『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第32話

 

ザフト正規軍とクーデター軍の戦力はほぼ互角だった。

 

人員と兵器の数は前者の方が圧倒的に多い。

しかし後者のナチュラルへの敵意と憎悪は並外れており、ナチュラルを滅ぼすためならばその過程で同胞すら手にかけることすら躊躇わない。

対して前者は、少し前まで味方だと思っていた者相手に向けて簡単に引き金を引くことはできずにいた。

とはいえ互角で済んでいるこの状況はパトリック・ザラにとっても想定外の状況だった。

勝てると思ったからこそ強硬手段に踏み切ったのだ。

コーディネイターが受けた仕打ちを忘れ、ナチュラルとの和平をなどと言い出した惰弱な連中など物の数ではないと、彼は本気で思い込んでいた。

 

そして拮抗する状況で一方に強力な味方が現れれば、当然戦況は一変する。

ミーティアという強力な武装を多数内臓した専用の大型ユニットを背負ったフリーダムとジャスティスが戦場のど真ん中へと飛び込み、すり抜け様にクーデター側の機体だけを的確に撃ちぬいていく。

 

『携行武装を優先して!誘爆でマニピュレータを壊せる可能性が高いし、コクピットまで届くことはほとんどない!

 でもスラスターは避けて!こっちはエネルギータンクに誘爆する可能性が高くて危険だ!

 どうせ本体に近い方を狙うなら頭部センサーを!直撃でなくても掠めさえすれば激しい光量で一時的に動きを止められる!』

 

『無茶を言う!だがお前ができてるのに、オレができないなんて言えないな!』

 

ジャスティスを操るアスランもまた、父に踊らされているクーデター軍の命を奪うことは躊躇われた。

そんな彼に不殺の戦いの先輩であるキラが的確にアドバイスする。

 

先行した2機に続いてエターナルとアークエンジェルが戦場に到達。

後者から4機のXナンバーとアストレイゴールドフレームが出撃する。

 

『こちらエターナル!バルトフェルドだ!

 とびっきりの援軍を連れてきたぞ!!』

 

『こちらアークエンジェル。これよりザフト軍を援護いたします!』

 

『遅れんなよおっさん!』

 

『おっさんはやめろ!つうかバスターは砲戦機だろ!?

 今まで何度も思ってたが真っ先に前に出るんじゃないよ!』

 

『足遅いからこそ初動が大事なんだよ!それに……』

 

『うぉぉぉーーーーーっ!!』

 

『……アイツがどこまでも突っ走っちまうんだよ』

 

『あの勇ましさは頼もしくもあるが、猪突猛進過ぎるのはどうかと思うな』

 

『アンタが言わないの、お嬢ちゃん』

 

『なんだとぉっ!?』

 

『あーもう!いい加減にしろよお前らぁっ!』

 

イージスに乗り換え、名実ともに指揮官となったミゲルが叫ぶ。

どいつもこいつも癖が強くて、おまけに急造品のチーム。連携なんてできるはずもなく各々の動きはてんでバラバラ。

しかし彼らは敵と味方という立場で切磋琢磨し互いに高めあってきた連合とザフトのトップエリート。

そして化け物の薫陶を受け鍛え上げられた最強のナチュラル。

本来連携して当たるべき戦場を個々の高い能力でゴリ押しし、陣形が崩れて孤立した機体を次々と無力化していく。

 

追い込まれたクーデター軍の機体は防衛拠点であるヤキン・ドゥーエにまで後退して防御を固める。

数が少なくなったジン、シグー、新型機のゲイツが背後の要塞に背を預け弾幕を形成し、敵の接近を防ごうとする。

 

 

 

ドガァン!!

 

 

 

『『『!?』』』

 

しかしすでに手遅れだった。

ヤキン・ドゥーエの表面で大きな爆発が生じ、クーデター軍は思わず攻撃を中断し振り向いてしまう。

 

 

『まさか、ザフトの拠点に忍び込むために使うことになるとは思いませんでしたね!』

 

『よくやったニコル!』

 

先んじてアークエンジェルから出撃しミラージュコロイドで姿を隠してヤキン・ドゥーエに忍び寄っていたブリッツが、持ち込んだ爆弾を仕掛け硬く閉じられていた隔壁を吹き飛ばした。

狼狽し敵からの攻撃が弱まった隙にモビルアーマー形態に変形したイージスが突っ込み、デュエルとバスターが続いてクーデター軍の防衛網に大穴を開ける。

 

『コンプリートだ、アスラン!』

 

『後はお願いします!僕の父さんたちを!』

 

『任せろ!行くぞ、キャプテン・ブラボー!!』

 

『私をその名で呼ぶなぁ!!』

 

ミーティアから分離したジャスティスとアストレイが要塞内部に突入した。

 

ヒノカミならば多彩な特殊能力で察知するか、目標目掛けて壁も何もかも壊して突っ切っていくだろうが、カガリではそこまでは無理だ。

だからヤキン・ドゥーエの内部構造を把握している案内役が必要で、父を止めたいと強く願っているアスランにその役目を託した。

そして彼らが目的を達成するまでの間、彼らの邪魔をさせないよう敵の突入を防ぐのが残るモビルスーツ達の役目だ。

 

『よし!このまま維持だ!一機も通すんじゃねぇぞ!』

 

『『『了解!』』』

 

イージス、デュエル、バスター、ブリッツの4機が陣形を組み、ジャスティスたちが消えた大穴を背にしてクーデター軍の侵入を防ぐ。

クーデター軍は丁度外側にいる正規軍と挟み撃ちにされる形になり身動きが取れない。

一機、また一機と機体が破壊されていく。

普通なら勝敗は決したも同然の状況だ。

 

しかしクーデター軍の士気は高いまま。

そして何よりクーデター側の最高戦力がまだ生きている。

開戦からここに至るまで正規軍相手に単騎で暴れまわり、同胞の命を奪うことをためらう兵士が多い中でむしろ嬉々としてコクピットを狙いコーディネイターたちを殺し続けてきた最悪の敵が。

 

『ぐぅっ!?』

 

『無事か、キラ!』

 

『大丈夫です!ミーティアがやられただけだ!

 フリーダムはまだ戦える!』

 

ドラグーンと呼ばれる遠隔操作可能な砲塔を多数装備した、フリーダムとジャスティスと同じくNジャマーキャンセラーを搭載した核動力モビルスーツ。

 

『やらせはせん……やらせはせんぞ!

 我が悲願、これ以上貴様らに邪魔はさせん!!』

 

『邪魔は貴様だっ!クルーゼぇっ!!』

 

ラウ・ル・クルーゼの駆るプロヴィデンスはしかし正規軍でなくフリーダムとストライク、正しくはキラとムウに過剰なまでの敵意をむき出しにし、苛烈に攻撃を加えていた。

 

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