ヒノカミが呼び寄せた特使たちの国々は、プラントを除き地球の中立国だ。
連合にもプラントにも属していない。
だがそれは国政に関わる者たちが全員中立というわけではなく、『連合寄り』と『プラント寄り』の双方がバランスよく参加しているということである。
であれば、旧連合本部であるアラスカにて開かれる会合を聞き『面白くない』と連合に密告する者は当然いるだろう。
連合と敵対するプラントにすら、最重要作戦を漏らすスパイが潜んでいたくらいなのだから。
やがて更に接近しアラスカを包囲した連合はヒノカミを『テロリスト』と断定し、無条件降伏と『拉致した要人たちの身柄の引き渡し』を要求してきた。
なるほど、確かに落ちぶれた連合が今の状況を打開するにはその切っ掛けとなったヒノカミを下して汚名を払拭し、プラントと中立国の要人たちを人質にして方々を脅迫するくらいしか手段はない。
『だとしても実行に移すか?』と疑問に思わざるを得ない阿呆の所業ではあるが。
連合の戦力は、およそ連中が今動かせる全戦力。
ユーラシア連邦と東アジア共和国を始めとしてかなりの国々が離れたが、追い立てられたブルーコスモスとロゴスが合流しており、下手をすれば以前を上回るほどの規模に膨れ上がっていた。
パナマでは結局ザフトの新兵器によって敗れてしまったが、ストライクのデータを用いて量産に成功したモビルスーツの大群がいる。
オペレーション・スピットブレイクでザフトが投入した以上の大軍勢だ。
対して今アラスカにいる戦力は数えるほどしかない。
アークエンジェルを筆頭とした連合に切り捨てられた艦隊と艦載機。
ヒノカミがムウ用に調整してやったストライク。
カガリが持ち込んでいたアストレイと、アイマン隊のXナンバーとシグー。
そして、ヒノカミとガンダムである。
「実は『ガンダム』というのは略称でな」
連合軍が近づいていると知らされた段階で迎撃か撤退かと動き出そうとした客人たちを押しとどめ、ヒノカミは一人で戦うと宣言した。
ここまで短絡的で愚かとは思わなかったが、連合がこの会合を狙って侵攻してくる可能性は想定していた。
だから十分な備えをしているし、彼女とガンダムの本当の力を示すにはいい機会だ。
「こ奴の正式名称は『アルティメットガンダム』という。
『名前が長い』と当人には不評じゃがの」
客人たちを地下のシェルターに避難させ、ガンダムのコクピットに乗り込んだヒノカミは通信で彼らと会話する。
『究極の、ガンダム……?』
「うむ。この機体は究極のモビルスーツを目指して開発されたものじゃ。
最大の特徴は機体を構成する『アルティメットガンダム細胞』……通称『UG細胞』。
これは精神感応性を持つ生体金属細胞での」
『生体金属ぅ?なんだそりゃ!?どうやってンなもん作ったってんだ!?』
「そりゃ作った奴に聞いてくれ。と言ってもこの世界にはおらんがの」
『ガンダムは貴女が作ったわけではなかったの!?』
「儂はこ奴の育ての親を務めただけよ。生みの親は別におる。
話を戻すと、UG細胞は『自己再生・自己増殖・自己進化』の三大理論を兼ね備えており、生物の精神力と生命力に呼応する性質を持つ。
すなわち、ガンダムのエネルギー源は『パイロット自身』。
ガンダムの真の強さは儂という化け物が搭乗して初めて発揮されるのじゃ」
『人間がエネルギー……!?』
『再生に、増殖に、進化!?本当に機械なのか!?』
『頭が痛くなってきた……つまりお前が乗っている今はスピットブレイクの時より遥かに強いと言いたいんだな?』
「端的に言えばそうなる。というか、儂以外は乗せられんがな。
普通の人間が乗り込めば生命力を吸いつくされてあっという間に命を落とすじゃろう。
