宇宙へと上がったアークエンジェルは地球軌道上で待機していたエターナルと合流し、すぐにプラントへと向かう。
途中、プラント防衛の要であるボアズ要塞を通ることになるがこの一団はザフト正規軍とその援軍だ。
ラクスたちがアラスカに向かう前にあらかじめ話を通しているので阻まれることはない。
元連合ではあるが、ラクスを救出しアラスカで多くのザフト兵を救ったプラントの恩人アークエンジェル。
そして『たった一人の第三勢力』と呼ばれたガンダム。
わざわざ地球まで出向いた割には数が少ないが、彼らの経歴を思えばこれ以上なく頼もしい援軍である。
ちなみにここに至るまでガンダムはずっと船の外にいて、2隻に並走する形で移動している。
念のため周辺を警戒してとのことだが、同行者たちは『本当にエネルギー切れしないんだ』『本当に休息とかいらないんだ』と冷や汗を流していた。
『それで、ボクらが離れている間に状況は変わったかい?
出番がなくなってたなら言うことはないんだけど』
『残念ながら、むしろかなり危うい方向に。
パトリック・ザラはヤキンを包囲するザフト正規軍に対し、己の命令に従わぬならば『反逆者として処断する』とまで言い出しているようで……』
『……何をやっているんだ父上は!?』
エターナルの艦長であるバルトフェルドがボアズ要塞のザフト兵と通信しているが、想像よりも事態は悪化しているようだ。
捕えられている議員たちを殺せば最悪ヤキン・ドゥーエごと攻め落とされてもおかしくないのだから手を出すことはないだろうと踏んでいた。
だが今のパトリック・ザラはそれを理解した上で踏み切ってしまいかねない危うさを感じる。
『瓦解寸前とは言え、連合がいる限りボアズから戦力を送ることはできない。
諸君らに期待するしかないが……まさかコーディネイター同士で争い、ナチュラルに助けを求めることになるとは。
少し前の我らの誰も、こんな未来は想像していなかっただろう』
「元連合の我々を信用ならないとは思いますが、全力を尽くします」
『いや、貴艦ならば信じよう。我らの故郷と家族を頼むぞ、アークエンジェル』
「ハッ!」
立ち寄る暇すら惜しいと、船はボアズを通り過ぎて先へと急ぐ。
そしてついにプラントと、ヤキン・ドゥーエが視認できる距離まで接近すると。
『光……まさかすでに!?』
『くそっ、もうおっ始めてやがった!ちったぁ堪えろよ!
よくそれでオレたちナチュラルを『野蛮だ』なんて言えたもんだなオイ!』
『返す言葉もない……急ごう!』
「これより本艦はザフト正規軍と協力し、クーデター派の鎮圧にあたります。
総員、第一種戦闘配備。各機出撃の準備を。
ガンダムも、準備はよろしいですか?」
(…………)
『……ヒノカミさん?』
ガンダムからの反応がないことをいぶかしみ、アークエンジェルとエターナルのブリッジが並走する機体をモニターに映す。通じてモビルスーツのパイロットたちも映像を見る。
ガンダムはコクピットを開いており、機体の外に出たヒノカミがヤキン・ドゥーエを見据えていた。
生身で。
『『『『『ブーーーーーーーッ!!!!!』』』』』
「な、な、なにをやっているんですかぁっ!?」
(いやぁ、ちと気になることがあってな)
『頭の中に声がっ!?』
(宇宙には空気ないし、音が響かんので、すまんがテレパスで対応させてもらうぞ)
『また知らない力が出てきたぁっ!』
『本当に宇宙に出ても死なないのか……!』
『マジでどうすりゃ死ぬんだよコイツはぁっ!!』
「そ、それで、なぜそんなことをしてるんですか……?」
(妙な胸騒ぎと違和感があってな。ヤキンの向こうに、何かがある)
『我々のモニターには何も映っていないが……』
(機械のセンサーは誤魔化せても儂の眼と感は誤魔化せん)
(ーー)
(おぼろげじゃが、ガンダムが看破に成功した。データを送るぞ)
ガンダムから転送されてきた画像の中には、確かに要塞の奥に彼らのモニターには映っていない何かがあった。
半透明なので輪郭くらいしかわからないが、円錐形のような、巨大なライトのような。
『……なんだいこれは?』
『それは儂にもわからぬが、お主らも知らぬのならパトリック・ザラの仕込みであろう。
奴がわざわざ隠しとるくらいじゃから碌なものでもあるまい』
コクピットに戻りハッチを閉じたヒノカミの声が再びスピーカーから聞こえてくる。
そもそも彼女は話を聞いた当初から違和感を持っていた。
ザフト軍すらまとめきれぬパトリック・ザラがどうしてここまでの強硬手段に出たのか。
それでは仮に歯向かう者を撃ち滅ぼしたとしても大幅に戦力が減衰し、広い地球を制圧するだけの余力がなくなるのではないか。
本当に考え無しの無能なら一時とは言え議長の座に座ることすらできなかっただろう。
であれば切り札を用意しているはずだ。それがこの物体であるという確証はないが。
『正体はわからぬが、嫌な予感がする。
儂はアレの対処に当たるとしよう』
「ですが、それでは」
『わかっておる……』
人間サイズのモビルスーツ並みの戦力。
そして半ばもぬけの殻だったとは言え連合の本拠地だったアラスカ最深部まで誰にも気付かれずに警戒網を突破した実績を持つ密偵。それがヒノカミだ。
まずミーティアと呼ばれる大型ユニットを装備したフリーダムとジャスティスが先行し、敵集団に切り込んでかく乱。
その隙に他のモビルスーツがヤキン・ドゥーエまでの道を切り開き、ガンダムを送り届ける。
そしてコクピットを降りた彼女が要塞内部に突入し司令室を鎮圧、人質たちを救出する。
これがあらかじめ決めていた今回の作戦の概要だった。
だが彼女とガンダムが不参加となると予定が狂う。
要塞の制圧と人質の救出はこの作戦の最優先事項のはずだ。
『……カガリ。お主に儂の代役を頼みたい』
『『『!?』』』
『私が、か……!?』
『危険だ!確かにカガリはすごく強いけど、流石にヒノカミさんの代わりは……!』
「彼女はオーブの……コンパスと地球の未来を担う方です!
そのような危険な役目を押し付けるわけにはいきません!」
『案ずるな、策は講じる。すまんが出撃は少し待ってくれ』
『……ふん!やってやろうじゃないか!!』
アークエンジェルにハッチを開けてもらい、ガンダムが中へと入る。
出撃前のアストレイの前に立ち、互いのコクピットを開き向かい合う。
そしてヒノカミはカガリに何かを押し付けた。
「……いやだ」
「プラントの未来を頼むぞ、カガリ。いや……」
「『キャプテン・ブラボー』よ!!」
「いやだぁぁぁぁーーーーーーっ!!!!!」
対外的にはアストレイゴールドフレームのパイロットは未だに『キャプテン・ブラボー』のままなので、正体を隠す上でもこれが最良です。
ものすごく劣化してる模造品なんですが、それでも拳銃やマシンガンなんかじゃ傷一つ負いません。