『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第21話

 

『なっ……どうして、貴方たちが!?』

 

『この船には、イザークを助けてもらいましたからね』

 

『余計なことを言うなニコルゥ!』

 

『それにアンタらがあっさり落とされちゃ、散々やられてきたオレたちの立つ瀬もないんでな』

 

アークエンジェルが開いたオープン回線に次々と新たな声が増えていく。

自分たちの仲間が連合、いや『元』連合の船とやらを庇い始める姿を見てその周囲のザフト兵たちは攻撃をためらう。

しかしそれも全体から見ればごく一部。

大半のザフト兵は構うことなく攻撃を続けようとする。

 

『こちらザフト軍アイマン隊所属、アスラン・ザラだ!』

 

しかし続く名を聞き反応する者は多かった。

彼は現ザフト軍のトップであり、この作戦を決行したパトリック・ザラの息子だ。

 

『この船は他の連合の奴らとは違う!プラントの恩人なんだ!

 『ラクス・クラインを救助してくれた』のはこの船なんだ!』

 

アスランが必死に声を張り上げる。

ユニウスセブン慰安団として一時プラントを離れ、そのまま消息不明となったが奇跡の生還を果たした歌姫。

当人と同船していた他のコーディネイターたちが公共の場で発言したこともあり、彼女を救出し無条件でプラントに返還した連合の船がいたというのはプラントの中では周知の事実となっている。

それがアークエンジェルとまでは知らない者が多かったが、その船が連合を離れたというならば敵として討つのは確かにためらわれる。

 

『コイツらは我が身可愛さに嘘をついて命乞いをするような卑怯者じゃない!

 だったら基地が自爆するのも本当かもしれないんだ!

 頼む!攻撃を中断し、耳を傾けてやってくれ!』

 

アスランの叫びを聞いて戸惑い、攻撃を躊躇する者が増えていく。

指示を出す側にも混乱が広がっているようだ。

それでもまだ一部。アークエンジェルへの攻撃は弱まっても基地への攻撃は止まらない。

 

その時、新たな声がオープン回線に加わる。

 

 

『……あー、こちらザフト軍。アンドリュー・バルトフェルドだ』

 

 

北アフリカ駐留軍司令官である彼とその部下も、ザフトの軍人の一人としてこの一大作戦に参加していた。

アークエンジェルを取り逃がすという失態こそ犯したものの、その高い能力と実績、何より長期にわたって地球に滞在した経験を持つ彼はこの作戦において高い発言力を持っていた。

 

『アークエンジェル。貴艦の勇気と覚悟に敬意を表する。

 だが我々は連合を信用ならないからこそ戦争をしているのだ。

 貴君の言葉をただ鵜吞みにすることはできない』

 

『…………』

 

『だから連合でもザフトでもない、当人に尋ねようじゃないか。

 ヒノカミくん。彼女の発言は事実かね?』

 

『『『!?』』』

 

バルトフェルドは、ここまでただザフトを追い返そうとする発言しかなかった第三勢力に話を振る。

 

やがてオープン回線の映像に映し出されたのは、渋い顔をした幼い少女だった。

 

「……事実じゃよ」

 

『『『『『……なぁっ!?』』』』』

 

『おぉっと、こんなに大勢の前に素顔を見せてよかったのかな?』

 

「流石にこの状況で誠意を見せぬわけにはいかんじゃろ。

 ……アラスカからどんどん連合兵が逃げ出しとるから訝しんで潜入した。

 そこでサイクロプスに気付いたんじゃ。……見えるか?」

 

少女は体を横にずらして、背後の様子を映像に映し出す。

他に誰もいない、煩雑に散らかった部屋をだ。

 

「司令室はこの有様じゃよ。兵器も人員も数えるほどしか残されていない。

 この基地丸ごと吹き飛ばしたとて、犠牲になるのはユーラシアと東アジアの連中ばかり。

 連合上層部を押さえとる大西洋連邦からすれば、ザフトと一緒に政敵も減らせて一石二鳥というわけじゃな」

 

『ほぅ。だがどうやって連合が我々の計画を察知したというのだね?』

 

「パトリック・ザラに近しい者に、内通者がいるらしい。

 随分前から計画していたようじゃな」

 

