『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第35話 VSクルーゼ

 

『反乱軍に告ぐ!パトリック・ザラは確保した!

 諸君らの反乱は失敗した!無駄な抵抗はやめて投降せよ!

 繰り返す!無駄な抵抗はやめて投降せよ!』

 

アスランからの連絡を受けたバルトフェルドがオープン回線を通じて叫ぶ。

だが敵モビルスーツの抵抗は止まらない。

武器を破壊しても止まらない。

手足や頭部を撃ちぬいても止まらない。

取り押さえようとすれば自爆してでも巻き込もうとする。

 

『撃たれた痛みを忘れ、なぜ仇の手を取るというのだ貴様らは!』

 

『散っていった同胞たちの嘆きを忘れたか!』

 

『なぜ気付かぬ!我らコーディネイターにとって、パトリック・ザラの示す道こそが唯一正しきものと!!』

 

 

「なんだ……なんなんだコイツらは!?」

 

ただひたすらにナチュラルへの怒りと恨みを叫びながら、正規軍へと挑み死んでいく。

ナチュラルとの融和を進めるのならば同胞すら敵であると断じて、同胞を殺すために死力を尽くし死んでいくのだ。

 

『くそ……くそっ!くそぉっ!!』

 

『死にてぇなら勝手に死ねよ、このぉっ!』

 

「くっ……呑まれてたまっかよ!!」

 

死をも恐れぬ……いや、死すら忘れるほどの狂気を前に優勢であるはずのザフト正規軍兵たちがたじろぎ追いつめられていく。

勝敗はすでに決している。どうやったってここからひっくり返されることはない。こちらの勝ちは決まっているのだ。

だからこんな狂信者に付き合ってこれ以上味方に犠牲を出すわけにはいかない。

 

『警告はした……!人と思うな、一機残らず撃ち落せ!』

 

「うぉぉぉーーーーーっ!!」

 

バルトフェルドの号令を聞くまでもなく、もはや言葉すら通じぬ化け物を撃つためにミゲルの駆るイージスが戦場を飛んでいく。

 

 

 

 

そしてヤキン・ドゥーエから少し離れた宙域でも、激しい戦いが続いていた。

 

「くっ……もう、エネルギーが……!」

 

『ムウさん!』

 

「!?危ねぇっ」

 

『チィィッ、おのれぇーーーーっ!!』

 

ドラグーンを操り猛攻を続けるクルーゼの駆るプロヴィデンス。

キラとムウの連携によりここまで抑え込んできたが、核動力モビルスーツでないストライクはどうしても先に息切れしてしまう。

 

『くそっ!もうやめるんだっ!!』

 

『貴様らさえ……貴様らさえいなければぁーーーっ!!』

 

「どうしたクルーゼ!?勝ち目のない戦いに殉じるなんざ、テメェはそんな殊勝な奴じゃねぇだろ!?」

 

戦闘開始からすでにかなりの時間が経過しており、常に服用している薬の効果が切れ始めていることもあって彼は普段の冷静さを失っていた。

だがそうでなかったとしても今の彼には、彼を突き動かす激しい衝動が……キラとムウへの怒りがあった。

 

 

 

『貴様らがラクス・クラインを救助などしなければ、プラントは連合を憎んでいた!!』

 

 

「『!?』」

 

 

『貴様らがアラスカでサイクロプスを止めなければ、多くの死が怒りと憎しみを生み出していた!!』

 

 

『まさか……!』

 

 

『貴様らが連合を滅ぼしプラントとの和平などと言い出さなければ、ナチュラルとコーディネイターは互いを滅ぼし合っていた!!

 綺麗ごとの夢想に踊らされることなくなぁっ!』

 

 

「テメェか!テメェが連合に情報を漏らしていたスパイか!?」

 

『なぜだ!?貴方もコーディネイターなら、なぜ仲間を売るような真似を!?』

 

『ハッ!私はコーディネイターなどではない!ナチュラルとも言い難いがね!』

 

「どういう意味だっ!?」

 

 

『私は己の命すら金で買えると思い上がった愚か者……貴様の父、『アル・ダ・フラガ』の出来損ないのクローンなのだよ!』

 

 

「親父の……クローンだと!?」

 

 

 

代々続く資産家『フラガ家』の当主であったその男は、ナチュラルでありながら優れた能力と先を読む力を兼ね備えた傑物であった。

反面人格には多大な問題があり、傲慢で横暴で疑り深く、己こそが最も優秀であると信じて疑わない男だった。

彼は不仲の妻の影響を大きく受けて育ったムウを自身の後継者とすることに納得がいかず、やがて己の後継者に相応しいのは『己以外にいない』という結論に達した。

 

そして彼は禁忌を犯した。

スペースコロニー『メンデル』にて行われていた『最高のコーディネイター』を作り出す研究に多額の出資を行い、違法であると知りながら『自身のクローン』を作らせた。

『法など変わる。所詮は人が定めたものだ』

そう唆して。

 

しかし生み出されたクローンは技術的な問題により『オリジナルと同じ寿命しかない』という致命的な欠陥を持っていた。

それを知ったアル・ダ・フラガは手の平を返し、後継者として厳しく教育していたクローンを捨てた。

自分と同じ時間しか生きられないのでは後継者足りえないのだから。

そして捨てられたクローンは『ラウ・ル・クルーゼ』と名を変え、肉体的にはナチュラルの身でありながら自身をコーディネイターと偽り、ザフトのトップエリートへと上り詰めた。

身勝手に己を生み出し、身勝手に己を捨てた世界への復讐という、激しい憎悪を胸に。

 

「親父を殺し、オレの家を焼いたのもお前か!?」

 

『その通りさ、ムウ・ラ・フラガ!

 そしてアル・ダ・フラガからの出資を受けてついに完成した『最高のコーディネイター』……それがキミだよ、キラ・ヤマト!』

 

『……!』

 

研究の中心人物であった『ユーレン・ヒビキ』博士。

彼と妻の遺伝子を使い、数え切れないほどの失敗作の命を犠牲にして、人工子宮で生み出された唯一の成功作が『キラ・ヒビキ』だ。

しかしまもなく行われたブルーコスモスのテロによりコロニーメンデルは崩壊し、ヒビキ夫妻も凶弾に倒れた。

彼らの研究成果は、唯一の成功作は、ここで死んでいたはずだった。

だがユーレンの妻『ヴィア・ヒビキ』は直前にキラと、己がお腹を痛めて産んだナチュラルである娘の『カガリ・ヒビキ』を、オーブに住む妹の『カリダ・ヤマト』の下へ預けていた。

そしてキラはヤマト夫妻の養子『キラ・ヤマト』となり、生前ヴィアと交友があったウズミ・ナラ・アスハが引き取った子が『カガリ・ユラ・アスハ』となった。

 

 

『お笑い種だったよ!誰も殺さぬようにと必死に立ち回っていたキミの姿は!

 キミ自身が、幾万もの失敗作の命を犠牲にして生まれた存在だと言うのに!』

 

『ぐぅっ……!』

 

『そしてキミが新たな争いの火種となり、新たな血が流れることとなる!

 だから滅ぶべきなのだよ!キミも、キミや私を作り出した愚かな人類も!』

 

『なっ……どうしてそうなる!?』

 

 

『知れば誰もが望むだろう……『キミのようになりたい』と!』

 

 

『……えっ』

 

 

『知れば誰もが願うだろう……『キミのようでありたい』と!』

 

 

「……なんだと?」

 

 

『故に許されない!キミという存在は!』

 

 

『アナタは……』

「クルーゼ、お前……」

 

 

 

 

「『一体何を言っているんだ?』」

 

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