そして精神に呼応するという特性上、外道畜生を取り込んでしまえば影響を受ける。
この機体もかつて一度暴走し、地球人類を抹殺しようとしたこともある」
『おっかなすぎる!!』
「げらげらげら。その来歴によりこの機体にはもう一つの異名が付けられた。
こ奴はそちらの方を気に入っておってな。此度はその名を名乗るとしようか」
「『デビルガンダム』、出るぞ」
――――……
連合艦隊旗艦に乗り込み指示を出していたのは連合軍人でなく、ブルーコスモスの盟主『ムルタ・アズラエル』であった。
彼はアズラエル財団の御曹司であり、並々ならぬコーディネイターへのコンプレックスを抱え、戦争をビジネスと捉えるロゴスの同類であった。
若くして絶大な権力と財力を持つに至った彼は、しかしヒノカミの暴露により一気に窮地に陥る。
冷静ぶっておきながら短気で感情的な彼は、己の地位を取り戻すだけでなく『ヒノカミという邪魔者を殺す瞬間をこの目で見なければ気が済まない』と、危険な戦場にまで足を運んでいた。
いや、彼は危険という認識をしていなかったのかもしれない。
連合の量産型モビルスーツの大軍勢に加え、開発したばかりの3機の新型モビルスーツをも投入するのだ。敗北はありえないと妄信していた。
「!?アラスカに異変!高エネルギー反応!!」
「何?」
艦のオペレーターの言葉に、アズラエルと連合軍人たちが視線を凝らす。
「な、なんだアレは!?」
モニターに拡大された光学映像にて、アラスカの大地から無数のケーブルが伸びていく。
絡み合い、形を作り、表面に装甲が形成されていく。
そして『ソレ』はアラスカ基地の上で明確な形を取った。
「……化け物……!」
――――……
アラスカの大地を見下ろす巨大なモビルスーツの上半身。その頭部はデビルガンダムの脚部ユニットであり、デビルガンダムの胸部コクピットで腕を組むヒノカミがコクピットに映された眼下の大地と軍勢を見下ろす。
続けて大地から無数のガンダムヘッドを生やし、その口を大きく開いた。
「デスアーミー軍団、全機出撃」
(((((………………)))))
ガンダムヘッドから次々と一つ目の化け物が吐き出される。
歩兵型が、四脚型が、飛行型が、海戦型が。
デビルガンダムの『自己増殖』により生み出された死をまき散らす不死の軍勢が、アラスカを包囲する連合軍へと不気味に進軍を始める。
デビルガンダムは、かつて地球人類を抹殺しようとした。
……地球人類を抹殺できるだけの力が、デビルガンダムにはあるのだ。
「儂はテロリストなんじゃろ?
……ならば宣戦布告もしなくていいよなぁ!!」
そして蹂躙が始まった。
連合の量産型モビルスーツ『ストライクダガー』はストライクの簡易量産型であるが、ストライカーパックはなく、フェイズシフト装甲も採用していない。
携行武装はビームサーベルとビームライフルとシールドのみと、その特性はどちらかと言えばデュエルの劣化模造品と言ったところ。
だが量産型モビルスーツでありながらビーム兵器を搭載しており、何より最大の利点は生産コストを抑えたことで実現した圧倒的な物量。
数の暴力をもって敵を押しつぶす、それが地球連合という組織の基本方針であった。
しかし今まで数を頼りにしてきた連合が、それ以上の数に押しつぶされようとしていた。
デスアーミーの性能はダガーと大差ないくらいだ。
機体のパワーと強度は勝っているが、スピードで劣っている。
互いにビーム兵器を装備しておりその攻撃力が脅威なのだから、どちらかと言えばダガーの方が有利と言えるだろう。
デスアーミーには熱エネルギー吸収能力までは搭載していないので。しかし。
「儂とガンダムが本気を出せば、毎分1体ペースで増産できるわい。無尽蔵にな。
