『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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プラント戦開始の前に、地球の方を片付けておきます。


第31話 VS『旧』地球連合

 

プラントに辿り着いたアークエンジェルたちが、クーデター派との決戦に臨む頃。

地球でも、連合軍が己の存続をかけた最後の決戦に挑もうとしていた。

 

ヒノカミの予想通り、やはり連合はガンダム不在の機にアラスカに仕掛けてきた。

新型のモビルスーツ3機を失いはしたが、前回以上のダガーの軍勢を用意したらしく物量で押しつぶすつもりのようだ。

これだけの量があれば、確かにデスアーミー軍団の増員がない今ならアラスカを攻め落とせるかもしれない。

 

地球連合に参加していた国や人員はほとんどが離れてしまった。

連合の支援団体だったロゴスのメンバーは悉くが捕縛、あるいは殺害されてしまった。

ブーステッドマンの製造工場も全て押さえられてしまった。

アズラエル財団も風前の灯火。再び艦艇に乗り込んできたムルタ・アズラエルは端正な顔を歪め苛立ちを隠そうともしない。

これで敗北すれば今度こそ連合はお終いだ。それを思えば前回よりも更に余裕がないのも当然である。

 

 

 

「本当に、君たちだけでいいのかね?

 僅かなら、ヒノカミくんが調整してくれたダガーとシミュレーションを終えたパイロットが……」

 

『何度も言わせんな。テメーらがいちゃオレらが暴れられねぇんだよ』

 

『そーそー。味方は誰も死なせるなってご主人サマの言いつけだからね』

 

『いーからさっさと出してよ』

 

パイロットスーツを身に着けた元連合の元ブーステッドマンたち。

生まれ変わった彼らは、生まれ変わった愛機のコクピットで発進の時を待っている。

 

「う、うむ……わかった。ヒノカミくんからも君たちの意見を可能な限り尊重するよう指示を受けている。

 全て任せる。我々は君たちの無事を祈ろう」

 

『……無事を祈る、ねぇ』

 

『なぁんかむずがゆくなっちまうな』

 

『……ハン』

 

ヒノカミからアラスカ基地を一時託されている元連合士官が彼らとのモニター越しの会話を終えると、オペレーターの女性に指示を出す。

機体を隠していた基地の隔壁がゆっくりと開かれた。

 

 

『グランドカラミティ。

 ヘブンズレイダー。

 ウォルターフォビドゥン。

 出撃してください。ご武運を!』

 

 

『オルガ・ザブナック、出るぞ!』

『クロト・ブエル、行くぜぇっ!』

『シャニ・アンドラス……ヒヒッ』

 

 

通常のモビルスーツより遥かに大きい重装甲の巨体が音を立てて一歩を踏み出し。

生物的な翼とかぎ爪を広げた怪鳥が天高く飛翔し。

バックパックに接続された装甲を閉じた球体が海の中を行く。

 

そしてそれぞれに狙撃ライフルを構えたデスビースト。

巨大な翼を広げたデスバーディ。

銛を構えた半漁のデスネービィが追随する。

 

 

『オラオラオラオラァ!!!』

 

機体の大型化によりカラミティは機動力を失ってしまった。

しかし同時に胸部『スキュラ』とバックパックの2連装砲『シュラーク』も大型化しており、その射程と破壊力も大幅に向上している。

手持ち武装に代わり両肩に追加された4門の大筒と合わせて、アラスカ基地の上から広範囲の敵へと砲撃を開始する。

 

 

『そらぁーーーーっ!滅殺!!』

 

空中でウイングをたたみ下半身を人型に戻したレイダーが手持ち武器の破砕球『ミョルニル』を振り回し、アラスカに降下しようとするダガーを次々と粉砕する。

そして再びモビルアーマー形態に変形すると、有機的な翼をはためかせ暴風を起こし、敵艦隊からのミサイルの雨をかき回して誘爆させた。

 

 

『ウラァ~~~~ッ!』

 

敵艦隊のど真ん中で海面から浮上したフォビドゥンは巨大な半球状のシールドを展開し、機体正面から湾曲するビーム砲『フレスベルグ』を狂ったように連射する。

更にシールド先端の突起が伸長し展開、中央の砲口からもやたらめったらにビームを乱射する。

 

そして各機に随伴するデスアーミー軍団が、隊長機に倣って連合を攻撃する。

 

 

元々この3機はフェイズシフト装甲を発展させた『トランスフェイズ装甲』を採用しており、物理衝撃に対し高い防御能力を誇っていた。

その上UG細胞に侵食され機体が進化したことで熱エネルギー吸収能力に加え、パイロットの精神力に呼応し膨大なエネルギーを生み出す能力が付与されていた。

特にカラミティは巨体なためかなり被弾しているがその防御能力でダメージを無視して戦闘を継続し、激しいエネルギー消費はUG細胞により賄っていた。

人格を改変された彼らは戦闘中は酷い興奮状態に陥るため、普通の人間よりもUG細胞が生み出すエネルギー量が膨大。

そしてヒノカミから改造手術を受けた彼らの身体能力はガンダムファイターに迫る。

どのような無茶な機動も難なくこなしてしまう。

 

しかしあまりにも戦い方が荒々しいので周囲の友軍すら巻き込んでしまう。

撃破したダガーの数よりは少ないが、多くのデスアーミーが連合ではなく彼らの攻撃に巻き込まれ大破していた。

ガンダムが戻ればいくらでも生産できる無人の兵器でなければ、彼らと共に戦うことすらできないのだ。

 

 

 

 

「第8,第9番艦大破!」

 

「部隊の損耗率、60%を超えましたぁ!」

 

「全軍撤退を……!」

 

連合旗艦のブリッジではクルーたちの悲鳴のような被害報告が響き渡っている。

アラスカ周辺から離れられないらしい一つ目の量産機とは違い、敵に鹵獲され改造された連合自慢の新型は前線を食い破りこちらへと進撃を続ける。

とっくに敗北は確定している。艦長はずっと前から撤退を進言しているのだが。

 

「馬鹿を言うんじゃないよ!さっさとアラスカを落とすんだっ!」

 

前回同様乗り込んでいるブルーコスモスの盟主、ムルタ・アズラエルがそれを許さない。

 

「この戦いには連合の全戦力と全財産を投資してるんだ!

