『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第27話

 

ボロボロの連合軍がアラスカを離れ、ひとまず周辺は平穏を取り戻した。

しかし再度侵攻してくる可能性もあるので、安全が確保できている今のうちに各国特使にそれぞれの国にお帰り願うことにした。

ラクスたちはザフトが占拠しているパナマからシャトルに乗ってプラントに戻るらしい。

 

「色よい返事を期待しとるぞー」

 

「はい」

「任せておけ」

 

(((((断れるかぁーーーーーーっ!!!!)))))

 

彼らはこのとぼけた女が予想以上の化け物と思い知らされ、その戦力差に愕然としていた。

そして必ずやこの同盟に参加しなければ、何としても自国を説得しなければと心に誓っていた。

 

今回の同盟の要と言えるプラントとオーブの特使である両姫君の反応は非常に前向きだ。

最悪この2国さえいれば、ヒノカミは『コンパス』を結成できる。

そしてコンパスに参加した両国……特にプラントに対して連合が軍事侵攻を行った場合、相互支援の条約によりその防衛にヒノカミとガンダムが参戦する。

 

たった今あれだけボロボロにされたのだからガンダムとプラントが同盟を組んだらどうなるかは理解した。

プラントが同盟に参加すればプラントが地球を攻撃することはできなくなる。

一部の暴走までは抑えられないとしても国として条約を破ることはないだろう。ガンダムの恐ろしさを知ったのはプラントもだ。

もはや地球の国々は戦って勝てる見込みがなく、戦わねばならない理由もない。普通なら嫌でも拳を納めるしかないのだ。普通なら。

 

だが生憎と今の連合は普通ではない。ヒノカミの暴露でまともな人間が組織を去ってしまったので猶更だ。

『戦わねばならない理由』はなくとも『戦いたい理由』がある限り戦いを辞めないだろうというマイナス方向の信頼感が今の連合にはあった。

ありとあらゆる手段を講じて戦力を確保し、もう一度攻勢に出るはず。

地球の国々に脅迫外交を行って連合への参入を迫る可能性は非常に高い。

もしまかり間違って自国が連合側に編入されてしまえばアレと戦うことになる。

その前にコンパス側に参入しアレの庇護下に入らなければ。

 

それにガンダムが真の力を示したことで、彼女の提示した新技術が本物である可能性が相対的に高まった。

同盟に参加できなければ取り残される。技術的にも、物理的にも。

二の足を踏んでいるうちに彼らは宇宙と言う大海原へと飛び出してしまうかもしれない。船に乗り遅れるわけにはいかないのだ。

 

 

 

「……さて」

 

彼らがそれぞれの決意を胸に帰路に就いたのを見送った後、ヒノカミは基地の防衛をガンダムとデスアーミー軍団に任せてとある一室へと向かう。

このアラスカ基地に残された秘密の医務室……いや、実験室。

無機質なベッドの上には3人の少年が縛り付けられていた。

 

「気分はどうじゃ」

 

「見りゃわかんだろ……最悪だ」

「ケッ」

「フン……」

 

オルガ・ザブナック

クロト・ブエル

シャニ・アンドラス

 

連合の新型モビルスーツの生体CPU(生きた部品)

外科手術や薬物投与を繰り返して後天的にコーディネイターを超える能力を付与されたブーステッドマン。

人格は崩壊し記憶も失い、定期的に特殊な薬物を摂取しなければ禁断症状を引き起こす、連合の悪意の象徴。

 

彼らに関する情報も当然アラスカに残されており、世界中に公開されあまりに非人道的であるとして非難の的となった。

大規模な摘発でかなりの研究所が閉鎖され研究者が捕縛、そして被験者が保護されたが、すでに数体は実用段階に至っていたらしい。

連合の新型モビルスーツはただのナチュラルが操縦できるものではなく、それが出てきた時点でヒノカミは彼らが使われていると察知し確保を決めた。

 

「で?ボクらを捕まえてどうしようっての?

 人質にってんなら無駄だよぉ。

 アイツらはボクらを変えの利く部品としか思っちゃいないんだからさぁ」

 

「連合の情報が知りてぇのか?そいつも無理だ。

 オレたちゃ何も知らされてねぇよ。オレたち自身のこともな。

 ……それとも解剖でもするか?」

 

彼らにはモビルスーツごとガンダムヘッドに食われてからの記憶はない。

なのでどれくらい時間が経過したのかわからないが、いずれ自分たちに投与された薬のタイムリミットが過ぎると予測していた。

そしてここは敵地。薬をくれる医者はいない。

であれば自分たちは禁断症状を引き起こし、苦痛に喘ぎやがて死に至る。かつて研究所で廃棄された多くの同胞たちのように。

道具扱いされながらも『死にたくないから』と命令に従ってきた彼らだったが、もはや助かる道がないと突きつけられれば投げやりにもなる。

敢えて願うとすれば、せめて苦しまぬように終わりを迎えられることくらいだ。

 

