『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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本作ではミゲルが無事なので、彼らのリーダーとなっています。


第17話 アラスカ基地

 

地球連合軍第8艦隊との戦いで地球に降下したイザークとディアッカ。

その後宇宙からミゲル、アスラン、ニコルが合流し、5人は『アイマン隊』を結成。

アフリカを離脱して海を進むアークエンジェルへと仕掛けたのだが、飛行用の支援機を破壊され海に突き落とされるという屈辱的な敗北を迎えた。

 

そして彼らは今再び、アークエンジェルへ襲撃を仕掛けようとしている。

あの船がオーブ近海に立ち寄るというのはわかっていたのだから、オーブからアラスカへの進路上にある島に先回りして待ち伏せしたのだ。

 

連合のモビルスーツを操縦していたのはヘリオポリスに在住していたコーディネイターの少年で、アスランの友人。

そして証拠はないが、ミゲルが言うには金色のモビルスーツを操縦していたのはヒノカミという鬼人で間違いないらしい。

共に正式な連合の所属ではなくオーブの人間であり、彼らが連合に協力していたのはオーブに戻るため。

であればオーブを通り過ぎた今、どちらもあの船から降りているはずなのだ。

散々負け越してきたイザークは『勝ち逃げされた』と不満を隠さないが、アスランの方は『もう友人であるキラと戦わなくていい』とわかりやすく安堵していた。

 

だから彼らが戦端を開く直前に、アークエンジェルからストライクが出てきた時には驚いた。

だが金色の方は姿を見せず、おそらくストライクの方には別のナチュラルの軍人が乗っているのだろうと判断し、攻撃を開始した。

 

 

 

そしてストライク1機を相手に手も足も出ずボコボコにされた。

その上で命を奪われず見逃された。

 

 

 

「ふざけやがってぇーーーーーっ!!!」

 

怒鳴り声をあげたのはイザークではない。彼らの隊長であるミゲルだった。

 

「落ち着けミゲル!」

 

「これが落ち着いていられるか!!」

 

「ですが、本当なんですか?ストライクのパイロットが……」

 

「間違いねぇ……あれの中身はヒノカミだっ!!」

 

バックパックはエールストライカー、しかしシールドの代わりにソードストライカーのパンツァーアイゼンを装備した状態で出撃してきたストライクは、今までとは明らかに動きが違った。

 

未来予知染みた先読み。

明らかに武術を修めている機体の動かし方。

わずか数センチというギリギリでこちらの攻撃をかわす技量と度胸。

パンツァーアイゼンとエールストライカーを併用した人体では耐えられぬ急加速と急制動。

背後や死角どころかブリッツのミラージュコロイドすら察知する感知能力。

そしておそらく、エネルギー消費を抑えるためにと。

 

「最初からフェイズシフトを切っとくような馬鹿がアイツ以外にいてたまるかっ!!」

 

「「「「…………」」」」

 

物理攻撃に対する圧倒的な防御力を誇る代わりに、重量がかさみ常にエネルギーを消耗し続ける、Xナンバー最大の特徴とも言える防御機構。

それはザフトの主力モビルスーツであるジンを想定して搭載されたものだ。

ビーム兵器を持つXナンバー相手では絶対の防御とは言えないが、あった方が確実に生存率は上がる。

なのに『当たらなければどうということはない』とでも言いたいのかバッサリと切り捨て、しかも実際に当たらなかったのだから腹立たしいことこの上ない。

そもそもあんな化け物が連合のナチュラルにいたとしたら、一般人のコーディネイターにストライクを預ける理由もヒノカミに護衛を頼む理由もない。

というかあんな化け物がナチュラルだったらコーディネイターの存在意義と自信を失う。

 

「アレがヒノカミだとすると……まさか本当に連合についたんじゃ……!」

 

「それはねぇ。だったらガンダムを出してるはずだ。

 ……多分『世話になったからもうちょっと面倒見てやるか』とでも思ったんじゃねぇか?」

 

「はぁ!?そんな馬鹿げた理由で戦ってたってのか!?」

 

「ちょっと話してみりゃお前らもわかる。

 あの鬼は能力は化け物染みてるが、頭の方は一周回って基本馬鹿だ。

 ……ともかく、悔しいが足つきの追跡はここまでだ。友軍と合流する」

 

「「「「……了解」」」」

 

まもなくザフトの戦力ほぼ全てを投入した大規模作戦が開始される。

当然、アイマン隊もそちらに参加しなければならない。

彼らはもう一度アークエンジェルが飛び去った方角をにらみつけ、撤収の準備を始めた。

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

地球連合本部、アラスカ。アークエンジェルの長い旅の目的地。

物理的にはまだかなりの距離があるが、それでも目と鼻の先。

さすがにザフトが襲撃を仕掛けてくることはもうないだろう。

ヒノカミとガンダムは下船の準備を始めた。元より私物が少ないため一瞬だったが。

後はガンダムに乗ってこの船から飛び降りるだけ……というところで、ヒノカミを見送るために格納庫に来ていたマリューたちに問いかける。

 

「改めて確認するが、アラスカは地球連合の本部なんじゃよな?」

 

「え?えぇ、もちろんですが」

 

「……本当にそうか?」

 

「どうしたんだよ、姐さん」

 

 

 

「生命反応と兵器の数が少なすぎるんじゃよ」

 

「……どういうことですか?」

 

「ガンダムが言うには規模の割に、普通の基地と大差ない人員と戦力しかいないと。

 とても地球連合という組織の本丸とは思えん。

 仮にザフトが本腰を入れて攻めてきたらひとたまりもないぞ?」

 

マリューたちもここまで散々ガンダムのセンサーの世話になっていた。その精度は疑いようがない。

そしてヒノカミもまた嘘をつくような性格ではないと理解している。隠し事はするが。

 

「あと、これは個人的な直感じゃが……あの中からどす黒い悪意を感じる。ガンダムも同意見だそうじゃ。

 何が起きるかわからん。用心しておくことじゃ」

 

「おいおい、勘弁してくれよ。ようやくここまで来たってのに気を緩める余裕もないってか」

 

「……お気遣いいただきありがとうございます」

 

「連合とは敵となるが、お主らは個人的に嫌いではない。死ぬなよ」

 

そしてガンダムは改めて彼らに別れを告げ、アークエンジェルのハッチから海へと飛び込んだ。

 

当初はそのまま海の中を移動して遠くへ離れる予定だった。

しかしヒノカミはガンダムと共に近くにあった無人の孤島に上陸した。

 

「……んじゃ、行ってくる」

 

(ーー)

 

良い予感は大体外れるが、悪い予感は大体当たる。それがヒノカミだ。

ガンダムにはミラージュコロイドにより隠れていてもらい、ヒノカミはその身一つで海を泳いでアラスカへと向かう。

 

(モーターギアを使えばあっという間じゃが……バレるのもあっという間じゃろうからなぁ)

 

もしも見つかったら大騒動になるからと慎重に、彼女は歩くような速さで海中をゆっくりと進む。

呼吸も食事も休息もせずに、数日をかけて。

 

そして彼女は誰にも気付かれずに警戒網を抜け、アラスカ基地への潜入に成功した。

 

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