『……事実だとすれば、看過できない事態だ。

 信じがたいというよりも信じたくないな』

 

「起爆のタイミングはパナマに逃げた連合の連中次第。

 正確には不明じゃが、いつ起爆してもおかしくはない。

 あと10分……いや、5分くれ。

 儂とガンダムが全力で当たれば、それでサイクロプスを安全に無力化できる」

 

 

 

 

『全軍、攻撃停止。

 監視と警戒を継続しつつ、アラスカより距離を取れ』

 

『『『!?』』』

 

『責任はボクが取る。繰り返す。全軍攻撃停止。

 包囲網を維持したままアラスカより距離を取れ』

 

今回の作戦における現地指揮官の中でも上位である『砂漠の虎』の指令により、モビルスーツと戦艦からの砲撃が少しずつ収まっていく。

その様子を見ていたクルーゼは潜水艦の中で忌々し気に舌打ちをしたが、歯を食いしばり言葉を飲み込んだ。

彼もまた高い権限を持ち、バルトフェルドの指令を撤回させ攻撃を再開させることも可能だ。

しかし『もしアラスカの自爆が事実であれば』、損害の責任を追及されることになり己の立ち位置が危うくなる。

 

 

「……感謝する。一気に終わらせるぞ、ガンダム!」

 

(ーー!)

 

ヒノカミが自身の処理能力のすべてをラインの切断に注ぎ、ガンダムもまた地下施設から勢いよくエネルギーを吸い上げていく。

 

 

 

しかしまもなく。

 

 

 

 

チッ

 

 

 

 

『っ!?アラスカ基地地下より、高エネルギー反応!』

 

『サイクロプス起動----ッ!!!!』

 

 

『退避!急げぇーーーーーーっ!!!!!』

 

 

間に合わなかった。

アークエンジェルのオペレーターが声を荒げ、バルトフェルドが叫ぶ。

 

既にヒノカミの手によりラインがいくつもカットされ、サイクロプスに供給されるエネルギーは大幅に減衰している。

これならば当初の予定よりも破壊半径は著しく狭まるだろう。

しかしアラスカ基地上空近くまで攻め入っていたモビルスーツは無事では済まない。

アークエンジェルも、アイマン隊の位置も近すぎる。

何より、基地の中にはまだ多くの取り残された連合兵たちが。

 

 

 

「ガンダァーーーーーーム!!」

 

 

 

(ーーーーーーーーーー!!!)

 

異形の下半身からケーブルを伸ばしたままのガンダムがエネルギー反応の中心へと地盤を破壊して突撃していく。

そして基地の至る所から生えていたガンダムヘッドが重なり合い絡み合い、巨大な繭となった。

 

『抑え込む気か!?』

 

ハリボテ同然のガンダムヘッドにはエネルギー吸収能力はない。

サイクロプスが生み出す破壊の力を受けて崩壊し、その隙間からエネルギーの光が漏れだす。

上空にいたザフトのモビルスーツがその光に触れ爆散し、それを見た機体が慌てて距離を取る。

 

「呑まれるな!喰らいつくせぇ!!」

 

(ーー!!)

 

ヒノカミも負けじとコンソールを叩き続ける。

今までは誤って起動する可能性を恐れ慎重に切り離し作業を行っていたが、もはやその必要はないと乱暴にラインを切断していく。

ガンダムはガンダムヘッドが崩れ落ちるたびに新たなガンダムヘッドを生やし、必死に繭を維持する。

やがて少しずつエネルギー反応が小さく、繭の隙間から漏れる光が弱くなっていく。

 

『……エネルギー反応……消失……』

 

『止まった……のか……?』

 

崩壊するガンダムヘッドの繭。

その内側には半球状に抉れた大地、そして装甲の表面から煙を上げるガンダムが空中に佇んでいた。

 

(ーーーー)

 

『っ!?ガンダムが!?』

 

『馬鹿な!爆心地にいて無事だというのか!?』

 

ガンダムが顔を上げ、装甲の表面の再構成を始める。

まもなく完全に元の姿を取り戻した。

 

「……全員、戦闘行為を中止せよ。

 せっかく拾った命じゃ。これ以上この場で無駄にすることは儂が許さぬ」

 

(ーー!ーー!)

 

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