つからないし、勝てないわけだ。

 念のため尋ねるが、連合についたわけではないんだね?」

 

「無論。しかし個人的にあの船には借りができてな。

 アラスカまでは守り抜くと決めた。

 立場もあるんでガンダムは使わんが」

 

「……慰めにもなりゃあしないね。

 金色のモビルスーツがキミなんだろうが、白い方も中々のものだった。

 連合もナチュラルもやはり侮れないと痛感したものだよ」

 

「パイロットはコーディネイターじゃしな。

 ヘリオポリスに住んでた一般人の子供じゃけど」

 

「……虚しくなるよ。ボクらは一体、何と戦ってるんだろうなぁ」

 

「げらげらげら。その感情を覚えておけ。

 それが争いを止めたいという思いの支えとなる。

 ……アークエンジェルはアフリカからの離脱を優先している。

 作戦決行は1週間後じゃ」

 

「……こちらに裏切りを促してるのかな?

 ボクは、ザフトの軍人だ」

 

「軍人である前に人であろう。この世界の未来を憂う、一人の人間じゃ」

 

「……肝に銘じておこう」

 

 

 

 

バルトフェルドの屋敷を後にしたヒノカミは、その身一つで砂漠を越えアークエンジェルに合流した。

 

そして1週間後、エールストライカーの準備が終わりアークエンジェルは行動を開始する。

『砂漠の虎』率いるザフト軍との一大決戦……のはずが、彼らは戦闘らしい戦闘をすることなくアフリカを超え海へと飛び出した。

それはアフリカのザフト軍が、彼らの拠点を不在にしていたからだ。

 

アークエンジェルがここアフリカの砂漠に降下して2週間。

最初の威力偵察以降、ザフト軍は砂漠を逃げ回るその巨大な船を捕捉できずにいた。

しかしついにその所在を発見したという報告がどこからか届いた。

敵の脅威を正確に把握していたバルトフェルドは全戦力を引き連れて出陣。

そして、アークエンジェルと入れ違いになった。

 

「……姐さん、アンタ何したの?」

 

「少し話をしただけさ。そして砂漠の虎は話が分かる男であったということよ」

 




既に覚悟決まってるキラに成長イベントは不要であり、バルトフェルドの手勢は後を考えると少しでも多く生存させた方がいい。
よって思い切って戦闘そのものを回避させました。
イザークたちも機体損傷が激しいため不参加です。
海上戦はヒノカミがいれば難なく突破できるし、カガリ遭難イベントは発生しようがない。
よって次回は一気にオーブ近海となります。
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