 負ければどのみち終わりなんだ!

 勝たなきゃならないんだよ僕たちはぁっ!」

 

「しかし、この戦力差では!」

 

「うるさぁい!僕の言う通りに働くのがお前ら軍の役目だろうがぁっ!!」

 

軍人でもないというのに軍を指揮するこの男の言っていることは、確かに間違いではない。

これは連合にとって負けるわけにはいかない戦いだ。だが勝ち目がない。

どれだけ手を尽くしても、できないものはできないのだ。

 

「敵機接近!」

 

「「!?」」

 

言い争っているうちにフォビドゥンの改造機が降下し、船の上に乱暴に着陸する。

そして艦橋を潰そうと大鎌を振りかざしたところで。

 

 

『……んあ?』

 

 

動きが止まる。

パイロットの気の抜けた声がブリッジに響く。

 

『オルガー。クロトー。いたよー』

 

『おっ、やっぱ来てたんだね元ご主人サマ!』

 

『よく抜け駆けしなかったじゃねぇか、シャニ』

 

『そしたらこの先ずっとお前らに恨み言言われそうだからね』

 

「き……さ、まらぁっ!!」

 

前回の戦いでガンダムに奪われた3機のモビルスーツ。

それが敵に回る事態だけでも彼らの想定外だった。であればパイロットまでそのままだとは予想できるはずもない。

 

「投薬もなしに、まだ死んでなかったのか!?

 なぜ僕に歯向かっている!?どういうつもりだぁっ!!」

 

『わかんないのぉ?こっちについたに決まってんじゃん。

 新しいご主人サマはアンタと違って器がでかいんだよ。

 細かいことぐちぐち言わないし、こんなに素敵なおもちゃと最高の舞台も用意してくれるしさぁ!!』

 

「あれだけ強化してやった恩を忘れたのかぁっ!」

 

『そもそもしてくれって言った覚えはないけど。

 それにアイツの方がもっと強化してくれたし。

 痛いのも苦しいのもなくなったし。

 ……機体もオレらの体も、めちゃくちゃ酷い出来だったんだってさ。

 コレがお前らご自慢の兵器だって知ったら、笑うどころか失笑してたよ』

 

「なん、だとぉっ!?」

 

『つーかいい加減に察しろよ。バカじゃねぇの?

 アイツはわざと自分の不在を連合に知らせたんだよ。

 つられてノコノコやってきたアンタらを、オレらに殺させてくれるためになぁ!!』

 

「っ!がぁぁーーーーっ!!」

 

元ブーステッドマンたちがアズラエルをコケにしている間に、デスアーミー軍団が他の連合戦力を消滅させていた。

既に残るは、この船だけだ。

 

『ハハッ!どうせなら無様な命乞いが聞きたかったが、そのみっともねぇ悲鳴で我慢しといてやるかぁ!

 そんじゃ、そろそろケジメのお時間だぜ!』

 

「!?待て、降伏だ!降伏する!!」

 

『はぁ?駄目に決まってんじゃん』

 

『ご主人サマから、もし命乞いされても聞き流していいって言われてんだよねぇ。

 お前らみたいなやつらは『消えてもらった方が後のため』なんだってさぁ!』

 

発狂したアズラエルを無視して艦長が叫んだが、彼らは取り合わなかった。

艦から飛び上がったフォビドゥンがフレスベルグを。

上空を飛翔していたレイダーがツォーンを。

アラスカの大地に立つカラミティがスキュラを発射する。

 

 

「あ、あ、あぁぁぁぁぁあああああっ!!!!」

 

 

三方向から迫る光を前にしても最期まで現実を受け入れることなく、ブルーコスモスの盟主は自らが生み出した兵器に焼かれ消滅した。

 




・グランドカラミティ
シルエットとサイズはグランドガンダム。
ただし頭部と胸部構造がカラミティで、バックパックもグランドホーンではなく大型化したシュラーク。
TP装甲によりグランドガンダム以上に強固で、より遠距離砲撃戦に特化している。

・ヘブンズレイダー
バックパックのウィングと脚部がガンダムヘブンズソードのものになっている。
クロー内臓ビーム砲『アフラマズダ』を失ったが、ヘブンズダートやヘブンズトルネードが追加された。
パイロットが異なるため、虹色の脚は使えない。

・ウォルターフォビドゥン
本体はフォビドゥンのままだが、バックパックに接続された『ゲシュマイディッヒ・パンツァー』内臓シールドの形状がウォルターガンダムのシールドに変更され、ウォルターテンタクルが追加されている。
通常サイズのモビルスーツを覆うものなので、半球状のシールドはウォルターガンダムのものより遥かに大型。


Gガンダムの世界では出番のなかったデビルガンダム四天王の内の3機、SEEDの世界に姿を変えて参戦させてみました。
予想以上にこの3機と武装コンセプトが近かったんですよね。案外原作でも参考にしてたんじゃないかなぁ。
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