『ワン・モア・タイム』   作:緑のおっさん

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第8話 共同戦線

 

飛行石を作り出す作業に時間がかかってしまい、ヒノカミたちがポムの案内で坑道の外に出た時にはすでに日がかげり始めていた。

久しぶりの開放感に夕焼け空を見上げて背筋を伸ばす一行だったが、軍の飛行機が飛んでいることに気付き素早く身を隠す。

しばらく岩陰から飛行機の挙動を確認していたが変化はなく、どうやら気付かれずに済んだようだ。

明るい時間帯なら危なかったかもしれない。

 

どうやら軍はまだこの近辺でシータを探し続けているようだ。

三人は周囲を警戒しながら慎重にパズーの家へと戻る。

作ったばかりの飛行石が早速活躍した。

連中が警戒していない普通なら通れないような悪路も、体が羽のように軽い状態なら容易に移動できる。

 

だが周囲を警戒しながらの移動にはやはり時間がかかり、町が見えてきた頃にはもう日も沈んでいた。

昨晩ヒノカミから連絡を入れていたとは言え、パズーとしては親方に話を通しておきたいところ。

しかし町には軍の兵士が張り込んでいる可能性が高い。

この場は堪えてもらい、裏道を通り町外れの高台へと急ぐ。

 

そしてようやくパズーの家の前まで帰ってきたのだが。

 

「待て」

 

「「?」」

 

扉に近づいた所で呼び止められ、パズーとシータは動きを止める。

立ち止まった二人に持っていた飛行石を預けて追い抜いたヒノカミが扉に手を伸ばすと。

 

 

バタァン!!

 

「「!!」」

 

ゴスッ!ボコッ!バキィ!

 

「「!?」」

 

直前で勢いよく開いた扉から伸びた野太い腕を躱したヒノカミは、その持ち主である男たちを容赦なく殴り飛ばした。

足元に転がった男たちの姿を見て、パズーたちはその正体に気付く。

 

「お前らは!?」

 

「ちょっと借りてるよ、坊や」

 

パズーの家に我が物顔で居座るドーラ一家が机の上に食糧を広げ荒々しい夕食を取っていた。

 

「ほう、借りておるという自覚はあるのか。

 ならば賃料は請求しても構わんよな?」

 

「ケチくさいこと言うんじゃないよ」

 

「儂の家ならばとやかく言わぬが、ここの家主はパズーじゃからな。

 ……大層散らかしおって。その分くらいは正当な要求じゃろ?」

 

「ふん!」

 

パズーとシータを背に庇うヒノカミは至って冷静で、ドーラもまた動じずに分厚いハムに齧り付く。

 

「聞くまでもなかろうが、貴様らの狙いはラピュタの宝か?」

 

「当たり前さね。海賊が財宝を狙ってどこが悪い」

 

「海賊そのものが悪じゃろうが阿呆。

 そのためなら年端もいかぬ少女を襲うと?

 外道に堕ちたかドーラ」

 

「痛いところを突くね……だがラピュタの宝だ、無理もするさ」

 

ドーラはヒノカミの指摘に顔をしかめるが、すぐに振り払って意地を張る。

 

「アタシだってカタギにゃあ手を出したくない……だからさっさと飛行石をよこしな。

 ラピュタに辿り着いて財宝を手に入れたら、相応の分け前はくれてやるよ」

 

「む?」

 

「勝手なことばっかり言うな!」

 

シータを背に庇って黙っていたパズーだったがついに我慢できず声を荒げる。

対してヒノカミは、ドーラの発言から彼女が誤解していることに気を取られていた。

 

「……シータの持つ飛行石は、シータ以外には使えんぞ?」

 

「なんだって!?」

 

「飛行石にラピュタへの道を示させる方法は不明じゃが、それもシータの協力がなければ不可能。

 つまり貴様が目的を果たすには……ラピュタへの危険な旅に無理やりシータを連れていくしかないわけじゃな」

 

「……ちっ」

 

やはりドーラはなぜ軍がシータまで連れ出したのかを把握していなかった。

軍の無線を傍受するだけではそこまでの情報は手に入らなかったのだろう。

しかし子供を危険に晒すことを、ここまで躊躇うとは。

 

「な?見かけよりいい奴じゃろ?」

 

「やかましい!!」

 

揶揄われたと思いドーラは力強く机を叩く。

だがヒノカミは冗談や誤魔化しは言うが、断言した言葉に嘘はない。

よってドーラに提示された選択肢は二つ。

ドーラ一家の名に泥を塗るか、ラピュタを諦めるか。

どちらも許容できず視線を落として悩む彼女に、第三の選択肢を提示する。

 

「まぁ、すでに儂らも覚悟はできておるがな」

 

「あん?」

 

「先生!?」

 

「我らもラピュタを目指すと決めた。軍にラピュタを渡すわけにはいかんからな」

 

あらかじめパズーたちにもこの展開になる可能性を話してはいたが、やはり驚愕が勝るようだ。

そしてドーラはヒノカミの言いたいことを察知した。

 

確かに、自分たちの作った飛行機に飛行石を組み込めばラピュタに辿り着ける。

しかし複座式にしたとはいえ3人が乗り込むには非常に狭い。

数時間でたどり着ける距離でもないだろう。何度も地上に降りて、数日かけて目指す形になる。

そして何よりヒノカミたちには軍の動きを察知する手段を持たない。

タイガーモス号という空飛ぶ母船と、軍の無線を傍受しその動きを察知する勘を持ち、図抜けた航海の経験値を持つドーラ一家の助力は、ラピュタを目指す上で大きな助けとなる。

 

「条件は?」

 

「この子らに手を上げぬこと。

 ラピュタそのものに手を出さぬこと」

 

「取り分は?」

 

「5:5じゃ」

 

「冗談じゃないよ、7:3だ」

 

「お主らだけのせいではないが、この町も甚大な被害を受けた。

 そちらを補填せねばならぬ」

 

「……6:4だ」

 

「よかろう。交渉成立じゃな」

 

机越しに差し出した手を互いに掴む。

すると地面に転がっていたドーラ一家の男たちが一斉に立ち上がった。

彼らは気絶した振りをしながら飛行石を手に入れる機会を狙っていたのだ。

ドーラ頼りで情けないように見えても、彼らも空の荒くれものなのである。

 

「それでは、情報の共有といこうか」

 

「いいだろう。

 ……ホレ、坊やたちも座って食いな」

 

「「……」」

 

ドーラ一家が再び食事を始め、ヒノカミもその輪に加わる。

遅めの朝食を取ってから今まで何も食べていない二人は、空腹と豪勢なごちそうに負け、彼らに促されるままに席に着いた。

 

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