同時に操作できる数と貯蔵できる数に上限はあるんで無限の軍勢とはいかぬが」
『『『『『…………』』』』』
デスアーミーにパイロットはいない。
搭載しているAIで動かすこともできるが、今は全てヒノカミがガンダムを通じて操っている。
操作がおろそかになるがそれでも自動操縦よりは優秀で、1000体くらいなら問題なくいけるそうだ。
「あ、ちなみにオプションユニットはストライカーパックを参考にさせてもらった。
共通のコアユニットに装備を増設して機体の特徴を変化させる……いいシステムじゃよな!」
『申し訳ありません皆様ぁっ!!』
ストライクの開発者であるマリューの謝罪が聞こえた。なぜだろうか。褒めたのに。
ともかく、向こうがこちらをテロリストと断じ一方的に手を出してきたのだ。
今の状況で連合に残っている軍人は外道ばかりのはず。手心を加えてやる理由もない。
歩兵型のデスアーミーがアラスカに上陸した軍勢に対処し。
四脚型のデスビーストがロングライフルで狙撃し。
飛行型のデスバーディが戦闘機やミサイルを撃ち落し。
海戦型のデスネービィが水中を進んで敵艦へと迫る。
「お?」
その中で、デスアーミー軍団をなぎ倒してアラスカに迫る3機のモビルスーツがいた。
「あれが連合の新型Xナンバーか……」
アラスカに残されたデータベースによれば『カラミティ』『レイダー』『フォビドゥン』というらしい。
3機は防衛網を突破し、静かに鎮座する巨大デビルガンダムへと迫り、一斉に武装を斉射する。
どう見てもこの軍勢の本体はガンダムなのだから、それを倒してしまえばと考えるのは当然だ。
だが、無駄だ。
デスアーミー軍団とは違い、デビルガンダムには自己進化した強固な装甲と熱エネルギー吸収能力と。
「フェイズシフト装甲の三重防御じゃ!
核弾頭すら弾くこやつが、そんな豆鉄砲で傷なぞ負うかぁ!」
『!?いつの間にフェイズシフト装甲を!』
「ヘリオポリスでXナンバー4機をダルマにした時にこっそり残骸をくすねてました!!」
『あの時かコノヤロー!!!』
それでもかまわずひたすら砲撃を加える3機のモビルスーツ。
その背後から忍び寄る影があった。
彼らも気づいて振り向くが、もう遅い。
バクン
ガンダムヘッドが大口を開け、連合の新型を飲み込んだ。
そのままガンダムヘッドは胴体を縮めて地面へと潜っていった。
『『『『『…………』』』』』
3機が食われる瞬間はアラスカの客人だけでなく、連合の船からもよく見えていただろう。
間もなく連合の旗艦から撤退信号が上がり、ダガーが我先にと逃げ出す。
「くけけけけ……そりゃ都合が良すぎるじゃろ?」
ルール無用の戦いを仕掛けたのは相手なのだからと、ヒノカミは構わずデスアーミー軍団に連合を追撃させた。
連中が操作可能半径を抜け出すまでの間に多くのダガーと戦艦が落とされ、海の藻屑と化した。
追撃が止まり安堵したようだが、まだ彼らを見下ろす巨大ガンダムがいる。
胸部にエネルギーを収束させ、逃亡する艦隊を砲撃で消し飛ばそうとしたが。
「……やめとくか」
(ーー)
寸前で思いとどまり、エネルギーを機体に戻した。
この角度から打ち込めば大地を抉ることになるので、周辺に不必要な破壊を広げてしまう。
連中がまた襲い掛かってくるだろうと予測しつつも、ヒノカミはそれを見送った。
能力
・自己再生
・自己増殖
・自己進化
・熱エネルギードレイン
・ビーム湾曲
・転移
・フェイズシフト装甲
・ミラージュコロイドステルス
・デスアーミー軍団生成(New!)
武装
・ビームソード
・ビームクロス
・ガンダムヘッド
・火炎放射
・拡散ビーム砲
・デビルフィンガー
・メガデビルフラッシュ