『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第33話 ジェネシス

 

占拠しているクーデター軍が少数であるとは言えヤキン・ドゥーエはプラントのすぐ眼前に位置する拠点にしてザフト軍最終防衛ライン。

容易に侵入できる場所ではなく、仮にできたとしてもすぐに排除できるよう備えは十分。

それも侵入者がたった二人とあればなおのこと。の、はずだったのだが……。

 

「いたぞ!……なんだあの格好は!?」

 

「ふざけているのか!?」

 

「恥知らずな!!」

 

 

「やかましぃぃいいいいっ!!」

 

 

「「「ぎゃぁぁぁぁああああ!!!」」」

 

白銀のコートを纏った不審者が銃弾の雨を物ともせずに突っ込んできて、パンチやキックでコーディネイターの軍人たちをなぎ倒していくのだ。

無重力状態の宇宙空間でありながら、壁や天井を蹴って縦横無尽に暴れまわる姿は既存の戦闘要綱のことごとくを覆す。

対人を想定していること自体が誤りだ。

 

 

「……ナチュラルってなんだっけ?」

 

「おいアスラン!何ぼさっとしている!?

 方向はこっちで合ってるのか!?」

 

「っ、ああ!間違いない!次はその角を右だ!」

 

後ろに付き従うだけで出番のないザフトの赤服が呆けていたが、同行者から甲高い声で叱責を受け我を取り戻す。

そしてたった二人の侵入者は更に奥へと進んでいくのだが。

 

「っ!?扉が!」

 

「くそっ、兵が少ないならそうするよな……!」

 

迎撃したくても向かわせる戦力がいないのだから、扉を硬く閉ざして時間を稼ごうとするのは当然と言えた。

おそらくこの先も同じように道は塞がれているのだろう。

 

「少し時間をくれ!ハッキングを仕掛ける!」

 

「その必要はない、どいてろ」

 

隣のコンソールに近づくアスランを押しのけたブラボーが、扉の前でまず両足を床に突き刺す。

無重力状態の中で力をストレートに伝えるため、足裏ではなく足首全体で踏ん張り体を固定する。

 

 

「……づぇぁあああああっ!!!」

 

 

右腕で貫手を放ち、扉の真ん中に掌を深々と突き刺す。

そしてもう一方の腕を穴に添えて、力づくで扉をこじ開けた。

 

「んぎぎぎ……よし、開いた!」

 

「……人間ってなんだっけ?」

 

「ぼさっとするなって言っただろうが!

 一刻も早くコレを脱ぎたいんだ私は!!」

 

「あ、あぁ!すまん!」

 

 

 

 

――――……

 

 

 

 

「「「…………」」」

 

そんな侵入者たちの様子をカメラは捕えていた。

もちろん、パトリック・ザラ率いるクーデター派もヤキン・ドゥーエの司令室でその様子を見ていた。

 

「な、なんだあの化け物は……!?」

 

「『ブラボー』とは確か、ラクス嬢を護衛したという傭兵の名前ではなかったか!?」

 

「今回も彼女の要請で参戦したということか……!」

 

「また扉を突き破った!?まっすぐここまで突っ込んでくるぞ!

 まるでイノシシではないか!」

 

取り乱す部下たちに、しかしパトリック・ザラは何も言うことができなかった。

袂を分かつこととなった息子が、とんでもない化け物を引き連れてまもなくここに辿り着こうというのだ。

怒りで声を上げなかっただけでも上々だろう。

 

 

「……もう止まれ、パトリック。

 私とて我らを虐げてきたナチュラルへの恨みは消えておらぬ。

 だが受け入れ、前に進まねばならんのだ」

 

 

パァン!