 

 

「単刀直入に言う。儂に雇われる気はないか?」

 

 

「「「はぁ!?」」」

 

 

悪態をついていた3人が予想外の提案に一斉に反応する。

 

「連合のブーステッドマン……はっきりいってお粗末が過ぎる。

 儂ならばお主らを完成させられる。

 能力は更に向上する。感情も安定する。寿命も人並み……いや、下手すりゃそれ以上になる。

 定期的な薬物の投与も不要となり禁断症状もなくなる」

 

「……オレたちを『使おう』っての?」

 

「『雇う』と言うたであろう。雇用契約じゃよ。

 ちゃんと特別報酬は用意してやるわい」

 

「へぇ?具体的には?」

 

 

「復讐の機会」

 

 

「「「っ!」」」

 

「どうせ連中はまた攻めてくるじゃろう。

 思いっきり暴れられる戦場と最高の機体を用意してやる。

 そしてその後は正規兵として雇用を継続したい。

 地位と給与と自由は保障する」

 

「……断ると言ったら?」

 

「人間に戻してから解放する」

 

「っ、この体を戻すだと!?ふざけてんのかテメェ!」

 

「儂は冗談や誤魔化しは言うが、嘘はつかん。

 少なくとも、すでに症状を抑える薬は開発し関係各所に配布した。

 もちろんお主らにも投与済みじゃ。

 ……儂がお主らを捕えてから、すでに24時間以上が経過しておるぞ」

 

「「「!?」」」

 

「各地で保護されたお主らの同胞にも、いずれは儂が同じ提案をし施術をする手はずとなっておる。

 ……記憶や変貌した人格までは、元には戻せぬが」

 

「「「…………」」」

 

彼らは人生と人権を奪われた連合の被害者だ。

確かに彼らは非道に手を染めたかもしれない。

だが彼らは、彼らが言う通り『道具』だった。

であればその責任と罪は全て彼らを『使った』者が背負うべきである。

そしていいように『使われてきた』彼らには連中に報復する権利がある。

 

「復讐だけでもというならそれでも良い。

 ことが終われば同様に解放してやる。

 ……どうする?施術には多少時間がかかる故、返答が遅れればその前に連合が攻めてくるかもしれんが」

 

 

「……ふ~~ん、今度のご主人サマは随分と気前いいじゃん」

 

「クヒヒッ……!」

 

「いいぜぇ、乗ってやるよ!

 どうせ受けなくてもお前がアイツらを殺すんだろ!?

 ならオレたちの手で殺す方が気が晴れるってもんだ!」

 

「くけけ、契約成立じゃな」

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

そしてアラスカでの会合からおよそ1か月後。

 

(ーー)

 

「モビルスーツが2機?……宇宙から?」

 

「なんだと?」

 

ガンダムが反応し、連絡を受けたヒノカミが呟く。

その場には参加国の中で真っ先に同盟参加を取り付け調印済の書状を持ってきたカガリとキラも居合わせていた。

ガンダムが捉えた映像を手元の端末に表示する。

 

「赤と白の……ガンダムタイプ?」

 

「連合か!?」

 

「いや、おそらくザフト製じゃな。Xナンバーを解析したか」

 

連合のモビルスーツ生産拠点は地上にある。

パナマのマスドライバーを失った連合が宇宙に機体を上げることはまず不可能。

オーブもマスドライバーを所有しモビルスーツを製造する設備を持っているが、ここにカガリがいてサハク家はもういない。

よって宇宙から来たというなら消去法でザフトとなる。

 

手をつないだ状態で大気圏を突破した2機はそのままアラスカへと接近する。

まさかこちらを攻めるつもりではないだろうと思うが、念のためアークエンジェルや元連合で構成されたコンパス軍に警戒態勢を指示。

そして間もなく赤い方の機体から通信が入る。

 

『聞こえるか!?こちらザフト軍所属、アスラン・ザラだ!』

 

「アスラン!?」

 

『緊急事態につき、突然の来訪を許してもらいたい!着陸許可を!』

 

「了解した。ガンダムの案内に従え」

 

アラスカの基地から伸びるガンダムヘッドが胴体をうねらせ隙間を作り、その間にあった隔壁が開く。

ヒノカミとカガリとキラがドッグに到着したところで、彼らの目の前でそれぞれの機体のハッチが開く。

赤い方の機体のパイロットは、宣言通りアスランだった。

そして白い方の機体のパイロットは。

 

 

「「「……ラクス!?」」」

 

 

「皆様……!」

 

ヘルメットを取ったラクスは、小さなトランクを持ち直しヒノカミたちに対し深々と頭を下げる。

隣のアスランもそれに続いた。

 

 

 

「どうか……どうかプラントをお救いください!」

 

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