 

 

「ぐぅっ!?」

 

「シーゲル!?パトリック、貴様ぁっ!」

 

余計な口を開いた者に向けて、パトリック・ザラは躊躇うことなく引き金を引いた。

 

シーゲル・クラインとエザリア・ジュール。

ザフトの前身である黄道同盟からの盟友と、オペレーション・スピットブレイクの前まで己の派閥に属していた配下。

他の議員たちは別室に軟禁しているが、この二人だけはここ司令室へと置いていた。

自分の正しき行いを見ればきっと目を覚まし、再びこの手を取ってくれると期待して。

結局その願いは叶わなかったが、撃ちぬいたのがシーゲルの肩であったのは彼にもかつての盟友を撃つことへのためらいがあったのかもしれない。

 

「奴らが……ナチュラル共がのうのうと生きているというのに、なぜ撃つなと言う……。

 敵は滅ぼさねばならんのだ!何故それが分からん!!」

 

意を決したパトリックが一層深く顔を歪め、部下たちが彼の狂気に飲まれる。

 

そう遠くない先に、モニターに映る息子とふざけた輩がこの部屋までたどり着くだろう。

ならばその前に決着をつけるしかない。

その前に、ナチュラルを滅ぼすしかない。

 

 

「『ジェネシス』の発射準備を!!」

 

 

「「「……ハッ!」」」

 

部下たちはその言葉の意味を理解しても尚、疑うことなくパトリックの指示に従う。

 

『ジェネシス』。

それは本来、プラントでの恒星間探査計画の一環として建造されていた外宇宙探索のための宇宙船加速装置。

宇宙船に備え付けた帆に光を照射して、宇宙船本体のエネルギーを使用せずに加速させるという、一方通行限定の特殊な推進機関。

しかしパトリックはこれを兵器として軍事転用し、核エネルギーを使用して放つガンマ線レーザー砲へと作り変えたのだ。

本来、宇宙船を外宇宙に送るためのものだ。その射程は恐ろしく長く、プラントから地球を狙えるほど。

直撃すれば地球上の生物全てが滅びるだろう。

そうだ。地球と言う星そのものごとナチュラルを皆殺しにすることができるのだ。

 

「やめろ、パトリック!」

 

「思い知るがいい、ナチュラル共。

 コーディネイターの創世の光を受けよ!」

 

ミラージュコロイド・ステルスが解除され、ヤキン・ドゥーエの隣にあった『何か』が姿を現し始める。

同時にフェイズシフト装甲が展開し、表面の色がわずかに変化していく。

 

そしてついにコロニーに匹敵するサイズの超巨大兵器が、その全貌を現した。

 

 

 

 

『きゃー、えっちー』

 

 

 

 

「「「「「…………は?」」」」」

 

オープン回線で、場違いな声が戦場に響いた。

巨大なパラボラアンテナのようなジェネシスの上には、ジェネシスと同じくミラージュコロイド・ステルスで姿を隠していたガンダムがくっついていた。

 

『……なーんちゃってのぅ。げらげらげら』

 

「……!?閣下!ジェネシスが、こちらの信号を受け付けません!!」

 

「なんだとぉっ!?」

 

巨大な頭部に変形したガンダムの下半身からは無数のコードが伸びており、よく見ればジェネシスの表面にもまるで血管のようにガンダムのものと同じコードが張り巡らされていた。

 

 

 

『げげげげげげげげげげげげ!!』

 

 

 

そして一斉にうごめきはじめた。

ジェネシスの至るところから生えてきた太いコードが絡み合い、表面に装甲が生まれ、何かの形を取っていく。

 

 

 

 

『もぉーーーーらぁーーーーいぃーーーーーーっ!!!』

 

 

 

 

やがてジェネシスの上に、無数の顔を持つ異形のモビルスーツの上半身が形成された。




能力
・自己再生
・自己増殖
・自己進化
・熱エネルギードレイン
・ビーム湾曲
・転移
・フェイズシフト装甲
・ミラージュコロイドステルス
・デスアーミー軍団生成
武装
・ビームソード
・ビームクロス
・ガンダムヘッド
・火炎放射
・拡散ビーム砲
・デビルフィンガー
・メガデビルフラッシュ
・ガンマ線レーザー砲(New!)
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